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アプリで知り合ったイケおじをオナ電でチク射させる話
21 SMプレイと暴力
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9月1日。夏休みが終わって久しぶりにクラスメイトの顔を見てもなんの感情も湧かない。
学校生活のせいで秋雄さんと会える時間が減ると考えたら無性にムカつくというか、やってられない気分になる。
担任の先生が今日の日程を説明するけど全く頭に入っていかない。頬杖をつきながら窓の外を眺め、父さんと2人でいた時は好き放題してたから、母さんの前でボロが出ないように気をつけなきゃと考えていた。
その日はずっとボーッとしてしまい、大河と光太郎から体調悪いのか?って心配されてしまう。
「昨日母さん帰って来てきてペース乱されちゃってさぁ」と言うと「あーお前のかーちゃんスッゲー元気だもんなぁ~」って納得された。俺の母さんはこういう人だ。
ある日のことだ。昼休み、バスケ部3年プラス俺というメンバーで学食でメシを喰うことにした。
バスケ部3年はキャプテンの田邊、篠原、佐々木、大河と光太郎の5人しかおらず、誰も真面目に部活をやってない。だから居心地良くて部外者の俺が堂々と居座ってるんだけど。
学食は混んでいて、6人で座れそうな場所がない。食堂の入り口で「購買でなんか買って教室で食うか?」と話し合っていると田邊が「あー、大丈夫大丈夫」と既に4人で座っているテーブルに向かってズカズカ歩いていく。
田邊は見るからに隠キャの4人組に親しげに声をかけると、4人は慌ててかっこむように食事を終え、逃げるように食器を返却口に置いて去っていった。田邊が腕で大きくマルを作る。
どうやら座れるようだ。
「さっすがナベちゃーん」
「あー腹減ったわ。カレーうどんにしよっかなー」
「ってかさっきの誰よ?」
「同じクラスなんだけどな、名前とか覚えてねーわ」
佐々木と篠原は平然と食券を買いに行く。俺たち3人はちょっと困った顔を見合わせてから食券を買った。
無理言って席を開けさせたのだろう。田邊は悪いヤツではないんだけど、こういうところがある。佐々木と篠原は田邊のこういうところを好んでいた。そこが大河と光太郎と違う。
日替わり定食を食べながらそう分析する。
大盛りのカレーうどんとおにぎりを食べ終わった田邊が思い出したように語り出した。
「あのさ、ここだけの話なんだけどさぁ、女子大生がSMプレイで殺された事件あるじゃん?」
急に出てきた「SMプレイ」「殺された」っていう単語にドキッとする。顔に出さないようにごく普通に相槌を打つ。
「あー、あれな」
「あの殺された女、俺の従兄弟の元カノなんだよなぁ、ヤバくない?」
「うわ、マジ?」
「一瞬だけ付き合ってたって言ってた」
……正直聞きたくない話題だった。
名門校に通う美人な女子大生がSM専門の出会い系で会った会社員の男にラブホで殺された事件。初め男は同意の上で行われたプレイ中の事故だと言っていたが、当時の様子を撮影した動画が見つかり、殺人事件と断定された。
男はサディストではなくただの人殺しがしたいサイコパスだったのだ。
俺は秋雄さんに新しいご主人様を見つけろって言ったけど……こういうこともあるなんて考えてなかった。
SMプレイと暴力は違う。ましてや人殺しなんて……。
俺には関係ない話のはずなのに、ズーンと胸が苦しくなりどんどん思考が暗くなっていくが、それを知らない田邊たちはどんどん盛り上がる。
「従兄弟××大でさぁ、その女とは合コンで知り合ったの。その日に向こうから誘われたから速攻ホテル行ってさ」
「え、めっちゃビッチじゃん」
「行くほうもヤバくない?」
「お互いヤバいってことにしといて!でさ、脱いだらなんか手首にアザあってリスカしてるメンヘラだと思ったんだって。そしたら縛られた痕だって言われて……」
田邊が腕を上げて磔にされてるジェスチャーをする。光太郎はイメージが掴めなくて首を傾げていたが、俺はそれを使ったことがある。痕が残るほどキツく縛ってはいないが。
「従兄弟まぁまぁSでさ、叩いてって頼まれたから、鞭の代わりにベルトで叩いたりしたって言ってた。軽ーくね?軽く」
「うわ、本物じゃん」
「痛いのが好きって痛覚とかどうなってんだろうね?おかしくってんのかな?」
「アタマがおかしくなってんじゃない?」
さりげない大河の言葉がグサリと突き刺さりジンジンと痛む。アタマがおかしいってどうしてそんな酷い言い方するんだよ!って怒りたいような泣きたいような気分になる。でもこれが世間の一般的な考えなんだ。
「でさぁ、しばらく付き合ってたんだけど、女が首絞めてとか言い出すようになったんだって。満足できないとかなんとか……。それで怪我させたりしたらもう事件じゃん?!手に負えないって感じで別れたって」
「あー……それで出会い系に走ったってことか」
「いくらドMでも殺されたいとは思わねーよなー」
「なんか可哀想だなー、美人なのにもったいない」
みんながアレコレ言う中で俺だけ黙り込んで箸を握りしめていた。
こういう時、なんて言うのが普通なんだろう。俺にとって聞き流したり笑い飛ばせるような軽い話題じゃない。
「あれ、どうした裕治?」
「え、な、何が?」
大河に顔を覗き込まれハッとする。田邊たちもどうしたの?って顔で俺を見つめていた。光太郎が箸で俺の器を指して「全然食べてないじゃん」と言った。
女子大生殺人事件の話題になってから頭がゴチャゴチャしちゃって、手が止まっていた。
「お前らが気色悪い話題で盛り上がってるからだろーがよ」
「あらら、いおりんって繊細ね」
「そのキモいあだ名もやめろ」
「じゃあババ沼のブラチラ見ちゃった話する?」
「吐き気催すわ、最悪」
俺と田邊のやりとりを見て4人がゲラゲラ笑う。話題が先生の悪口になりようやく再び飯を食べることができた。田邊の言う通り俺は案外繊細なのかもしれない。
学校生活のせいで秋雄さんと会える時間が減ると考えたら無性にムカつくというか、やってられない気分になる。
担任の先生が今日の日程を説明するけど全く頭に入っていかない。頬杖をつきながら窓の外を眺め、父さんと2人でいた時は好き放題してたから、母さんの前でボロが出ないように気をつけなきゃと考えていた。
その日はずっとボーッとしてしまい、大河と光太郎から体調悪いのか?って心配されてしまう。
「昨日母さん帰って来てきてペース乱されちゃってさぁ」と言うと「あーお前のかーちゃんスッゲー元気だもんなぁ~」って納得された。俺の母さんはこういう人だ。
ある日のことだ。昼休み、バスケ部3年プラス俺というメンバーで学食でメシを喰うことにした。
バスケ部3年はキャプテンの田邊、篠原、佐々木、大河と光太郎の5人しかおらず、誰も真面目に部活をやってない。だから居心地良くて部外者の俺が堂々と居座ってるんだけど。
学食は混んでいて、6人で座れそうな場所がない。食堂の入り口で「購買でなんか買って教室で食うか?」と話し合っていると田邊が「あー、大丈夫大丈夫」と既に4人で座っているテーブルに向かってズカズカ歩いていく。
田邊は見るからに隠キャの4人組に親しげに声をかけると、4人は慌ててかっこむように食事を終え、逃げるように食器を返却口に置いて去っていった。田邊が腕で大きくマルを作る。
どうやら座れるようだ。
「さっすがナベちゃーん」
「あー腹減ったわ。カレーうどんにしよっかなー」
「ってかさっきの誰よ?」
「同じクラスなんだけどな、名前とか覚えてねーわ」
佐々木と篠原は平然と食券を買いに行く。俺たち3人はちょっと困った顔を見合わせてから食券を買った。
無理言って席を開けさせたのだろう。田邊は悪いヤツではないんだけど、こういうところがある。佐々木と篠原は田邊のこういうところを好んでいた。そこが大河と光太郎と違う。
日替わり定食を食べながらそう分析する。
大盛りのカレーうどんとおにぎりを食べ終わった田邊が思い出したように語り出した。
「あのさ、ここだけの話なんだけどさぁ、女子大生がSMプレイで殺された事件あるじゃん?」
急に出てきた「SMプレイ」「殺された」っていう単語にドキッとする。顔に出さないようにごく普通に相槌を打つ。
「あー、あれな」
「あの殺された女、俺の従兄弟の元カノなんだよなぁ、ヤバくない?」
「うわ、マジ?」
「一瞬だけ付き合ってたって言ってた」
……正直聞きたくない話題だった。
名門校に通う美人な女子大生がSM専門の出会い系で会った会社員の男にラブホで殺された事件。初め男は同意の上で行われたプレイ中の事故だと言っていたが、当時の様子を撮影した動画が見つかり、殺人事件と断定された。
男はサディストではなくただの人殺しがしたいサイコパスだったのだ。
俺は秋雄さんに新しいご主人様を見つけろって言ったけど……こういうこともあるなんて考えてなかった。
SMプレイと暴力は違う。ましてや人殺しなんて……。
俺には関係ない話のはずなのに、ズーンと胸が苦しくなりどんどん思考が暗くなっていくが、それを知らない田邊たちはどんどん盛り上がる。
「従兄弟××大でさぁ、その女とは合コンで知り合ったの。その日に向こうから誘われたから速攻ホテル行ってさ」
「え、めっちゃビッチじゃん」
「行くほうもヤバくない?」
「お互いヤバいってことにしといて!でさ、脱いだらなんか手首にアザあってリスカしてるメンヘラだと思ったんだって。そしたら縛られた痕だって言われて……」
田邊が腕を上げて磔にされてるジェスチャーをする。光太郎はイメージが掴めなくて首を傾げていたが、俺はそれを使ったことがある。痕が残るほどキツく縛ってはいないが。
「従兄弟まぁまぁSでさ、叩いてって頼まれたから、鞭の代わりにベルトで叩いたりしたって言ってた。軽ーくね?軽く」
「うわ、本物じゃん」
「痛いのが好きって痛覚とかどうなってんだろうね?おかしくってんのかな?」
「アタマがおかしくなってんじゃない?」
さりげない大河の言葉がグサリと突き刺さりジンジンと痛む。アタマがおかしいってどうしてそんな酷い言い方するんだよ!って怒りたいような泣きたいような気分になる。でもこれが世間の一般的な考えなんだ。
「でさぁ、しばらく付き合ってたんだけど、女が首絞めてとか言い出すようになったんだって。満足できないとかなんとか……。それで怪我させたりしたらもう事件じゃん?!手に負えないって感じで別れたって」
「あー……それで出会い系に走ったってことか」
「いくらドMでも殺されたいとは思わねーよなー」
「なんか可哀想だなー、美人なのにもったいない」
みんながアレコレ言う中で俺だけ黙り込んで箸を握りしめていた。
こういう時、なんて言うのが普通なんだろう。俺にとって聞き流したり笑い飛ばせるような軽い話題じゃない。
「あれ、どうした裕治?」
「え、な、何が?」
大河に顔を覗き込まれハッとする。田邊たちもどうしたの?って顔で俺を見つめていた。光太郎が箸で俺の器を指して「全然食べてないじゃん」と言った。
女子大生殺人事件の話題になってから頭がゴチャゴチャしちゃって、手が止まっていた。
「お前らが気色悪い話題で盛り上がってるからだろーがよ」
「あらら、いおりんって繊細ね」
「そのキモいあだ名もやめろ」
「じゃあババ沼のブラチラ見ちゃった話する?」
「吐き気催すわ、最悪」
俺と田邊のやりとりを見て4人がゲラゲラ笑う。話題が先生の悪口になりようやく再び飯を食べることができた。田邊の言う通り俺は案外繊細なのかもしれない。
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