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それでも少しずつ歩む日々
深夜の1コマ
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真夜中にルイスの部屋をノックする僕。祝賀パーティーについて聞かなければならない事がある。何故なら礼服など持っていないからだ。
そもそも異世界の服装は、たぶん時代的に戦後のヨーロッパあたり。しかしパーティーの恰好のみ懐古主義とかで、女性が凄いドレスを着ている可能性すらあるのだ。
男性服も既製服の燕尾服なんてもってのほかと言う場合さえある。頭に船を乗っける系のカツラが、流行ってたらどうしようと頭がパンクしそうになりながら待つ。
「はい」、と言って扉が開く。
「来ると思ってました」と言うルイス。
今日は髪もいつもと違い無造作ヘアで、白いガウンを着る男ルイス。部屋も通され、ソファに座らされる。
そしてルイスは、一冊の本を机に上から取り、付箋の部分を朗読し始める。
「祝賀パーティーの勇者様ご一行は、それぞれ鎧やローブや着物をまといみんなの前に立ちました。そして頑張って来るよと、一人一人挨拶して回り周りの王様もお妃様もその雄姿を称えました。そうして彼らは街中を通り頑張って来るよと街の人に手を振って街道を歩いて行きました」
そして彼は、もう1つのソファに腰かけ、「だからドレスも、新しいタキシードもいりません。なんなら旅支度のお金も、少し多めに出ますから大丈夫です」
そう彼は真っすぐな目で僕を見る。そして可笑しそうにクックククと声を殺して笑うのでした。どういう事?
「ルイス、なんか楽しい事あった?」
「あぁ、失礼しました。ハヤトは、魔王の幹部やら、魔族やら大精霊を普通にパーティメンバーに入れる規格外なところがあるのに、それでも常識的であろうとしてそう言うところがチグハグでおかしいですね」
「そんなに?」
「そんなにです」
ルイスは、今は、オフだからなのか彼の目は猫の目の様にコロコロと変わる。笑っている目から、蝋燭が静かに灯り揺れている様な目に。
「ハヤトも考えてみてください。沈黙の魔王ヤーグが、祝賀会を嫌がっていたり、ドレスコードを気にする姿を、そして彼に頼られ自分の姿を……」
「魔王は、ドレスコードは気にして、向こうの世界で、異国の旅人を装っていたからな……」
「何やってんですか」、そう言いって声を出して笑う。
普段ない感じ。
「服装の事は理解出来たありがとう。そしてなんとなくルイスも、ワクワクしているのはわかった。邪魔したね。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
そう言って僕が彼の部屋から出ると、彼の愉快そうな笑い声が響いた。楽しそうで何より。
そうすると紺のパジャマを着た、ミッシェルが出て来て「どうしたんでしょう、ルイスさんが……」そう心配しているので……。
「ルイスは、夜風に酔ったようだよ」
「はぁ? 何言ってるんですか? ハヤトさん向こうの世界のジョークですか?」
ミッシェルのそういう時のものいいは以前と変わらず厳しい。もしかてリーダーとして尊敬されてない?
「う――ん、まぁそんなとこ、ところで僕達は祝賀パーティー普段着でいいって知ってた?」
「そうですね。まぁ――勇者に、連絡する側の事務一同としては、変に文句をつけて切りかかられても、て、ところは意識的にありそう言う事になっていますが……」
そう言うとミッシェルは、僕の全身を上から下まで見る。
「でも、そうですね。ハヤトさん、マント買いましょう! マント! あれを付けると付けないとでは、子どもからの受けが違いますから。やはり勇者が勇者らしい恰好をするといろいろな経済的な数値がプラスになるんで、お勧めですよ」
「わかったけど、マントはどこで買うのものなの?」
「兵士練習場の事務所で売ってますよ。在庫は僕が居た頃は在庫は5種類だったかな?」
「じゃあ、明日除いて見るかな……」
ミッシェルは、廊下の絨毯の模様を見ながら僕に言う。
「ハヤトさん魔王は沈黙し、今もなお魔物はいますが、僕達、人間側には対抗するだけのすべがあります。人は早くに亡くなりますが、それを継ぐ新しい志にある若者がすぐにそこに座ります。真の老いの恐怖を知る者は一握りの謁見階級のみで彼らは全てを制御しますが、ギルドと言うまだ死んでいない若い者達が、簡単に力を持てる勢力となり、それを阻み拮抗している。その中で皆は、絶対的な正義を勇者を求め、それを貴方に見ているだけで、貴方の事は誰も見ていませんから死なない様に頑張りましょう」
「そうですね。おおいに私利私欲に走りますが、一緒に頑張りましょう」
「私利私欲なら、犯罪にならない範囲で絡ませて貰えば大丈夫頑張りましょう! そう言われるとやる気がでますね! 今日はいい夢が見れそうですおやすみなさい」
いや、お金に関わる私利私欲に話じゃないから……。恋愛的な話だから……。
人は旅立ちの前はハイテンション……。
つづく
そもそも異世界の服装は、たぶん時代的に戦後のヨーロッパあたり。しかしパーティーの恰好のみ懐古主義とかで、女性が凄いドレスを着ている可能性すらあるのだ。
男性服も既製服の燕尾服なんてもってのほかと言う場合さえある。頭に船を乗っける系のカツラが、流行ってたらどうしようと頭がパンクしそうになりながら待つ。
「はい」、と言って扉が開く。
「来ると思ってました」と言うルイス。
今日は髪もいつもと違い無造作ヘアで、白いガウンを着る男ルイス。部屋も通され、ソファに座らされる。
そしてルイスは、一冊の本を机に上から取り、付箋の部分を朗読し始める。
「祝賀パーティーの勇者様ご一行は、それぞれ鎧やローブや着物をまといみんなの前に立ちました。そして頑張って来るよと、一人一人挨拶して回り周りの王様もお妃様もその雄姿を称えました。そうして彼らは街中を通り頑張って来るよと街の人に手を振って街道を歩いて行きました」
そして彼は、もう1つのソファに腰かけ、「だからドレスも、新しいタキシードもいりません。なんなら旅支度のお金も、少し多めに出ますから大丈夫です」
そう彼は真っすぐな目で僕を見る。そして可笑しそうにクックククと声を殺して笑うのでした。どういう事?
「ルイス、なんか楽しい事あった?」
「あぁ、失礼しました。ハヤトは、魔王の幹部やら、魔族やら大精霊を普通にパーティメンバーに入れる規格外なところがあるのに、それでも常識的であろうとしてそう言うところがチグハグでおかしいですね」
「そんなに?」
「そんなにです」
ルイスは、今は、オフだからなのか彼の目は猫の目の様にコロコロと変わる。笑っている目から、蝋燭が静かに灯り揺れている様な目に。
「ハヤトも考えてみてください。沈黙の魔王ヤーグが、祝賀会を嫌がっていたり、ドレスコードを気にする姿を、そして彼に頼られ自分の姿を……」
「魔王は、ドレスコードは気にして、向こうの世界で、異国の旅人を装っていたからな……」
「何やってんですか」、そう言いって声を出して笑う。
普段ない感じ。
「服装の事は理解出来たありがとう。そしてなんとなくルイスも、ワクワクしているのはわかった。邪魔したね。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
そう言って僕が彼の部屋から出ると、彼の愉快そうな笑い声が響いた。楽しそうで何より。
そうすると紺のパジャマを着た、ミッシェルが出て来て「どうしたんでしょう、ルイスさんが……」そう心配しているので……。
「ルイスは、夜風に酔ったようだよ」
「はぁ? 何言ってるんですか? ハヤトさん向こうの世界のジョークですか?」
ミッシェルのそういう時のものいいは以前と変わらず厳しい。もしかてリーダーとして尊敬されてない?
「う――ん、まぁそんなとこ、ところで僕達は祝賀パーティー普段着でいいって知ってた?」
「そうですね。まぁ――勇者に、連絡する側の事務一同としては、変に文句をつけて切りかかられても、て、ところは意識的にありそう言う事になっていますが……」
そう言うとミッシェルは、僕の全身を上から下まで見る。
「でも、そうですね。ハヤトさん、マント買いましょう! マント! あれを付けると付けないとでは、子どもからの受けが違いますから。やはり勇者が勇者らしい恰好をするといろいろな経済的な数値がプラスになるんで、お勧めですよ」
「わかったけど、マントはどこで買うのものなの?」
「兵士練習場の事務所で売ってますよ。在庫は僕が居た頃は在庫は5種類だったかな?」
「じゃあ、明日除いて見るかな……」
ミッシェルは、廊下の絨毯の模様を見ながら僕に言う。
「ハヤトさん魔王は沈黙し、今もなお魔物はいますが、僕達、人間側には対抗するだけのすべがあります。人は早くに亡くなりますが、それを継ぐ新しい志にある若者がすぐにそこに座ります。真の老いの恐怖を知る者は一握りの謁見階級のみで彼らは全てを制御しますが、ギルドと言うまだ死んでいない若い者達が、簡単に力を持てる勢力となり、それを阻み拮抗している。その中で皆は、絶対的な正義を勇者を求め、それを貴方に見ているだけで、貴方の事は誰も見ていませんから死なない様に頑張りましょう」
「そうですね。おおいに私利私欲に走りますが、一緒に頑張りましょう」
「私利私欲なら、犯罪にならない範囲で絡ませて貰えば大丈夫頑張りましょう! そう言われるとやる気がでますね! 今日はいい夢が見れそうですおやすみなさい」
いや、お金に関わる私利私欲に話じゃないから……。恋愛的な話だから……。
人は旅立ちの前はハイテンション……。
つづく
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