魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
上 下
46 / 271
新たな仲間

主と執事

しおりを挟む
 僕とぬいぬいは、朝食を食べ終わりお皿をキッチンに、持って行くとルイスさんはノートを、片手に調理場の備品のチェックをしていた。彼は、僕らが皿を手に持っているのをみつけると、素早くポケットにノートをしまい足取りもエレガントに僕の元までやってくる。

「わざわざありがとうございます、お皿をお持ちいたします」

「ありがとうございますルイスさん、ですが……僕はここに、いつまでも居るわけではないので、出来る事はやらせてください」

「出来ない事も、教えてくれると助かります」

「いえ、その必要はございません」

「旅には、私もご同行いたしますので」
 
 ルイスさんは、喫茶店へ行くような気軽さのもの言いと、笑顔で言った。

「もしかして、お前はアルト家の一族なのか? 」

「はい、その通りでございます」
 
 彼はにっこり微笑む、少し考える仕草をしてから……。

「お皿を洗おうとお考えの所、恐縮ですが……」

「今後の事もございますし……お二人には一度、応接室お戻りいただき、今後について確認などいたしましょう」

「さぁさぁ……」
 そう言ってルイスさんは、かす様に僕たちを応接室に連れて行った。僕とぬいぬいが、長椅子のソファーにすわる。

「ルイスさんも、どうぞ座ってください」
 
 そう言うと彼は、一人がけのソファーに座った。

「まず、私から話しても? 」
 
 ルイスさんは、手袋をつけた手を胸当て聞く。

「はい、よろしくお願いします」

「後、ここへ来たばかりの僕にもわかりやすく、話して貰っていいでしょうか?」
 
 僕がそう言うと、ルイスさんは少しクスっと笑う。

「では、まずハヤト様」 

「はい」

あるじ様」

「はい?」

「ハヤト!」

「はい???」

 ぬいぬいが、少しあちゃ~って顔をする。

「失礼ですが、ハヤト様はもっと勇者らしくされた方がいいのでは? 」

「相手を対等に見るのはいい事ですが、相手につけ入る隙を与えてはいけません」

 ルイスさんは、生徒をさとすように言う。

「あ……そうですね」

「勇者の様な中心いる、立ち位置にあまり慣れていなくて、合わない人間から一度位、嫌な目にあっても仕方ない。でも、今後幾度も合わない人間であれば相手から離れればいい。学業などで付き合う間柄なら、うわべだけの付き合いでいいやと思ってました」
 僕は、告白じみた会話をする。

 ぬいぬいは少し顔をしかめるが、二人は黙って聞いている。

「でも、基本は変えるつもりはないのです、僕がこうありたいから」

「しかし相手を見て譲れない時は譲らない、そこは頭に入れます」

「不都合な事は言ってください、出来ない事もありますが……」

「話を聞く努力はしたい」

「そしてルイスさん……ルイス……」
 何故か僕は、手で自分の顔をおおっている。

「僕の事は、呼びやすければハヤトと呼んでください」

「はい、わかりましたハヤト様」
 (さすが出来る執事、そこはやはり様付けなんだ……)

「大丈夫だアルト、こいつは好きな子の為に異世界を越えてきた」

「こんなにつけ入る隙しか、無い奴も居ないが――」

「好きな子の為に、異世界へ来る奴もそういない」
 
「しばらく大人は、こいつの成長を見守るとしょう」

「ぬいぬい様……」
 ルイスは、ぬいぬいを見守る。

 出来る執事は、気持ちを態度に表す事はしない。

(それが、小2に見えるぬいぬいの大人発言でもだ……)

       つづく 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...