魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
上 下
124 / 251
それでも少しずつ歩む日々

ぬいぬいの旅の同行の知らせと、ウンディーネ

しおりを挟む
 重々しい空気の中ぬいぬい言葉を発した。

「ハヤト……どういう事だ?」

 わかる、いにしえの血族が、引っ掻き回すだけ、引っ掻き回して消えたなら皆そう思うだろう。

「たぶん、オリエラの覚悟を見たかったのと、そしてオリエラの答えに、彼は彼なりに満足し……そして忙しい身なので僕に任せて退場したんだと思います」

「なんだと!?」目を丸くするぬいぬい。その気持ちはわかる。

「ルイスは、誰にもあの物言いなのかな?」

 オリエラは、可笑しそうに笑っている。

「たぶん、相手を見極めて、気を許した相手なら誰でも……」

「うそ、可笑しい、彼は昔話の英雄の一族なのに」

 オリエラは、お腹を抱えて笑っている。さすが端が転んでも笑う年頃。

「知らない人の前では、完璧な英雄の末裔なので、知り合いの前ではそれを辞めているのかもしれません。 そしてその分必要な仕事とをこなす。本当変わった執事ですけど、頼りになります……ます?」

「そんなのは知らん俺に聞いて来るな」
 ぬいぬいは、少し僕らの関係性に呆れているようだ。

「まぁそうかも?……私もわかる気がする。王族とか勇者とかやっていると肩こるよね」

「その歳でか?」

 ぬいぬいは、いちいちいろいろの所で驚いている。でも、もしかしたらぬいぬいの種族に肩こりとか言う概念は無いのかもしれない? 若そうだし。

「話は、戻るがオリエラが行くと言うならもう止めはしないが、俺にもそんな時期はあったからな……俺も旅に同行する予定だから、足手まといなら必ずそこで連れて帰るがな」

「どうして!? あるとくんはいいの?! あるるさんにちゃんと言った?」

「あるるから言いだした。いつから旅にでるの? ってそうしていろいろ話して、行く事になったよろしくな」

 ぬいぬいは、頭をかきながら、見たまんま少年の照れたような笑顔でいった。

 そして僕はそれを聞き未来を思った。ぬいぬいは、ある意味イケおじ系な性格……うちのパーティー少しハチャメチャな所があるから大丈夫なのだろうか?っと……でも、大丈夫。本人、僕自身が思っているよりはきっとうちのパーティーは、普通のはず取り越し苦労かもしれないと……。

 そうしてみんな静かにお茶を飲み。将来の事に思いをはせるのだった。

 

 その時、外から話声が聞こえる。

「ルイスまだ~~、これ以上待つとおばあちゃんになちゃう――」

「ウンデーネ、貴方、大精霊でしょう? 人間より遙かに長生きの癖に何言ってるんですか」

「でも、主様に早く見せたいから……」

「声も聞こえなくなりましたしいいでしょう。そこの扉をノックしてごらんなさい」

「ノック?」

「ノックも知らないのですか?」

 ルイスは心底呆れた様に言った。僕はその声を聞き危機感を覚えた。これは……駄目だ奴だと……。

 僕は、「失礼します」と、その場から去る。オリエラは楽しそうにクスクスと笑っている声が聞こえたが、ぬいぬいは、どうだろう?

 僕は、早足で扉まで行き、扉をゆっくりあける。

 そこには呆れ顔のルイスと、水色の腰まである髪を、編み込んだウンデーネが立っていた。そしてウンデーネは、僕の顔を見て目を輝かせる。

「じゃ――私は、これで」
 思いもよらない速さで、場を離れようとするルイスと、その腕を何よりもの早さで捕まえてウンデーネ。何、この二人ちょっとこわい。

「二人ともこの髪みて、フィーナも編み込んで貰ったの――。そしてこれ! この前、主様に買っていただいた髪飾りなの」

 そう言って満面の笑みをする、ウンディーネ。敬語仕えて偉いね!

「そうだったんですね。月に女神かと思いましたよ」そう言うルイス。さすがルイスさん! さらっと月の女神なんてでないでしょう。普通。 

 彼は、そこでやっと「では、」と言って去ろうとするが……ウンディーネの胸元にあったはずの彼女の手が、またもやルイスの腕を捉える。

 さすがに信じられないと、いう顔をするルイス……。

 もう許してあげてウンデーネ……。

「ウンデーネは、水の精霊だから……」

 彼女は、モジモジとして愛らしいが、僕もちょっと引いているからウンデーネ……。

「失礼しました。あまりの美しさに動揺してしまって……美しさが水の女神の様でしたので……」

「そんなルイスは言い出過ぎですわ」

 ウンデーネは、頬に手をやり花が咲いたように微笑む。でも、きっとルイスの動揺は、ウンディーネの美しさを見てではない!

「気にいってくれて良かった。ウンディーネにやはりとてもよく似合っているよ」

主様あるじ……ありがとう、オリエラにも見せてくる」

 彼女は、有頂天で、先に進もうとするが「待ってまだ師弟で、話す話もあるから」そう話していると、オリエラが扉に捕まる形で出て来る。

「オリエラ!」

「ウンデーネ、かわいい、ちょっと見ていい」そう言うとオリエラは、ウンディーネの周りをまわる。

「すごく似合ってて素敵、髪が長くてきれいで羨ましいなぁ……」

「そんな嬉しいですわ」

 ウンディーネがくねくねとしている後ろに、ぬいぬいが見えた。彼は真っすぐこちらを見ていたかが、彼は何を思っていたのか知ることは出来なかった。

                 つづく
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...