原典怪飢

食う福

文字の大きさ
上 下
3 / 8
異形手紙

異形手紙(1)

しおりを挟む
「親友、異形の怪物、メッセージ、死、君が泣いている理由は端的に言うとこんな所だろう?」




そうだ。




「それ、私が巻き取るよ。」



え?
わからない。だけど、


「ありがとうございます、とりあえず」


と言って少女を家に上げてしまった。
藁にもすがる思いだったが、それよりも
混乱してしまい、正常な判断もできなかった気がする。


お腹がずっと鳴っている少女に
既に装っていたカレーを手渡し、
そのままリビングに向かった。



「おお!良い匂いだと思ったが、匂いだけでなく見た目も良い!デフォルトの人参、玉葱、じゃがいもだけでなく茄子も、ピーマンも入っている!夏野菜風だ!頂きます!美味しい…美味しい…!うう…生きてる…玉葱が大きく切られているのも素晴らしい…生きてる…日本人で良かった…」



確かに日本のカレーと本場インドのカレーは違うらしいけど、その感想はどうだろう…



少女がモグモグと一生懸命に食べるのを見て、私は少し安心し、落ち着いてしまった。





「あの、食べているところ申し訳ないんだけど、とりあえず名前だけ聞いてもいいですか…?」



「もぐ、むぐ、うん。そうか、まだお互い名前を知らないね。私は鳴味 蕾火なるみ らいか  お腹が鳴る、ベロの粒粒の味蕾、火で炙るで鳴味蕾火」


鳴るものでお腹をセレクトしたのも、
火で炙るの「炙る」がいらないのも、
ベロの粒粒も意味がわからなかった。
てか、ベロの粒粒て名前があるのか。


「はあ…なるみさんですね。私は月見 蛍火つきみ けいかです。月見バーガーの月見にほたるびと書いて、けいかと読みます。よろしくお願いします。」



お月見でいいのにバーガーを付けてしまった。まあいいや、それどころではない。


「月見バーガーに突っ込みたいが、少し我慢するよ。急ぐ訳では無いがそれどころではなさそうだしね。名前に火が付くもの同士仲良くしよう。」



「はい、正直今も何から話せばいいかわからないのですが、この件に関して鳴味さんに説明は不要って認識でいいですか?」


凡その事柄について知っているらしいが念の為に質問した。まだ信じられない。


「うん、凡そはね。でも少し詳しい話を聞かせて貰えると助かるよ、テレパシーなんてものは使えないからね。」


もうほぼテレパシー使ってるようなものだと思うが。



「わかりました。昔からある噂話の1種だと思うんですが…」


「チェーンメールみたいなものだね?転送しないと呪われる、みたいな。」


「そうです、ただそういう噂って昔からあって別に気にした事ないし、実際転送しなくても何も無いし。」


そうなのだ。実害は無いし、何も起こらない。


「ただ、最近1人、同じ大学の学生が居なくなったっていう話を構内で聞いて、それが私の親友、結衣の友達みたいなんです。そのチェーンメールみたいなメッセージがSNSで送られてきたらしくて、」


「そのメッセージを貰うと明らかにこの世のものではないものが自分にまとわりつくようになる、口が裂けているとか、髪が長くて白い服を着ているとかそんなレベルのものではなくて、どう説明したらいいかわからないけど、明らかに異様なものが取り憑く。それのせいで結衣の友達も行方不明になっているって。メッセージはコピペしたり、何かしらの方法で他の人に送ればいいみたいなんですが。」



「うん、そこで親友から助けを求めるメッセージが届いた君は、その噂と関連があるんじゃないかと推測した。そして君自身にも何かが起こると思った。というところかな?」



「はい、だからまずは結衣の安否を確認したい。助けを求めるメッセージは届いたけど、考えたら、それがそのメッセージと関連があるかはわからないです。今のところ私には何もないみたいですし。」



「…?何もない?いや、あ、そうか。うーん。どうしようかな。うん…」


何故、何を悩み始めたんだ?


「え?私何か変な事言いましたか?」



「いや、まあ、その。」


何故言葉を濁すのだろうか。


「ごめんね、ちゃんと言うよ。少し辛いかもしれないけど。」
 


身体に刺さる氷柱の感覚が蘇る。
まさか結衣はもう。



「結衣の身に何かあるんですか?間に合わないんですか?どうしたらいいですか?」



言葉が思いに追いつかない。
それくらい大切な親友なのだ。



「いや、君の親友はおそらく大丈夫だよ。ただ。」



ただ、何だ?













「君はもう



結衣は無事なのか、良かった。



でも、




私は、




 
安堵と驚きが入り交じり、
眠り落ちてしまうように、
そのまま意識が遠のいていった。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

視える棺2 ── もう一つの扉

中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、"視えてしまった"者たちの記録である。 影がずれる。 自分ではない"もう一人"が存在する。 そして、見つけたはずのない"棺"が、自分の名前を刻んで待っている——。 前作 『視える棺』 では、「この世に留まるべきではない存在」を視てしまった者たちの恐怖が描かれた。 だが、"視える者"は、それだけでは終わらない。 "棺"に閉じ込められるべきだった者たちは、まだ完全に封じられてはいなかった。 彼らは、"もう一つの扉"を探している。 影を踏んだ者、"13階"に足を踏み入れた者、消えた友人の遺書を見つけた者—— すべての怪異は、"どこかへ繋がる"ために存在していた。 そして、最後の話 『視える棺──最後の欠片』 では、ついに"棺"の正体が明かされる。 "視える棺"とは何だったのか? 視えてしまった者の運命とは? この物語を読んだあなたも、すでに"視えている"のかもしれない——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

視える棺―この世とあの世の狭間で起こる12の奇譚

中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、「気づいてしまった者たち」 である。 誰もいないはずの部屋に届く手紙。 鏡の中で先に笑う「もうひとりの自分」。 数え間違えたはずの足音。 夜のバスで揺れる「灰色の手」。 撮ったはずのない「3枚目の写真」。 どの話にも共通するのは、「この世に残るべきでない存在」 の気配。 それは時に、死者の残した痕跡であり、時に、境界を越えてしまった者の行き場のない魂でもある。 だが、"それ"に気づいた者は、もう後戻りができない。 見てはいけないものを見た者は、見られる側に回るのだから。 そして、最終話「最期のページ」。 読み進めることで、読者は気づくことになる。 なぜ、この短編集のタイトルが『視える棺』なのか。 なぜ、彼らは"見えてしまった"のか。 そして、最後のページに書かれていたのは—— 「そして、彼が振り返った瞬間——」 その瞬間、あなたは気づくだろう。 この物語の本当の意味に。

秘密の仕事

桃香
ホラー
ホラー 生まれ変わりを信じますか? ※フィクションです

静寂の訪問者

グランマレベル99
ホラー
私は小説初心者なのでご意見ご指摘がございましたら軽い気持ちでコメントしてください

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

処理中です...