魔王がやって来たので

もち雪

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王の命

正義なんてどこにもない

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 ブラックアウト……お先真っ暗。

 その先に、もっと深い暗闇があり。そこに老人がたたずむ。老人の足元に微かな光。両手を輪にしたくらいの大きさで、僕が、彼のもとに行くと彼は座り込みつつ池を見つめる。

「何が見えるんですか?」

 僕は、後ろで手を組みそこには見知らぬ短剣を握っている。何故か、見なくてもわかる。蜘蛛の絵柄の鞘についた短剣だ。

「我が同胞達の死に逝く姿よ」

「それは、お気の毒に……」

「ほれ、あんな幼子まで殺されおる」

「…………貴方はあの子を弔わないのですか?」

「私には、まだやる事がある」

「あの子をあんな姿のままにしても?」

「そうだ、私は長とあの子の為に、アニス王を打たねばならぬ!」

 彼は激昂し血の涙を流し僕に迫ってくる。いつからか現れた赤い月が、彼に光を当て彼を大きく映し出す。

 そしてわかった僕の持っている短剣は、彼を殺す為の短剣。見も知らぬ老人を……。

 ……………………。

 僕は、老人に剣を抜き鞘を投げ捨て、剣の柄を彼に差し出す。

「これで自害してくれませんか?」

 彼は、僕を見つめ理解出来ないと言う様に、僕を見つめる。

「貴方がアニス王を殺すなら、あの子にとって貴方は罪をなす者だと思うからです。ここで終わるべきです。そうすれば貴方達とたもを分かった何処の子どもは生き残れるかもしれない」

「私にこのまま死ねと言うのか? 、そして長に会えと?!」

「貴方は、もう死んでいるでしょう! 会えるならそれで終わりすればいい。そしてあの子を抱きしめあの子を愛するだけの日々をおくればいい!」

「それは出来ない……」

 月は、雲に隠れて、老人は暗闇の中に消えた……。

「もう……面倒だなぁ……」

「ハヤト!会いたかった」
 フィーナが、僕の前に現れる。

 柔らかそうな銀の髪に狐耳、はにかむ笑顔、僕を見つめる瞳は、金色で星より美しく輝く。
 彼女の腰を抱くと、彼女は僕の頬を触り。
 
「泣いているの?」優しく呟きく。

「もちろん泣いています、会いたかったから」

 彼女の手が、僕の首にまわる。二人の距離が、近くなる。

「主様、その人は誰?」

 僕達の横には、ウンディーネが居て傷ついた目で、僕を見つめている。なんたる悪趣味……。

 僕は、顔を覆って考えると、ドンっと背中に衝撃があり腰が冷たい……。そこには、フィーナが居て……。手には、さっきの短剣が……。

「あっ……もう……」

 背中を触った手が、酷く血に濡れている……。

 知らぬ間に僕の周りから、人が居なくなりふたたび暗転……。忙しいなぁ……。

「すまない……ここで、そのまま死んでくれないか?」

 腰に、手をやりながら振り返ると先程の老人が……。

「死ぬわけないでしょう!?」
 
 僕は、手を見る。僕は座り込む。
 
 ヴゥ――ァ――アァ――!
 
 短剣を引き抜く痛みの中、辺りに僕の声がこだまする、今ので大量の血を失った様だ。

 回復魔法をかける。先程、剣が刺さった状態でこの世界でも、回復する事は出来た。

 だが引き抜いた事で、大量の出血し、回復魔法をしても尚、ギリギリ死線の上踏みとどまる状態で、目の前が朦朧としている……。

 老人は、デコイ、おとりである可能性が高い。

 ある程度出血を抑えたら、魔法を組み立てる。
 炎と細かい風。これが違ってたら後がない……
 
 全ての魔力を使い、短剣を破壊する!!

 短剣は、風と炎の力で、亀裂が入り粉砕された!! 辺りはそのカケラの輝きで、光り輝く。

 僕は、王の間で飛び起きる。

「何故か、急に呪いが……」

 聖女様が僕を見つめる。

「ほうほう、お主、自分で呪いを打ち破ったのだな?」

 日いずる国の巫女様まで……、「あの……僕は、大丈夫なんですか?」

「うむ、心配ない。後は、わらわ達に任すと、良いぞ」

 巫女様が、そう言うので、僕は安心してフィーナの夢を見る為に意識を手放す。今日なら彼女の会える気がする。

  ―― 暗転 ――

     つづく

 
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