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第6話 二巡目、妹がギャルゲーをやって舌打ちする
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長い戦い。 蓋を開ければ寝る間を惜しんでゲームをしていただけの一週間が終わった。
そしてまたゲームをする週末が始まる。
「ふ、いよいよこの日が来たね」
「壮大感出してるところ悪いが早く回せ。 母さんが飯作って待ってるぞ」
継征は先週と同じく、リサイクルのP3ガチャの前に逸子と立っていた。
「はいはい、ノリ悪いなぁ」
「家帰ったらいくらでも付き合ってやるから」
二人は先週と同様に二度回してカプセルに入った引換券をレジへと持って行く。
当人も言っていた通り、金曜のこの時間は藤副の勤務時間だったようでレジで待っていた。
「お、いらっしゃーい。 今日は何を当てたのかな?」
「笑実ちゃんこんばんは! 私達の新しい戦いが始まるんだよ!」
「はは、じゃあ取り合えず逸子の引いたのから見てみよっか。 えーっとどれどれ、一本目は『エコー』あ、これ知ってるP2から移植された奴じゃん。 古い方はちょっとやったなぁ」
「難しい?」
「うーん。 どうだろ? ただ、当時の私にはちょっと難しかったかな」
「クリアしたのか?」
継征の質問に藤副は小さく肩を竦める。
「一応はしたよ。 ただ、自力では無理だったから祐平――と、友達にクリアして貰っちゃった。 ヒロインが儚げな感じですっごい可愛いんだぁ」
「へぇ、だったら当たりかな?」
「単純に私には難しかったけどクリアした友達曰く、覚えゲーだから繰り返しやればクリアはできるようになってるってさ」
詳しくは実際にプレイしてみなさいなと次のゲームを取り出した。
「『ピュア@ラバーズ』。 うん、ギャルゲーだね。 やった事ないしこのジャンルはよく知らないからノーコメント。 次、沿道行ってみよっか」
「あぁ、頼む」
逸子は受け取ったソフトのパッケージを見て「この娘可愛い!」と無邪気に喜んでいた。
「沿道君は何を引いたのかなっと――『トイカート』? んー、見た感じレースゲームっぽいね」
受け取ったパッケージを裏返すと確かにレースゲームのようだ。
煽り文句としてはカートと運転するキャラクター、コースを自ら想像して自分だけの楽しみを見いだせと書いてあるので、そう言った要素が売りなのだろうか?
「えっと二本目は『ワールドドライブ:チャンピオンズリーグ』あー、またレースゲームだね」
「ジャンル被りかよ。 ……まぁ、ソフトが被るよりはマシか」
継征は内心でこの手のゲームだと他と比べるとトロフィーコンプは楽かなと少し思っていたので、ジャンル被りについては言葉とは裏腹にあまり気にはしていなかった。
一通り引き終わったのでもうここには用事はなく、逸子はさっさと帰ってプレイしようと継征の袖を引いている。 その様子に苦笑すると藤副に帰ると挨拶して店を後にした。
「ねぇ、どっちがいいと思う?」
道を歩きながら逸子はキラキラした目で次はどちらにしようかとパッケージを眺めている。
「例の有名ゲームは後にして比較的楽なギャルゲーから片付けようぜ。 プレイするのお前だから俺は楽できるし、多分だけどトロコンの条件ってクリアだけだろ? ちょっと休ませてくれよ」
「え~、しょうがないなぁ。 でも寝落ちしたら容赦なく叩き起こすからね」
「いや、そこは終わったら内容を教えてくれるだけでいいよ」
「だめですー、お兄ちゃんは最後までシナリオを見てわたしと感想をやいやい言い合うんです~」
「あぁ、はいはい。 わかったわかった」
飯、風呂と済ませて継征の部屋へ移動してゲームの準備。
プレイするゲームは『ピュア@ラバーズ』。 逸子がいそいそと準備している間に継征はトロフィーの条件を調べるが、やはり以前にやった『風雅』と同じでクリアすればいいだけのようだ。
評価などを見ようかとも思ったが、変な先入観が付いても嫌だったのでレビューサイトは開かずにお菓子とジュースを用意して完全に鑑賞だけする構えだ。
「よし、んじゃ始めるよ~」
「おぉ、頑張れよ」
ピュア@ラバーズ。
内容は両親に愛されなかった少年がヒロインとの交流を経て愛を知っていくというもの。
バリボリとポップコーンを齧りながら継征は話の内容を咀嚼する。
ヒロインの属性は親戚の妹のような存在、転校した学校で最初に声をかけてきた同級生。
そのクラスメイトの部活仲間。 図書室で出会う先輩。 隣のクラスの美少女。 最後に担任教師。
主人公の生い立ちやキャラクター性の紹介に入り、彼を取り巻く環境の説明――両親が死んで親戚に引き取られた所から物語が始まる。
…………。
逸子は無言でコントローラーをカチャカチャしており、一言も発しない。
集中しているのかと思うかもしれないが全くの逆だ。 明らかにだれている。
それを見て継征も無理もないと思ってしまった。 話を見ている内に感じたのは違和感だ。
主人公は愛情を知らずに育って他人に対してやや臆病になっているという設定のはずなのだが、地の文では「なんなんだよおおおおおおお」と叫んだりと非常にテンションが高いのだ。
何なんだよと突っ込みたいのはこっちだよと思いながら話は進んでいく。
継征は画面を見ながら取説を開く。 そこには簡単なキャラクターのプロフィールが記載されている。
――はずだったのだ。
確かに書いてはある。 だが、実物を目にすると最初に出てくる感想は「思ってたのと違う」だ。
まずはメインヒロイン。 明るいキャラクターで主人公をぐいぐい引っ張り、彼の心の傷を癒していくみたいな説明だったのに実際は主人公が能動的に動いて好感度を稼いでいる形になっていた。
――逆じゃねぇか。
ヒロインの娘がいきなり照れた表情を浮かべ、主人公が大丈夫だよと慰めているシーンを見て――
「チッ」
――!?
聞こえてはならない音が聞こえた。 逸子が舌打ちなんてする訳ないのできっと気のせいだ。
そうに違いない。 しばらく進めて定期的に現れるヒロインとの好感度稼ぎのイベントをこなす。
攻略サイトを確認するが、変に捻ったギミックはないので狙いたいヒロインの下へ通えば個別ルートに入れるはずだ。 注意点としては終盤の選択肢でエンディングが分岐するのでセーブを分ける事を推奨するぐらいだろう。
取り合えず前回の風雅の失敗を踏まえてメインではないヒロインから狙うようにしたようだ。
最初は担任教師。 地味なタイプで眼鏡を取ると美人というのがアピールポイントのようだったが、逸子には理解できなかったようだ。
そしてまたゲームをする週末が始まる。
「ふ、いよいよこの日が来たね」
「壮大感出してるところ悪いが早く回せ。 母さんが飯作って待ってるぞ」
継征は先週と同じく、リサイクルのP3ガチャの前に逸子と立っていた。
「はいはい、ノリ悪いなぁ」
「家帰ったらいくらでも付き合ってやるから」
二人は先週と同様に二度回してカプセルに入った引換券をレジへと持って行く。
当人も言っていた通り、金曜のこの時間は藤副の勤務時間だったようでレジで待っていた。
「お、いらっしゃーい。 今日は何を当てたのかな?」
「笑実ちゃんこんばんは! 私達の新しい戦いが始まるんだよ!」
「はは、じゃあ取り合えず逸子の引いたのから見てみよっか。 えーっとどれどれ、一本目は『エコー』あ、これ知ってるP2から移植された奴じゃん。 古い方はちょっとやったなぁ」
「難しい?」
「うーん。 どうだろ? ただ、当時の私にはちょっと難しかったかな」
「クリアしたのか?」
継征の質問に藤副は小さく肩を竦める。
「一応はしたよ。 ただ、自力では無理だったから祐平――と、友達にクリアして貰っちゃった。 ヒロインが儚げな感じですっごい可愛いんだぁ」
「へぇ、だったら当たりかな?」
「単純に私には難しかったけどクリアした友達曰く、覚えゲーだから繰り返しやればクリアはできるようになってるってさ」
詳しくは実際にプレイしてみなさいなと次のゲームを取り出した。
「『ピュア@ラバーズ』。 うん、ギャルゲーだね。 やった事ないしこのジャンルはよく知らないからノーコメント。 次、沿道行ってみよっか」
「あぁ、頼む」
逸子は受け取ったソフトのパッケージを見て「この娘可愛い!」と無邪気に喜んでいた。
「沿道君は何を引いたのかなっと――『トイカート』? んー、見た感じレースゲームっぽいね」
受け取ったパッケージを裏返すと確かにレースゲームのようだ。
煽り文句としてはカートと運転するキャラクター、コースを自ら想像して自分だけの楽しみを見いだせと書いてあるので、そう言った要素が売りなのだろうか?
「えっと二本目は『ワールドドライブ:チャンピオンズリーグ』あー、またレースゲームだね」
「ジャンル被りかよ。 ……まぁ、ソフトが被るよりはマシか」
継征は内心でこの手のゲームだと他と比べるとトロフィーコンプは楽かなと少し思っていたので、ジャンル被りについては言葉とは裏腹にあまり気にはしていなかった。
一通り引き終わったのでもうここには用事はなく、逸子はさっさと帰ってプレイしようと継征の袖を引いている。 その様子に苦笑すると藤副に帰ると挨拶して店を後にした。
「ねぇ、どっちがいいと思う?」
道を歩きながら逸子はキラキラした目で次はどちらにしようかとパッケージを眺めている。
「例の有名ゲームは後にして比較的楽なギャルゲーから片付けようぜ。 プレイするのお前だから俺は楽できるし、多分だけどトロコンの条件ってクリアだけだろ? ちょっと休ませてくれよ」
「え~、しょうがないなぁ。 でも寝落ちしたら容赦なく叩き起こすからね」
「いや、そこは終わったら内容を教えてくれるだけでいいよ」
「だめですー、お兄ちゃんは最後までシナリオを見てわたしと感想をやいやい言い合うんです~」
「あぁ、はいはい。 わかったわかった」
飯、風呂と済ませて継征の部屋へ移動してゲームの準備。
プレイするゲームは『ピュア@ラバーズ』。 逸子がいそいそと準備している間に継征はトロフィーの条件を調べるが、やはり以前にやった『風雅』と同じでクリアすればいいだけのようだ。
評価などを見ようかとも思ったが、変な先入観が付いても嫌だったのでレビューサイトは開かずにお菓子とジュースを用意して完全に鑑賞だけする構えだ。
「よし、んじゃ始めるよ~」
「おぉ、頑張れよ」
ピュア@ラバーズ。
内容は両親に愛されなかった少年がヒロインとの交流を経て愛を知っていくというもの。
バリボリとポップコーンを齧りながら継征は話の内容を咀嚼する。
ヒロインの属性は親戚の妹のような存在、転校した学校で最初に声をかけてきた同級生。
そのクラスメイトの部活仲間。 図書室で出会う先輩。 隣のクラスの美少女。 最後に担任教師。
主人公の生い立ちやキャラクター性の紹介に入り、彼を取り巻く環境の説明――両親が死んで親戚に引き取られた所から物語が始まる。
…………。
逸子は無言でコントローラーをカチャカチャしており、一言も発しない。
集中しているのかと思うかもしれないが全くの逆だ。 明らかにだれている。
それを見て継征も無理もないと思ってしまった。 話を見ている内に感じたのは違和感だ。
主人公は愛情を知らずに育って他人に対してやや臆病になっているという設定のはずなのだが、地の文では「なんなんだよおおおおおおお」と叫んだりと非常にテンションが高いのだ。
何なんだよと突っ込みたいのはこっちだよと思いながら話は進んでいく。
継征は画面を見ながら取説を開く。 そこには簡単なキャラクターのプロフィールが記載されている。
――はずだったのだ。
確かに書いてはある。 だが、実物を目にすると最初に出てくる感想は「思ってたのと違う」だ。
まずはメインヒロイン。 明るいキャラクターで主人公をぐいぐい引っ張り、彼の心の傷を癒していくみたいな説明だったのに実際は主人公が能動的に動いて好感度を稼いでいる形になっていた。
――逆じゃねぇか。
ヒロインの娘がいきなり照れた表情を浮かべ、主人公が大丈夫だよと慰めているシーンを見て――
「チッ」
――!?
聞こえてはならない音が聞こえた。 逸子が舌打ちなんてする訳ないのできっと気のせいだ。
そうに違いない。 しばらく進めて定期的に現れるヒロインとの好感度稼ぎのイベントをこなす。
攻略サイトを確認するが、変に捻ったギミックはないので狙いたいヒロインの下へ通えば個別ルートに入れるはずだ。 注意点としては終盤の選択肢でエンディングが分岐するのでセーブを分ける事を推奨するぐらいだろう。
取り合えず前回の風雅の失敗を踏まえてメインではないヒロインから狙うようにしたようだ。
最初は担任教師。 地味なタイプで眼鏡を取ると美人というのがアピールポイントのようだったが、逸子には理解できなかったようだ。
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