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異形手紙
異形手紙(4)
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「とりあえず逃げるよ!早く!」
教室のドアの前には黒い何かが立っていた。
こっちを見て笑っていた。
明らかな異形、いや、そもそも形がわからない。わかるのは黒い色、そして目がある事、後は…
「あれは、わたし…?」
「蛍火君!早く!」
唖然としていたが、鳴味からの檄が飛び、我に返る。
「蛍火君!結衣君!今は距離を取ろう!私に着いてくるんだ!」
急いで教室を出て、昇降口へ向かう。
「結衣君、君をロッカーに閉じ込めたのもあの異形で当たっているね?」
「はい、初めは蛍火かと思って、近づいてみると全然違ってて…」
結衣はあれを私だと思った?
あれも私を見つけたと言っていた。
私は?わたしは?ワタシは?
「とりあえずグラウンドまで出たらそこで休憩しよう、幸い足は早くないようだ。」
昇降口を出て、グラウンドまで出てきた。突然の出来事に胸が締め付けられるように痛い。
「はぁ…はぁ…鳴味さん、全然状況がわからないんですけど、あれは一体何なんですか…」
「そこからだよね、まずは説明する。あれは紛れもなく、今回君たちを巻き込んだ怪異そのものだ。そして、」
「蛍火君、君自身でもある。」
やっぱり私だったのか、やっぱり?
でも私はここにいる、どういうことだ?
「もっと詳しく言うと、あれは君のカラダを乗っ取って現出した怪異だ、君はもう死んでいると言っただろう?つまりここにいる君は霊体。その経緯については…」
その経緯については?
「君、SNSか何かで回ってきたメッセージ、転送しなかっただろう?スマホを見てごらん、思い出すはずだ。」
スマホを見る。灯火からのメッセージ。
それを見て思い出した。
「お姉、今学校でこんなのがまた流行っててさ~もう友達に送るのも面倒臭いし、送らないのも怖いし、どうしよう??何かいい方法ない?」
休日に実家へ帰った時に灯火とこんな会話をした。そして私は。
「面倒臭いよね~私が高校の時もあったあった、それお姉に送っちゃっていいよ、どうせただの噂だし。」
そう言い放ち、そのメッセージを灯火から受け取り、誰かに送ることをしなかった。
停滞させたのだ。
「思い出したかい?そういう事だ、君は脈々と連なる負の連鎖を自分で停滞させた、いや、受け止めてしまったんだよ。」
私がメッセージを止めてしまっていた。
「こんな噂話なんて本来は小さな力しか持たないものだ、大抵は人を不快にさせるくらいのもの。しかし、それが本当に相手を呪っていたものであったら?その連鎖が何回も続いたものであったら?連鎖の度に人の歪な感情を吸収していたなら?」
ああ、納得、理解できてしまった。
結衣が私を探していた理由も。
結衣があれを私だと思った事も。
そして、あれが私を探している理由も。
「巷で噂になっているメッセージっていうのは灯火の高校で流行っているもので」
そう、
「大学で噂になっている、いなくなった結衣の友達は私で」
そして、
「あれは、私を殺して、完全にカラダを乗っ取ろうとしている。私になろうとしている。その為に結衣を攫った。その認識でいいですか?」
「うん、本来なら霊体化した魂は自然消滅するから、あれ的には時を待てば良かったんだろうけど、運良く、運悪く、結衣君があれと遭遇してしまった。そこでやり方を考えたんだろう。結衣君を探しに君が来ると、処理が早くできると、ね。」
そして昇降口まであれは迫っていた。
のろのろと呪詛を吐きながら、黒い何かが垂れながらグラウンドまで向かってきている。
「私はどうすればいいんでしょうか…死にたくないです。」
「私も蛍火に死んで欲しくない、元に戻って欲しいです!鳴味さん!何かできませんか!?」
結衣が悲痛な声で私の心配をしてくれる。
私は幸せものだ、元はと言えば私が悪いんだ。死にたくはない、しかし、助からないなら、いっそとも思ってしまう。
「まあまあ、2人とも慌てない慌てない。あと、蛍火君は諦めるな。結衣君がこんなになって心配してくれているのに、その気持ちを無下にしないでくれ。」
「でも、どうやって…」
「そのメッセージ、私に送ってくれ。それで一件落着…とはいかないが、何とかはなる。いや、何とかしてみせよう。」
「え?でもそんな事したら次は鳴味さんが…」
「いいからいいから、ほら、もうあれこっちに来るよ?君死んじゃうよ?いや、死んじゃってるのか。まあ、それはいいとして、解決できるから提案してるんだ。私は死なない、ここにいる皆無事で帰れる。約束する。」
本当に大丈夫だろうか?自分が犠牲になろうとしていないだろうか?だが、皆が無事に帰れるなら、
「わかりました、送ります。の前に連絡先教えて貰えませんか?」
「そうだった、失敬失敬。…はい、これからもどうぞよろしく。」
鳴味蕾火、その宛先へと私は、今。
「これが終わったら美味しいご飯でも食べに行こうか、いや、蛍火君のカレーがいいかな。」
送信ボタンを押した。
教室のドアの前には黒い何かが立っていた。
こっちを見て笑っていた。
明らかな異形、いや、そもそも形がわからない。わかるのは黒い色、そして目がある事、後は…
「あれは、わたし…?」
「蛍火君!早く!」
唖然としていたが、鳴味からの檄が飛び、我に返る。
「蛍火君!結衣君!今は距離を取ろう!私に着いてくるんだ!」
急いで教室を出て、昇降口へ向かう。
「結衣君、君をロッカーに閉じ込めたのもあの異形で当たっているね?」
「はい、初めは蛍火かと思って、近づいてみると全然違ってて…」
結衣はあれを私だと思った?
あれも私を見つけたと言っていた。
私は?わたしは?ワタシは?
「とりあえずグラウンドまで出たらそこで休憩しよう、幸い足は早くないようだ。」
昇降口を出て、グラウンドまで出てきた。突然の出来事に胸が締め付けられるように痛い。
「はぁ…はぁ…鳴味さん、全然状況がわからないんですけど、あれは一体何なんですか…」
「そこからだよね、まずは説明する。あれは紛れもなく、今回君たちを巻き込んだ怪異そのものだ。そして、」
「蛍火君、君自身でもある。」
やっぱり私だったのか、やっぱり?
でも私はここにいる、どういうことだ?
「もっと詳しく言うと、あれは君のカラダを乗っ取って現出した怪異だ、君はもう死んでいると言っただろう?つまりここにいる君は霊体。その経緯については…」
その経緯については?
「君、SNSか何かで回ってきたメッセージ、転送しなかっただろう?スマホを見てごらん、思い出すはずだ。」
スマホを見る。灯火からのメッセージ。
それを見て思い出した。
「お姉、今学校でこんなのがまた流行っててさ~もう友達に送るのも面倒臭いし、送らないのも怖いし、どうしよう??何かいい方法ない?」
休日に実家へ帰った時に灯火とこんな会話をした。そして私は。
「面倒臭いよね~私が高校の時もあったあった、それお姉に送っちゃっていいよ、どうせただの噂だし。」
そう言い放ち、そのメッセージを灯火から受け取り、誰かに送ることをしなかった。
停滞させたのだ。
「思い出したかい?そういう事だ、君は脈々と連なる負の連鎖を自分で停滞させた、いや、受け止めてしまったんだよ。」
私がメッセージを止めてしまっていた。
「こんな噂話なんて本来は小さな力しか持たないものだ、大抵は人を不快にさせるくらいのもの。しかし、それが本当に相手を呪っていたものであったら?その連鎖が何回も続いたものであったら?連鎖の度に人の歪な感情を吸収していたなら?」
ああ、納得、理解できてしまった。
結衣が私を探していた理由も。
結衣があれを私だと思った事も。
そして、あれが私を探している理由も。
「巷で噂になっているメッセージっていうのは灯火の高校で流行っているもので」
そう、
「大学で噂になっている、いなくなった結衣の友達は私で」
そして、
「あれは、私を殺して、完全にカラダを乗っ取ろうとしている。私になろうとしている。その為に結衣を攫った。その認識でいいですか?」
「うん、本来なら霊体化した魂は自然消滅するから、あれ的には時を待てば良かったんだろうけど、運良く、運悪く、結衣君があれと遭遇してしまった。そこでやり方を考えたんだろう。結衣君を探しに君が来ると、処理が早くできると、ね。」
そして昇降口まであれは迫っていた。
のろのろと呪詛を吐きながら、黒い何かが垂れながらグラウンドまで向かってきている。
「私はどうすればいいんでしょうか…死にたくないです。」
「私も蛍火に死んで欲しくない、元に戻って欲しいです!鳴味さん!何かできませんか!?」
結衣が悲痛な声で私の心配をしてくれる。
私は幸せものだ、元はと言えば私が悪いんだ。死にたくはない、しかし、助からないなら、いっそとも思ってしまう。
「まあまあ、2人とも慌てない慌てない。あと、蛍火君は諦めるな。結衣君がこんなになって心配してくれているのに、その気持ちを無下にしないでくれ。」
「でも、どうやって…」
「そのメッセージ、私に送ってくれ。それで一件落着…とはいかないが、何とかはなる。いや、何とかしてみせよう。」
「え?でもそんな事したら次は鳴味さんが…」
「いいからいいから、ほら、もうあれこっちに来るよ?君死んじゃうよ?いや、死んじゃってるのか。まあ、それはいいとして、解決できるから提案してるんだ。私は死なない、ここにいる皆無事で帰れる。約束する。」
本当に大丈夫だろうか?自分が犠牲になろうとしていないだろうか?だが、皆が無事に帰れるなら、
「わかりました、送ります。の前に連絡先教えて貰えませんか?」
「そうだった、失敬失敬。…はい、これからもどうぞよろしく。」
鳴味蕾火、その宛先へと私は、今。
「これが終わったら美味しいご飯でも食べに行こうか、いや、蛍火君のカレーがいいかな。」
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