魔王がやって来たので

もち雪

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王の命

日いずる国の姫君

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 王の身体は、亡き幻影の呪術師にとらわれている。 

 その為に朝、日が昇る2時間前に、城内の王の間に人々は集められていた。
 
 王の呪い解く為の、『王奪還作戦』が今始まろうとしている。

 けれど前日までの協議の時間にも、聖女と日いずる国の巫女は、現れなかった。

 聖女は、日に日に悪くなる王の体調を回復をする為、巫女は急に決まったこの作戦の為に、台風の多いこの時期に船を出し嵐に巻き込まれていたとの事だ。しかしこの日、僕達は集められ僕の命運は彼女達の能力しだいだろう。いや、もう一名うちのウンディーネも回復役としてこの舞台に上がる事になっている。

 最初に、王の間の扉を開けて入って来たのぬいぬいだった。彼は魔よけのペンダントやら、御神木やらつけられている僕の前まで、やって来て窓辺に座る。

「ぬいぬい、久しぶり」

「お前は、面白い恰好をしているな」

 随分つかれた様な彼だったが、言っている事は、相変わらずだった。

「要点だけ言う」

「わかった」

「お前とお前の恋人をつなぐ絆みたいな、白銀狐しろがねぎつね固有の魔法については、どこを調べても出て来なかった。なので、考え方を変えて臨死状態なってしまった場合、即座にお前をいい感じに凍結する。そうすればお前の恋人も悪くて仮死状態だろう。そうする事によってお前の恋人とその仲間に委ねる事にした。

 もしかしたら彼らの選択によっては、お前の守っている力が消えるかもしれない。そうすればお前が、死ぬ確率はだいぶ高くなる。それでもいいんだな?」

「うん、いいよ。ありがとう約束を守ってくれて。だけど、ただじゃ死なないから、生きぎたなく生きて生還する。絶対!」

 ぬいぬいは少し鼻で笑う。「いい目だ、じゃ――頑張れよ。俺は寝る」

「今から、寝るの?」

「そうだよ、何せ急だったから……三日ほど寝てない」

「そうなんだ……ありがとうぬいぬい師匠」

 彼は、後ろ向きで手を振りながら僕の前から消えると、そこら辺の神官に寝て良い場所を聞いているようだ。神官がとても驚いているのいる様だった。そうしている間に、王の間の扉が開いたままに固定されどんどん人通りが多くなる。

「あのすみません、今、よろしいでしょうか?」

 巫女の衣裳を着た女性が、僕にそう尋ねた。黒い髪を1つにまとめた。秘書みたいな感じの女性だ。僕は慌てて立ち上がるとーー。

「はい、ハヤトと言います。日いずる国の巫女様、本日は来ていただいてありがとうございます」

「いえ、私は、巫女様のお付の未菜みなと申します。あやさと姫様は、あちらに」

 そちらにはかぐや姫の様な女性が居た。耳の横の髪は、三つ編みになっていてそこには、幾つかのきれいな石も編み込まれている。彼女は、僕と未菜さんを見つけると、ずかずかと言う感じでこちらへ歩いてやって来る。

「お前が今宵のにえに選ばれた男か、お前から面妖な妖気を感じる。う――んお前、今回の呪いを飲み込むなよ」

 そう言って彼女は、巫女の衣裳の袖で、顔を隠し僕を大変警戒している様だった。う……ん彼女もうちのパーティー候補なんだが、彼女は僕達と同行してくれないだろうか……? そうすれば彼女なら男女関係については、悩む事はなさそうな気はする……。

「ハヤトと言います。よくわかりませんが、悪い事態にならない様、努力します。 よろしくお願いします」
 当たり障りのない挨拶をする。

 あやさと姫と僕は、未菜さんを挟んで座る。そうすると、ウンディーネが、さくらの花1つ分位のケーキをたくさん持ってやって来た。

「主様、これ見てケーキ、見てたらコック長がたくさんくれたの」

 彼女は、手に持つ皿を差し出して僕に見せる。

(ウンディーネ……それはたぶん、ケーキ渡して追い払われたんだと思うなぁ……)

「良かったね。ウンディーネ」

「主様、何食べる? これなんて美味しいと思うよ」

「じゃあ、いただこうかな」僕はケーキを1つ手に取って食べた。

「美味しい?」

「凄く美味しいね」

 そう言った時、未菜さんは僕を驚きの顔で見る、あやさと姫はケーキを穴が開くほど見ている。きっとウンディーネもこんな顔で、見ていたんだろうな……。

「ウンディーネ、今日お世話になる日いずる国のあやさと姫様と未菜さんだよ。彼女達にもケーキをあげて貰えないかな?」

「あっ、主様のお世話をしてます。ウンディーネです。良かったらこれ」
 
 ウンディーネの気持ちが、手に取る様にわかる……。これは、良妻アピール! 

「ありがとうございます。どれをいただいていいのでしょうか?」

「これとこれなんて美味しいですよ」
 
 ウンディーネは、チョコとチーズケーキを指さす。彼女の好きなケーキはフルーツが、ふんだんに使われたケーキだから、それ以外を指してしているのだろう。
 
「いただきます」未菜さんは、チョコケーキを。
 
「では、わらわは、これをいただくとしょう」そう言ってあやさと姫は、フルーツがふんだんに使われたケーキを、手に取って食べた。

「ウンディーネのケーキが……」彼女は凄く悲しそうな声で言う。

「姫様、勝手にとってはなりません」

「すまぬ、ウンディーネ。とっても美味しそうだったのでのう」

「いいんです……良妻ですから……。うちの主様の事をよろしくお願いします」

 そう言ってまた、僕の隣に座り、少し寂しそうにケーキを食べる。あやさと姫は、未菜さんの隣から身を乗り出して見ると未菜さんと小声で話す。

 そうすると、隣の未菜さんが、「これをウンディーネ様に」彼女の手には、きれいな青色の石が乗っていた。

「いいんですか?」

「はい、あやさと姫様は貢物を私達にもくださる優しい姫様なので、どうぞ、気にせずお受け取りください」

 未菜さんは、そう言って誇らしげに、あやさと姫の事を話す。そして石を受け取ったウンディーネは、目を輝かせて喜ぶ。

「あやさと姫様ありがとうございます! よかったらケーキまだ食べませんか?」

「大丈夫だ、わらわはよう食べた。後は、お前が食べるとよいぞ」
 
 彼女達は、すぐに仲良くなりそうだ。しかしあやさと姫をこの国の為に僕らのパーティーに誘うのは、いけない事のような気がするのだった。


            つづく
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