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アプリで知り合ったイケおじが×××する話

33 誰かの悪口

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昨日家に着いたのは門限ギリギリってところで、ほろ酔い状態の父さんに「裕治が帰ってこないから父さん寂しかったぞー」とダル絡みされ「一杯やろう」と言って母さんに怒られていた。
そんな母さんが用意していた晩飯はハンバーグと唐揚げという運動部しか食わないだろってメニューだった。見てるだけで胸焼けして食べようという気にもならなかったが、遅く帰って来て飯も食わないとなるとまた雰囲気が悪くなるのが目に見えていた。

無理して胃に詰め込んだ悪影響が次の日に来た。

朝からめちゃくちゃ胸焼けと胃もたれがして、用意されたフルグラすら食べられずサラダのミニトマトだけ食べた。親世代ってなぜか朝飯を食わせたがる。

胃のムカつき我慢し続け、昼休み半ば頃に耐えきれずトイレで吐いてしまった。
大河と光太郎が最近ダイエット中の女子みたいな量しか食ってないと言ってくるから仕方なく購買で買ったパンとオレンジジュースを口にしたのがいけなかった。
弁当は昨日の残りの唐揚げってわかってるから、カバンから出さないで2人には「母さんが寝坊したから今日はパンなんだ」と嘘をついていた。

「っ、はぁ……気持ちわりー……マジ最悪……ごほっ」

便座に手をついて肩で息をする。口の中は酸っぱいんだか苦いんだかでめちゃくちゃだし喉もイガイガする。便器の中に浮いた食事であったものをうんざりした気分で流す。

「うえ~……もうヤダな……うう……」

ティッシュで口を拭きながら小4の時にインフルエンザにかかって吐いた記憶を辿る。
あの時は母さんが看病してくれたっけな……。

早くこんな最悪な場所から出たいし口をすすぎたいのは山々だけど、力が出ない。イス代わりに便座に座ってと深いため息をつくと数人トイレに入ってくる。

「え、まじであいつなの?」
「うん、絶対そうだって」
「ゲー、気持ちワリィ」
「あいつ顔だけはいいからなぁ」
「顔だけはな、ウケる」

あ。これは悪口言ってんな。顔だけはいいってもしかして俺のことだったりして?あはは、ウケる。
どこの誰か知らないけど人がいる場所で悪口なんていうモンじゃないぞ、トラブルの元だ。っていうか出ていくの気まずいんだけど……。

「あいつらにキャーキャー言ってる女子たちに教えてやりてぇわ」
「あ、それいいな。今度見たら写真撮ってこいよ」
「そうすっかなー」

悪口は止まらない。便所になにしに来てるんだろうこいつら。気まずさよりこんな連中に気を遣ってる自分がバカらしくなってあえて存在をアピールするために勢いよくトイレの個室の扉を開ける。

「それでって……」
「……」
「……」

そこにいたのはたぶんだけど、田辺のクラスの連中で、いかにも隠キャでオタクっぽいそいつら3人は会話を止めギョッとした顔で俺の方を振り返った。

トイレがシーンと静まり返る。

え……なにこの反応。まじで俺のことだったわけ?でも別になにを言われてもどうとも思わない。強がりではなく事実だ。俺の人生に関わってくるようなヤツらではないからだ。

チラチラ見られてるのを無視して口をすすぎ、髪を整えてトイレを後にする。

こいつらが本当に俺のことを言っていたとわかったのは3日後の話だった。
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