魔王がやって来たので

もち雪

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王の命

布石

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 チーム黄昏のみんなが帰った後、先程までの慌ただしさが嘘の様だた……。けれど女王様の死屍しかばねは、今だ異臭を放って己の存在を知らしめているが……。

 その時、女王蟻の出て来た空洞からピョコーンと青い物体が飛び出て来て、僕と目があう。と、言うか目が合ったら合っていただろう。

「微生物くん……」

 微生物くんは、僕の所までやって来て目の前でピョンピヨン跳ぶ。

「どうしたんですかね、コレ」「かわいい」

 ミッシェルもオリエラもスドウ僕のまわりに集まってくる。微生物くんをよく見ようと、少しかがんで見ると、微生物くんが僕の肩にとまって飛び跳ねだした。お日様の匂いがする……。

「ずいぶん懐かれたでござすなぁ」このままだと微生物くん、魔女っ子のマスコットキャラ的立ち位置なってしまうのでは? まだ、言葉を話てない内はそんな需要ポジションは任せられないし、セーフだろうか?

「このまま肩に乗せて、連れて行くと確実に落ちそうですよねぇ?」

「じゃ――おいどんが、荷物運び代がわりに貰った、虫かごあげるでごわすよ、飴も飴ケースに入っているでごわす」

 僕は、虫かごをスドウさんから受け取る。しかしそんなに微生物くんポピラーな生き物なのか? 野に放った奴の使いの古しとかだったりしないよね?それって社会問題じゃない?

「スドウさん、ありがとうございます、では早速……」虫かごに飴入れて、微生物くんがそこへ行くのを待った。ピーョンピョーン微生物くんが肩から、降りて虫かごをのまわりをうかがっている。そして虫かごに入った。

「「やった――!」」虫かごから、飴を頭に乗っけて速攻出て来て、僕の肩で跳ねる。

「クッ早い」「ハヤトさんがのろろしてるから」「うーん、もう少しだったね」「そう言う事もあるでごわす」あるのか? さっきは、凄くほわほわ、ほのぼのと中に入っていたけど?

「うーんどうするべきか……」と、考えていると、微生物くん勝手に虫かごの中へ入って寝た? お前の自由なのか!?

「お待たせ……じゃあ帰ろうか……」

「待って、ハヤト師匠から聞いたのだけど、上級試験で魔物と戦闘後に疲れ果てたパーティを襲うパーティーもいるらしいの、だから最後まで気を付けろだって」

 オリエラの助言はわかる。試験自体では、禁止行為だが相手の死体を隠してしまえば、違反行為による不合格の無効期間の間さえ犯人が誰かばれなければ合格だ。しかし襲うならソロで歩いている者、ソロになる事態になってしまった者から襲うのでは? とも思うが、相手は上級挑戦者だ気を付けるに越したことはない。

「ギルド本部に着くまで気付け進もう」

 僕らはもと来た道を引き返し、歩くと土の見えた小島に人が倒れている。ミッシェルにそこまでの道の蔦を焼き払って貰い、目の前にある木の道をスドウさんに、移動してもらいそこまでの道を作る。彼女の体には全身蔦が蒔きつき、蔦の先は切れていた。シスターぽい衣裳の彼女はすぐに目を覚まし泣き始める。

「私の仲間が、蔦に絡まれてどこかへ連れ去られ行ってしまいました……。私は一体どうすればいいのか……」

「ハヤトどうする?」

「一度ギルド本部に帰った方がいい。ソロで戦えるほど強いなら、とめはしないけど」うちのパーティーの意見は、似たりよったりで一度帰る事をすすめるが、彼女は頑として首をたてに振らなかった」

「どうしたいの?」オリエラは聞かれ「どうしても仲間を助けたいです……せっかく15個集めた魔石も、無駄になってしまいます」

「後、5個くらいなら……」と、スドウとミッシェルが言い出すが、僕はそれを全部突っぱねた。

「絶対駄目です、スドウさんも今は、同じパーティとして活動しているのだから、ここは僕に従って貰います」

 彼らを、無理やり帰途につかせ、木の道を元に戻す、そしてやっとギルド本部の門をくぐる事が出来た。

「ミッシェル、魔石の分配しておいてください。女王蟻の事、さっきの彼女の事ギルド本部に連絡して来ます。事務手数料分は多めに受け取ってください」

「ハヤトさん、わかりました」彼はにこにこして会計を始めた。

「後、皆さんここに居てくださいよ頼みましたよ!」

 僕は、実行員にのもとへ行って、寸借すんしゃく詐欺さぎをしているかもしれない女性について話した。しかし異世界だからなのか、それが大丈夫な助け合いの精神が凄いのか、取り合って貰えなかった。仕方なくトボトボうちのパーティの集計をしている机に帰るとスドウさんが居ない……。

「ミッシェル……スドウさんは……?」

「用事があるとか言って、魔石の分け前だけ貰うと行ってしまいました。オリエラさんがハヤトさんを探しに行ったのですが、会いませんでしたか?」

 僕は、こめかみを押さえながら「会いませんでした……」と、言うと――「きっと彼女のもとへ戻ったと思うんですが、でも、魔石5つくらい良くないですか?」

「良くない! 仕方ないレンさんに頼まないと」僕は駆けだす、ミッシェルが呼ぶ。「魔石はどうしますか!?」と言う問いに、「実行委員捕まえて預かって貰って、禁止事項に該当するかもしれないパーティーが居るかも知らないから、ギルド長と出る事になるだろうだから」と、足踏みしながら言い本部のシートに急いだ。

 本部のテントまで来ると、仕方なくどこかの薬売りに偽っている老人よろしく、ギルドの身分証明書、片手に勇者なんです!と言って押し入ると……、ブファ――! レンさんテントの中で書類積んでサインしてるし――何故来た――! そこで一度深呼吸をして、「レンさん!」

「どうしたんだい、ハヤト、随分足音はが急いでるようだったじゃないか?」

 彼女は、書類に目を通しながら僕に、そう言う。

「帰る途中に、安全地帯に蔦に絡まれた女性が居ました。彼女はその場に残ったのですが、一緒に戦ったメンバーたぶん魔石を彼女に渡すために、彼女のもとへ帰ってしまったんです」

「彼女の仲間に、魔石を奪われるのを恐れて、私に力を貸して貰いたくて来たのかい? でも、何故?……」

「何故?」彼女はすべてわかっていてなぜと、僕に問うた。

「何故? 私の所へ来たんだい? 君に解決できない問題なのかな?」

「解決出来ない問題ではありません……」

「じゃぁ――早く行っておいで間に合わなくなる前に」

「わかりました」僕は、きびすを返す。

「待って、この手紙を本部の兵士に渡して、彼がその事件の顛末を見届けてくれる、ではね」

 その時、彼女は初めて僕を見つめた。不敵な瞳。この後の行動が、僕の立ち位置をまた新たに決める布石になるらしい。


         つづく
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