魔王がやって来たので

もち雪

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王の命

アリの大群

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 試験会場のルルデコの湿地帯には、湿地帯特有の植物の他に、緑の蔓に小さな葉、時に紫色の花咲かせる植物の様な物が棲息している。そんな湿地帯の植物の間に、1メートル位の木の板が連なって置かれ、道の役目をはたしている。

 「ああぇえなんだこれ――――!?」

 慎重に進む僕らの耳に、彼の声は混乱と戸惑いの色を含んで聞こえてた。叫んだ彼の足元には、木の板は存在せず、彼は足元からどんどん緑の蔓が重なりあうように彼を覆いつくす、そしてそのまま彼はどこへか引っぱらていってしまった。緑の大地の中で彼の姿を捉えているのはすぐ難しくなる。

「いいんですか? ハヤトさん!?」

 ミッシェルが大声で騒ぐ。蔓の本体は、この湿地帯のどこかにいる。しかし1体なのか2体なのかそれとも、もっと多いか見当もつかない。ただ言えるのは、彼を助ける事で、確実に時ロスと僕達のパーティーの命の危険が増えると言う事だ。

「決して良くない。良くないが……、本体の位置も掴めていない今、パーティーメンバーを無駄に危険にする事だできないです」

 僕はそのままずんずん先へ進む事にし、実際進む。本当に不愉快だが仕方ない、誰も僕の意見逆らうものが居ない事にとてもほっとする。僕は仲間のあんな姿は、正直みたくないからだ。……はぁ僕は誰に、言い訳してるんだ。自分で、決めた事だろう……。


 
 進むうち、木の道の上に待ち受けるモンスターもいた。後ろに『攻撃』のハンドサインを送り。槍を使い倒す。魔石は湿地の水の中深くに落ちたがそのまま拾わず進み先を急いだ。湿地帯を抜ける少し前に、魚を槍で貫き連れて行く。木の道は終わりやっと乾いた地面が見える場所にでて、草地を避け先へ進むと標的のアリ姿を現す。  普通でも、きもいアリが、人間大の大きさだときもいを通り越してグロイ。僕達は、少し開けた地面のある場所を陣取ると、僕達の目の前の地面に魚をおいた。

「じゃ……これから、アリを引き寄せますが、3匹目のアリが引きかえすまで、手出しはしないでください」

「もしアリが私達に気付いた時は?」オリエラが確認する。彼女は、魔法学校での戦闘訓練を受けているの為か落ち着いていた。

「その場合、僕が、魔法を使うのでその後を追って、巣に向かってください」

「そうしたら、おいどん達は、みんなアリに巣へ引っ張りこまれてしまわんとですか?」

「ハヤトさん、本当に大丈夫ですか? 僕はまた、死にたくありませんからね」

 ミッシェルとスドウは、はらはらした顔で僕を見つめている。

「僕が、アリの巣の中で炎と水魔法を組み立て熱波の霧を作ります。初めての挑戦であるので、アリの生命力の方がまさる可能性があるので、その時はミシェル僕の魔法のアシストお願いします」

「オリエラ、スドウは、巣に戻って来る敵をメインにお願いします」

 僕達は、強化魔法をそれぞれかける。全員がかかった事を確認したのち……。

「じゃ――行きますよ?」
 
「「はい」」

 計画通りやはり一匹目のアリが、やって来て魚の一部を持って行くと、ゆっくりであるが次々に魚をもって行くアリが現れる。3匹目のアリが、引き返すのを見送ったのち、次々とアリのフェロモンたよりにやって来るアリを倒すのだが、アリ見た目以上タフで強い。魔法で、攻撃がどこまで効くのかわからないがいまの所順調だ。

 だいたい外へ出ているアリが、こっちへ一列に列をなしてやって来ている。巣を出ていたアリもすべて戻って来た様だ。

 その時を見計らって、すべてのアリを魔法の水の魔法で外側から囲い込んでいるまに、先頭のアリをオリエラに倒して貰いつつ前に進む。僕の魔法がアリの巣をも囲んだ時

「オリエラ、ミッシェル水の魔法でアリ達を巣に向かって押し流せ!」

 ふたりは水の速度を合わせて、アリを巣の中に押し流す。器用なふたりなので、なんなくこなしてしまう。

 僕達は、巣の入り口まで走り込み、そのまま巣の後ろの水流から巣へ滝の様に落とし込んで行く。そこに炎の魔法を組み立てる為、炎の魔法を流し螺旋を作り出し流し込むが……。

「ウンディーネの効果か、水の勢いが強すぎてうまく行かない、まずはミッシェル、炎の魔法を僕に合わせて!」

 ミッシェルの魔法のおかげで、炎と水を隔離させてたまま、速度を調節しつつ回転させ。大量に灼熱のミストを作り出す事に成功しつつある。

 しかしそれによって大量のアリが次々とアリの巣から湧いて出くる。それを絡めとるように、炎と水が踊り舞うがそれを越えて上がって来るアリをオリエラが、魔法の剣の力を行使、地底深くへと叩き落す。

「これさ――!」
 僕が世間話を始める。三人は、ぎょっとした顔でこっちを見る。

「アリの王いや……女王って……出ないよね?!」

「そもそも王自体、そんなに出るものではないでごわすよ?」

「いや……そうだよね……気にし過ぎだよね?」

 僕とスドウの話に沈黙を貫くふたり。なんか話して――! 下の音がめちゃくちゃ気になる。リズム刻んでるから!!

       つづく
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