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アプリで知り合ったイケおじが×××する話

40 誰の誕生日?

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「ありがとうございましたー」

店員さんのお辞儀に軽く会釈してコンビニを出る。
手には秋雄さんがよく食べていたグミと2人で飲むためのジュース。カバンの中にはラッピングされた男向けの薬用リップが入っている。これでプレゼントは揃った。

今日は待ちに待った秋雄さんの誕生日会。ガキかよって感じだけど、その響きにウキウキしてしまう。

昨日、お祝いのメッセージも送った。

この間の大河や田邊たちのことはどうでもいい。
最近はいい意味で秋雄さんのことばかり考えていた。

スマホの時計は18時39分。午後7時頃に秋雄さんの家に行く約束をしてた。まだ少し余裕があるから暇つぶしするようゆっくりと歩く。
夕暮れ過ぎて、街灯がキラキラ輝き、上機嫌で秋雄さんに「駅に着いたよ!」とLINEしておく。


さっき「ちゃんとケーキ買ってきた?」って聞いたらケーキの箱の写真が送られてきた。なんか可愛い。おじさんだって誕生日には好きなケーキ食べたいよね、うん。

子供みたいに誕生日なんてやってないで、さっさと飯食って寝たいんじゃないのって思っちゃうけど、それはそれでいい。なんもしないで2人でダラダラして一緒に寝たい。すごく楽しいと思う。

今日はヘンな道具は持ってないし、グロいAVを見てどうしたら秋雄さんを満足させられるかとか考えてない。
それでも、なぜか全て上手く行く気がした。

「……がんばろ」

そんな独り言を呟く。

秋雄さんのアパートに着く。一呼吸置いてからチャイムを押した。
扉の向こうから秋雄さんの「はーい」という声とバタバタする音が聞こえてくる。ものすごく意識してしまって、どんな顔したらいいのかな、とか髪乱れてないかな、とドキドキする。
素の自分を見せるのは緊張する。緊張するのは今じゃないぞ、と自分に言い聞かせていたら扉がガチャリと開いた。

「こんばんは。どうぞ、入ってください」
「お邪魔しまーすって……え!?」

迎え入れてくれた秋雄さんはなんと坊主だった。軽く近所迷惑なレベルで大きな声を出してしまって慌てて口を塞ぐ。

「どしたの?めっちゃ短い!」
「ははは、切っちゃいました」
「えっ、なんで?」
「心機一転……ですかね」

そんな会話をしながら家の中へ入る。野球部っぽい坊主じゃなくて、もうちょっと長めだけど秋雄さんにしてはかなり短い。

これは……前に俺が酷いこと言ったから切っちゃったのかな。

「ごめん」って言いかけてやめる。これはもう終わった話だから掘り返さない。

「ねぇねぇ、アタマ触らせて!」
「はい、どーぞ」

軽くお辞儀する姿勢で頭を差し出されるので遠慮なく頭を撫でてみる。

「わっ、めっちゃジョリジョリする!あははっ、なんか楽しいー」

手のひらの感触と黙って撫でられ続けてる秋雄さんが面白くていたずら心に火がつく。
「お~、ヨシヨシ可愛いなぁ」と大型犬を撫でるよう体全体をワシワシ撫でる。秋雄さんも犬扱いされて心なしか嬉しそうだ。

「前はかっこいいって感じだけど、今は可愛い系だね。可愛過ぎて心配。セクハラとか痴漢されてないよね?大丈夫?」
「いや、それは……」
「あるの?んー?」

細い目をもっと細くして困った顔する秋雄さんはもっと可愛い。初めはびっくりしたけどもう見慣れてしまった。眉毛とかおでことか凝視してチュッチュッと何度も軽くキスをする。
なんかすごくいい雰囲気だ。このまま押し倒してヤッちゃいたいくらいだけどお祝いするのが先だと思いとどまる。

「えへ、ケーキもあるしプレゼントも買ってきたし、誕生日会するぞー!おー!」

1人でワーッと盛り上がってる横で秋雄さんがただただニコニコしている。これが俺たちのいつも通り……だと思う。

2人で皿や箸を出したり、テイクアウトした料理をレンジで温める。
手作りのものが一切なく、茶色いものばっかりなのが男って感じだな。赤と緑がピザのトマトとバジルだけだ。
そして飲み物もジュースとお茶だけでアルコールがない。

「飲まないの?」
「飲むとすぐ眠くなるんで。ビールならあるんですけど飲みます?」
「んー。いいや。健全な高校生なんで」
「ですよね」

健全な高校生はおじさんとヤリまくらないだろみたいなツッコミを待ってたけど、秋雄さんはただ納得してコップを取りに台所に行った。マジで言ってると思われたかな?

しかし酒もないとなると本当に子供っぽくて大丈夫かな……と微妙に心配になるがケーキが出てくるとテンションが上がる。
秋雄さんが買ってきたのは飾りのフルーツと雪のような粉糖でデコレーションされているベイクドチーズケーキだった。

「わーめっちゃ美味しそう!ってか結構大きくない?何号?」
「5号です」
「へぇー」

ケーキをテーブルに置こうとするがスペースがなくて置けないからジュースとピザの箱を床に置く。

5号は確か4人から6人分らしい。2人で食べるとなるとちょっと多い。そして秋雄さんはチーズケーキが苦手だったはずだ。
女性社員から貰ったチーズケーキを嫌いと言って手をつけてなかった。もしかして、俺がバクバク食べてたから好きだと思って買ってきてくれたのかな……?あの時はただ嫉妬して、1人で食べちゃっただけなんだけど……。
一度うまいと言ったものを会うたび食わせようとしていくるじーちゃんとばーちゃんを思い出す。

「秋雄さん、チーズケーキ食べるんだっけ?」
「食べるときは食べますよ。誕生日だし」
「あはは、そっかぁ」
「余ったら明日食べましょう」
「うん!」

笑って誕生日を強調してる秋雄さん。ちゃんと楽しんでるっぽい。

「クラッカーとか紙の輪っかとか持って来ればよかったかなー。あはは」
「あとは帽子とか?」
「それいいね。ウケる。今度絶対やるわ」
「クリスマスにでもやりますか」
「うん。決定だね」

もうクリスマスの予定ができた。コップにコーラを注ぎ準備が整う。

「じゃ、秋雄さん41歳の誕生日を祝ってかんぱーい」
「乾杯」
グラスをカチャンとぶつけ、秋雄さん41歳の誕生日パーティーが始まる。

いただきますと手を合わせてとりあえずチキンから食べてみると、秋雄さんも真似するみたいにチキンを頬張る。
チキンは2種類の味を買ってきた。俺が食べているのはハニーマスタード味で、秋雄さんのはスパイスなんとかっていう辛いやつだ。

「これめっちゃうまい」」
「こっちのは結構辛いです」
「1辛から5辛選べて、1辛のにしたんだけど、そんなに?」
「ん、んー?結構っていうかすごい辛いですよ」
「あは、後から来る感じ?」

目がだんだん涙目になって唇を押さえる秋雄さん。……可愛い。
ジュースを飲んで辛さをかき消そうとしてるのもなんか可哀想で可愛い。キュートアグレッションってやつだ。

「え、てかそんな辛いの?マジ?」

「はい」と頷く秋雄さんの声は少し掠れている。激辛が売りって店じゃないのに、そこまで辛いとは……とドキドキしながら一口食べてみるが、そんなに辛くなくて肩透かしをくらう。確かに辛いけど秋雄さんのリアクションほどのものじゃない。
普通に結構辛くて美味しいってレベルだ。

「うーん……?辛いけど……そこまでじゃないかも。秋雄さん辛いのダメなの?」
「そうでもないんですけど」
「秋雄さん食べたのだけ作るの間違えたのかなぁ。ほら、他の食べてみて」
「あ……そんな辛くない……」
「でしょー」

誕生日なのに可哀想。
それからダラダラおしゃべりしながら料理をつまんでると8時になり、バラエティ番組が大家族の特番に変わる。

ちょっとドキッとしてポテトを食べながら秋雄さんの表情をチラッと伺う。
秋雄さんの表情は特にこれと言った変化はなく、テレビに映る赤ちゃんを見て、ボソッと「かわいい」とつぶやいた。
「家族」のワードに過敏に反応しているのは俺の方なのかな。いちいち気にしてたらどんなテレビも本も見られないし、外出だってできない。そんな時期もあったかも知れないけど……。
まじまじと秋雄さんを凝視してると目が合って「ん?」って顔された。

「かわいいなぁって思って見てただけ~。赤ちゃんよりかわいいもん」

秋雄さんはブッと吹き出してむせた。いいリアクションだ。

「絶対買いすぎたよね、これ」
「もう腹一杯です」
「えーダメだよそんなこと言っちゃ。ケーキ食べるんだから!」

料理はまだ3分の1くらい残ってるけど胃は結構来てる。秋雄さんのお腹はちょっとぽっこりしてるから、ついポンポン叩いて遊んでしまう。

「前結構引っ込んでたのにね。鍛えてた?」
「はい、ちょっとだけ。だからすぐ戻っちゃいました」
「んー、こっちの方が秋雄さんって感じだなぁ」
「そうですか?」
「うん。抱き心地があるというか抱き甲斐があるというか……この背中の厚みとかサイコー」

手をお腹から背中に移動させて今度はナデナデして遊ぶ。

「あー……なんか眠くなります、それ」
「じゃあやめる!まだ寝ちゃダメ!!」

こんな早くから眠くなられると困る。ケーキも食べてないし、プレゼントも渡してない。

秋雄さんがトイレに立ったタイミングでちょっとテーブルを片付けてプレゼントを準備する。

戻ってきた秋雄さんは、テーブルの上にある茶色のシックな小箱に目を丸くして、それから恥ずかしそうに微笑む。

「えっ、いいんですか?わー……なんだろう」
「大したものじゃないけどさぁ。開けてみて」
「はい」

箱を開けた秋雄さんは中身を取り出し、不思議そうな顔をした。

「リップだよ、男用の。秋雄さんいっつも唇荒れてるから」
「へぇー……ちっちゃいノリかと思いました」
「誕生日プレゼントノリはやばいでしょ」
「ははは、ですよね。嬉しいです。ありがとうございます」
「あとこれも!秋雄さんいっつも食べてるグミ!」
「ありがとうございます」

何事もなかったように明るく振る舞いケーキを切って取り分ける。

「これどこの?」
「××のです」
「へー、初めて聞いた」

聞き馴染みのないケーキ屋だった。
後でググってみよ。

「うわーっ、汚くなっちゃった!」
「ははは、味は同じですから」

秋雄さんの家には普通の包丁しかなくて、綺麗に切れず、切り口がぐちゃっとなってしまった。せっかく秋雄さんが買ってきてくれたのになんか悲しい見た目だ。

「だよね!じゃ、いただきまーす!」

気にするのをやめてケーキを食べ始める。濃厚な味わいってよりは優しい味で美味しい。秋雄さんも美味しそうにパクパク食べている……と思いきや、すぐに手が止まった。

「えーなに?もう食べないの?」
「もう十分食いましたよ。あとはゆうくんが食べてるの見てます」
「そんなまじまじ見られると食えないって!」
「ふふ。気にしないでください」

秋雄さんはフォークを置き、頬杖をついて俺をジーッと見つめる。た、食べにくい……。

「秋雄さんの誕生日なのに俺ばっかり食べてんのってちょっとヤダ」
「食べたいんですけど、歳だから」
「まだ41のくせに~!」
「胸焼けとか胃もたれするんですよ」

あーだこーだ言いながらケーキを食べ続ける。残ったら明日食べればいいんだし、美味しいと感じてるうちに「ごちそうさま」と手を合わせる。

「俺が片付けるから秋雄さんは座ってて!」
「いや、そんな。悪いですよ」
「いいのいいの。俺が言ってるんだから」
「……じゃあお願いします」

買ってきたものばかりだから後片付けは楽だ。とりあえず、残ったものを皿に移し、冷蔵庫にしまう。食器を洗い、空になった容器を捨てようとゴミ箱を開けるとあるものが目に飛び込んできた。

人のゴミ箱を覗くなんて……と思ったが、目を逸らすことができなかった。
折り畳まれて捨てられているケーキの箱のシールには賞味期限と店名、住所が書かれている。

『××  ○○市店』『〒000ー0000 ○○県 ○○市 ○○○……』

……?秋雄さん、わざわざケーキ買うために○○県に?用事あったって言ってたけど……。

そしてもう1つ飛び込んできたものがある。これを見たらどうして秋雄さんが○○県まで行ったのかわかってしまった。

ドクンドクンと激しく暴れるように心臓が鳴り、指が震える。

ピンクのかわいいの『9』の形をしたローソク。ひっくり返ってるチョコのプレートには『ひなたちゃん おたんじょうびおめでとう』って書いてる……さっき俺がボロボロに切ってしまったケーキが墓前に備えられている風景が浮かんで、消える。

……正直、ショックだった。
頭がぐわんぐわんしてめまいがした。
今日は秋雄さんの誕生日を祝うはずだったのに……亡くなった娘の誕生日を祝う日じゃない。
俺は……秋雄さんのために来たのに……なんで……?

ずっと楽しみにしてたのに。

そう思う自分が、嫌いだ。こんなことも許せないなんて……でも、でも……やっぱり悲しい。どうしても裏切られたような気がしてしまう。

秋雄さんは俺とひなたちゃんを重ねてたのかな。
どういう気持ちで俺がケーキを食べる姿を見てたのかな。

2人前しては大きいケーキはきっと家族で食べてたんだろう。秋雄さんと奥さんと子供と……おじいちゃんとおばあちゃんもいたのかな。かわいい孫の誕生日会だもん。

今、この空間にいるのがものすごく場違いで、罰当たりだと責められてるようで苦しい。
でも本来いるべき人たちはもういない。そんな矛盾が、現実が、また俺を苦しめる。
また手のつけようのない感情に支配されそうな時だった。

「ゆうくん」

背後から名前を呼ばれ、急いでゴミを放り投げて蓋を閉める。

「な、何?」
「2人でやりましょう」

秋雄さんはそう言って水切りカゴにある食器を布巾で拭く。
……何か言わなきゃ。何かって何を?浅はかな自問自答をする前に、口が勝手に動いていた。

「ありがとう。……あのさ」
「はい?」
「ごめんね、見ちゃった。……ローソクとか……」

言ってしまった。

「……すみません」

秋雄さんは手を止め、それから眉を下げて少し笑った。いや、笑ったふりをした。
作り笑いと言うにはあまりにも哀しい。秋雄さんがこのままどっかに消えちゃうんじゃないかってくらいに。
和やかだった雰囲気が一転して、部屋の温度も体温も冷え切ってしまう。

「今日、娘の9歳の誕生日なんです」

はっきりと、あっけなく告げられた。想像通りの言葉なのに心臓が押し潰されて痛む。


「だから墓参り行って、ケーキ供えてきました。妻と娘がここのチーズケーキ好きなんですよ」
「うん……」
「年に2回、もういない人の誕生日ケーキ買って……一口も食べずに捨ててたんですけど。
2人の誕生日と命日は……ううん、毎日、本当に惨めで、悔しくて、嫌になっちゃうんですよね。全部。
今年はもうそんな寂しい思いもしなくて済むって……1人で舞い上がってこんなデカいの用意して……」

あの大きなケーキは秋雄さんの幸せの象徴なのだろう。

「ゆうくんはそんなつもりじゃないってわかってますよ。俺のために色々してくれてるって……わかってて……なんか、よくないですよね、こういうの。
勝手に付き合わせて、すみません」

俺が予想していた答えと引っかかっていたことに対する謝罪のはずなのに、スッキリしないしなんの解決にもなっていない。
秘密を白状させる悪趣味な行いに後味の悪さだけが残ってしまった。
隠したいなら俺の目に触れないよう処分するはずだ。
本当は気づいてほしかったのかな。
『ゆうくんなら』って……思ってたのかな。なら、裏切られたのは秋雄さんの方じゃないか。

「ちょっとびっくりしただけだから、そんな謝んないでよ。2人一緒に祝ったって同じじゃん」

初めからそう思えない自分の器の狭さと底の浅さが嫌になる。
最悪だ。その言葉がよぎった瞬間、抱きしめられた。

窒息しそうなくらい力強く抱きしめられる。厚い背中に腕をまわし、このままどうにでもてほしい、めちゃくちゃにされたいなんてらしくない女々しい思考に襲われる。

このままグズグズに溶けて秋雄さんと混ざり合いたい。そしたら全部理解してあげられるのに。悲しいことも辛いことも分け合いたい。

片付けもそっちのけでベッドに向かう。電気もテレビもつけっぱなしで情緒もクソもない。
声、気をつけなきゃとかベッド汚しちゃうかもなぁとか頭の片隅で考えている。
秋雄さんを押し倒しつつ、シーツの上からペットシートを敷いているか手探りで確認するがわからない。

「あの、大丈夫ですよ。敷いてるんで……」
「そっか」

バレてしまった。ちょっとカッコ悪い。

「こっちも洗浄してるんで、ン、ンン……」

自分からさっさとズボンを下ろそうとする悪い手を掴んで止め、さらに唇を重ねて何も言わせない。今日の唇はいつもと違ってヌルヌルしてて、辛いししょっぱい。
そういや歯も磨いていない。秋雄さんも同じことを考えていて、小さな声で「ピザの味がする」と呟いた。

そしたら急に歯になんか挟まってないか気になってくるし、顔にソースついてないかなって鏡を見たくなる。秋雄さんに至近距離でまじまじと見つめられている今の俺はどんな顔をしてるんだろう。
どうなっても今日は自分を見失うほどカッコつけたり、虚勢を張ったりしないと決めている。

「どうする?シャワー浴びる?」

短くなってしまった髪を撫で、耳元で尋ねる。額がほのかに湿っていて、暑くもないのに汗の匂いがした。秋雄さんも緊張していたらしい。

軽く額にキスをして、いたずらのように瞼にもキスする。意外な場所に秋雄さんはちょっとびっくりしている。
それが可愛くて耳とか顎とか、外国の挨拶みたいに手の甲にもキスする。こんな風に全身にチュッチュするのは久しぶりだ。本当はベロンベロンに舐めまわしたいくらいだ。

「っ、はぁ……」

シャツを捲ってお腹にキス、じゃなくてお腹を舌先で突くようちょっとだけ舐めると色っぽさのないため息が聞こえてくる。

「くすぐったい?」
「はい」
「気持ち良くはない?」
「そう……ですね」
「これは?」
「あっ、んんー……」

ズボンとパンツをちょっとだけずらしてお腹の下の方の毛が生えているあたりを舐めてみる。さっきよりチンコに近いだけあって、性感帯と言ってもいい箇所で、色っぽさが混ざった吐息を漏らす。

「感じてきた?」
「は、はい。ふう、うぅう……」
「チンコ触ってもらえるって期待してる?」
「はい、ンっ!」

「期待してる?」と焦らすそぶりをしつついきなりチンコを掴む。掴むと言っても乱暴に扱わない。竿を掴んで摩るように優しく愛撫する。
今まで乱暴にガシガシやってたから……。
柔らかかったチンコがすぐに固く、大きくなっていくのがわかり、こっちのチンコも勃起してくる。

やっぱり優しく、気持ち良くしてあげようって思って接した方が相手の感度もいい。秋雄さんはいじめられたがってるけど……やっぱり体は正直だ。

「ね。気持ちいい?どう?」
「あっ、ン、き、きもちいです」
「直接触ってほしい?」
「はい、さわって、ほしいですっ」

眉間に皺を寄せ、目をキツく閉じ歯を食いしばる様子は苦悶の表情を浮かべているように見えるが、これが秋雄さんの気持ち良い顔なのだ。ちょっと……っていうかまぁまぁブスだ。
人間の本能剥き出しの生々しい顔つき。興奮しないわけがない。
手の刺激じゃ足りなくて自然と腰が揺れだす。こんなにカッコよくて男らしいのにセックスするとガラッと変わっちゃう。

「誕生日だからね。いっぱいいっぱい気持ちよくさせて、イカせてあげる。もういいやーってなったらちゃんと言ってね」

ズボンを脱がせると立派なテントに釘付けになる。エロくもオシャレでもない黒いボクサーパンツだが、太もものところがむちっと食い込んでいて、そこがエロい。
内ももの肉をぷにぷにつまむと無意識に足を擦り合わせて逃げる。

「いーじゃん恥ずかしがらなくてさ~。ダイエットなんかしちゃって。この足に隙間とかできてたら超ショックだったよ」
「すみません、もうしないです」
「これくらいがベストだし、俺的にはこの足が美脚なわけ」
「はい……」

はぁ?って顔されつつエロオヤジみたいに足を撫で続ける。閉じられた内ももに手を這わせそっと開くよう促し、M字開脚させ、脚の間に座る。

お互いに音を立てヨダレで唇がベタベタになるような節操のない下品なディープキスをする。

「んん、ん、舌……すげー感じる……」
「はぁっわふぅ、ン……んん……」
「こっちも……あは♡ヨダレ垂らしてる♡」
「っ!? ふぐっ!」

不意打ちをつくようパンツに手を滑り込ませると、亀頭は我慢汁でベタベタだった。親指の腹で尿道あたりを優しくぬちゅぬちゅいじるとトロトロと我慢汁が溢れてきてパンツがしっとりと濡れてくる。

本当に感じやすくてびっくりする。
そろそろ脱がして我慢汁を口できれいにしてあげようとすると、俺のズボンに手が伸びてきてスルスルとズボンを下ろされ、パンツの中に手が入ってくる。
玉を優しく揉まれ、竿を数回しごかれ、亀頭を手のひら全体で撫でられる。
チンコの快感より、同じことしてもらってるっての喜びの方が大きい。

「あー、やばっ……はぁああ……」
「あ゛っ、んんん゛ーっ」

しごくスピードを早めると秋雄さんは背中を弓形にしてビクビクしだす。強めの刺激に連動するよう汗の匂いがむわっと濃くなってますます興奮を煽る。

「チンポギンギンすぎだって。そろそろ脱ごっか」

秋雄さんは言葉もなくガクガクと頷く。パンツをずらすとぶるんっ!と勢いよくチンコが飛び出てくる。
その力強さに目を見張っていると秋雄さんも俺のパンツを脱がしてくれる。

「とりあえずさ、1回イく?抜き合したいでしょ?」
「抜き合い、したいですっ、射精したいですっ!」
「イく時はちゃんと宣言するんだよ?」
「は、はひ」

ちょっとだけ命令っぽくすると秋雄さんはヘラヘラだらしない笑みを浮かべおねだりしてくる。
お、なんかいつもの秋雄さんになってきた。
これくらいならかわいいものだ。エロい言葉言わせる程度のお遊びなら俺がリードできる、はず。あまりヒートアップしないようにしようとひっそり決意する。

「あっ、あっ、んんっ」と手の上下するスピードで声が出る俺と、「あ゛っ!う゛う゛ん゛ーッ」とうめき声みたいな喘ぎ声をあげる秋雄さん。時々頑張って声を堪えて唇を噛み締める姿がいじらしい。
後でリップ塗ってあげなきゃ。

「ん、やば、も、イくかもっ」
「俺も、でずっ」
「可愛いね、一緒にイけるかな」
「い゛っ、ふぐっ、い゛ぎだい゛っですっ」

俺の提案に秋雄さんがカクカク首を振る。そしたらがんばんなきゃいけないのは俺だ。もう結構限界まできてる射精感なんとか堪える……つもりだったけど秋雄さんが察して手コキするスピードを緩めてくれた。
情けないよなぁ、俺。

「あ、んっ!!」
「ん゛ん゛んぐぅ~………」

女みたいな高い声とくぐもった低い声がほぼ同時に出て、チンコがビクンッと脈打ち射精する。最近はオナニーする元気もなく、秋雄さんとする時に頑張ってヤッてた……って感じだからこんなに気持ち良い射精をするのは結構久しぶりだった。
秋雄さんをごく普通にイカせてあげたのも久しぶりだ。
そのせいか量も飛距離もすごく、秋雄さんの胸に水で溶いた片栗粉みたいな精液がベッタリとついてしまった。
Tシャツ汚しちゃってごめんと言おうと思ったけど、疲れちゃって言葉が出ない。たった1回でこれか。ずいぶん体力なくなったなぁ。

互いに着たままだった汗で張り付いた上の服を脱ぎ、全裸になる。
秋雄さんがベッド脇に置いてあったティッシュでベタベタになった体をきれいにしてくれると、安心して体の力が抜ける。
秋雄さんの上にドサッと倒れるけど、平気な顔して抱きとめられ、逞しさにドキドキしてしまう。

「……疲れましたか?」
「うん。なんか疲れちゃった、ごめん。もうできないかも」
「じゃあ休みましょうか」
「秋雄さんは?ヤリ足りないでしょ?」
「ゆうくんが満足したら俺はそれで十分ですよ」

……俺もね、そういう気持ちでずっと頑張ってたんだよ。

「ねぇ、秋雄さん。俺、秋雄さんのこと大好きだよ」
「……?ありがとうございます」
「多分ね、秋雄さんが思ってる以上に秋雄さんのこと好きなんだって」
「ふふ……どうしたんですか、急に。俺もゆうくんのこと大好きですよ」
「本当?」
「本当ですよ」

今、「好き」って気持ちを共有していると感じると心が穏やかになる。なんの不安も恐怖もないこの幸福……きっと秋雄さんにも届いてるはずだ。

秋雄さんは黙って頷いて、また俺の頭を撫でる。
全く性的な気配のない仕草だ。家族にするような……子供にするような。もう、これで良いかな。今さっきセックスしてたのに、変なの。
思考がふわふわしてきて、瞼が重い。

「眠くなってきましたか?」
「うん……」

久しぶりに人肌に触れた安堵感から眠気が襲ってくる。肝心なこと、秋雄さんに話してないのに。意識が眠りに落ちていかないように起き上がろうとするが、秋雄さんに抱きしめられて身動きが取れない。
あやされてると気づいた時にはもう目を閉じていて、瞼の裏の暗闇の中、テレビの音声がかすかに聞こえてきて秋雄さんの声だけがはっきりしてる。

「一緒に寝ましょうか」
「そーする……」

優しい言葉に促されて意識を手放した。
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