魔王がやって来たので

もち雪

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未来へ向けて

模索

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 鳥の声が外から聞こえ、僕は、コーヒーを飲み干し、寝室からノート、シャーペンを持ってくる。その間、知らぬ顔で魔王は、外を見ている。
 
 僕はノートの上に、フィーナと書いて丸囲む。その上に父と母と書き線で繋げ、その中間からフィーナにつなげる。この3人が、旧白銀狐の本家しろがねぎつねのほんけ
 
 父の左横の叔父を書き、その左につづけてしらゆき。叔父としらゆきを線で結んで、中間から下に下ろして従兄弟と書き込む。しらゆきから上に伸ばしてしらけむりと書き。
 
 最後に、フィーナの隣に白銀の髪(謎)の女性と、書いた。

「なんだ、殺す順番でも確認しているのか?」

「僕は、この中の誰かを、殺すのですのですか?」

「何、甘えた事を言っておる」

「そんなのは自分で決めろ」

 魔王は、さもつまらないと言うように、机の上でうつ伏せになってしまった。

 この中に、彼女の両親を殺した者がいるかもしれない、居ないかもしれない。そしてこの中のひとり、ふたり、いや書かれていない大勢を僕が……。もしくは誰かが僕を……。ただ暗い気持ちが心の中に、広がる。

 その横で、魔王の艶やかな髪が僕の横で静かに、横たわり机の下に流れ落ちている。
 
(このつやつやな毛が、猫や犬ならきっと癒されるのに……)

「僕は異世界に行く事は出来ないのですか?」
 
 僕が不意に言った言葉に、魔王は答える。

「今、召喚の儀式を執り行う国の王が、亡くなりそうで無理じゃな」

「跡目争いで、それどころではない」
 魔王は、顔を伏せながら手を横に振っている。完全にやる気を失っている。いつもの魔王とは凄い違いだ……。

「魔王は、もしや眠いのでか? 過労ですか?」
(もしや……御歳のせいですか?……)

「歳のせいではないぞ? 」

「えぇ……」

「えぇ……じゃないわ」

「フィーナなど子供の頃からハキハキした子供だったからのう、見ていて面白かったが……お前は面白くない」

「フィーナさんはどんな子だったですか?」

「フィーナがは、城に来た当初は両親を亡くして落ち込んでいたので」

「うるさい鳥に面倒を、見させる事にしたのじゃが……」

「その鳥は、『おい!魔王なんでこんな辛気臭い子供を連れて来たんだ』とフィーナに言ったのだが……」
 
「『魔王様、私、料理の腕はまだまだ半人前ですが、簡単な鳥料理なら得意です』と言って鳥を拘束寸前まで追い込んだ事もあった」

(小さな狐の女の子のフィーナと鳥って童話の挿絵の様な組み合わせで、すごく見たかった)

(でも、どちらかというと魔法少女ぽいかもしれないな……ふむふむ)

「そんなやり取りで鍛えられたのか、会議でもよく小気味よく相手を完封して、そしてわざと少し負けておるな」

「それなのにお前ときたら、紙など書き出して……」

(うーん……魔王の事いつかこらしめよう……)



「魔王様」

「なんだ」

「魔王の事いつかこらしめますね」

「おっそうか? お前も言う様になったな」
 
 魔王が少しうきうきしている。

「なので、異世界に行く方法を教えてください」
 
 僕の言葉が、僕の部屋の中で無機質に響く。

 つづく
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