魔王がやって来たので

もち雪

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旅立った僕達

底なし沼の魔物

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 城下町の魔法学校側の門より少し離れて入りところに荷馬車が待っていた。それに乗り込みしばらくすると、城下町の城門の壁が遠くに小さくなっていく。

 僕が畑に行くために毎日通った道は、今ではもうかけがえのない思い出の道になっている事を知る。

 仲間の顔は、喜びを浮かべるもの、感傷的に物思いにふけるものなどさまざまだ。

 僕は、念の為三枚買っていたマントを、底なし沼の泥に汚されないようにしっかり畳んで鞄にしまった。

「ハヤトさんなんかそういうところが、豆ですよね」

 後ろで見ていたミッシェルが、感心するように言う。

「まぁ、庶民だからね」

「そんなもんですかね……」

 そんな会話をした後は、底なし沼の戦闘方法の打ち合わせ、それが終わると後方の安全を見ていたらすぐも底なし沼手手前の、アリの巣エリアのあった場所についた。

 計画を再度詰め直す。

「では、これから底なし沼の作戦行きます。魔物は、ほぼひじから指先まで魔物である。戦場は底なし沼である事から魔法系を使い引き込まれる事を防止する。先発に、僕、ミッシェル。ぬいぬいとルナは、状況を見て参戦してください。以上ですが、意見有りますか?」

 返事はない。

「主様、頑張って!」ウンデーネは力を込めて応援してくれる。

「じゃーウンデーネもついて来てよ、水中で息が出来るんだし」

「泥水は、無理」と言って胸の前で手を交差させ、拒否と言うかバイバイされた。

 ウンデーネちゃん……。

 フィーナとは、目と目が合い。彼女に向かって頷くと、荷馬車を飛び降り目的地となる地まで少しだけ歩く。
 
 底なし沼へともっと近づいてみる。近寄って見てみると、ただの水溜まりもあるだろうが、良くない事に底なし沼と思われる沼が、遠くまで続いていた。

 数には、加減があるだろう。いっその事ここを通らなくても良くない? しかしそんなわけにもいかず、目の前に沼から魔法攻撃の電気を通していく。

「ミッシェル、僕から行くよ」

「はい、離れました」
 離れたところから、指から調整しつつ電気を流すと水面は、ぐつぐつ、バシャバシャと音をたてる。

 そのまま魔法の出力をあげると、沼自体がウネウネと動いている。

「ハヤトさん……」

「なんかやばい通り越してグロイ……」

 次々感電した、泥の塊が表面を覆いつくす。たぶん指に擬態しているだけだろうが、指先を見るとそれでもギョっとする、そして沼の表面は山盛りになった魔物が、隙のないほど浮かんでいる。

 それの先もただの水溜まりかどうか確認しつつ電気を適度に流し、数をこなしていく。しかし長くやっていると、音によって危険をさっちして、はって逃げるものや、服を掴んで強引に沼を引きづり込もうとするものもいるしカオスであるので、一度馬車に帰って沼を落ち着かせる事にした。

 馬車に戻る途中の最初の沼で、何人かごそごそしているのが見えた。みんなで、麻袋に魔物をいれている。そしてぬいぬいが少し氷の魔法をかけている様だ。

「お疲れ様でした、調子どうですか?」

「まだまだ、終わらない。引きこもうとして来たり、音で逃げてしまったりするので一度帰ってきたよ」

「では、おれとオリエラで行ってくる」
 僕とルイスの会話を聞いていた、ぬいぬいがそう宣言をする。

「師匠待ってました」

 二人は軽い足取りで、底なし沼を駆けて行く。落ちないだろうか……。

「ところで、ルイスこんな大量の魔物どうするの?」

 いつもの手袋を取り、作業を手伝っているルイスに声をかけると――。

「すぐそこの色とりどりの菜の花畑の村と、次の私達が泊まる宿へ持って行き、宿代替わりにでもして貰う為集めています。処理して乾燥させると、一部の人間に人気のある陶器の様な物になるのですが……。中身の方は食べてのお楽しみですかね」

 と、怖い事を言う、その時、沼の奥地で、浅黒い雲が広がり次々、沼に落雷を落ちしていく。その少し離れたところに、大きい石の上に乗り、指揮者の様に杖を振るっているぬいぬいが見える。

 その下で、オリエラが炎の軌道描く剣の技で、迫りくる腕を蹴散らしていた。

「あれはないわ……」
 そう、あれはない、ぬいぬい僕とは、格が違い過ぎてなんかしょげる。それにしてもあやって魔法を扱っていると、子ども魔王のようだった。
 


      つづく
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