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はじめての異世界
水の精霊のいる風景
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三日後、ぬいぬいとオリエラはやって来た。
魔法使いの帽子の代わりローブと麦わら帽子をつけたぬいぬいは、どう見ても麦わら帽子をつけた子供で。
「ぬいぬい、その麦わら帽子……」と、言う僕の言葉をさえぎり――。
「いい、わかったもういい……」と、独り言の様につぶやくのだった。
その後ろからひょこっと現れたオリエラも同じく、麦わら帽子を付けていた。
「あるるさんが、熱射病にならないように、みんなに買ってくれたんだよ。で、これがハヤトの分」
そう言うとオリエラは、僕に麦わら帽子を被せて、自分の顎に手を当てて考えこむ。
「やはり、師匠が一番似合うよね――」
「ほっとけ」
「早くアルト君も麦わら帽子が、付けられるといいよね――」
「最高に可愛い、麦わら帽子の親子だよ、きっとーー」
ぬいぬいとは違い、とても上機嫌で話す、オリエラは部屋に入っても楽しそうに鼻歌を歌っている。そして踊る様にコート掛けに麦わら帽子をかけた。
「アルト君は、ぬいぬいのお子さんですか? 」
「そうだ」言葉すくなに答えるぬいぬい。
「今日会った時の、鍵あみで編んだ帽子はぬいぬいとお揃いでもうねぇ――もうねぇ可愛いんですよ」
オリエラは力を込めて言った。
「で、水の精霊とは仲良くなれたか?」
オリエラの話は、遮る様にぬいぬいは話を進めた。
「う――ん、どうなんですかねぇ? 」
オリエラは、ソファーの長椅子の所にすわり、僕とぬいぬいは、一人用のソファーに座り対峙する。僕はワイシャツのポケットから小瓶をだして、片手に握る。
そうすると、小さな水の泡が瓶からふわりふわりと浮かび、僕の手から糸の様なら水が寄り添う様に出現する。泡は糸に沈んでいくと螺旋を描くように、天井に上がりそこで大きな水の塊を作る。椅子1つ分くらいの大きさになると、そこへ水滴を落としたかの様な振動が中心から起こり――。
水の塊は、マンタの姿になって天井を優雅に泳ぐ。残った、水はふたたび、水の泡になり部屋いっぱいに広がる。窓から入る陽射しが水の泡を通して、部屋を水色に染める。
ゆったり、ゆったりと時は流れ始める。
「お前……これは、どう見てもやり過ぎだぞ……」
ぬいぬいが驚き、オリエラは、はしゃぎながら水に泡にふれている。
「ハヤト、この子たち帰りはどうするの? 」
「このままだと部屋が、水びたしでしょ?」
オリエラが、泡を突きながら僕に聞く。
その時、水の泡は小さな魚になって部屋を泳ぎだす。
「それは、こうして手ひらの上に瓶を置いて、帰って欲しいと願うとまた全てが泡になり僕の手の平に集まって来ます」
「少しずつ瓶に帰りますが」
「僅かな水が、僕に帰っているようです」
僕が言葉通りに泡となった水達を小鳥でも集める様に集めている間、ぬいぬいは仏頂ずらで、オリエラは夢見るように見つめていた。
最後のちいさな魚が、オリエラに別れを告げる様に、彼女周りを回ったのち瓶へと帰る。
「ハヤト、お前の魔法センスは素晴らしいが……」
「だから教えずらい……」
「火の精霊で同じ事をやれば、少なからず危険な事になる。たから今後の瓶の訓練は行えない」
「じゃあどうするの師匠」
オリエラは心配そうに僕とぬいぬいを見比べて視線を行き来させている。
「今、考え中」
「まあ、あれだ。訓練の基礎は水の精霊で十分だから心配するな」
つづく
魔法使いの帽子の代わりローブと麦わら帽子をつけたぬいぬいは、どう見ても麦わら帽子をつけた子供で。
「ぬいぬい、その麦わら帽子……」と、言う僕の言葉をさえぎり――。
「いい、わかったもういい……」と、独り言の様につぶやくのだった。
その後ろからひょこっと現れたオリエラも同じく、麦わら帽子を付けていた。
「あるるさんが、熱射病にならないように、みんなに買ってくれたんだよ。で、これがハヤトの分」
そう言うとオリエラは、僕に麦わら帽子を被せて、自分の顎に手を当てて考えこむ。
「やはり、師匠が一番似合うよね――」
「ほっとけ」
「早くアルト君も麦わら帽子が、付けられるといいよね――」
「最高に可愛い、麦わら帽子の親子だよ、きっとーー」
ぬいぬいとは違い、とても上機嫌で話す、オリエラは部屋に入っても楽しそうに鼻歌を歌っている。そして踊る様にコート掛けに麦わら帽子をかけた。
「アルト君は、ぬいぬいのお子さんですか? 」
「そうだ」言葉すくなに答えるぬいぬい。
「今日会った時の、鍵あみで編んだ帽子はぬいぬいとお揃いでもうねぇ――もうねぇ可愛いんですよ」
オリエラは力を込めて言った。
「で、水の精霊とは仲良くなれたか?」
オリエラの話は、遮る様にぬいぬいは話を進めた。
「う――ん、どうなんですかねぇ? 」
オリエラは、ソファーの長椅子の所にすわり、僕とぬいぬいは、一人用のソファーに座り対峙する。僕はワイシャツのポケットから小瓶をだして、片手に握る。
そうすると、小さな水の泡が瓶からふわりふわりと浮かび、僕の手から糸の様なら水が寄り添う様に出現する。泡は糸に沈んでいくと螺旋を描くように、天井に上がりそこで大きな水の塊を作る。椅子1つ分くらいの大きさになると、そこへ水滴を落としたかの様な振動が中心から起こり――。
水の塊は、マンタの姿になって天井を優雅に泳ぐ。残った、水はふたたび、水の泡になり部屋いっぱいに広がる。窓から入る陽射しが水の泡を通して、部屋を水色に染める。
ゆったり、ゆったりと時は流れ始める。
「お前……これは、どう見てもやり過ぎだぞ……」
ぬいぬいが驚き、オリエラは、はしゃぎながら水に泡にふれている。
「ハヤト、この子たち帰りはどうするの? 」
「このままだと部屋が、水びたしでしょ?」
オリエラが、泡を突きながら僕に聞く。
その時、水の泡は小さな魚になって部屋を泳ぎだす。
「それは、こうして手ひらの上に瓶を置いて、帰って欲しいと願うとまた全てが泡になり僕の手の平に集まって来ます」
「少しずつ瓶に帰りますが」
「僅かな水が、僕に帰っているようです」
僕が言葉通りに泡となった水達を小鳥でも集める様に集めている間、ぬいぬいは仏頂ずらで、オリエラは夢見るように見つめていた。
最後のちいさな魚が、オリエラに別れを告げる様に、彼女周りを回ったのち瓶へと帰る。
「ハヤト、お前の魔法センスは素晴らしいが……」
「だから教えずらい……」
「火の精霊で同じ事をやれば、少なからず危険な事になる。たから今後の瓶の訓練は行えない」
「じゃあどうするの師匠」
オリエラは心配そうに僕とぬいぬいを見比べて視線を行き来させている。
「今、考え中」
「まあ、あれだ。訓練の基礎は水の精霊で十分だから心配するな」
つづく
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