3 / 37
あずき先輩
しおりを挟む
今、僕のおうちにあのお兄さんが居る。
みずほちゃんに連れられ、神社へ行くと猫の僕の頭を撫でてくれた。あの優しかった、髪の長いお兄さん。
あのお兄さんが、僕の隣で……今、アイスを食べている。
「僕は……」
僕は、お兄さんを見る。
「うん? 」
「僕は……」
「なんだ? 」
「アイス食べたい! アイス食べたい! アイス食べた――い! 」
★☆★☆★
事の起こり凄く簡単なのだけれど……。
今日、猫のお知らせ屋のお仕事が終わって家に帰ってからも、僕は人間の姿のまま冷蔵庫の扉を開けたり、閉めたりして遊んでいた。
その時、玄関の鍵を開ける音がした。誰が帰って来たのか確かめなきゃ、そう思って僕は玄関を覗きに行く。
そこには神社で、よく見かけるお兄さん居た。
僕の家の扉をちゃんと閉めて、ちゃんと鍵をかける。
僕は、突然のお客さんのお兄さんに舞い上がり、お兄さんの周りをうろうろしたら……お兄さんに黒いしっぽが3本あった……。
「あっ……」
僕のしっぽは、たぶんしたにさがった。
「これ、冷蔵庫開けたのお前だろ? 開けたらちゃんと閉めろよな」
と、言ってお兄さんは、アイスを1つ取ると、椅子に座って食べ始める。僕もその横に座り、お兄さんを見るけどやっぱりお兄さんで、しっぽがある……。3本も……。
お兄さんは食べてる途中に、帽子を取ると、「あっちぃ――」って言って帽子で、パタパタと自分の事を扇ぎだす。
おにさんの髪の間からは黒い猫耳が。
僕のしっぽはとってもさがった。
「あずき? 」
「あずき先輩だろ 」
と、言って僕に、あずき先輩の帽子をかぶせた。帽子からは黒猫のあずきの匂いがした。
お兄さんはあずきなのか……。わかったような、わからないような……。
でも、1つわかった事がある。アイスは、とても美味しそう。
「あずき先輩、僕もアイスが食べたいです……」
「駄目だ、子猫はすぐお腹を壊すから」
「僕は……」
僕は、帽子クシャっとつぶしてあずき先輩を見る。
「うん? 」
「僕は……」
「なんだ? 」
「アイス食べたい! アイス食べたい! アイス食べた――い! 」
「そして優しいお兄さんが、あずきじゃ、いや――――――――! 」
僕は顔を机に伏せる。人間になると水がいっぱい目から出る。これでは僕の水分が、すぐになくなっちゃう。そして凄く泣きつかれたので、そのまま床に降りてねっころがる。ヒャーヒャーの床の冷たい感じが、とっても気持ちいい……。そのまま寝ちゃうくらい夢心地。
☆★☆
夕方起きるとみずほちゃんが帰って来ていて、ご飯も用意してあったので、ご飯を食べる。
お腹いっぱいになった僕は、みずほちゃんに狩りの練習を教えてあげるため、猫用おもちゃで一緒に遊んだ。
いっぱい遊んだ後……少し眠たくなった僕は、寝床に行く。しかしそこには、何か1つ足りない。
(あずき……? あずき先輩が居ない! どこだどこだ?)
「稲穂、あずきを探してるの? あずきは、このキャットタワーの一番上で寝てるよ。ほらここ」
みずほちゃんは僕を持ち上げて、キャットタワーの一番上で眠る、あずき先輩を見せてくれた。先輩は僕がにゃーーと、呼んでも目を薄っすら開けてまた寝てしまう。
ガーン、あずき先輩が、僕にかまってくれない……。
「ほら、そんなに鳴かないの。今日は暑いのに、あずきは忙しくかったらしくて、『疲れた……』って言って帰ってきて、ご飯食べてすぐねちゃったんだから。あっそうそう!」
そう言ってみずほちゃんは、僕のごはんが入っているところを探してる。
だから、僕も一緒に探してあげる……にゃ~にゃ~世話が焼けるにゃあ~。
「あった! それにしても稲穂は、ご飯の場所だけはすぐに覚えるよね」
そう言って、僕に猫用のおやつを出してくれた。
「はい、あずきが稲穂にあげてって」
一番美味しい猫おやつ。素敵! すんごい素敵なの――なんで? どうした……の……あずき……。
僕は、お昼の事を思い出して少しだけ反省した。
そして寝た。
☆★☆★☆
朝、起きると、巫女姿のみずほちゃんに抱っこされて境内の中を歩いていた。ご神託がくだりましたって言うの忘れちゃったの? そう言うのは良くないなぁ……と思いながら、心地良い振動で眠くなる……。
「稲穂!、やっと起きたと思ったら、また寝ないで! まったくもう」
本殿に着くと、僕は床に置かれる。
眠気と、床の冷たさと、誰かの優しく、強い気配……最初は怖かったけど、お父さんから感じる気配とも似ているなぁと思ったら、安心できる様になった。
人間の姿になった僕は……みずほちゃんを見つめる。
「ご飯まだ食べてないよ?」
「稲穂……」
みずほちゃんは、僕を連れて一礼したのち、本殿を出ると自宅へと帰った。
「稲穂、鞄の中にご飯入ってない?」
僕は人間の時に、制服と一緒に用意された鞄の中を探ると、おにぎりとお茶が入っていた。
「あった――!」
「人間のあずきは、よくこのダイニングテーブルで鞄の中のご飯を、食べているから稲穂もこれからはここで食べていいよ」
おにぎりは、ふっくらでも形が崩れない程度の強さで握られている。具のおかかも、とっても美味しい。
「ご飯ってこんな味なんだ……美味し――い」
「良かったね、稲穂」
みずほちゃんは、机にほおづえをつきながら僕を、にこにこと見つめている。
「お茶も美味しい。なんで今まで、飲めなかったんだろう?」
もしかしてみんな、美味しいものを内緒にしてた? 僕は、みずほちゃんを見つめる。僕に内緒の美味しいもの、ほかにはないのかなぁ?
「稲穂、そんな顔しても人間のご飯は、食べちゃダメだからね。食べていいのは、鞄の中のご飯だけ。いい?稲穂」
「でも……あずき先輩は、アイス食べてたし……」
僕は美味しいおにぎりを、見つめながら話す。
「あずきは、しっぽが3本もあって、漢字も書けるようになったからいいの」
「じゃ――僕もしっぽ3本で、漢字が書ける様になる! わぁ――嬉しい、美味しいアイスが食べられる!」
僕も、アイスが食べられる様になるなんて、なんて幸せ。しっぽは、明日はえるだろうか? 漢字ってあの絵だろう……漢字も、明日には書けるかもしれない。
これから仕事から帰ったら、どのアイスを食べるか決めないといけない。凄く迷うだろうから、今から考えておかないとな。迷っているうちご飯が無くなり、みずほちゃんに片付けての仕方を教えて貰う、ゴミの分別についてはもう完璧かもしれない?
「じゃあ私、行くね」
僕がご飯を食べると、いつのまにかすっかり着替えたみずほちゃんは、学校へ出かけて行った。
「あら、稲穂は、まだお仕事いかないの?」
今度は外の水やりを終えただろう、お母さんがやって来た。
「いいみたい、あっお母さん、ほく漢字書ける様なるの、凄い?」
「うん、凄いわぁ」
「でも、漢字ってどうやって書くの?」
「そうねぇ……ちょっと待ってて」
そう言うとお母さんは、二階に行ってクレヨンと紙を持って来た。
「瑞穂の幼稚園の時のだけど、小学校では違うのを買う事になったから、稲穂はこれ使ってね」
そう言って紙の下に、新聞紙をひいてくれた。使ってみたクレヨンは、色がどんどんあふれてきて凄く楽しい。どんどん書ける。何枚目かの紙を描き終わった時、出発の時が来た。
「どうしたの?」
パソコンとにらめっこしていたお母さんが、顔をあげる。
「お仕事なの」
「そうなの? じゃ見送らないとね」
靴をはいている間に、扉をあけて貰って「行ってきます」「いってらっしゃい」の声に見送られ、僕は我が家を後にする。
たどり着いた先は、住宅街だった。
そして僕の目前には、スーツ姿の男の人がいる。彼は建物の影に隠れているが、一軒の家の入り口を見てる様だ。
僕は、彼の横を通り過ぎ、表通りに出る。
(もうそろそろ……)
道路には、沢山の車が行き交い音をあげて通り過ぎる。人々は話ながらも、その速度は落ちることはない、しかし信号が変わると皆、揃ったように動きを止めた。
その時、僕の伝える『虫の知らせ』の受取人が、自転車に乗ってやって来きて、動きを止める。
僕は、その警察官のお兄さんに、近づき右手を掴む――。
「貴殿に謹んで申し上げまする。そこ横道に、怪しい男の人がいるので捕まえてください」
そうすると彼は、僕の指差す方向を見つめ自転車を降りる。警察官のお兄さんは、ゆっくりと僕のもと来た道を進むと、スーツ姿の男の人を見つけた。
スーツの男の人は、視線の先にあった家から出て、裏庭に向かうおばあちゃんと、入れ替わりにその家の扉を開けまさに入ろうとしている所だった。
警察官のお兄さんは、すぐに誰かに連絡すると、おばあさんに静かに声をかけ、安全な所まで移動させた。
しばらくすると警察官が、何人か集まり家をとり囲む。
そして出てきたスーツの男の人は、あっけなく捕まり、僕は家に帰る事が出来た。
家に帰ると、キャットタワーの前に椅子を置いて、あずき先輩に声をかけた。
「あずき先輩……昨日はごめんなさい。そして猫のおやつありがとう」
そう言うとあずき先輩は、細目を開けてこっちを見てゆっくり「ミャアーオ」と鳴いた。
「あずき先輩、撫でていい?」
そう言って返事を、待たずに撫でた。
「あずき先輩、ふあふあ、素敵――!」
そう言って、何度も撫でたらガブッてやられた。いつもの通り痛くないけど、すこし心が、へこんだ。
あずき先輩は、向こうを向いちゃうし、踏んだり蹴ったりだ――。
……寝よう。
次の日、起きたらあずき先輩が、隣に寝てたので、また安心して……また寝た。
おわり
みずほちゃんに連れられ、神社へ行くと猫の僕の頭を撫でてくれた。あの優しかった、髪の長いお兄さん。
あのお兄さんが、僕の隣で……今、アイスを食べている。
「僕は……」
僕は、お兄さんを見る。
「うん? 」
「僕は……」
「なんだ? 」
「アイス食べたい! アイス食べたい! アイス食べた――い! 」
★☆★☆★
事の起こり凄く簡単なのだけれど……。
今日、猫のお知らせ屋のお仕事が終わって家に帰ってからも、僕は人間の姿のまま冷蔵庫の扉を開けたり、閉めたりして遊んでいた。
その時、玄関の鍵を開ける音がした。誰が帰って来たのか確かめなきゃ、そう思って僕は玄関を覗きに行く。
そこには神社で、よく見かけるお兄さん居た。
僕の家の扉をちゃんと閉めて、ちゃんと鍵をかける。
僕は、突然のお客さんのお兄さんに舞い上がり、お兄さんの周りをうろうろしたら……お兄さんに黒いしっぽが3本あった……。
「あっ……」
僕のしっぽは、たぶんしたにさがった。
「これ、冷蔵庫開けたのお前だろ? 開けたらちゃんと閉めろよな」
と、言ってお兄さんは、アイスを1つ取ると、椅子に座って食べ始める。僕もその横に座り、お兄さんを見るけどやっぱりお兄さんで、しっぽがある……。3本も……。
お兄さんは食べてる途中に、帽子を取ると、「あっちぃ――」って言って帽子で、パタパタと自分の事を扇ぎだす。
おにさんの髪の間からは黒い猫耳が。
僕のしっぽはとってもさがった。
「あずき? 」
「あずき先輩だろ 」
と、言って僕に、あずき先輩の帽子をかぶせた。帽子からは黒猫のあずきの匂いがした。
お兄さんはあずきなのか……。わかったような、わからないような……。
でも、1つわかった事がある。アイスは、とても美味しそう。
「あずき先輩、僕もアイスが食べたいです……」
「駄目だ、子猫はすぐお腹を壊すから」
「僕は……」
僕は、帽子クシャっとつぶしてあずき先輩を見る。
「うん? 」
「僕は……」
「なんだ? 」
「アイス食べたい! アイス食べたい! アイス食べた――い! 」
「そして優しいお兄さんが、あずきじゃ、いや――――――――! 」
僕は顔を机に伏せる。人間になると水がいっぱい目から出る。これでは僕の水分が、すぐになくなっちゃう。そして凄く泣きつかれたので、そのまま床に降りてねっころがる。ヒャーヒャーの床の冷たい感じが、とっても気持ちいい……。そのまま寝ちゃうくらい夢心地。
☆★☆
夕方起きるとみずほちゃんが帰って来ていて、ご飯も用意してあったので、ご飯を食べる。
お腹いっぱいになった僕は、みずほちゃんに狩りの練習を教えてあげるため、猫用おもちゃで一緒に遊んだ。
いっぱい遊んだ後……少し眠たくなった僕は、寝床に行く。しかしそこには、何か1つ足りない。
(あずき……? あずき先輩が居ない! どこだどこだ?)
「稲穂、あずきを探してるの? あずきは、このキャットタワーの一番上で寝てるよ。ほらここ」
みずほちゃんは僕を持ち上げて、キャットタワーの一番上で眠る、あずき先輩を見せてくれた。先輩は僕がにゃーーと、呼んでも目を薄っすら開けてまた寝てしまう。
ガーン、あずき先輩が、僕にかまってくれない……。
「ほら、そんなに鳴かないの。今日は暑いのに、あずきは忙しくかったらしくて、『疲れた……』って言って帰ってきて、ご飯食べてすぐねちゃったんだから。あっそうそう!」
そう言ってみずほちゃんは、僕のごはんが入っているところを探してる。
だから、僕も一緒に探してあげる……にゃ~にゃ~世話が焼けるにゃあ~。
「あった! それにしても稲穂は、ご飯の場所だけはすぐに覚えるよね」
そう言って、僕に猫用のおやつを出してくれた。
「はい、あずきが稲穂にあげてって」
一番美味しい猫おやつ。素敵! すんごい素敵なの――なんで? どうした……の……あずき……。
僕は、お昼の事を思い出して少しだけ反省した。
そして寝た。
☆★☆★☆
朝、起きると、巫女姿のみずほちゃんに抱っこされて境内の中を歩いていた。ご神託がくだりましたって言うの忘れちゃったの? そう言うのは良くないなぁ……と思いながら、心地良い振動で眠くなる……。
「稲穂!、やっと起きたと思ったら、また寝ないで! まったくもう」
本殿に着くと、僕は床に置かれる。
眠気と、床の冷たさと、誰かの優しく、強い気配……最初は怖かったけど、お父さんから感じる気配とも似ているなぁと思ったら、安心できる様になった。
人間の姿になった僕は……みずほちゃんを見つめる。
「ご飯まだ食べてないよ?」
「稲穂……」
みずほちゃんは、僕を連れて一礼したのち、本殿を出ると自宅へと帰った。
「稲穂、鞄の中にご飯入ってない?」
僕は人間の時に、制服と一緒に用意された鞄の中を探ると、おにぎりとお茶が入っていた。
「あった――!」
「人間のあずきは、よくこのダイニングテーブルで鞄の中のご飯を、食べているから稲穂もこれからはここで食べていいよ」
おにぎりは、ふっくらでも形が崩れない程度の強さで握られている。具のおかかも、とっても美味しい。
「ご飯ってこんな味なんだ……美味し――い」
「良かったね、稲穂」
みずほちゃんは、机にほおづえをつきながら僕を、にこにこと見つめている。
「お茶も美味しい。なんで今まで、飲めなかったんだろう?」
もしかしてみんな、美味しいものを内緒にしてた? 僕は、みずほちゃんを見つめる。僕に内緒の美味しいもの、ほかにはないのかなぁ?
「稲穂、そんな顔しても人間のご飯は、食べちゃダメだからね。食べていいのは、鞄の中のご飯だけ。いい?稲穂」
「でも……あずき先輩は、アイス食べてたし……」
僕は美味しいおにぎりを、見つめながら話す。
「あずきは、しっぽが3本もあって、漢字も書けるようになったからいいの」
「じゃ――僕もしっぽ3本で、漢字が書ける様になる! わぁ――嬉しい、美味しいアイスが食べられる!」
僕も、アイスが食べられる様になるなんて、なんて幸せ。しっぽは、明日はえるだろうか? 漢字ってあの絵だろう……漢字も、明日には書けるかもしれない。
これから仕事から帰ったら、どのアイスを食べるか決めないといけない。凄く迷うだろうから、今から考えておかないとな。迷っているうちご飯が無くなり、みずほちゃんに片付けての仕方を教えて貰う、ゴミの分別についてはもう完璧かもしれない?
「じゃあ私、行くね」
僕がご飯を食べると、いつのまにかすっかり着替えたみずほちゃんは、学校へ出かけて行った。
「あら、稲穂は、まだお仕事いかないの?」
今度は外の水やりを終えただろう、お母さんがやって来た。
「いいみたい、あっお母さん、ほく漢字書ける様なるの、凄い?」
「うん、凄いわぁ」
「でも、漢字ってどうやって書くの?」
「そうねぇ……ちょっと待ってて」
そう言うとお母さんは、二階に行ってクレヨンと紙を持って来た。
「瑞穂の幼稚園の時のだけど、小学校では違うのを買う事になったから、稲穂はこれ使ってね」
そう言って紙の下に、新聞紙をひいてくれた。使ってみたクレヨンは、色がどんどんあふれてきて凄く楽しい。どんどん書ける。何枚目かの紙を描き終わった時、出発の時が来た。
「どうしたの?」
パソコンとにらめっこしていたお母さんが、顔をあげる。
「お仕事なの」
「そうなの? じゃ見送らないとね」
靴をはいている間に、扉をあけて貰って「行ってきます」「いってらっしゃい」の声に見送られ、僕は我が家を後にする。
たどり着いた先は、住宅街だった。
そして僕の目前には、スーツ姿の男の人がいる。彼は建物の影に隠れているが、一軒の家の入り口を見てる様だ。
僕は、彼の横を通り過ぎ、表通りに出る。
(もうそろそろ……)
道路には、沢山の車が行き交い音をあげて通り過ぎる。人々は話ながらも、その速度は落ちることはない、しかし信号が変わると皆、揃ったように動きを止めた。
その時、僕の伝える『虫の知らせ』の受取人が、自転車に乗ってやって来きて、動きを止める。
僕は、その警察官のお兄さんに、近づき右手を掴む――。
「貴殿に謹んで申し上げまする。そこ横道に、怪しい男の人がいるので捕まえてください」
そうすると彼は、僕の指差す方向を見つめ自転車を降りる。警察官のお兄さんは、ゆっくりと僕のもと来た道を進むと、スーツ姿の男の人を見つけた。
スーツの男の人は、視線の先にあった家から出て、裏庭に向かうおばあちゃんと、入れ替わりにその家の扉を開けまさに入ろうとしている所だった。
警察官のお兄さんは、すぐに誰かに連絡すると、おばあさんに静かに声をかけ、安全な所まで移動させた。
しばらくすると警察官が、何人か集まり家をとり囲む。
そして出てきたスーツの男の人は、あっけなく捕まり、僕は家に帰る事が出来た。
家に帰ると、キャットタワーの前に椅子を置いて、あずき先輩に声をかけた。
「あずき先輩……昨日はごめんなさい。そして猫のおやつありがとう」
そう言うとあずき先輩は、細目を開けてこっちを見てゆっくり「ミャアーオ」と鳴いた。
「あずき先輩、撫でていい?」
そう言って返事を、待たずに撫でた。
「あずき先輩、ふあふあ、素敵――!」
そう言って、何度も撫でたらガブッてやられた。いつもの通り痛くないけど、すこし心が、へこんだ。
あずき先輩は、向こうを向いちゃうし、踏んだり蹴ったりだ――。
……寝よう。
次の日、起きたらあずき先輩が、隣に寝てたので、また安心して……また寝た。
おわり
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ずっと、ずっと、いつまでも
JEDI_tkms1984
児童書・童話
レン
ゴールデンレトリバーの男の子
ママとパパといっしょにくらしている
ある日、ママが言った
「もうすぐレンに妹ができるのよ」
レンはとてもよろこんだ
だけど……
GREATEST BOONS+
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
あさはんのゆげ
深水千世
児童書・童話
【映画化】私を笑顔にするのも泣かせるのも『あさはん』と彼でした。
7月2日公開オムニバス映画『全員、片想い』の中の一遍『あさはんのゆげ』原案作品。
千葉雄大さん・清水富美加さんW主演、監督・脚本は山岸聖太さん。
彼は夏時雨の日にやって来た。
猫と画材と糠床を抱え、かつて暮らした群馬県の祖母の家に。
食べることがないとわかっていても朝食を用意する彼。
彼が救いたかったものは。この家に戻ってきた理由は。少女の心の行方は。
彼と過ごしたひと夏の日々が輝きだす。
FMヨコハマ『アナタの恋、映画化します。』受賞作品。
エブリスタにて公開していた作品です。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる