猫のお知らせ屋

もち雪

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夏休み

僕が許さないと誓った、二人の会話

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 夏の昼間、猫の僕が、目を覚まし家の中を探検していると……あずき先輩が、居た。

 食卓の上の一生懸命に雑誌を見ている。その奥にでみずほちゃんが勉強をしている。

 僕は、ソファの上から飛び降り、あずき先輩の足もとにじゃれつく。

稲穂いなほ、爪が、少し痛い……お前も爪切った方がいいんじゃないか?」
 足もとの僕をあずき先輩が抱っこし、僕のおてての肉球をきゅ~っとする。おててをすごく見るあずき先輩。

「本当だ……早めに切っちゃおう」
 いつの間にか、あずき先輩の横にみずほちゃんまで……。

 そのまま床の所まで連れて行かれると、あずき先輩に抱っこされ、みずほちゃんに爪を切られた。

(許さないからねもうぅ……)

 爪切りから解放された僕は、ソファの裏に隠れた。

(猫缶くれないと許さない……)

 怒りを全体で表す僕。今日はなでなでさせてあげないと誓う!

 でも、そんな事も知らずに、みずほちゃんとあずき先輩はソファの上に並んで座る。なおも警戒している僕を、ソファの上かみずほちゃんを撫でた。そこで背中ががら空きだった事を思い出す。今度こそ!毛を逆立ててつま先立ちで、ピョンピョン。

(僕は、怒ってます!)

稲穂いなほに、ちょっと警戒されちゃったね」

「ほれ」

 僕の前に、猫のおもちゃの猫じゃらしが現れる。今は、そんな気分じゃないの――! 猫じゃしにパンチを、パン、パン、パンと浴びせる。そうすると猫じゃらしは、速く横の8文字線を描いて動きだす。

 僕は、目標を目で追い素早く顔を動かすと、パン、パンと攻撃をらわせるはずが、猫じゃらしの動きが早い!
 猫、特有のステップでぴょんぴょん、猫じゃらしの動きにスキが出来た時の狙い。攻撃力のある攻撃に、切り替える時を待つ。

 今だ――――! 猫じゃらしの動きが少し遅くなった。僕は、その瞬間しゅんかんを逃がさず、効果的な一打を与えるはずだった。

 だが……さっき、爪は切られたばかりで、撫でた程度の攻撃にしかならず僕は、力およばず……クッションに倒れ込んだ。
 爪も切られちゃったし……運動もした……寝よう……。

稲穂いなほは、また寝ちゃったね……。あずき……どうしたの?」

「あぁ……稲穂いなほが、爪切りを見て怒ってたから……、こいつは、爪切りが怖くないのかと思って……」

稲穂いなほは、私の猫だもん。すごいでしょう? ねぇ~」

「そうだな……爪を切って怒ったり、怖がってたのに、今はもうへそ天(へそを上に向けてあおむけで寝てる状態のこと)で寝てるし、すごいな……」

「それにあずきの事が、好きだし――だから、あずきが人間にいる時でも、平気だよ~居ない時は、鳴いてるよって言ったのにさぁ~、帰って来なくてさ~私の猫あんなに寂しがらせるなんてね~良くなかったよ~」

「みずほ怒ってるのか? 神代の猫は、猫に嫌われてるから仕方ないだろう……。今は、猫のお知らせ屋になって、ここで一緒にいるからいいだろう。今度、猫の時に、1回だけもふもふさせてやるから」

「おなかもふもふしたい……」

「お腹は、直接内臓だから駄目……」

「もう、けちだなぁ……」

 寝るまでに、そんな話を聞いた気がする……。でも、すぐにあったかいふわふわあずき先輩の来て、心臓の音も聞こえてきたので、僕は安心して眠ったのでした。

 おわり
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