魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
上 下
68 / 204
王の命

ルイスの手腕が、発揮される

しおりを挟む
 農家の朝は早い。
 僕の昨日寝たのは遅い。ルイスは、早朝に旅立ったはず。なら、今日の起床は、遅いだった。

 でも僕の一日は、いつもの時間に勇者の間を警備するシルスが、連れて来た氷の魔法を使える兵士の氷魔法で、キンキンに冷やされるところから始まった。

 ヒャ――――!「ファ!? どうしたんですか? シルスさんとコルラさん? へっ違う? それはすみません!」
 
 僕は、歯ガタガタ言わせてあまりうまくしゃべれず、両手で体をさすっている。

「あの――ルイス様が、今朝、『ハヤト様は、何も言わないのですが、日焼けで苦しんでおられる様です。治療で傷は癒えましたが、世界が違うためそれだけでは効かないようです。勇者様の強靭な肉体を、わかりやすく冷やしてあげてください。気がねしない様、寝てるうちに……』と、言って出発されましたので……」

 ははん――これは、僕は、いろんな意味で殴り過ぎてしまったのではないだろうか……。いや、無いな。拙い希望にすがるのは辞めて支度をしょう。

 シルスさんとお連れの兵士さんには、「ルイスさんは、僕が勇者な為か、先回りして過剰に過保護で困ってしまう部分もあるんですよね……」と言っておいた。これは、勝敗には、関係ないだろうが……。ルイスさんへの嫌がらせで、僕が出せる最善の一歩だ。

 ご飯は美味しい。まぁだいたいいつもと変わらないが。今日は、なんのジャムだろう。美味しい。

 食べ終わって皿を洗い干しておく。

 着替えて、ぬいぬいの奥さんが買ってくれた麦わら帽子に、日焼け止め塗って、ほっかむりしたタオル結んで、鏡で見る。
(これは、面倒な事になりそうだ……)

 と、思いながら扉から出たらすぐ、玄関でシルスさんに、捕まった。
「どうしたんですか? 勇者様」

(せめて、いつも通り、ハヤト様と言って欲しかった……今、勇者の称号は重い……)

「今から苗に、回復魔法をかける訓練を……」

「えっ? その恰好で、ですか?」

「えっ?……あ……です。その後に、畑仕事があって……」

「えっ?」

「え?」

「ルイスが、魔法訓練と基礎体力を作る訓練に畑を……」

「えっ……畑仕事で……基礎訓練ですか……」

「ほら……ルイス凄く過保護だから……ハハハ」

「過保護凄いですね……」

「そうなんだ……過保護が執事やってるような人だから……で……たぶん、今後すぐに兵士に、止められると思うので、すぐ通れる様になんか一筆、書いて貰っていい?」

「ハッ!了解しました」

 シルスさんは、すぐ一筆書いてくれた。

「どうぞっ」

「ありがとうございます、では、行ってきます」

 数歩進んでメモを、見てみる。『訓練中にて、勇者様に何も聞かないであげてください シルス』

(シルスさん……)なんだろう、シルスと会話中僕のキャラが、少しぶれたがまあそこは仕方ないだろう。

 今日の第一関門は、抜けた感が強い。と言うわけで、門の兵士に、メモを見せがてら聞いてみたところ、プランターは、兵士の練習場に運搬されているようでそちらに向かう。

 着いた先に大量のプランターがあり、腰を痛めない様に配置して次々とこなしていく。途中で、魔力回復のサラダ(ほぼ草)が、出てそれをモキュモキュ無言で食べる。それが、食べ終わったら次は、食堂のおばさんが、魔法薬飲み物(レモン味)をくれた。少しずつ飲んで、もう今は居ないルイスに、問いかける。(楽しんでいただけましたか?)ルイスの居る魔法学校どうせ届かない、ので、ゴミをゴミ箱に入れたら残りの苗ももう少しだ……頑張ろう。

    つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...