アプリで知り合ったイケおじと××する話

市井安希

文字の大きさ
上 下
52 / 55
無題

2

しおりを挟む
 5年生の冬頃から、新しい男の人が家に来るようになった。  
 その人は毎回お土産を持ってきたり、休みの日には映画に連れて行ってくれた。今まで家に来る男の人はたくさんいたけど、僕に話しかけてくる人はいなかったから、すごく不思議な気分だった。  

 お母さんも変わった。

 派手な化粧もしなくなって、スカートも履かなくなった。お気に入りのバッグも売ってしまった。
 なんだか別人みたいだったけど、それが嫌じゃなかった。むしろ「あの人と結婚するのかな」と思うと少し安心した。  
 
「パパって呼んでもいいんだぞ」って笑いながら言ってくるけど、恥ずかしくて呼べなかった。それでも怒らないで頭をガシガシ撫でてくれた。  
 2人が結婚して本当のお父さんになったら……その時は……。

 そう思ってたけど、その日は来なかった。
 
 6年生になって、みんなが修学旅行で北海道に行ってる間、僕は午前中だけ学校に行って勉強した。  
 北海道の歴史とか地理とかがわかるビデオを見せられて、感想文を書いた。

 この家はビンボーだから修学旅行には行けないって、お母さんから何度も聞かされていたから、僕は気にしてない。
 
 俊二くんと友梨ちゃんが「お土産買ってきてあげるね」って約束してくれて嬉しかった。

 家に帰ると、お母さんだけではなくおじさんもいた。  

「秋雄、お前、修学旅行じゃないのか?なんでいるんだ??」  

 おじさんが相手でも、お金がなくて行けないとは言えなかった。

「え……?なんでって……僕、修学旅行、行かないよ?行かなくてもいいもん。だから今日は午前授業で……」
 
 急におじさんの顔が急に怖くなった。  

「何?!」  

 怒ってるのがすぐにわかった。  

 お母さんは急に青ざめて目を泳がせる。
 
「……何よ!何も問題ないでしょ!この子が行かないって言ったのよ?!」  
「問題ないだと?!毎月いくら渡したと思ってんだ?!一体何に使ったんだよ!言え!」  

 おじさんは怒鳴りながらお母さんの肩をつかんで揺さぶった。お母さんは必死に抵抗する。

「何すんのよ!警察呼ぶわよ!やめて!子どもの前で!」  
「呼べよ!呼べばいいだろ!逮捕されるのはお前だ!この泥棒め!こんなときだけ母親ヅラしやがって!」
「やめてっ!痛い!」   
「黙れ!おかしいとは思ってたけど、まさかっ……!」
 
 2人がもみ合いになって、どうすることもできず部屋の隅に逃げた。

「何に使ったんだ!男か?別の男か?!」
「離してってば!」
「言え!」
 
 おじさんも何度も問い詰めたけど、お母さんは絶対に答えなかった。  

 修学旅行のお金として渡されてたはずのそのお金が、何に使われたのか、僕にはわからなかった。服やバッグももう買ってないみたいだったから、余計に謎だった。  

 おじさんはお母さんを突き飛ばしてため息をついた。そして、部屋の隅で縮こまってる僕のほうを見て笑った。いつも通りの優しい顔してた。
  
「秋雄、おじさんの子どもになるか?俺はお前のことが心配だよ……」  

 その時、なんて答えたのか覚えていない。

 でも「うん」って言わなかったから、おじさんは1人で帰ったんだと思う。

 お母さんは修学旅行のことも、今日が午前授業のことも忘れてた。
 修学旅行のことが書いてるプリントも渡したし、午前授業のことも言ったのに、なにも見てないし聞いてなかったみたいだ。

 お母さんは僕を責めた。泣いて、起こって、殴られた。
 おじさんがいなくなったのは僕のせいだって言う。

「お前のせいでこうなった。なんで私の人生の邪魔するの」って……。 

 ……それは違うよ。 

 お母さんがおじさんのお金を他のことに使ったからいけないんだ。
 なのになんで僕を殴るの?なんで?すごく痛いし、怖いよ。

『泥棒め!』 

 言葉が頭から離れない。
 あんなに優しかったおじさんが怒ってるのはお母さんが泥棒したから……。
 お母さんはいつも僕に悪いことをするなと怒るのに……。

 悪いのはどっちだよ。

 初めてそんなこと思った。

 でも、なにも言えない。
 僕が謝ってしばらくしたら、いつも通りになると思うから。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

お兄ちゃん大好きな弟の日常

ミクリ21
BL
僕の朝は早い。 お兄ちゃんを愛するために、早起きは絶対だ。 睡眠時間?ナニソレ美味しいの?

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

処理中です...