魔王がやって来たので

もち雪

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さよなら海の見える街

ルナの強さ

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 僕はゲストルームを彷徨っていた。

 先程、シルエットに対する返答をあやまった僕であったが、そこで落ちこんでいるわけにもいかず、パーティー内の連絡に励む。

 そしてルナとスフィンクスを庭で見つけた。

 スフィンクスは餌を食べていた。

 ルナはすその長い白い聖女様の衣装で椅子の背を体の横にし、それに頬杖つきつつ、椅子の背に彼女の体重を預け、スフィンクスを見ている。

 彼女のその姿は、美しい宗教画の様であった。

 しかしその美しい世界は、僕の登場で現実へ戻る。

 食べていたスフィンクスが、僕の気配を察知し顔を上げ、ルナが僕の存在に気づいた。

「ハヤト?」

「スフィンクスの事で、何か気になる事があるの?」

「そうですね……」と、ルナは、言うと立ち上がる。

 ゆっくりスフィンクスのもとまで近づくと、スフィンクスの背を撫でる。

「わたくし達はもうすぐ旅だつのだけど、小さなスフィンクスを連れて行っていいのでしょうか? と、思う反面……けれど、わたくしをマスターと慕うこの子を置いていく事も出来ない。そもそも何故、スフィンクスが、わたくしをマスターに選んだのでしょうか?」

「強くてかっこいいからって言ってるのに」

 スフィンクスは顔をあげて、少し拗ねた様に言った。

「ごめんなさい、スフィンクス。あなたの言っている強さにらついて、私自身思い至らなくて……」

 ルナは、スフィンクスを困った様に見つめる。

「僕から思い当たるルナの強さと言うか、危うさと言えば、今、ルナはスフィンクスの背を撫でているでしょう? 僕なら肉食獣が何か食べている時には、その子には触らない。親犬のご飯皿に、顔を突っ込んで噛まれてしまった子犬を知っているし……」

「えっ?、でも、スフィンクスはそんな事をしませんよ。目を見ればわかります」

「僕にはそう言う技術はないです。僕もやはりスフィンクスの事はこうやって触れますが、僕とこの子のために警戒は怠りません。だからルナ、その技術……違うなぁ。君の博愛の心に、スフィンクスは強さを見ているのかも?」

「そうなんですか? スフィンクス」

 彼女は食べ終わり、ポンポンのお腹でねっころがらっているスフィンクスに聞いた。

「言ってる事がむずかしくて、わからない。マスターが、あぶない場所に行くならついて行ってあげる」

「でも、危険ですよ?」

「じゃーマスターだけ、連れて逃げてあげる。いいでしょうね? ぱぱ」

「いいけど、ギリギリ勝てる戦いもあるだろうから、そんな時は、ルナを連れて逃げないでね」

「それはむずかしいかも?」

 そう言ってスフィンクスは、ルナの後ろに隠れてしまった。僕とルナは、そこで少し顔を見合わせてわらった。

「そうだ! 僕はお知らせに来たのだった。もうすぐ、この街を立つ事になったから! この後は、ギルドクエストの関係でたぶん陸上を北上するからまだまだ、街を通るからスフィンクスの事はともかく、この街でしなければならない事があれば忘れずにね」

「えっ、それは大変です?!」

 それを聞き彼女は慌てて立ち上がり、僕とスフィンクスはそんな彼女を見つめた。

「教会で子供達とクッキー作りや刺繍をお教える約束でした。いろいろ準備をしなくては! ハヤト、そんなわけですので、失礼します!」と、ルナは慌てて立ち上がる。

「旅の準備確認を、夕食にするところから始まるから、そんなに慌てないでいいよ」

「はい――」
 って、言う割には、彼女は慌てて、その後ろを追いかけるスフィンクスも「大変! 大変!」と、言って行ってしまった。

 彼女はこの街の人々のためにどれくらいの約束を自らしたのか僕には予想も出来ない……。

 やはり、そういう面で見ても彼女には敵わないなっと思い、ふたたび連絡の仕事に僕は戻る

     つづく

 
 
 

 

 
 



























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