魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
上 下
90 / 271
王の命

魔石回収

しおりを挟む
 腐臭の渦巻く大地で、女王蟻の死体は、直視出来ない。しかしみんな女王蟻に、わらわらと集まっている。

「ありましたよー! 魔石、後、涙石」

 魔石より、大きく、魔物の主からのみ取れる涙の様な形状をしているのが涙石だ。魔石や涙石も出所が出所だけに、装飾に使われる事は、少ない。魔法で効果を高めるために、黒魔術師使う装備にはめ込む程度だ。他の職は、けがれの概念がある為そう使われる事はないようだ。後の使い道は、黒魔術師が、独自の魔法の補助で使うのと錬金術師が怪しいものを作る為に使用してるらしい。ちなみに魔法攻撃を吸収してるようで、属性の攻撃には強いらしく滅多に魔物を倒して消失してましたと言う事はないようだ。

 蟻の上に易々と登って行った保護色の装備を着た狩人ぽい彼は、無造作にぽいぽと金髪イケメンの戦士に、魔石達を投げ渡している。

「これで全部」そう言って、また魔石を戦士に投げる。

これ女王蟻どうする? 焼くか?」

「女王蟻の死体なら、錬金術師達が何とかしてくれるだろう。後で、ギルド本部陣営で申請するよ」

 彼は、振り返り僕と視線が合う。

「しろし、手を出して」そう言うと、手を出した黒魔術師の2つの手のひらの上に、戦士は今まで受け取った魔石と涙石を流し込んだ。

「なんて事をするんだラアキ! 僕は、君みたいな頑丈な造りの体じゃないんだぞ!! 怪我するんじゃないか!」

「しろし、ごめん、ごめん」

 ラアキさんはそう言うと、彼は振り返りながら顔の前で片手でを前後に振り、こちらへ歩いてくる。

 僕は、ミッシェルとスドウの間を「ごめん」と言いながら通りぬけ、ラキアさんの前に立つ。

「このパーティーのリーダーをしているハヤトです。今回は助けて貰ったみたいで、ありがとうございます」

「いえいえ、チーム『黄昏のリーダー』のラアキです。よろしく。ところでアリの巣の中に降りる算段は付いているの? 良かったらうちも、報酬1割で、魔石を拾って来ようか?」

「僕は、頼もうと思っているけど異論のある人は居る?」

 オリエラ、ミッシェル、スドウは、皆、首を横に振る。

「お願いします。」

「フウクェ、そういうわけで頼むよ」

「ラアキ、そういう事はまず俺に聞けよ!」狩人は、降りて来ると両手を腰にやりイラついた声を出す。

「行ってくれないのかい?」

「行くが、晩飯はお前のおごりだからな」

「お手柔らかに、頼む」そう言ったラアキに返事もせず、狩人の彼は帽子と手袋を付けなおし、口にタオルをまく。近くの木にロープをまくともう片方の端にはバケツを括り付ける。そのまま下に降りていった。地上に残るのは、スドウと、神父とオリエラと決まった。

 全員、恐々穴のなかに着くと無数のアリ横たわっている。各自でわかれて、魔石を集めるが各自でテンションが下がる。

「これ微生物くんを使うしかない……仕方ないなぁフウクェに買うのを嫌がってたけど、微生物くんを使うしか手の施し用がないし――」

 黒魔術師のしろしさんが、フウクェさんを凄く煽っている。

「いいから使えよしろし」

 フウクェさんは、小さなしろしさんを見下ろしながら眺めいる。しろしさんは、笑顔でフウクェさんを見つめると虫かごの横の蓋を開けた。そこから青い何かが一斉に飛び出した。
 ふわふわ飛ぶそれは、アリに群がるアリを崩壊させて土にえていく。その中央に魔石が3つごろんと転がった。

「しるしさん微生物くんってなんなんですか?」

「錬金術師グループ『アジアフロント』のメンバーが作ったか、発見か、したやつだよ。死んだ魔物のお掃除生物らしい。なんでも……魔物の一部をビーカーに入れて実験途中に寝たら次の日、ビーカーにいたらしい」

「それって作ったんじゃないんですか?」

「そうかもしれないが、誰も見てない状態で発生してるぽいし、よくわかんない、一人は寝ている事が大切らしい。ちなみ、生きた生物を与えると3日は出てこなくてなるから、買った時は、気をつけて」

「そうなんですね。情報ありがとうございます」
 彼と話している間に、多くの蟻が土へとかえっていく。

 微生物くんは瞬く間に、1つのエリアを制覇し、勝手に下のエリアへと移動して行く。魔物の蟻は、普通の蟻と違い巣をそこまで深く掘らないようだが、それでも多くの魔石が集まった。

 微生物くんは、終わり間際に女王蟻の掘った空洞から逃げない様に――。

「微生物くん! 飴あるよ――!集まって――!」
 と、言うと彼の元に集まって来て、飴を頭の上に乗せて虫かごの中に入って行った。

「全部で、7ふわだからokだね」そう言うとしるしは、虫かごの蓋を閉めてリュックに吊るした。

 僕達は、女王蟻の巣からでると、鞄三つ分ある。魔石を確認すると――。

「数を数えるのは、しんどいから半分づつで、この鞄を半分に分けようか……」

 ラアキは、ひとしきり笑うと、「そちらのチームがいいのならうちの女王蟻の報酬も涙2つ、魔石は4つでいいですよ」と言って、反対するものがいなかったので、分け合った。まぁ……正直、鞄を半分にするのも疲れてしんどかった……。

 帰りは、別に帰るのでルイスから貰っていた。
 うちのパーティの名刺を差し出した。

「これ、うちの新しい名刺なんですが…」

「ありがとうございます。うちの名刺もどうぞ」

 チーム黄昏か…かっこいいチーム名だな……。
「チーム名、勇者パーティーあぁ……貴方が召喚された勇者様なのですね」

「えっ……?!えつ!!」
 僕が、名刺を見返すと読めなかった字が勇者って読める!!
 
「本当だ……勇者って……書いてある……」

「えっ?! 今まで知らなかったんですか?」

 ラアキは、笑いを隠すが……隠れてない。

「こちらの言葉は、魔法的な要素でわかるですが……注視してなかったからなのか理解出来なかったみたいで……そうか……勇者パーティだったのか……」

「何は、ともあれこちらの世界では、勇者は希望の象徴ですから頑張ってください」

「ありがとうございます。では、いろいろお世話になりました」

「こちらこそ、ではま……うん?」彼のそばには、ミッシェルとスドウが居た。

「私は、これから個人でギルドサポート事務所を立ち上げようと思いています。ミシェルと言います。良かったらこれ……私の名刺なのですが……。お困りの時はこちらにお手紙ください」

「おいどんは、荷物運びをフリーでしてる……スドウといいます。おいどには名刺は、ありませんが……ギルド経由で空いている日程も確認予約出来るようになっているので宜しくお願いします」

「あはっ、じゃこれはうちの名刺です。ラアキと言います。改めてよろしくお願いします。……では、私は、これで……」

 そう言いチーム黄昏のメンバーは、帰って行った。

 つづく
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...