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アプリで知り合ったイケおじが俺専用生ハメ便器(仮)になりたい話

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安希

アプリで知り合ったイケおじが俺専用生ハメ便器(仮)になりたい話/安希の小説
イケおじシリーズ 完結済み #3
アプリで知り合ったイケおじが俺専用生ハメ便器(仮)になりたい話
31,677文字1時間3分
セフレ持ちイケイケ高校生×いじめられ願望持ちおじさんの話です。

攻めが若さゆえに自分の気持ちをコントロールできず受けが不憫です。
セーファーセックスというより挿入ナシなだけで、臭いフェチ的なシーンがあります。
雨降って地固まる的な回。

攻めも受けもバイなので今後女性キャラとの絡みシーンがあると思います。

また漏らしてますが最終的には克服するのでそちらを期待してる方はすみません…。

フォロワーの儘にさん(@atnooome369)と心が痛むBLっていいよねって盛り上がって出来た話です。

illust/84957090
キャラ設定のイラスト描いてもらいました!

続きを読む
R-18オリジナル♡喘ぎ創作BL年下攻め

100
111

3,012
2020年7月29日 00:41

トイレの個室に入り、しっかりと鍵をかけ向かい合う。洋式の便座の蓋を閉じてそこに荷物を置く。
秋雄さんはここに来る途中顔を赤くしたり青くしたりと忙しかった。
いつもは2人きりの空間になるとすぐ発情したメス顔するけど、今は顔が固まりきって無表情になっている。それでいて俺を誘うようにドエロい匂いをムンムンさせてるんだからたまらない。
たまらないんだけど……気になることがある。

「そんなに緊張されちゃあさぁ、こっちも萎えるんだけど」
「う……す、すみません」
「彼氏いたよね」
「はい」
「クンニされてあんなにヨガって処女で未開発ってワケ……ないでしょ」

今まで本気で挿入するつもりがなかったからわざわざ開発済みかなんて聞かなかった。
こうして尋ねたのは秋雄さんのビビリようにこっちがドキドキしてしまったからだ。さすがに処女だったらいじわるしすぎたなと後味が悪い。

「処女じゃないし、開発されたんですけど……」
「けど?」
「若い頃に指とかアナル用の細い道具で開発されて、1回だけ挿入れたっきりで……処女みたいなモンかと……」
「えっ……そうだったの?!1回だけ?!なんで?!」
「ヤッた後すぐ別れたんです」

秋雄さんの彼氏は冗談でおもらしするように調教して、酷い扱いをするようなヤツだ。
処女を食って捨てたのだろう。苦々しい思いがこみ上げてくる。今の俺がこんなこと言っちゃ偽善者っぽいけど。

「自分でいじったりはしてないの?」
「彼氏と別れた後、ちょっとだけ……でも自分でしてもあんまり気持ちよくなかったんで、すぐにやめました。指挿入れたりも、全然。だから今はどうなってるか……」
「それっていくつの時の話なの」
「20の時です」

20年ぶりの男同士の相手が俺って……なんかすごいな。
てか20年も経ってよくまたヤろうとするよな……と驚くけど、亡き奥さんを想って女を抱かず、男に抱かれるのを選んだのかもしれない。

「わ、そうなんだ……。それから彼氏作ろうとか男とエッチしたいって気持ちはなかったんだ」
「うーん、彼氏がほしいとは思わなかったです。ちゃんと付き合ってからセックスするのって面倒だったので、セックスできる相手探してた時期はあったけど、そういうのも良くないなってなって……結局……。元々ホモじゃなかったし」
「ふーん」

淡々と過去を語る秋雄さんだったが、その瞳はどこか遠くを見ていて少し辛そうに見える。
色々思い出させちゃったかな……。
ただ質問してただけなのに、さっき酷いこと言った時より心が痛んでくる。でも秋雄さんはもっともっと痛い思いをしたのだ。それが20年前の出来事だとしても事実であることに変わりない。

あぁ、やっぱり愛しいな、可愛いな、と思った。

俺は本物のサディストになってしまったのかもしれない。
人に無理難題を押し付け冷たい言葉を浴びせ、公衆トイレに連れ出して辛そうな顔で興奮してしまう。下腹部がズキンズキンと甘く痺れて背筋がゾワゾワしてくる。
早く混じり気のない快感で押し潰してあげたい。大の男を支配したい。
いつもどおり言葉でいじめてあげることにする。

「手を頭の後ろで組んで。秋雄さんのだーい好きな脇マンコ全開の恥ずかしいポーズ、して」
「あ……はい♡」

秋雄さんは命令通りのポーズをする。羞恥心を煽る率直なワードを出すとちゃんと従う。

半袖から濃いめの脇毛がちょっとはみ出ている。チラリズムっていうか……少しだけ見えてる方が興奮する……のかな?いや、どっちでも興奮する。

「ここ、咥えて」
「ん、ひゃい……♡」
「ふふ、なんでも言うこと聞いちゃってさ。犬みたい」

シャツの裾を咥えせて上半身を露わにさせる。空気に触れて小さな乳首がツンッと勃起して乳輪もキュッと縮こまり色濃くなってより黒っぽくなってる。
顔を近づけて凝視すると甘い吐息を漏らしてもどかしくお腹をへこまたり膨らませたりする。

へそあたりから直線状に生えている腹毛を指でつまみながら「すぐに勃起する淫乱乳首だね♡ヘンタイ♡」と囁くと本当に犬みたいにクゥンと喉を鳴らした。何か言ったのかもしれないが、シャツを噛んでいるから喋ることができない。猿ぐつわみたいなもんだ。

右の乳首にふーっと息を吹きかけると全身に鳥肌が立ちフンフンと鼻息を荒くする。快感を得ているのかは定かではないが、敏感であるのに間違いない。
舌を平たくしてザラつき押し当てるよう、乳首を乳輪ごと下から上へゆっくり舐め上げる。くにっと乳首が持ち上げられると頭上から「んふぅーつ♡ふー♡」と吐息と喘ぎ声が混じったものが聞こえてくる。ちらっと上目遣いで様子を見ると、目を閉じ鼻をヒクヒクさせて裾を噛み締めている。
またゆっくり舐めあげるとしょっぱい汗の味がした。
左の乳首も同じように舐め上げるが反応が鈍い。押し殺したような吐息しか出てこない。

「右の方が感じるの?」と尋ねるとコクコク頷く。

「なんでだろうね~?」

両乳首を遠慮なく親指と人差し指でつまみ上げクリクリ♡と捻るよう愛撫する。もうちょっと痛めつけても良さそうだったからきゅっきゅっと引っ張って伸ばしてみる。

「ん♡んん♡な、なんか、ひ、右のクリ乳首の方が感じひゃって♡♡♡ひとひでチンポシコシコ♡ひてる時も……んっ♡右ばっか♡さわっへまふ…♡♡♡」

少し痛くなってきたのか眉根を寄せ歯を食いしばって苦悶の表情を浮かべる。
それでも快感の方が強いようでしっかりと感じている。痛みを薄めると快楽になるというらしいけど……本当なのかも。俺は痛いのなんて絶対イヤだけど。

「へー、チクニーしてんだぁ♡」
「何回もイくかは……♡触っひゃいまふ……♡♡♡」
「秋雄さん乳首でイキ狂っちゃうもんねぇ、こんな風にされたらすぐメスイキしちゃうもんね♡」
「んひぅ♡♡ゔゔううっ♡♡♡んううっ♡♡♡」

痛めつけた次は5本の指で乳首、乳輪、肌をいたずらでこちょこちょくすぐるようにしてやると全身がガクガクさせて雄叫びじみた嬌声を上げる。苦しんでいるようにも見えたが優しい責めでちっとも痛くないし、作業着のズボンの上からでも勃起し始めてるってわかる。股間がこんもりとしてきた。
汗が噴き出し酸っぱい汗の臭いが濃くなる。胸板がしっとりしてきてますますエロい。

「ほら♡イッちゃうね♡乳首にいたずらされてアクメしちゃうんだね♡♡こんなデッカいチンポぶら下げてんのに乳首でイッちゃうんだもん♡♡ほんと宝の持ち腐れだね♡」
「ん〝うぅぅう♡ひっんひぃぃい♡♡」
「ほーら、とっととアクメしな、ザコ乳首アクメしな♡♡イケよ、ほら、イケってば♡」
「ん〝ん〝ーーーーーっ♡♡♡」」

イケ、と声をかけながら両乳首をピンッ!と弾くと仰け反って太ももをガクガクさせながら絶頂した。絶頂と言っても射精はしていないし、こんな刺激でイクのは難しいし、脳イキみたいなもんだろうな、と思った。
秋雄さんがイッたと言えばイッたってことにしてるから、あんま気にしてないけど実際のところどうなんだろう……。

「なに、マジでもうイッたの?」
「ん、んひゃい♡」
「あはは、やば」

やっぱりイッたらしい。イッてもなお脇見せポーズに裾を咥えることを忘れない。
笑いながら特に感じる右乳首を浅ましい体だと戒めるよう雑にいじると「んくぅぅうう♡」と悲鳴をあげてまたイッてしまう。もう足腰に力が入らないようでガニ股になってやっと立っている。
カクカクと絶頂の余韻に震え下品なポーズにさらに磨きがかかっていた。
たまんないけど、口が封じられているせいでいつもの淫語がなくてちょっと寂しいからシャツを脱がせることにする。

「服脱いで」
「全部ですか?」
「うーん。まずは上だけでいいや」

脱いだシャツを雑に丸め便座の蓋の上に置く。上半身裸になり、命令されずとも手を頭の後ろで組んで恥ずかしそうに脇を見せてくれる。
あえて目を合わせながら、丸めたシャツを広げ、脇のところに鼻を埋めスンスンと音を立てて臭いを嗅ぐ。秋雄さんはさすがに慌ててシャツを奪おうとするが「手は後ろ!」と注意すると渋々脇見せのポーズをして、ヘンな顔で俯く。

「んん……♡やっば……結構臭おうね……♡」
「ホント……マジで……もう……やめてゆうくん……」
「んー?聞こえないよー?」

秋雄さんを無視し鼻から思いっきり吸い込み、ふーっと至福のため息をつく。

体臭とタバコの臭いに少しだけ混じっていたスパイスっぽい臭いはやっぱり脇からのもので、シャツに染み付いている。
汗臭さとは違うちょっとツンと来る感じ……ワキガなんだろうなって思った。

俺はこの臭いは嫌いじゃない。っていうか、好きな方なのかもしれない。

俺が初めて年上の男に性的な興奮を感じたのは小学6年生の時だ。当時野球クラブに所属していた。20代後半くらいのコーチのお兄さんのことが好きだった。
そのお兄さんは今思うとワキガっぽくて、練習の終わり頃になるといつもデオドラントが負けて独特の臭いをさせていた。その臭いを嗅ぐとお兄さんをより強く感じている気がしてわざと抱きついたりひっついたりして甘えていた。
合宿の時、体を洗ってもらった時、勃起してしまった。その晩、トイレでお兄さんに体を洗ってもらった感覚をとあの臭いを思い出しながらチンコをしごいて精通を迎えた。

めちゃくちゃ変態っぽいけど臭いフェチってワケではない、と思う。
カッコいい無臭な人とブサイクで臭うヤツだったら前者を選ぶし、トモナガさんは無臭だ。

秋雄さんみたいにかっこよくていやらしい男がこんなムンムンにキツい臭いを振りまいているっていうのが最高なだけで、臭いフェチではないと思う。たぶん……。

スンスンと臭いを嗅ぎながらズボンの上からチンコを揉みしだく。俺にとって性の象徴やフェロモンの塊と言える臭いに当てられて少し触っただけで完勃ちしてしまった。むき出しになった亀頭がパンツの生地に擦れてソワソワした刺激に腰が揺れる。

「んぅ……♡1日でこうなっちゃうんだ……やばいね♡」
「う、う……」
「車の中とかすっごいんだろうね……♡クラクラしちゃいそう……♡」
「す、すみません……すみません……」

こっちは欲望のままオスの旨味が凝縮されたシャツを堪能し、すっかり快感に溺れているというのに秋雄さんは浮かない表情で本当に申し訳なさそうにずっと謝罪を繰り返している。さっきはイキっぱなしであんなにトロトロになっていたのに。
これは普通じゃないと思い、慌ててシャツを置いて、右手で頭を撫で左手を頬に当ててあやすようにする。べたりとした感触がする。

「え、なに……どうしたの。なんで謝ってんの?」
「臭いし汚いし……処女じゃないのに、貫通済み中古マンコのくせに手間かかるし……」
「え……そんなん気にしないって!臭いとか……別に嫌いじゃないし……。手間とか思ってないし……!」

中古って嫌な響きだった。トモナガさんとヤッてるからそんなこと気にしないし、少しの臭いも汚れも媚薬みたいなもので、興奮させる材料でしかない。
そんな風に自分を傷つける必要はないのに……と思って顔をしかめると秋雄さんはそれに気づいてしまう。 

「すみません、こんな汚い便器なんか使いたくないと思うけど、使ってほしいです。生チンポで俺のマンコの奥まで突いて、ザーメンたっぷり注いで種付けしてください……。今日はそのために来たから……。俺のマンコ、ゆうくんのおチンポの形にして……お願いします」

頬に当てていた手の上に秋雄さんの大きな手が重ねられ、懇願するような瞳で見つめられる。

「挿入れて」って感じじゃなくて「助けて」って感じだった。

そういや今日は別れたくてそんな名目で呼び出したんだったな。興奮のあまりすっかり忘れていたし、なんでそんなことになったんだっけ?と思ってしまう。
秋雄さんの手が小さく震えているのが嫌でもわかる。大の大人が震えるほど恐怖しているのを目の当たりにして、こっちもうっすらと恐怖を感じる。もう散々弄んだし、そろそろネタバラシにしよう……。

「秋雄さん、震えてるよ。挿入れてって言ってるけど本当はイヤなんでしょ。俺、そういうことで怒らないよ。正直に言って」
「え……。あ、これは、そういうわけじゃ……」

慌てて手を引っ込めて痛々しい笑顔を浮かべる。強がりではなく俺の機嫌を取るための愛想笑いであった。
……こういうところが嫌いだ。

「今日はあんなことで呼び出してごめん。俺も本気じゃなかった。秋雄さんを怒らせようと思ってあんなLINEしたし、マジで来ると思ってなかったから酷いことも言ったし、こんなところで挿入れようとした」
「なに……なんで……本気じゃないって、なにが?」

困惑する秋雄さんに正面から「別れたかった」というのはとても気が引けたが、ここで言わなければいつ言うんだと自分に喝を入れる。

「秋雄さんて逆らえないっていうかイヤだって思っても言えないよね。正直言って俺はそういうヤツ嫌いでさ、イライラしちゃうんだ。だから秋雄さんのそういうところどうかなって思って……ちょっと合わないなって思って……」
「……」
「楽しくエッチできればそれだけでよかったんだけどさ、こんなんじゃ何してもお互い楽しくないよね」
「そんなこと……」
「体だけの関係だし、フェードアウトしないかなって思ってたけど」
「あぁ……」
「どうしようかなって考えて、それで面白半分でわざと嫌がる命令した」
「……うん、そうなんだ」

さっきまで狭い個室に充満していたいやらしいムードは消え失せなんとも言えない気まずい空気に包まれている。上半身裸の秋雄さんと勃起した俺の間にじっとりとした沈黙が広がる。
なんか完全に言うタイミングを間違えた。散々乳首捏ねて臭い嗅いで「楽しくない」とか言うなんて風俗で説教するオヤジと一緒じゃないか。
秋雄さんが素直に「挿入れるのは嫌だ」って言ったらそこらへんのことは有耶無耶にして可愛がってあげたのに……。
別れるかどうかは射精した後に考えるなんて余裕ぶってたけどこの体はやはり手放したくない。……別れたくなかった。
心の底から嫌だって気持ちが湧き上がってくるが、それを言ってしまったら性欲に負けたみたいでみじめだ。

そんなことを考えていると秋雄がうなだれるよう頭を下げた。

「やめてよ、秋雄さん!」

肩を揺すって顔を上げるよう促すが効果はなく、ついには膝をつきそのまま床に手をついて額を擦りつける。俺は生まれて初めて大人が土下座している姿を見たし、土下座をされたのも初めてだった。
トイレで裸になって土下座するなんて普通じゃない。その異様な光景に俺は後ずさりしてしまった。

強くやめろと制したつもりだが「や、やめてよ……そんなことしないでよ……」と半ばうわ言のようになってしまう。それに反して秋雄さんの口調はやけにはっきりとしててさらに恐怖を煽る。

「ゆうくんに不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。そんなことも気づかないバカで申し訳ありません。すみません。俺は本当に便器になりたいと思ってます……。
奴隷以下の扱いで構いません、呼ばれたらすぐに行くし、なんだってします。ザーメン便所じゃなくて、本当の便所になってもいいです。……あ、あ、なります!
く、口でちゃんと小便もクソも綺麗にさせていただきます……!
今までフェラもマンコもできなくてすみませんでした。ゆうくんが優しいから、そこまで考えられなくて……すみません……思い上がってました……やり直すチャンスをください、お願いします……!」
「あ、秋雄さん……」
「キツすぎて気持ちよくないって言われたけどヤッてれば緩くなると思うし……お願いします……ケツ穴ガバガバにされても文句いいません……!飽きたら売ってください……!」

もうかける言葉はなかった。
何も思いつかなくて呆然とするしかない。なんなんだ、一体なんなんだ……。また一歩後ずさりすると背中が壁にぶつかる。もうこれ以上距離を取ることができなかった。
背中が壁にぶつかり、ギシリと音がして秋雄さんがハッと顔を上げる。パクパクと唇を動かし、間抜けに壁に張り付いている俺を見て、秋雄さんは再び床に顔を擦り付け肩を震わせる。

「わ、別れたくない……別れたくないです……。いや、いやだ……、ハメてください、彼氏さんが帰ってくるまでの間……がんばるから……」

ズズっと鼻をすする音に心が痛む。

「秋雄さんは俺と別れたくないんだね」
「……はい。できれば……彼氏さんが帰って来るまで……って勝手に思ってて……すみません」
「あのLINE見ても……こんな酷い目に遭っても?」
「気持ちよくなりたかったら挿入れてあげるって言ってたのに……結局挿入れたいんだなぁって驚いたしショックだったけど……これで終わるのは嫌だって思って……。生でヤッたら少しの間は繋ぎ止められるかと思って……」

「すみません」と秋雄さんが呟く。秋雄さんは一生懸命命令をこなそうとしたが、秋雄さんが従順になればなるほど俺の思惑から外れていく。奇妙なものだ。

「なんでそんなに俺がいいの」と尋ねるとすぐに「優しいから」と返ってきた。
俺が優しいわけないだろう。
雛が初めて見たものを親と思って懐くのと同じで、初めてアプリでマッチングした相手を好きと思い込んでいるのだ。

それでもここまで無様に惨めに人から求められたのは初めてだったし、こんな風に人を求めたことはない。
……トモナガさんが俺を置いて旅行に行くと知った時はショックだったが、嫌われたくなくて余裕ぶって聞き分けいいフリをした。トモナガさんが喜ぶと知ってぶりっ子して拗ねるふりはしたけど。
こんな風に行かないでってお願いしたら……多分引かれて嫌われちゃうだろうけど、少しくらい本気になって「寂しい」「行かないで」って引き止めたら何かが変わったかもしれない。

秋雄さんに腹が立っていじわるしたのはイヤなことをイヤと言えなかった自分を重ねていたからなんだろうか。
……無様なのは俺だった。

「秋雄さん、もう顔上げて。汚いよ……カッコいい顔が汚れちゃう」

そう優しく声をかけしゃがむとすごい勢いでバッと顔を上げる。

「き、汚いですか?汚いですよね、だから気兼ねなくザーメンでも小便でもかけていいんですよ、ね、ね?」
「違う!トイレの床が汚いってこと!秋雄さんは汚くなんかない……!」

証明するようギュッと抱きしめ、なんの迷いもなくキスをする。

「あっ、ダメだって……!汚ないって……!」

身を捩って突き放されるとすぐに力負けしてしまい、尻もちをつく。尻に鈍い痛みを感じながら「ちゃんとダメって言えるじゃん」って安心する傍で秋雄さんは俺を突き飛ばしてしまったショックでまた顔を青くしたり赤くしたりしている。

また土下座しそうになるので甘えるよう「起こして」と両手を広げ立たせてもらう。

「ごめんね、痛かったね」
「ううん、平気」

またギュッと抱きつくと今度はさすがにおとなしい。耳の裏や首に鼻を埋めスンスンと臭いを嗅ぐと落ち着く。さっきはあんなに欲情してたのに不思議だ。

「秋雄さんのこの臭いだーい好き……。エロくてヤバい。フェロモンって感じ。チンコ疼いちゃう。てか秋雄さんが好き。めっちゃ好き……可愛い……。こんなの味わったら別れられないよ……」
「え……?」
「いじわるしてごめん。もうしない。自分の気持ち、話してくれてありがとう」
「あぁ……」
「なんか……秋雄さんのこと大事にしなきゃって思った……」
「本当、ですか」
「うん、本当」

俺は秋雄さんになりたいけどなれなかった。
きっと理解されないだろうからそこは伏せておく。

「俺が挿入れてって言うまで待っててくれますか?」
「ううん、挿入れなくてもいい。最初の約束通りちゃんといじめてあげる」
「あぁ、それは……挿入れてほしいです。ちゃんと中で気持ちよくなって見たいし、俺のマンコでゆうくんのことイカせてみたい……♡」
「2人でちゃんと気持ちよくなりたいってことだね?」
「ん……やっぱゆうくん専用の生ハメ便器になりたい……って言ったら引きますか?」
「ううん、嬉しい。なってよ、俺専用の生ハメ便器に……♡」
「はい♡♡♡」

何度も頷く秋雄さんの頭を優しく撫でてあげる。
人生初めてかつ1回のセックスでキツくて気持ちよくないって言われたって……たぶん秋雄さんも気持ちよくなかったんだろうな……。だから挿入を怖がって、その反動で「ハメて」とか卑猥な言葉で求めてしまうのかな。
またしても秋雄さんの暗い部分に触れてしまった。

「触んない方いいって、ベタベタして汚いって」
「可愛いしさ、汚くないしさ……自分のことそんな風に言うのやめなよ」
「でも……1日風呂入んないだけでこんなだしさぁ」
「俺、包茎だから風呂入っててもちょっと汚れてる時あるけどトモナガさんは可愛いって言ってくれるんだよ。だから秋雄さんも可愛いの」
「えぇ~?うーん……」
「今日とか汗かいたからすごいことになってるかも」

密着しながらダラダラと他愛のない会話をする。
秋雄さんも落ち着いてきたというか自分を落ち着かせようとして会話の合間に呼吸を整えている。さっきのことはなかったみたいにして裸の背中をさすると気持ちよさそうに喉を鳴らす。

秋雄さんはどうやら汚いとか臭いってワードが地雷らしい。もしかしたら漏らしちゃった時、元カレにそういうことを言われたのかもしれない。

「……見てみる?」
「えっ」

あんなに衛生面を気にしていた秋雄さんがわざわざ俺の汚れた包茎チンコを見たいわけがないと思って冗談を言ったけど、秋雄さんは興奮気味に頷く。

秋雄さんは目の前にちょうど俺の股間がくる位置でしゃがむ。喉仏が艶めかしく上下に動いた。
見たいと言う人に見せるから羞恥心もなくファスナーを下げパンツをずらして萎えてしまったチンコを見せつける。先っぽが皮で隠れているのでそーっと剥くと面白みのない亀頭と竿が露わになる。汚れより大きさの方を気にしてしまう自分がいた。

「全然汚れてないよ、ゆうくん」
「今日はね」
「臭いも……そんな……若い子の臭いって感じ」

亀頭に鼻先を近づけて入念に臭いを確認される。少しおしっこの臭いがこもっているかもしれないくらいだ。俺は体臭が薄い体質らしいからムワァッとしたオスの臭いはしないし、実は汚れていることも滅多にない。

「若い子の臭い嗅んだことあるの?」
「うーん、毎日自分のオッサンの臭い嗅ぐことになるからねぇ」
「なるほどね」

「秋雄さんのチンポも見せてよ。大っきくてすっごいの見たい……♡」と耳元でねっとりと囁き乳首を指の腹でくるくると転がすと。それだけでズボンがググッと持ち上がった。「見たいって言っておいて引くなよ……」と何度も念を押されて、ズボンを下げパンツをずらすとボロンッ!と赤黒いチンコが飛び出てくる。

「あっ♡すご……♡♡」

その勢いに圧倒されてしまい、まさしく肉の棒と呼ぶのがふさわしい、常人ならもう完勃ちレベルのチンコを申し訳なさそうに見せつけられ口の中が生唾でいっぱいになる。
臭いも想像通りの男っぽい臭いで、持ち上げてもらうと亀頭裏に白いモノが付着している。

「ちょっと汚れてるね……♡ね、触らせて?もっと大きくして、それでイカせてあげる♡」
「いや……!マジでダメ、それはダメ!!」

顔を真っ赤にしてチンコをパンツの中に仕舞い込んでこれ以上なにもさせないと言わんばかりにしっかりファスナーを上げ、ベルトを締める。せっかく綺麗にしてきたんだしお尻も見せてもらおうと思ったのに……。残念と肩をすくめるも、テントが張った股間にしか目がいかない。

「直接触らないんだったらいいの……?じゃあズボンの上からいじってあげる。そのままパンツの中にビュービューしちゃいなよ……♡
そんなでっかいのパンパンに勃起させて外歩けないしさ♡
『あのおじさん、人前でデカチン勃起させてて恥ずかしくないの?』ってみーんなガン見しちゃうよ♡見て欲しいなら別だけど……。
せっかく久し振りに会えたのに1人でシコシコして満足できる?ん?」

俺もパンツにチンコを仕舞い込んで、腰を反らせて小ぶりなテントを見せつける。ズボンはあえて履かず、我慢汁でシミができていく様をわかるようにした。

「あ、あ、あ……♡で、できない♡無理♡そんなの無理♡♡」
「乳首メスイキキメたらザーメン射精もしたいでしょ?♡」
「したいっ……♡♡♡イキたいっ♡」
「じゃあお互い布越しでチンポキスしよっか♡ほらスリスリして♡♡」

普通パンツにそのまま射精なんて後始末が面倒で絶対やらないけど、今日は秋雄さんとお揃いにするため特別だ♡

互いに腰を突き出し股間のテントの頂点をこすり合せる。
俺の方が足が長いからこすり合せるにはちょっとガニ股気味になる必要がある。
恥ずかしい体勢だけど気にしちゃいられない。

「あっ♡ふふ、秋雄さんのまた大っきくなったね♡どんだけデカくなんの?もうチンポが本体って感じだね♡♡ん♡んん♡」
「お゛ぅ、っあ゛ーーーっ♡あは、は♡もっともっと大きくなっちゃいます♡♡我慢の効かないバカチンポだからどんどん大っきくなっちゃって……♡恥ずかしい♡淫乱の証拠です♡おっ♡おお゛っん♡」

丸出しの敏感になった亀頭がパンツの生地に擦れそこから電流が流れてるみたいにビクビクして、はしたない喘ぎ声が止まらないが秋雄さんは俺以上だった♡
交尾してる動物みたいに腰をカクカクさせ汚ったないおほ声を披露している♡♡ズボンの上からの刺激を余すことなく拾おうとして必死になって、大好きな淫語を使って自分を興奮させている。

「お゛ぅうう~♡♡チンコ♡やば♡♡擦れてるだけなのに♡あっ♡あっ♡き、亀頭♡やば♡すき♡」
「亀頭好き?ん、あぁ、ん♡亀頭スリスリと乳首ビンビンされるのどっち好き?」
「りょ、両方!」
「じゃあ亀頭スリスリと乳首ちゅーっちゅーってされるのはぁ?」
「あ、あ、♡わかんな♡両方好きぃ♡♡もうなんもわかんない♡」
「ん゛っ♡ふふふ、かわいい……♡」

わかんない♡わかんない♡を子供が駄々を捏ねるよう首を横に振り、寄り目になって泣いている貪欲に性を貪る姿が愛おしい。

「マ、マンコもこんな風に♡お゛っ♡き、気持ちよくしてね、ゆうくん♡♡♡ゆうくんとおマンコしたいっ♡♡専用の穴になるまで、あっ♡もうちょっと待ってくださいね♡♡んうう゛っ♡」
「本当にハメられたいんだね♡素直でかわいいよ……う、ん、んぅ♡」

着飾らないありのままの秋雄さんの卑しいメスの姿を見つめたい。どんなショーよりも愉快で美しい。開いた口からヨダレが止まらなくて、もうこの淫らな世界に没頭してしまう。
金玉がギューンとせり上がって絶頂が近いことを知らせる。

イキたい……!秋雄さんと一緒に気持ちよくなりたい……!

その想いが全身をぐわんぐわんと揺さぶるが、ちょっと早いんじゃないかなと思って歯を食いしばり耐える。パンツが漏らしたみたいにびしょびしょになって本来なら気持ち悪いはずだが血が甘く沸騰して快楽により麻痺している。俺もまた浅ましい動物だった。

あー…♡やばい♡チンコこすり合せてるだけなのに超気持ちいい……。このままグイグイして溜まった精液を発射して楽になりたい……!
トモナガさんは「いつでも好きにイケよ」って言ってくれるけど、秋雄さんはアヘ顔を晒し自分の世界にいる。涙もヨダレも鼻水もダダ漏れで俺がリードしてあげなきゃいけない。
パンツの中も俺と同じく我慢汁で溢れちゃってるんだろうな……♡
もっとこの快感を味あわせてあげたい……でもどうしよう、先にイッちゃいそうだ……。
その恐怖から腰の動きが止まってしまうが、秋雄さんが俺のお尻に手を回し、自らグリグリグリ~っ♡とチンポを当てて来てスクワットするみたいに上下に動いてガッツリと刺激を与えてくる。

「ッーーーーー?!♡♡」

いきなりのことに俺はあっけなくイッてしまった……。

尿道に熱いものが上がってきて、ドックンドックンとものすごく濃いのが長い間出てるとわかる。我慢していた分気持ちよくて腰が抜けてしまうそうだったが、秋雄さんのことを置いておいてイッてしまった罪悪感に頭がクラクラした。
「ごめん」と言いかけると口を塞がれるようチュッチュッと可愛らしいキスをされベロベロ唇を舐めまわされる。舌を絡ませ応えようとしたは、その前に顔を離される。
あ、やっぱディープキスはだめかぁ……と落胆しているとにへらっ♡と笑われドキッとする。

「ゆうくん♡ゆうくん♡♡俺の体でイッてくれましたか……?♡♡途中、腰とアヘ顔止まんなくてオナホのくせに……ザーメン処理便器のくせにイキそうになっちゃって……ごめんなさい♡♡♡生意気ですみません♡お、怒りましたか?こんなヤツにハメたくないですか……?♡」
「ううん♡すっごいハメたいよ♡一生懸命頑張ってチンポでチンポコキしてくれたんだね……♡ご褒美にドプドプ出してマンコも子宮も俺のザーメンでマーキングしてやりたい♡
俺専用の肉便器だってわからせてあげる……♡♡
秋雄さんの処女マンコにキッツいアクメ教えてあげたい……♡」

秋雄さんが喜ぶと思って正直な気持ちを下品な言葉で遠慮なく言うと、イヤイヤと首を振りまたベターっと土下座しだす。……秋雄さんにとって土下座とは単なるパフォーマンスでしかないのだろう。
痛みもなく道具も必要ない、口だけマゾな秋雄さんにはぴったりなパフォーマンス。
もう驚かないでどっしりと受け止めてあげよう。トイレのやけに明るい証明に照らされた裸の逞しい背中を見てそう決意する。

「あ、あ、だめ♡だめだって♡♡言ってください♡処女じゃないし……♡
ゆうくんを差し置いてイキそうになるなんてサイテーだってぇ♡言って♡ください♡♡」

顔は見えないが声が震えている。もちろん興奮で。
褒めてあげたつもりなのにダメと言えとねだられて少し困る。お気に召さなかったのかな?
俺は最低なんて言葉でなじりたくはなかったので考えを逆にしてみる。

「なんだよ調子に乗ってに指図して……!最低だって言えだって?マゾ便器のくせにエラソーじゃん♡」

俺の酷いセリフに秋雄さんはパッと顔を上げ満面の笑みで「ごめんなさい♡ごめんなさい♡申し訳ありませんでした♡」とヘコヘコ土下座を繰り返す。
どうやら正解だったようだ♡「おい、立てよ」と乱暴な口調で命令してするとすぐに立ちあがり期待した目で見つめられる。口汚く罵られ土下座を繰り返したお陰でチンコはもうバッキバキの完勃ちでビックンビックンと暴れている。ちょっと突いただけで射精しそうな勢いだ♡
その力強さに男として負けたような悔しいような気分になるが、そんな秋雄さんは俺の命令に従って申し訳なさそうにチンコを勃起させているどうしようもない変態なのだ。

「俺もうイッたし、秋雄さんもさっさと適当に済ませてよ」

見せつけるようにパンツをずらし、トイレットペーパーで精液を拭う。ねばっこくて糸を引いている。
自分でもこんなに濃くてドロドロなものが出るのは久しぶりだった。こすり合せただけなのに、搾り取られたかと錯覚してしまう。自分でも生臭さにウッと顔を顰めてしまった。

「そ、そんなぁ♡さっきパンツの中でビュービューしてもいいって言ったのに♡」
「しちゃダメとは言ってないじゃん、バカだなぁ。1人でオナッて済ませろって言ってんの」
「んん♡んー♡」
「ほら、しろよ。置いて帰るよ?」
「あっ、ちょっ、待っ……!ゔぅん、んんーッ!」
足をモジモジとさせて触って触ってとアピールしてくる秋雄さんを少しの間だけからかう。
荷物をまとめる素振りをしたら慌てて乱暴にズボンの上からゴシゴシとチンコを擦りはじめる。射精するためだけの強い刺激はあまり気持ちよくなさそうだった。

「うん、上出来。すっごい面白かったから俺がオナるの手伝ってあげる♡ほらシコシコってしろよ♡」

そう言って秋雄さんの血管の浮かんだ手に俺の手を重ね、一緒にチンコを扱く。

「あ、ありがとうございま、あ、あ゛ッ♡う゛ぅぅあ゛ーーーーーーッ♡♡♡」

手が2、3回往復して、みっともなくお礼を言っている最中、秋雄さんは雄叫びを上げて絶頂した。電流が走った……なんて甘い表現ではすまない。スタンガンで攻撃されたみたいに体を跳ねらせグシャリと座り込んでしまう。目がぐりんっと白目を剥き、ぽっかり開いた唇からは「あ……あ……うう……」と喃語のようなものしかでてこない。
気持ちよくて力抜けちゃったんだ……♡なんて思ったが様子がおかしい。

座ったままピクリともせず白目を剥いたままダランとしている。え……これって……気絶してる……?

「え、あ、秋雄さん!?ちょっと!!大丈夫!?」

肩を掴んで重い体を揺さぶってみるが反応はない。思い切って強めにベチベチと頬を叩くとようやく目を覚ました。秋雄さん自身も驚いていて、どうして自分が座って俺に揺さぶられているのか全くわかっていなかった。

「あ……なんで俺……?どうした……?」
「急に倒れたんだよ!それで意識なくて……気絶しちゃって……し、死んじゃったかと思った……」
「マジで……?」

意識がなかったのはほんの数秒だったが本当に死んでしまったと思って、怖くて手が震え、汗が滝のように流れた。こうして目が覚めて意識がはっきりした今でも、安堵感より恐怖が優っている。
ちょっと涙が溢れてしまって、こんなんで年上で暗い過去を持つ秋雄さんを受け止めるなんて無理なんじゃないかなって勝手にショックを受けている。
しかしショックを受けたのは秋雄さんも同じだった。

「もう、クソ、なんで……!あ、あ、また……」

作業着の股のところが濡れていて、床にも水たまりが出来てどんどん広がっていく。
独特の臭いがしてきて、漏らしちゃったんだってわかってしまう。

「いいよ、秋雄さん、まだ出る?出しちゃってもいいよ、大丈夫……」
「い、嫌だ、こんな……!便所で漏らすなんて……!」」
「秋雄さん……!」

さっきまであんなに淫らな世界に没頭して獣ように快楽を貪っていたというのに、楽しかった雰囲気が一転してしまう。秋雄さんはやはりこの癖を受け入れることはできないようだ。
なんとか立ち上がった時にはもう出終わったようで、下半身をビショビショにして呆然としていた。
ここまで落ち込んだ人に「エロいよ」とか「スッキリしたね」という言葉もかけられない。

「え、えっと……着替え、しよっか!服、どうしよう。えーっと……俺、買ってくるからちょっと待ってて!」
「いいよ……。車に置いてあるから……」
「じゃあ取りに行ってくるよ!カギ、ちょうだい!」

俺の呼びかけに反応を示さず、便器の蓋の上に置いてあったシャツをモゾモゾと着て便座に腰掛ける。もう目も合わせてくれなかった。

「悪いし……いいよ。ごめん、もう帰って……」

帰ってと言われて帰るワケにはいかない。秋雄さんを置いてけぼりにするのは気が引けたが、どこかから服と下着を調達するしかない。

「秋雄さん、すぐに帰ってくるから待っててね。どこにも行かないでね」

肩を揺さぶって無理矢理顔が見えるようにしたが視線だけで目を逸らされる。
唇が「いいよ」と動いていたが、何度も「待ってて」と念を押すよう言い聞かせ、トイレを飛び出る。

駅前に大きなスーパーがあった。あそこなら衣料品も取り扱っているだろう。
スーパーに入るなり店員さんに「男物の服と下着ってどこにありますか?」と半ば叫ぶよう尋ねると、紳士服売場まで案内してくれた。

サイズとかはわからないけど、小さくて履けないってことにならなきゃいいだろう。本当に適当にベージュのチノパンと黒いボクサーパンツをカゴに入れ、ついでにタオルも買う。
ダッシュでトイレに戻ると、俺たちが使っていた個室にカギがかかっていて、他には誰もいない。控えめにノックをして「秋雄さん……いる?」と尋ねるとすぐに扉が少しだけ開く。
幽霊みたいな顔した秋雄さんが半分だけ顔を覗かせていた。

「これ、使って」と隙間から袋を渡すと「ありがとう」と言って受け取ってくれた。
ガチャンとドアが閉まり、ゴソゴソ衣摺れの音が聞こえてくる。

「秋雄さん、俺、今日は帰るね」

ドア越しに秋雄さんが息を飲む音が聞こえた。

「あぁ……うん」
「いてほしい?」
「……1人になりたい」
「うん。わかった」

「じゃあね」と呟いてトイレから出て行く。足取りは重かったけど、帰らなきゃ。

帰りの電車に揺られながら夢から覚めたみたいな気持ちで窓の外を眺める。
帰ってきて良かったのかなって不安になる反面それしかない、思い上がるなよって自分に言い聞かせる。

今日は色々あって……結局いやらしいことをした。しないつもりだったのに……そもそも別れるつもりだったのに……。
それで今はちゃんと大事にしようって決めた。自分の心がころころ変わってついていけないけど、嘘はないと思う。
ガラス窓に反射する俺はぐったりとしていた。秋雄さんの方が疲れちゃったに違いない。
次会った時、どんな顔すればいいんだろう。そもそも秋雄さんから「もう会いたくない」って言われてしまうかもしれないし……。
家に着くとフラフラで父さんに熱中症かと心配されてしまった。
「ちょっと疲れただけだよ」って言い残して汗まみれの体で部屋のベッドに横たわり、気を紛らわすためスマホを開くと『上西秋雄さんからの新着メッセージ』がありますと表示されていた。

「え、え、え、なんだろう……」

別れ際のどんよりとした顔から悪いことしか思い浮かばなくてLINEを見るのが怖かった。
しかし意を決してタップすると予想外の文字が並んでいた。

『服ありがとう。お礼したいから空いてる日教えてください』

スタンプも絵文字もない一見素っ気ない文章だが、それが飾らなくて駆け引き感もなくて心地いい。
俺は急いで『いつでも!』と送信してスマホを胸に抱きしめバタバタと暴れた。





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