雨の日の看板猫

もち雪

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雨の日の看板猫

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 ささ丸は、雨の日にしか駄菓子屋のお店に現れない変な猫だ。

 今日も雨なのでささ丸は、お店の前のクッションの上で丸くなっている。
 全体にふわふわの真っ白な猫だけど、額の所に3枚の笹の葉ような模様になっている。
 
「本当は、もっとかわいい名前だったけど……ある子が通る度にささ丸って言うから覚えちゃったんだよね……」
 おばさんは少し困ったような、なっかしい楽しい思い出を話すように小さな声でこっそり僕の横で言った。
 
「へぇー」
 
「君のお兄さんのヒロ君の事だけどね」
 
「あっ……」
 ぼくより4つ上の兄のヒロ君は、そういえば毎日ささ丸に話しかけたり、なでたりしていた事を、僕は思い出した。

「ささ丸とヒロ君は仲が良かったから……ごめんね、おばさん」

吉野よしのさんだよ」

「そしてうちは“駄菓子の吉野”よろしくね!」

「はい、吉野さんごめんなさい」

「あらあら、怒ってるわけじゃないから大丈夫だよ」

「猫アレルギーや嫌じゃないならささ丸抱っこする?」
 
 僕が、うなづくと吉野さんは、ささ丸を抱っこさせてくれた。
 ささ丸は、僕の腕の中でゴロゴロ声を出しながらのスリスリしてくる。

「やっぱりヒロ君に、ショウ君は似てるからささ丸もなついているわね」

「おぉーショウ君ー!ただいまー!」
 バスが通り過ぎ、バス停に居るヒロ君が手を振っているのが見えた。

「ヒロ君おかえり、テストどうだった?」
 ヒロ君は横断歩道を、ゆっくり確認して渡ってくる。
 昔から母に、「ショウ君の見本となる様になるようにね、ヒロ君」言われているから。
 
「まぁまぁかな?」
 そうヒロ君が近くまで来ると、ささ丸がミャーミャー鳴いてヒロ君の方を見ている。
 
「ショウ君、ささ丸を抱っこさせて」
 僕がヒロ君に、渡そうとするとささ丸は飛びつくようにヒロ君の元に行く。

「本当にささ丸は抱っこ好きですよね、吉野さん」

「ささ丸は、ヒロ君が好きなのよ、自転車で通り過ぎてしまう、晴の日は部屋から出てこないわよ」

「そうなのか? ささ丸、かわいいやつめ」

 「ミャー」いままで聞いたことない声で、ささ丸が鳴く。
 ヒロ君は、そっとささ丸を椅子の上におろし、ささ丸の背中を3回撫でた。

 それがさよならの挨拶になっているのか、またささ丸は丸くなって寝てしまう。

「ショウ君、お母さんが心配してるら帰ろうか」
 僕とヒロ君は、吉野さんとささ丸にお別れの挨拶をして家に帰った。

 次の雨の日もささ丸は、きっと看板猫としてヒロ君を待つのかな?

 おわり
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