魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
上 下
137 / 248
旅立った僕達

底なし沼の魔物

しおりを挟む
 城下町の魔法学校側の門より少し離れて入りところに荷馬車が待っていた。それに乗り込みしばらくすると、城下町の城門の壁が遠くに小さくなっていく。

 僕が畑に行くために毎日通った道は、今ではもうかけがえのない思い出の道になっている事を知る。

 仲間の顔は、喜びを浮かべるもの、感傷的に物思いにふけるものなどさまざまだ。

 僕は、念の為三枚買っていたマントを、底なし沼の泥に汚されないようにしっかり畳んで鞄にしまった。

「ハヤトさんなんかそういうところが、豆ですよね」

 後ろで見ていたミッシェルが、感心するように言う。

「まぁ、庶民だからね」

「そんなもんですかね……」

 そんな会話をした後は、底なし沼の戦闘方法の打ち合わせ、それが終わると後方の安全を見ていたらすぐも底なし沼手手前の、アリの巣エリアのあった場所についた。

 計画を再度詰め直す。

「では、これから底なし沼の作戦行きます。魔物は、ほぼひじから指先まで魔物である。戦場は底なし沼である事から魔法系を使い引き込まれる事を防止する。先発に、僕、ミッシェル。ぬいぬいとルナは、状況を見て参戦してください。以上ですが、意見有りますか?」

 返事はない。

「主様、頑張って!」ウンデーネは力を込めて応援してくれる。

「じゃーウンデーネもついて来てよ、水中で息が出来るんだし」

「泥水は、無理」と言って胸の前で手を交差させ、拒否と言うかバイバイされた。

 ウンデーネちゃん……。

 フィーナとは、目と目が合い。彼女に向かって頷くと、荷馬車を飛び降り目的地となる地まで少しだけ歩く。
 
 底なし沼へともっと近づいてみる。近寄って見てみると、ただの水溜まりもあるだろうが、良くない事に底なし沼と思われる沼が、遠くまで続いていた。

 数には、加減があるだろう。いっその事ここを通らなくても良くない? しかしそんなわけにもいかず、目の前に沼から魔法攻撃の電気を通していく。

「ミッシェル、僕から行くよ」

「はい、離れました」
 離れたところから、指から調整しつつ電気を流すと水面は、ぐつぐつ、バシャバシャと音をたてる。

 そのまま魔法の出力をあげると、沼自体がウネウネと動いている。

「ハヤトさん……」

「なんかやばい通り越してグロイ……」

 次々感電した、泥の塊が表面を覆いつくす。たぶん指に擬態しているだけだろうが、指先を見るとそれでもギョっとする、そして沼の表面は山盛りになった魔物が、隙のないほど浮かんでいる。

 それの先もただの水溜まりかどうか確認しつつ電気を適度に流し、数をこなしていく。しかし長くやっていると、音によって危険をさっちして、はって逃げるものや、服を掴んで強引に沼を引きづり込もうとするものもいるしカオスであるので、一度馬車に帰って沼を落ち着かせる事にした。

 馬車に戻る途中の最初の沼で、何人かごそごそしているのが見えた。みんなで、麻袋に魔物をいれている。そしてぬいぬいが少し氷の魔法をかけている様だ。

「お疲れ様でした、調子どうですか?」

「まだまだ、終わらない。引きこもうとして来たり、音で逃げてしまったりするので一度帰ってきたよ」

「では、おれとオリエラで行ってくる」
 僕とルイスの会話を聞いていた、ぬいぬいがそう宣言をする。

「師匠待ってました」

 二人は軽い足取りで、底なし沼を駆けて行く。落ちないだろうか……。

「ところで、ルイスこんな大量の魔物どうするの?」

 いつもの手袋を取り、作業を手伝っているルイスに声をかけると――。

「すぐそこの色とりどりの菜の花畑の村と、次の私達が泊まる宿へ持って行き、宿代替わりにでもして貰う為集めています。処理して乾燥させると、一部の人間に人気のある陶器の様な物になるのですが……。中身の方は食べてのお楽しみですかね」

 と、怖い事を言う、その時、沼の奥地で、浅黒い雲が広がり次々、沼に落雷を落ちしていく。その少し離れたところに、大きい石の上に乗り、指揮者の様に杖を振るっているぬいぬいが見える。

 その下で、オリエラが炎の軌道描く剣の技で、迫りくる腕を蹴散らしていた。

「あれはないわ……」
 そう、あれはない、ぬいぬい僕とは、格が違い過ぎてなんかしょげる。それにしてもあやって魔法を扱っていると、子ども魔王のようだった。
 


      つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

愛しているから

七辻ゆゆ
ファンタジー
あなたのために頑張って、処刑した。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

分析能力で旅をする ~転生した理由を探すためにレインは世界を回る

しき
ファンタジー
ある日、目を覚ましたレインは、別世界へ転生していた。 そこで出会った魔女:シェーラの元でこの世界のことを知る。 しかし、この世界へ転生した理由はレイン自身もシェーラもわからず、何故この世界に来てしまったのか、その理由を探す旅に出る。

処理中です...