魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
上 下
81 / 177
王の命

彼らの資質

しおりを挟む
 勇者の間に戻った僕達は、4人目の同居人、ミッシェルに部屋が当てがった。さすがに、この時ばかりは、ミッシェルのテンションも上がって嬉しそうだった。

 応接室に座り、まず――。

「ギルドの身分証明カードを出してください。2人とも」

 僕は、見たがわからないので若干ルンルンで出した。それに、比べミシェルは……。

「ギルドカードに、ついては個人情報じゃないですか……駄目です。出来ません」
 カードを胸に収め首を振る、ミッシェル……。

「それが、無いとどんな勤務体制で働いて、いただくべきか決めかねます。勇者に関しては、半強制的に冒険者への転向が行われるのです。それは逆に勇者の権限でこの国の一部の国民以外を冒険者転向させる事も可能な事もご存じですよね? それが我が国の公平です」

「でも、僕は貴族としてオークランドの名を継ぐものですよ?」ミッシェルは、半泣きである。

「ミシェル オークランド様、失礼ですが私の正式名を言っていただいても?」ここで、ミシェルは黙ってギルドカードを差し出す。ルイスの方が爵位は上のはずだから。三人で、一緒に彼のカードを見たのだが……見方のわからない僕とウンディーネは、早々に脱落した。その変わりのミシェルに僕のギルドカードを読み解いて貰う……事は無理か……めちゃめちゃ凹んでいるし。

「ありがとうございました」ルイスが、ミシェルにギルドカードを返却した。

「どうでしたか?」僕が、ガブリ付きで聞く。「うーん、すべてに置いて普通でしたが、それだけ欠点が無いと言っていいとも思います。頑張って培われた結果だと思いますよ」

 ここで、ルイスは、一粒の涙を流す。「今までは、そんな事を言ってくれる人間などいませんでした……。僕の人生は、オークランドの名前が先にあって、どんなに頑張ってもお前は人並み程度じゃいけないと言われ……先生達や友達でさえ僕の事を、本当にミシェルとして見てくれる人はいませんでした……何故いつもまずオークランドで、兄たちと比べられ普通の僕が駄目なのか……そして何故貴方達は僕にそんなにこだわるのかわかりません……」そして彼は、彼の部屋へ帰って行ってしまった。

 僕は思った。貴族社会怖い。ミッシェルが、ルイスの言葉で明日には、もう仕方ないですねぇ系、後輩になりそうな勢いが怖かった。

「ルイス……」

「彼も今まで、辛かったんですね……。このまま一人にしておいてあげましょう……。よかったら、ハヤト後で、彼の話を聞いてあげてくれませんか? 僕だとやはり、貴族と言う事を意識させてしてしまうかもしれませんので……」

(ルイス、そんな事言う人じゃないので――逆に、怖――――い!)

「うん、わかった。(藪をむやみにつついてヘビを出さない様に……黙って)行くよ。」

「じゃ……次、これお願い」僕は、僕のギルドの身分証明カードを差し出す。

「あ――これは、嫌みなほどに魔力が高いですね――なんで、全部SSなんですか?木の属性の数値なんてはみ出してるし。ちゃんと人類で、ある事は意識してくださいね」

「で、物理系は何が一番いいのかな?」僕はルイスの言葉をあえて、聞き流す。

「剣と槍ですかね? あ……数値少し弱いですが、ムチいっときます? ベシベシットと?」

「数値が、弱いならいっときません。オリエラが、剣なら、さんすくみ的にに槍ですかね? 騎兵戦もあるだろうし」

「じゃ、それでお願いします」
 
「後、僕は人類です」

「そうですね、今のところはね。でも、貴方には人類を越えて戦っていただかなければならない日も来るでしょう。それまでに、時間がありません頑張って行きましょう」
 

「はい」僕が返事をすると、彼は「少し、失礼します」そう言って席を立つ。紅茶の用意をしに行ったのだろう……。ルイスが、想定している敵がなんなのかわからないが、頑張るしかないのだ。

        つづく
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...