魔王がやって来たので

もち雪

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旅立った僕達

デートでの占い屋

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 コーヒーショップは、レコードの様な音源が使われている。

 ところで、お酒を飲むパプの前を歩いていると少し楽しげな曲がかかっているが、僕の知っているコーヒーショップは落ち着いている感じの曲が流れている。

「コーヒー頼まれていたから、ちょっと注文してくる」

 一段高い位置のテーブルに座って居たテーブルの僕と下の段のカウンターに座って居る客と、ソーファーのあるテーブルにいると客とが目が合った。

 ――なるほど、この曲だと聞こえたかもしれない……。

 僕は魔物討伐で培った平常心を持って、カウンターに行き最近使っている持ち帰り用のコーヒーコップを差し出し、「コーヒー2つお願いします」と注文し、自分の席へと帰った。

 さすがマスター素知らぬ振りが、名男優並みだった。

 僕は席に戻ると机へうつ伏になりしばらく起き上がれないほどの、ショックがあったが耐えた。

 耐え抜いて、出来たコーヒーを受け取り、なるだけフィーナを窓側に立たせ、会計前にルイス達へのコーヒーを届けて貰った。

 迎えにゲーストハウスへ戻ると、彼女とは玄関であった。

「二人にコーヒー届けて来ましたよ。でも、さっきなんだか様子がおかしかったですけど、どうかしましたか?」

 ゲーストハウスから出て来た彼女は、そう言った。

「僕達のコーヒーショップのやり取りが、結構聞こえてたみたいで……」

「あ……」
 体の後ろに両手を組みながら、彼女は『あぁそんな事ですか』という感じの、リアクションをする。

「私たちは1つの恋や出会いに、一生をかけてしまうので、そういう事はあまり気にしないんですよ。さすがに秘密にすべき事は守りますが、告白や好きって思いを伝えるか、伝えないかによって自分の人生が、生きるか死ぬかそこで決まっちゃいますからね。まぁ好きになるべき相手を間違えないからこそですが……」

「そうなのか……でも、そうかも……。 君の勇気が無ければ、僕達は始まりについては、少しあやしくなる恐れがあるね」

「そうかもしれませんが……、どこに居てもハヤトは私を探してくれる。ですよね?」

 彼女は僕を、ワルツに誘う様に手を差し出す。

「もちろん!」

 僕は、彼女の手を取り、ふたたびゲストハウスから外へと歩き出した。

 港町ソイルドソレルは、どこも秋の装いで黄色や茶色の葉が道を染める。

 馬車の通る街なので、少し見苦しい部分もあるが、それでもゲストハウスのあるメイン通りの街の装いは、どこもお洒落で、とてもゆっくり流れている様に思う。

「ハヤト、占いしませんか?」

 彼女の指さした先、若者向けの店が並ぶ通りの中にひっそりとそのお店はあった。水晶の看板が飾られ、店の入り口ひっそりと『占い』とランチ1食分位の値段が書かれていた。

「よし、行こう」

 濃い紫のカーテンの先は、3つの部屋に別れ、水晶占い、星占い、タロット占いの看板が3つの入り口の上にかけられている。

「ここにしましょう」

 彼女は子どもの様に目を輝かせて、部屋に入る彼女はどんな占いをするのだろうか? 部屋に入ると少し暗めの作りになっていて、置かれた水晶の奥には、パン屋の奥さんと言う感じの女性が座って居た。

「こんにちは、おふたりさん、どんな占いがお望みかしら? 恋人同士なら相性占いや結婚に最適な季節や日時もいいかかしら? もしかしたら新居に最適な土地もいいだろうし、間取りを見てみるもやっているわ。どうします?」

「ハヤト、ここは私が決めてもいいですか? 決めかねている事があって……」
 
 彼女は、僕の方をガバッと向いてそう言った。僕とは本気度が違った……。

「どうぞ」
 
 ――彼女は、何を占うのだろうか?……。今さら相性占いは無いよな? 

「私達、今は一緒に住んでいますが……。私の事情もいろいろあって、将来的にどこで住んだらいいのか迷っていて、それについて占って欲しいのです。後、結婚式も私の家は古い家なので、代々の決まりがあるのですけど、それを踏まえてお聞きしたいです」

 彼女の目は真剣で、占い師さんも「わかったわ! 私に任せておいて!」二人は、やる気に満ち満ちている。

 だが……、水晶を見つめた占い師の額にはしわが寄り、由々しき事態事態を指示していた。

「う……ん、ごめんなさい……占えないわ……。お金はいらないけど、このままだと心配よね……」

「「はい!」」ふたりは、ハモった。

「貴方達の相性自体は断然いいわ。凄いっていっていい……そのせいでいろいろな輝きも集まるだろうけど……。でも、貴方達の未来を占おうとすると、集まる星の中に禍々しいと言うか、海!そう海の嵐の様な波乱を呼ぶ暗黒の明星みょうじょうと、言うか、言っては悪いけど魔王の様な存在が、貴方達の未来にあって……。彼氏さんも光の星だけど、暗黒の明星に隣にも光る星があるよね。そして彼女の星じゃない月ね、光を受けて綺麗に輝く名月。その先の未来を占うには、暗黒の明星のせいで全然だめ。悪くはないけど、私程度の力では占い的にお手上げね」

「あはは……お金払います。知り合いそんな感じの王族みたいな人いるから、その人かな……なんて、はは」

「あら、そうなの? じゃ……魔王なんて言っちゃって、私ったら」

 そうして僕はお金を出すと言ったフィーナに、今度のデートでなんか飲み物奢ってくれればいいからと言って、僕がお金を払った。

 占いのお店はを出たフィーナは、珍しく怒っていて、「もぅ――魔王様は」、と言って子どもがお父さんに怒るみたいに頬を膨らませ、理不尽に怒っていた。

「占いはともかく。最初、住むところは君の好きな所でいいよ。僕もいろいろ住んでみたいからさ」

 せっかく異世界で、僕は強くなりつつある。やはりいろいろな所へ足をのばして僕と彼女は行くのだ。

              つづく
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