魔王がやって来たので

もち雪

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攻略!謎の塔

階層攻略 その2

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 塔の攻略も5階層へやって来た。もう4分の1はクリアーしたのである。

 そして今、僕達を迎え撃つべく待ち構えているのは、『マンドラゴラ』。

 凄く植わっているのである。

「どうしますか? これ?」

「おみあげにしたいなら帰りのどうぞ。ルナに頼めば、1回位蘇生してくれるでしょう。余力があればですが……」

「ルイス、命を無駄に使ってはいけません。蘇生魔法があるなしに、命は1度切りのと思い、生きるから人は美しいのです」

「私が軽率でした。ルナ様、ハヤトも浅はかな僕を許してくださいますか?」

「もちろんです。ルイス」

「ありがとうございます。では、次の階層に参りましょう」

 ――ルイス、根が真面目なだけに演技なのか、真意なのか本当にわからない……。とりあえず、次の層へ行くか。

 6階層、コケッコォ――――――! 怖い顔で、お馴染み、コカトリス!

 頭が、雄鶏で、尻尾がヘビ。

 「ミッシェル、頭が雄鶏♂の鶏で、固定な場合は蛇が本体なのでは?」

「何で、僕に聞くんですか?」

「そこに居たから」

 ミッシェルはメモを取りながら、明らかに不機嫌な顔になった。

「フィーナさん……すみません。貴方の恋人を、引き取って貰えませんか? コカトリスの本体がどちらか気になる様なのですが、僕は今、忙しいので」

 魔王の部下としてコカトリスの生態に詳しいだろうと、前方で話していたフィーナが、人をかきわけやって来た。

「ハヤト、忙しそうにしている人を邪魔しては駄目です。それからミッシェル手が足りない様なら手伝いましょうか?」

 彼女は、腰を曲げ膝に手を付きメモを、取っているミッシェルに話しかける。うちの彼女マジ天使。(魔王の部下だが……)

「いえ、結構です。これぐらいやれます」

「はい、わかりました」

「ありがとうございます……」

 ――強気だったミッシェルにデレた……。うん……。と言うか、今は戦闘を真け……。いや、適材適所か……。

「じゃ前に行こうか……」

「はい」

 僕とフィーナが前に行くと……。

 ぬいぬいが、僕に布を手渡す。

「これで、目を覆え。コカトリスは見た者を石化させる。機動力があるお前が槍で、攻撃範囲の大きい技である程度、敵を引き付ける。仕上げの合図で、お前も目隠しを取り目の前の敵を攻撃。残りの魔物の初手は、塔ないの自分に定められた場所にいる敵を個別撃破する事にきまった。ルナとシルエット以外でパーティーメンバーが出る。心配するなルナは、石化解除も出来る。駄目ならシルエットが、ルナを連れて逃げてギルドに報告する。」

「なんだか、決死戦ですね」

「まぁ、ダンジョンはいつもそんなもんだ」

 攻撃する範囲を現在いる立ち位置で、階段上段が、階段から奥側へそして、下段は階段付近とそれぞれ確認し合う。個体数が減れば、ある程度はルナの祝福を受けられるようある程度階段側で、戦うがジリ貧になった場合は敗走は禁止された。ルナまで巻き込む事になり彼女の像が砕かれる事態になれば、もう我々に生存の可能性が無くなってしまう為だ。

 全員に伝達確認が終わると、ぬいぬいがシルエットに「一人二人の見殺しは構わない、なんとしてもルナの安全だけは確保してくれ」

「フィーナに、何かあれば魔王に何を言われるかわからないけど、戦闘の楽しみ知るにはそう言う無茶もたまにはしなくちゃね。いいわ。ルナの事は守ってあげる。安心して逝くといいわ」

「まぁ、そうならない様に立てた策だ」

 と、ぬいぬいは肩をすくめる。

「すべて作戦前の準備は、行われた。楽しんで行ってこう」

 下の階層でふたたび念入りに準備運動をした僕は、ホールの広さの把握と、ある程度の敵の密度を見極めると、目隠しをして槍を手にたずさえる。心臓の音がうるさく。粉をはたいたはずの手から汗を感じる。

 誰か僕の腕を掴む。

 僕は彼女に、振り返り「行って来る」と少し無理して笑顔で言った。
 そして僕の足は走りだす。

「ヴヲオォォ――――――――――!!」
 
 声に釣られて集まったコカトリスがウルセェェ!! 耳元で、コケコェ!?

 槍、全体に炎の魔法を込め、力いっぱいに振りまわす。力を込めているのに、複数のコカトリスに当たったのかわからないが槍の重さが半端なく重い。

 バサァワァと鳥の羽音はするわ、太ももは蛇に噛まれるは、なんか背中が徐々に冷たくなってくる。最悪だった。

「主様、あんなに血が出てる、まだ次の命令はでないの?」

 ウンデーネの声。

「まだ、もう少し」フィーナの声。

 その声と共に横に移動し、もう最後の力を振り絞り四方八某に槍を振りまわす。炎で鶏を丸焼きにしているはず、あぁぁ……今回は槍なのに全然刺せず、力技か……と思いながら、足に力が入らない様になりそのまま倒れた。

 「よし、いけ!いけ!いけ!」

 ぬいぬいの声とウンデーネの水色の髪が見えた。

 ……そして意識はついえた。

             ☆


 僕は暗闇の中いる。誰かが言う「死んでしまうとは「死んでませんが!?」

 目を開けると、ルナが居た。そして僕の手を握り、ウンデーネが泣いている。僕は、壁にもたれかかり、二人に挟まれていた。
 
「もう、目覚めていたのですね。大丈夫です。回復の魔法で通常通り動けるはずです。皆さんに知らせれ来ます」

 そう言ってルナは、上の階のみんなのもとへと向かった。僕は横で泣いているウンデーネを見る。

「ウンデーネ、ちゃんと戦った?」

「でも、主様からいっぱい血が出て来たから……」

 彼女の涙は、次から次へと枯れる事は無い。

「でも、今度は頑張ってよ。僕は無駄死にはしたく無いからさ。そうしたら僕が痛いのも君のおかげで早く終わる。ねっ。死んでも生きかえるから、ルナが居ればだけど、その為に頑張って!」

「わかった……」そう言った。彼女は少し納得していない顔だった。

「ハヤト……」

 フィーナは、服には痛々し血の跡が付いている。

「フィーナ……怪我したのか……」

「大丈夫です、ルナがすぐに治してくれました。今はこんない元気です」

 彼女は両手で力こぶを作るマネをす。痛々しくって見てられなかった。

 でも、僕が彼女をここへ呼んだとも言える。

 そして彼女も多分僕と反対の事を思っている。

「ルナが居て本当によかった。」

 僕は、彼女の腕の服のほころびを直す様に彼女の腕を触る。

 こうしても彼女の傷付いた事実と、もう傷が癒えている事は、わかっていたが僕は彼女に何かしてあげたかった。

「服が少しマシになりましたね。じゃ……行きましょう。7階層は、ミノタウロスですよ」

 彼女は少し笑い。そして闘志のこもった目をし、僕に手を差し出す。

 彼女も僕もこの道を選んだ。異世界だから、仲間がいてくれるから、僕達は血を流しならも前へ進む事が出来る。

        つづく
 
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