魔王がやって来たので

もち雪

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それでも少しずつ歩む日々

あぶら菜

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 人生には謎がある。
 
 先ほど、一緒にお店に聞きに行った。紫龍さんとフィーナが、丸い大きなテーブルに、隣同士で座るのはわかる。フィーナは魔王城であのゆるふわ魔王と結構自由なシルエット達の中で接待もこなして来たのだろう。

 でも、フィーナの隣で、ウンデーネなんで隣に座ってんの? おかしくない? ねぇミッシェル?

「ハヤトさん、あぶれちゃったからって真顔で、僕に何やら無言で問いかけるのやめてください」

「まぁ、ハヤトそう言う時はには、おねぇさんがたべさせてあげる。あ――ん」

「いただきます」

 僕は、普通にとりあえずフォークに、口が付かない様には、気を付けて食べた。

 「何これおいしい!」

 フィシュアンドチップスならぬ、チキンアンドチップだった。チキンがとても、ジューシィー過ぎて、思わず口を両手で押さえる。

「シルエット凄く美味しい!」

「アーンの効果よ」
 シルエットは、ウィンクして返事をした。

「そんな魔法なの!? 凄い」

「そんなわけないじぁないですか」そう言った。ルイスは、シルエットのアーンを普通に食べてる。女性に慣れてる感じがするが、ちょっと思考を変えると餌をねだる雛鳥の群れだよな俺ら。

「ここの名産は、油なんですよ。街を追われたマッドサイエンティストの錬金術師が、ここの土壌でもよく育つ様に加工したあぶら菜を、作って油の名産地になったのはいいが……。黄色のあぶら菜畑にある日突然キレて、今ではいろいろな色のあぶら菜を作って他には持ち出し禁止になってます」

 へぇ……、あぶら菜ね。へぇ――。視線はちらちらとフィーナに送る。フィーナは、あぶら菜、いや菜の花の花畑に、興味があるだろうか?

 僕は、菜の花の中を歩く彼女にとても興味があるのだけれど。

「そう言うのは一度観察したいので、食べ終わったら一度見学してきますよ」

 僕は自分の気持ちを隠してそう言った。やはりパーティー内で好きとか嫌いとかそう言う気持ちをうまく表に出す方法がわからない。

ホラーもののカップルが、一番先に襲われるその理由は、誰の目にもわかる様に作られていると思うのだけど、それだけ不快を与えてかねない馬鹿カップルになり、パーティーの解散の危機を迎えるわけにはいかないのだから。

 そんな気持ちを隠しつつ、チキンをほうばり。バターで炒めたほうれん草とコーンを食べる。どれも美味しい。最後に何も入ってない炭酸水を飲んで、見回すと皆だいたい食べ終わった様だ。
 
 僕は、あぶら菜の方へ歩いて行こうとした時、「では、今度は少し内回りを同じように行くぞ!」そう言って紫龍さんは走っていってしまった。

 やはり、残った僕らは顔を見合わせたのち、彼を追いかけて走るのだった。


 馬車に戻った時は、まだ日は高かった。御者の彼が、「どうでしたか?」と聞き僕は、「なかなか大量でした」と、答えると……「へぇ――そんなに魔石取れたんですね」と言われて、やっと微生物くんを思い出しがっりうなだれる。

 その時、ルイスとミッシェルが「こんなものですね」と小袋の中身を見せて来た。袋の量は少ないが、スライムの様なクッションの中に傷1つない涙石が結構入っていた。

 そして馬車に揺られて眠りながら帰る。僕の隣にフィーナが、居てその横にウンデーネ。彼女の花の様なその匂いに包まれながら、揺られる帰り道。

 それは帰り着くまでつづくと思われた。この前まで、考えつかなかった幸せの時間、しかし僕の畑まで着けばほぼ全員で、降りて剪定をし芽や葉を選んでいく。着々と進み晩御飯前には、帰る事が出来たのだった。

     つづく
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