魔王がやって来たので

もち雪

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旅立った僕達

スリの少年

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 僕達は郊外近くの自警団の事務所で降ろされるとギルドの受付嬢のヴァリスさんの案内でゲストハウスへ行き、荷物も玄関前に置きざりで、もう帰ると言うヴァリスさんと一緒にこの街のギルド支部へと向かっていた。

 ソイルドソレルの街を歩く、ワイシャツと灰色のズボンの僕と、燕尾服のルイス、ギルドの赤いくせ毛で、制服姿の受付担当にヴァリスさん。

 この街は商業が盛んの様で、ホーエンツォレルン城より様々な店が並ん賑わっているように見える。石畳の道を馬車がゆっくりした速度ではあるが、ひっきりなしに走る。歩道と車道の区別の無い道を僕は恐々歩いていた。

「どうですか? この国は?」

 ギルドの受付で働く女性特有の、人なっこい笑いをヴァリスさんも浮かべる。

「ホーエンツォレルン城より、都会的で人通りが多い事の驚きました」

「そう何ですね。私はこの街から出て事がないのであまりピンときませんが、港町なので、伝統的なホーエンツォレルン城の城下町よりその面で賑わっているかもしれません」

 彼女がそう言った時、僕の腰にドーン衝撃を感じた。

「あっごめんよ」

 小学6年位の少年が、僕の腰に当たってしまったようだ。気を付けて、僕は彼を支えるとその少年は、「ありがと――」と言って駆けて行った。

「あ!!」

「どうしましたか?」「勇者様どうかしましたか?」

「あの子は、スリだった様でこっそり取り返したら、あの子の財布まで取っちゃっいました!?」

 僕の手には、僕の財布と上等な皮財布が、もう1つ。

 「これはどう見ても、彼の財布ではなさそうですね……」

「そのようだね……。僕はあの子を追いかけるからふたりは自警団に、その財布を届けておいて」

 と言って僕の投げた、誰かの財布は弧を描いて二人の間に落ちそうになるのを、ルイスが慌てて掴む。

 これでルイスの使う鋼の糸が、僕をがんじがらめにし僕を拘束する事はなくなった。

 細い植物の蔓を付けた少年を追うと、その蔦は暗がりの路地へと入って行っている。

「金がないのは、どういう事だ!?」今、一歩遅かった様で、誰かの怒号と、ともに少年が後ろに倒れた。彼をどうにか受け止めると、彼の前に立ちふさがる。

「何だお前は?」

 その言葉の最後を聞き終わる、声の主を蔦によって拘束した。

 ――これはが一番安全だが、これでいいのだろうか?

 「兄ちゃん、何やっているんだよ!? こいつはここら辺のをアジトにしてる、『大蛇の牙』の一員って知らないのかよ!?」

「それは知らなった……」

 事態としてあまり良くなかったようだが仕方ない判断と言ってもいいと思うが――。

 これでは勇者パーティーと街の荒くれ者の抗争が、始まってしまうかもしれない……
  

               つづく
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