猫のお知らせ屋

もち雪

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夏休み

花火大会の日の終わり

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 暗闇の中に突然爆発を起こし空に大輪の花々を描き、そして惜しげなく消えていく花火達の光。
 
 でも、そこに居る人々の表情を、暖かい笑顔や驚きなどの様々な色に染めていく。

 今や終わりに向かって咲いていく多くの花火は、一瞬で、だからそれが良いってなんだんだろう。

 僕の生まれて初めて見た花火は、みずほちゃんと一緒に見る事は出来なかった。あずき先輩は、花火に驚き座り込み、そんな僕達を見つけて僕達の隣に座ってくれたちゃろちゃんとめろちゃん。ふたりが僕達を励ますのをそっと待っていてくれたるりくん。

 僕はみんなとずっと一緒に居たい。一瞬じゃ良くないよ。
 
 だけど人間になれる猫の僕は知っている。すべては永遠じゃなくって、ご飯のカリカリの続く日に、特別の猫のおやつは美味しいって事。でも、わからない事もまだある。

 毎日、猫缶なら猫の特別のおやつはどれくらい美味しいかって事。だから僕はみずほちゃんにちゃんと言わなきゃ……ご飯を毎日猫缶にしてくださいって、そして確かめたいです。おやつがどれくらい美味しいを……。みずほちゃんはわかってくれるだろうか、僕の気持ちを。

 そんな大切な事を考えていた僕達は、隣町の小学校にたどり着く。小学校は、花火の為に解放されていて、人々はさまざまないろの敷物上に座って居る。

 僕達も瑞穂みずほちゃんから持たされた敷物に座る。花火の音と注意事項をマイクでアナウンスする人、みんなの楽しそうな話声。たくさんの音が入り混じる。

稲穂いなほ、花火楽しいか?」

「うん、楽しいねぇ。みんなの中にいられるのも楽しいねぇ」

「そうかもな」

 僕は、おやますわりのひざの上に、頭を乗せて、あずき先輩をみる。あずき先輩は、あんなに怖がっていたのに今は、手と足を延ばして一生懸命に花火を見てる。僕はそれをみてふふふと笑う。

 そしてまた、空の上の花火をみる。ドーンドーン体に響く音のゆれ。次々に形を変える花火。ダァ――――といってパンパン! ジャラララァ――――。

 そして人々のおぉ――と言う低い声。とうとう花火があがらなくなくなると、アナウンス流れ、終わりを知らせる。それを聞いて最後にみんな拍手する。僕達も拍手する。

 そして、みんな家に帰る様だ……。

 僕達……は、なんか買おう! 今日は、お祭りだし、明日まで人間のままだから好きな物食べられるぅぅ~~!

 小学校から歩いて少し、市のグラウンドにはどっかの会社の宣伝からかき氷屋さん、たこ焼きまでいろいろな屋台があってどこで食べていいのか迷う。
 
 ステージでは、誰かが話してるようだ。僕達は人間には見えないけども、みんなが僕達を避けてくれる。このグラウンドに来るまでにも見たけど、誰かが離した風船が、またそらに飛んで行った。

「なんなのこれは、すごいねぇ――お祭り見たい」

「お祭りだぞ、稲穂いなほ

「そっか、だよね――」

 僕は姿がみえないので、遊びの屋台は、くじ引きをした。選んだ紐をあずき先輩に引いてもらう。何が当たるか、どきどきで見ていたらみずでっぽうが当たった。とうめいでまるぽい感じのみずでっぽう。おにいさんがみずでっぽうを当たりって言ったけど……みずでっぽうて、何? ゲームに出て来る新しい銃なの?

 そして食べ物は、たこ焼きを買って貰った。

「すぐにちょうだい! ちょうだい!」ってあずき先輩の周りをぴょんぴょんしたら。食べられる所までつれて行って貰い、あずき先輩は再び姿を完全に隠すために、漢字を使いに隠れたところへ行った。帰って来たかと思ったら、いきなり肩を掴まれる。

「いいか稲穂いなほ、熱い食べ物をすぐ食べると、口の中の皮が、むけてデロンデロンになる。そして痛くなる。」

「うそ?!」
 僕は、口を押えて驚いた。

「本当だ。1個割って、中の温度を確かめないと口の中をやけどするぞ。 気を付けろな」

「でも、みんな『はふぅ、はふぅ美味しい』って……」

「知ってる大人が、はふぅはふぅ言う位、熱いって事だからな?」

「そっか……」
 僕は少し怖くなった……。怖くなった僕は……。

「あずき先輩、あ――ん!」

「俺で試すよやめろ。ちょっとか中身見てやるから、たこ焼きをかせ………………まぁこれくらい冷めてればいいよ、食べて。ほら食べな」
 と、言って返してもらった。

「おいしいぃぃい!」たこ焼きは美味しかった。凄くふわとろだった。

「あずき先輩もどうぞ」長いくしをあずき先輩に渡す。

「いいのか?」

「一個だけ、一個だけいいよ」

「いただきます。うーんやっぱうまいな」

「ね――」

 僕が、食べ終わると先輩の焼きそばを少しくれた。美味しかった。

「はぁ……みんなの食べてる、焼きそばこんなに美味しかったのか……」
 あまりの美味しさとこんな時しか食べられない事に、少しため息が出た。

「お前、瑞穂みずほちゃん達が、食べてる時じっと……見るようになるなよ」

「わかってる、わかってる」
 
「お前、俺は食べてる時も見てるからな、俺の事」

「おいしそうだから仕方ないよね」

 そう言って見上げると、光のせいで空に星が見えなかった。ご飯をすませた僕達は帰る事にした。グラウンドから帰る途中に、少しずつ人の数は減って行く。だから、僕達は、前を歩くみずほちゃん達をみつける事も簡単だった。

 大人と子供と別れて楽しそうに帰って行く。僕達は、その後ろをとぼとぼと歩く。バイバイしていくみずほちゃん……そして神社の前。

「おれが、行くとでかいからふたりとも驚くだろうから稲穂いなほ突っ込め」
 と、あずき先輩が言うので、僕が二人の間に入って手をつないだ。二人はちょっと驚いてたけど。

 あずき先輩は、二人の前へ走り込むそして猫になって登場した。

「あずき先輩どうしたの?」
 と言う前に猫のあずき先輩は寝た。どういう事!?眠かったの?

 おうちに帰って、お父さんとお風呂、歯磨きして僕の長い花火大会の一日はおわった。

     おわり
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