猫のお知らせ屋

もち雪

文字の大きさ
上 下
22 / 37
夏休み

にわとりのニワさん

しおりを挟む
 神代かみしろ神社の境内には、にわとりもいる。

 小学生の女の子のみずほちゃんは、にわとりも平気らしく、にわとりに時々餌をやっていたりしている。遠くから見ていると、向かって来る顔が怖い。

 にわとりは、境内けいだいをみずほちゃんに抱っこされて歩いていた頃、お知らせ屋になる前から、抱っこされている安全な空間の中に居てさえしても、ただ凶暴さが怖い、そして顔も怖いにわとり達だった。

 お知らせ屋になってからは、少し観察出来る余裕が出て来た。よく見た彼らは、赤や黒などいろいろな色で、赤いトサカ、いきなりジャンプするとすごいジャンプ力、凄く大きな声で鳴く。

 結論としてやっぱりたくさん怖い、特徴を持った生き物だった。そんなにわとりがうちの神社には、何羽もいる。

「だから、一人で境内けいだいを歩く時にあうと、少し怖いんだよね……」僕は、あずき先輩にいった。

 そんな僕にあずき先輩は、少し呆れたようだ。
稲穂いなほにわとりは、坂の方の道にいるだろう……だから階段の方を歩けばいいぞ。それはで俺達猫はにわとりにも負けない」

 それは凄い素敵な考えで、僕はあずき先輩に感心した。

「二人とも、そんなにニワさん達が、怖いの?」
 僕達が勉強している横で、ノートパソコンを使っていたお母さんが、僕達の話に入ってくる。

「お母さん、ニワさんは怖いだろう普通……」
 やっぱりあずき先輩も怖いらしい。声が凄く怖いようって声だ。

「お母さん、あずき先輩、ニワさんってあの1番大きなにわとり?」
 みずほちゃんは、大きいにわとりを見て「にわさんは、最強だからもし神社に入り込んでも近づいちゃだめだよ」って抱いている猫の僕によく囁いていたのだ。

「そうそう、大きくって黒いが、凄く長い立派な子、ニワさんは瑞稀みずほが小学校入学した年の、11月のある日に突然、神社に大人のにわとりの姿で居たのよね……」

「あいつ、まだ、それくらいしか居なかったけ? それなのにあんなにでかい顔をしてるのか……」

 あずき先輩は、納得いかないって顔で、眉間みけんしわを寄せている。

「でも……ニワさんが居るからうちの神社のにわとりは、安心して暮らせるところがあるのよね……にわとり達ってもともと、うちの神社に捨てらていて、ボランティアさんが、面倒みていらしたの」

「昔は、屋台でひよこを売ってたりしたからな……」

 あずき先輩がそう言ったけど、あの怖いにわとり達を飼いたいの? 人間は凄い。

「この神社の、特別な猫達を恐れて他の猫はなかなか、神社には入って来ないのだけれども……それでも他の動物によって生命を落としてしまうにわとり達も少なく無かったの……だからボランティアの方達もにわとりの保護を考えなくてはいけませんねって話を、おじいさまと話をしていた時……」

「ある日突然、ニワさんは居て、それからはにわとりが襲われる事も無くなったの、前の月が神無月だったから、スカウトされてうちにやって来たのかもしれないわねぇ……にわとりは『神様の使い』って言うし」

「じゃあ、僕達の仲間なのかもしれないね?」

 僕がそう言うと、あずき先輩は自分の頭を、もしゃもしゃにしながら――。

「分かり合える気がしない……」
 耳をぺしゃんこにしていう。

「とこで、ニワさんのにわってやっぱり、にわとりのニワなの?」

「そうよ、瑞稀みずほが、小さい時ににわとりの事をニワさんって言っていて、最初はニワさんは大きそうなにわとりさんって意味ぽかったけど……。ニワさんが来てから、ニワさんの人間への威嚇が凄すぎて一部の人しか他のにわとりに近づけなくなったの。だからみずほもそれから、他のにわとりに近づけないので、にわさんはニワさんの名前って事で落ち着いたらしいわ。それに合わせて私もニワさんって呼ぶようになったのよ」

 (じゃあ……僕の名前もしかしてねこさんに、なってかもしれない……)

 ニワさんは、あの凄い怖さで他のにわとりを守っている。僕は、これからもニワさんの事はめちゃくちゃ怖いけど、近づくのは無理だけど、少しだけニワさんの事を尊敬した。

 僕も家族のみんなをニワさんの様に、頼もしく守れるかな? 頑張るけど、やっばり今はちょっと難しい。 


 おわり
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

クラゲの魔女

しろねこ。
児童書・童話
クラゲの魔女が現れるのは決まって雨の日。 不思議な薬を携えて、色々な街をわたり歩く。 しゃっくりを止める薬、、猫の言葉がわかる薬食べ物が甘く感じる薬、――でもこれらはクラゲの魔女の特別製。飲めるのは三つまで。 とある少女に頼まれたのは、「意中の彼が振り向いてくれる」という薬。 「あい♪」 返事と共に渡された薬を少女は喜んで飲んだ。 果たしてその効果は? いつもとテイストが違うものが書きたくて書きました(n*´ω`*n) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中です!

ななちゃんと友達

マキ
児童書・童話
初めての幼稚園の友達のお話

【完結】王の顔が違っても気づかなかった。

BBやっこ
児童書・童話
賭けをした 国民に手を振る王の顔が違っても、気づかないと。 王妃、王子、そしてなり代わった男。 王冠とマントを羽織る、王が国の繁栄を祝った。 興が乗った遊び?国の乗っ取り? どうなったとしても、国は平穏に祭りで賑わったのだった。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

処理中です...