魔王がやって来たので

もち雪

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閑話 3

居場所(過去の話)

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 フィーナが、魔王の城に住んでしばらくして、魔王の城の改築が始まる。

 青い鳥の俺は、上空を眺めながら、その工事の過程を眺めて楽しんだ。俺の監督のおかげか工事は、ドワーフとホビーが合同で、担当し3ヶ月という早さで、完成した。


 「よしのさん、よしのさん」
 
 俺が最近、お気に入りの王座の間の玉座の後ろ。俺が勝手につけた名前だが、真の玉座のクッションの上でただ安眠をむさぼっていると、最近俺が面倒みる事になったフィーナが俺に声をかけて来た。

「何だ?、飴でも欲しいのか? 勝手持ってけ、俺の部屋の机の上にあるから」

 俺の暖かい水色の羽毛は、子供にも人気だが、今は自分の睡眠を優先させた。

「違いますよ、そんな子供じゃありません」

 フィーナがふくれっ面をする。そう言うところが、ガキなんだよ。俺はしぶしぶフィーナの肩に乗り、今日一番の声でさえずる。

「ピイーィピョ」

「よしのさん、今日は新しい台所で、私と魔王様で、料理を作る計画なのです」

「だから料理について、わからない時は教えてください」

 そう言う間に、城内に新し建築された場所に、フィーナはどんどん進んでいく。

 囲炉裏いろり掘り炬燵ほりごたつのある部屋に、入った時のいぐさの匂いが……。

 俺を過去へと連れ戻る。

「本当、お前は喧嘩ばっかして、うちら百姓なのにお侍様にでもなるつもりかい」

 記憶の中のお袋は、いつも喧嘩ばかりする俺をいさめていた。小さな弟達をちゃんちゃんこの下に背負いながら米を炊く姿。俺の好物の大根の煮物をよく作ってくれた思い出……。すべて今まで忘れていた。

 親不孝な俺は、お袋の小さな背中を俺は置いて故郷から旅だってしまった、もう絶対に見ること背。それさえも忘れていたのに。

 そのもう戻らない物をいぐさの匂いが思い起こさせた。フィーナもどこか遠くを眺めている様で……。様々な思いが、その瞳にうつる。

「もう行くか?」

「はい」

「よしのさん」

「何だ?」

「いぐさいい匂いですね」

「そうだなぁ」


 台所の入り口をくぐり中に入ると、机に向かい魔王は、向こうを向いて、俺たちを待っていた。ヤーグの金色、ピカピカの髪は今日はひとつに綺麗に編み込まれていた……⁉︎

「ぎゃ――――――!! 」

 俺は、悲鳴を上げて、フィーナの肩から飛び二人の上を飛び回る。

「よしのさん、うるさい耳が痛いです」
 
 魔王に三つ編みをしただろうフィーナが俺を非難する。

「あほか!こっちは心が痛いわ」

「どこの世の中に、三つ編みの魔王がいる」

「まぁまぁ 落ちつけよしの」
 
魔王は、その腰を上げ俺の事をいさめようとするが……。魔王の周りを飛ぶ、俺に魔王の声は……? 魔王のローブを布が止めている……だと? は?!

「はぁ――――――――――――?! 」

 魔王はたすき掛けをしてい立っているだと?

「たすきがけ?! なんで!?」

「なんだ……?」

 魔王は、俺の意図する事がわからないのか?魔王にたすき掛けは、おかしいだろう。

「なんですか、もう……うるさいなあ」

 ってこれも、ちびっ子お前の仕業だろう……。

 ローブにたすきがけをした魔王と、耳をぺったんこに折り曲げ手でおさえたフィーナが俺を下から見あげているがいろんな状況に居たたまれなくなり……。俺は、台所を飛び出していた。

 高潔な闇夜の王ヤーグ……。

 俺はこの姿にたらしめた魔王は、今や見る影もない……。

 俺は玉座まで来ると、玉座に止まり、下を眺める。過去、その景色の中に俺たちは居た。異世界に連れてこられ、勇者と言われその場所さえを離れた俺達。俺とフェイリスとサラ……すべてがうまくいく自信は無かったが、誰か一人でも魔王の息の根を止める覚悟と算段はあったはずだった……。

 しかしあの時、魔王がこの王座からの見下ろした風景の中で……。

 俺たちはなすすべなく敗れ……階段にも届かぬ場所に、フェイリスとサラの死体を俺は見る事になる。

 俺は玉座へ辿るたどる階段をただ、ただ無力にる事さえ出来ずに、その命を終わろうとしていた。

 俺の多くの血と臓物ぞうもつさえ、さらけ出しても、何より大切仲間を失ってさえ……遥か遠く辿り着けなかった玉座の上に俺はやすやすと居る。

 俺が倒したかった魔王は、あいつなのか? あいつでいいのか? すべてが受け入れられなかった。俺はただ無残に敗北しただけなのに……。敗者にそれを語る資格はないのに。

 俺は、今何を望んでいるのか?
 
 何時かたった頃、フィーナが来て、玉座の横にもたれかける様に座る。

「よしのさんここへ、来てください」

 そう言って自分の隣の床を叩きながら、俺を呼ぶ。やって来た俺に、フィーナは呪文を唱えるが、俺はそれを受け入れる受け入れなければいいけない、魔王がそう望むなら。おれは座りただ、丸くなっていた。

 そうすると俺は懐かしい姿のへと変貌をとげていた。
 
 そんな俺にフィーナは黙って、弁当箱を差した。弁当は塩味のおにぎりに、甘い卵焼き。

 ……食事シーンについて話せない。これは俺のものだから。

「今度は、手伝ってくださいね」

「後、人間である内にお弁当箱は、ご自分で洗ってください」

 俺が食べ終わったのを確認したら、そう言って帰っていった。しばらくして、ヤーグがやって来て玉座に座る。

「久しぶりだなその姿は……」

「ああぁ、そうだな」

「そのままの姿で、いたいか?」

「いや、ここに居るには鳥の方が、周りがうるさくないだろうから鳥でいい」

「そうか……」

「そろそろ行かぬと洗えぬぞ」

「そうだな、ご馳走さん」

 鳥はいい何処でも行ける。だから青い鳥の俺はここに居る。

   つづく
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