魔王がやって来たので

もち雪

文字の大きさ
上 下
10 / 267
僕の日常にやって来た魔王 (本編はここからです)

魔王からの相談

しおりを挟む
 始めてみた魔王の瞳は、3つ有り、その瞳すべては、僕を見ていた。 金色こんじきのきれいな瞳の魔王、目は心を表すって嘘だなと僕は確信を持っていた。
 
 そんな魔王と僕は、キッチンでお茶を飲んでいる。テーブルを、はさんで向かい合って……。
 
 魔王に、「コーヒーかお茶かどちらにしますか? 」と、尋ねたら魔王の答えはこうだ。

「うむ、お茶を頼む」

 出したお茶に対しての魔王のは、少しやれやれと言うリアクションをしたように思ったけど……。僕は魔王を見つめ、彼の前のコーヒーカップをも見つめた。
 やはり、お茶用に湯飲みを買った方がいいかもしれない。
 
 僕は、僕の分のお茶を飲んで一息つく。
 朝から踏んだり蹴ったりだった……。
 それは、まだ続くのだろうか? 魔王を見つめると、それが合図だったかの様に、魔王は語りだした。

「我はここではない、異世界の魔界をべる魔王ヤーグだ勇者よ……折り入って相談に来た」

(うん? 相談と言ったのだろうか? 聞き違い? )

 予想もしない言葉に戸惑いつつ、魔王の真の気持ちを探ろうと考えていると、3つ目の目までが僕を見つめる。

「はぁ……」

 僕は力なく曖昧な返事しか出来ない

 (魔王、勇者、相談、アリマス。さっきの痛みで、夢ではないのはわかはしたのだが、ファンタジーだったのか……)
 
 
「草薙ハヤトです。しかしたぶん勇者じゃないと思うのですが……」

 そう言って僕は魔王を見つめる。
 魔王の3つの目でまだ、僕を見つめている。

(これ目をらしたら、負けなやつか、失礼なやつかどっちだろう? 悩む)

「期待に応えて、相談に乗るのは難しいと思いますよ……貴方の魔法に、手も足も出ない勇者なんているのでしょうか?」

 まぁ……ゲームでは、初手負けパターンはよくある事だが、ゲームと現実は違うと今、声を大にして言いたい!そして出来たら、穏便にお帰り願いたいと切に思う。
 
「お前が勇者では無い事にこだわるのなら……、対話で我の人間界侵略を止めて、本物の勇者になればいいではないか? 難しく考えるな」

「この世界を支配するんですか!?」
 
 僕は思わず立ち上がろうとするが…それは椅子に阻まれ上手くいかなかった。

「こんな世界まで、わざわざ侵略などにこん、我はそこまで暇ではない」

 そう言って腕を組み横を向く魔王、なら何故この世界へ相談に来てしまったのか!?
 それを問いただしたい気持ちを抑えて、僕は聞く。

「そちらの世界には勇者は?」居ないのですか?と言い切る前に――。

「だから、それがお前だ」と、魔王の人差し指の先が、僕の目の前へ来る。

 (人を指差してはいけません。どころか……人を刺すこと推奨……だしな……たぶん)
 
 勇者かどうかについと、堂々巡りをしてもらちがあかないので、ここはいったん受け入れるしかないようだ。

「じゃあ何故、勇者に相談を?」

「勇者は人の秘密は、他人に洩らさん」

 (メガフォンでばらしますが……なんなら今すぐにでも……)

「何故……そう考えるのですか? 」

「聞いた者は死ねからだ、我か、我の配下が殺す、一人残らず」

 魔王の声色こわいろは、少し脅迫の色を増したが、それはほんの少しだけで……まるで、今日の天気の話をしているように僕には聞こえた。

「その中に僕は?」

「もちろん入る、だが勇者は変わり者だ」

「皆自ら殺されに来るので、勇者に敬意を示して、それまで待ってやろう」

「それは絶対ですか? 行かない場合も殺しに来ないですか?」

「来ないつもりか? 勇者なのに」

 (魔王の勇者に向ける絶対的な期待……勇者推し……ですか?……反転アンチしちゃいましたか……? )

「それは……時と、場合によります」

 ここは勇者と思われている利点を逃さないが、 明言めいげんを避けると言う戦略にした。

「秘密をばらしても、お前だけは許す。沢山の屍の中で、生きて行けばいい。それがもはや人と言えるかどうかは知らんが……」

「魔界にはそう言うものもおって、逆に美しくさえある時がある。深く考えるな」

 魔王は、とてつもなく怖い事を言いながら、優しく笑っているが、 金色こんじき色の瞳はとても冷たく僕を見つめていた。

 そんな瞳を見つめていると、魔王なりの筋の通しかたがあるかの様な……錯覚?気持ちを感じただけかもしれない……。後悔する事など考えずに……。

「相談はどんな話しでしょうか?」
 と、言ってから、ハッとして否定など出来ずに……。僕は膝の上のこぶしに力を込めた。

 魔王は、僕の不安も、戸惑いも受け入れて口を開く。 

「実は……部下について悩んでおる」

「はぁ……」
 予想と反した答えに僕は、力無く答えた。
 
 魔王は相談を、少し悲しげに言ったのだったが……しかし今の僕の状況の方がよっぱど深刻の様にも思ったが、僕と魔王では背負っているものが違うかもしれないので、とりあえずは魔王の話を引き続き聞く。

「部下はとても有能であるが、まだ若く人間界で言うところの、ジェネレーションギャップを感じるのだ……」
 
「なるほど……」

 そう、さもわかりましたという様に僕は答えた。
 
「最近では、人間界を手に入れる事まで反対してきて……最近の若い魔族は何を考えているのか……」

 そう言うと魔王は深いため息をつき、お茶を飲んだ。決心に、近い気持ちで聞いた質問があまりにも、現実的で僕の気持ちも大きく現実に舞い戻る。

 まず僕はちらっと、玄関へ続くの扉を見るが、台所は魔王の背後にある。携帯、部屋の窓を見る。なんとすれば、部屋から逃げられはするだろうが……そこからどうなるでもないだろう。万が一助けが来た場合、警察はどれ位、魔王に対抗する事が出来るか考える。

 なんかいろいろんでしまっていた。

 自分の選択で、異世界の人間界が滅ぶ事はあるのだろうか?
 やる気を出した部下の魔物に、世界が滅ぼされる未来も想像しつつ。これは大学の選択を心理学部にしていれば、彼らの心の闇を取り除けたかも……? まぁ心理学はあくまでも人間の心理に基づいての学問だろうし無理か……。

 ふと窓の外を見ると、今日は晴れて良い天気だった。

(はぁ……なんだこれ……)




 僕は観念して魔王の異世界の人類の存亡をかけて、真剣に相談に答えることにした。


「まず幾つか質問していいですか?」
 
「質問を認めよう」
 
 魔王が相談をしに来て、そして質問にも魔王の許可を取る矛盾。
 それらの矛盾をくつがえし少しでも有利ならなければ……。
 
「そうですね……」
 
 僕は考えている素ぶりをし、静かに目を閉じた。魔王はそれを黙って見つめていた。
 
「まず貴方は、僕を信頼しているですか? 僕のアドバイスを聞き入れて部下の方にそれを行えるのですか? 今さっき、僕を拘束し支配したりしてましたけど?」

 そうすると、魔王は身体を折り曲げた。
「すまなかった」

 僕その動作の意味をしばらく理解出来なかったが……徐々に理解した。魔王が謝ったのだ。しかも宿敵である人間の勇者だと思っている者に……。

 僕はこの目の前の魔王に、いろいろな夢みたいな共存と言う、見込み見つけとても興味がでてきた。なので……。

「僕も、先ほどは寝起きが悪く、いろいろ言ってすみませんでした」
 
 そう言うと、目の前の魔王は少し目を丸くしていた。

 つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...