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第5話 決着、そして新たな戦いへ
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継征が藤副とこうして話す関係になったのは彼がリサイクルに出入りしていたからだ。
最初はクラスメイトというだけだったのだが、店で挨拶するだけだったのが次第に打ち解け、藤副が男の友人にプレゼントを買いたいとかどこに誘ったら喜ばれるのかなどの相談をされ始めた辺りから交流していった形だ。
逸子に関しても店に連れて行くうちに自然に仲良くなっていた。
「ふーん? それで? どうだった? 個人的にはナイツストーリーってよく知らないから興味あるんだけど?」
継征は席に付きながらさっき脳裏で纏めていた総評をそのまま口にする。
「面白かったぞ。 滅茶苦茶長い訳でもないし、戦闘システムもとっつきやすいから初心者でも比較的簡単に操作に慣れる。 実際、逸子も二、三時間もやれば充分、サマになってたしな」
「へー、ちゃんと最後まで付き合ってあげてるんだ? やさしーじゃん」
「まぁ、約束だったからな。 あいつが飽きるまでとことん付き合ってやるさ」
元々、逸子は継征にべったりな娘で、彼自身もそれを良しとしている部分もあったので好きにさせていたのだが、去年は受験勉強の為にあまり時間を割けなかったのだ。
そこで継征は逸子と約束をしたのだ。 受験が終わり、高校生活に慣れるまではあまり相手をしてやれないが、それが終わったら好きなだけ付き合ってやると。
何だかんだと逸子は聞き分けの良い娘だったので、継征の生活が落ち着くまでおとなしく待ち、少し前にこれまで温めていた計画を実行に移したのだ。
「それがお兄ちゃんと一緒にトロフィーコンプ?」
「まぁ、そうみたいだな」
少々の無茶には付き合うつもりだった。 バイトもしているので多少金銭がかかってもどうにでもなるそんな考えだったが、中々に斜め上の提案だったので驚いたのは記憶に新しい。
何故、こんな催しを思いついたのかは不明だが、P3の筐体が手に入った事と旧ハードなのでソフトの料金がお財布に優しく、逸子なりに気を使った結果なのかもしれない。
ただ、継征は部活はやっていないがバイトはしているので、毎日付き合ってやれる訳ではない。
その為、基本的には週末に集中してプレイする事になるだろう。
――果たして何本目で根を上げるかな?
途中でトロフィーコンプを諦めてクリアで妥協し、最終的には頻度も減って終了だろう。
そんな結末を思いながらあと何本ぐらいだろうかと妹の根気を予想しつつ鳴った予鈴を聞いて藤副との会話を切り上げた。
学校が終わり継征はバイト先へと直行する。
月・水・金の週三日、彼は近所のコンビニでアルバイトをしていた。
単純に金が欲しいというのもあったが、両親に早い内に労働は経験しておいた方がいいと勧められたからだ。 家から近く、拘束時間も短いコンビニを選んだのでそこまで稼げないが、遊ぶだけなら十分な金額だった。 今日も労働を終えた継征は家のあるマンションまで帰って来たのだが――
見上げると自分の部屋の電気がついていた。
「あいつまた勝手に……」
継征はそう呟いて早足にマンションへと入っていった。
帰宅すると真っすぐに自分の部屋へ行くとそこでは逸子がカチャカチャとゲームをしていた。
「あ、お兄ちゃんお帰りー」
「ただいま。 自分の部屋にもテレビあるだろうが、何でまた俺の部屋で?」
「こっちの方が大きいし、ゲーム機本体動かすの面倒だし」
「あぁ、そうかい」
逸子が勝手に継征の部屋に入るのは今に始まった事ではないので特に咎めない。
ただ、ものを勝手に持ち出す事だけは絶対にするなと釘を刺しているので、その約束が守られている間は好きにさせていた。
「――で、調子はどうだ?」
「いい感じ。 このペースなら金曜ぐらいまでには片付くと思う。 だから、金曜はまた一緒にリサイクルに行こうね?」
「あぁ、はいはい。 取り合えず手伝うから協力プレイに切り替えろ」
「おっけー」
こうして空いた時間を使って攻略を進めていたのだが――
「おい、妹よ」
「なーに?」
時計を見るとそろそろいい時間だ。 だが、逸子はコントローラーから手を離さない。
「寝なさい」
「うん。 切りのいいところまで終わったらね?」
「俺は寝るぞ」
「どうぞどうぞ。 終わったら片付けとくからお兄ちゃんは先に寝てていいよー」
「……マジで寝るからな?」
「だからどうぞって」
継征は小さく溜息を吐いてベッドに横になる。
音量は絞っているので全く聞こえない訳ではないが寝る分には支障はない。
だが、カチャカチャとコントローラーを操作する音は気になる。
寝返りを打つ振りをしてちらりと逸子の方を見ると何故かこちらを向いており、にやりと笑うと手招きをしていた。 継征は無視して背を向ける。
しばらくするとまたカチャカチャと操作音が微かに響く。
――き、気になる。
もう寝られないから自分の部屋でやれというべきだろうか?
もう一度寝返りを打つ振りをして様子を窺おうと目を開くと逸子は継征の方を向いており、手招きをしている。
…………。
「はぁ、分かったよ。 切りのいいところまでだからな」
「やったー! お兄ちゃん好きー」
「はいはい」
まぁ、明日バイト休みだしいいかと継征は自分を納得させてむくりと身を起こした。
「――で、深夜まで逸子ちゃんとゲーム三昧と」
「いうな。 後悔している」
寝不足で力なく机に突っ伏している継征は藤副の言葉にそう返す事しかできなかった。
もうちょっともうちょっととずるずる引き延ばされ気が付けば、寝ないと本当に不味い時間になってしまったのだ。 目覚ましをセットして強引に起床し、遅刻は免れたが睡眠が足りていないのでこうして机に突っ伏していた。
「徹夜で頑張ってたみたいだけど効果はあった?」
「あぁ、あったとも。 予定では金曜に片づけるつもりだったが、木曜には終わりそうだ」
「ふーん。 木曜は私いないから買いに来るなら金曜にしてよ。 何を当てるか見たいし」
「はいはい、逸子にもそう言っとくよ」
継征の予測通り、最後の一本――ロボ無双は木曜の深夜に片付いた。
トロフィーコンプの表示を見て逸子は感動に振るえている。
「ふぉぉ。 累計撃破数、全キャラの特殊イベント、隠し装備コンプリート。 その他諸々――。 いやぁ、達成感が半端ないね」
「……そうだな。 満足しただろ? もう寝ていいか?」
「あ、うん。 お休みー。 明日は追加を買いに行くから忘れないでねー」
「はいはい」
こうして最初に購入して四本のゲームを攻略し、兄妹は次の戦いへと進む。
最初はクラスメイトというだけだったのだが、店で挨拶するだけだったのが次第に打ち解け、藤副が男の友人にプレゼントを買いたいとかどこに誘ったら喜ばれるのかなどの相談をされ始めた辺りから交流していった形だ。
逸子に関しても店に連れて行くうちに自然に仲良くなっていた。
「ふーん? それで? どうだった? 個人的にはナイツストーリーってよく知らないから興味あるんだけど?」
継征は席に付きながらさっき脳裏で纏めていた総評をそのまま口にする。
「面白かったぞ。 滅茶苦茶長い訳でもないし、戦闘システムもとっつきやすいから初心者でも比較的簡単に操作に慣れる。 実際、逸子も二、三時間もやれば充分、サマになってたしな」
「へー、ちゃんと最後まで付き合ってあげてるんだ? やさしーじゃん」
「まぁ、約束だったからな。 あいつが飽きるまでとことん付き合ってやるさ」
元々、逸子は継征にべったりな娘で、彼自身もそれを良しとしている部分もあったので好きにさせていたのだが、去年は受験勉強の為にあまり時間を割けなかったのだ。
そこで継征は逸子と約束をしたのだ。 受験が終わり、高校生活に慣れるまではあまり相手をしてやれないが、それが終わったら好きなだけ付き合ってやると。
何だかんだと逸子は聞き分けの良い娘だったので、継征の生活が落ち着くまでおとなしく待ち、少し前にこれまで温めていた計画を実行に移したのだ。
「それがお兄ちゃんと一緒にトロフィーコンプ?」
「まぁ、そうみたいだな」
少々の無茶には付き合うつもりだった。 バイトもしているので多少金銭がかかってもどうにでもなるそんな考えだったが、中々に斜め上の提案だったので驚いたのは記憶に新しい。
何故、こんな催しを思いついたのかは不明だが、P3の筐体が手に入った事と旧ハードなのでソフトの料金がお財布に優しく、逸子なりに気を使った結果なのかもしれない。
ただ、継征は部活はやっていないがバイトはしているので、毎日付き合ってやれる訳ではない。
その為、基本的には週末に集中してプレイする事になるだろう。
――果たして何本目で根を上げるかな?
途中でトロフィーコンプを諦めてクリアで妥協し、最終的には頻度も減って終了だろう。
そんな結末を思いながらあと何本ぐらいだろうかと妹の根気を予想しつつ鳴った予鈴を聞いて藤副との会話を切り上げた。
学校が終わり継征はバイト先へと直行する。
月・水・金の週三日、彼は近所のコンビニでアルバイトをしていた。
単純に金が欲しいというのもあったが、両親に早い内に労働は経験しておいた方がいいと勧められたからだ。 家から近く、拘束時間も短いコンビニを選んだのでそこまで稼げないが、遊ぶだけなら十分な金額だった。 今日も労働を終えた継征は家のあるマンションまで帰って来たのだが――
見上げると自分の部屋の電気がついていた。
「あいつまた勝手に……」
継征はそう呟いて早足にマンションへと入っていった。
帰宅すると真っすぐに自分の部屋へ行くとそこでは逸子がカチャカチャとゲームをしていた。
「あ、お兄ちゃんお帰りー」
「ただいま。 自分の部屋にもテレビあるだろうが、何でまた俺の部屋で?」
「こっちの方が大きいし、ゲーム機本体動かすの面倒だし」
「あぁ、そうかい」
逸子が勝手に継征の部屋に入るのは今に始まった事ではないので特に咎めない。
ただ、ものを勝手に持ち出す事だけは絶対にするなと釘を刺しているので、その約束が守られている間は好きにさせていた。
「――で、調子はどうだ?」
「いい感じ。 このペースなら金曜ぐらいまでには片付くと思う。 だから、金曜はまた一緒にリサイクルに行こうね?」
「あぁ、はいはい。 取り合えず手伝うから協力プレイに切り替えろ」
「おっけー」
こうして空いた時間を使って攻略を進めていたのだが――
「おい、妹よ」
「なーに?」
時計を見るとそろそろいい時間だ。 だが、逸子はコントローラーから手を離さない。
「寝なさい」
「うん。 切りのいいところまで終わったらね?」
「俺は寝るぞ」
「どうぞどうぞ。 終わったら片付けとくからお兄ちゃんは先に寝てていいよー」
「……マジで寝るからな?」
「だからどうぞって」
継征は小さく溜息を吐いてベッドに横になる。
音量は絞っているので全く聞こえない訳ではないが寝る分には支障はない。
だが、カチャカチャとコントローラーを操作する音は気になる。
寝返りを打つ振りをしてちらりと逸子の方を見ると何故かこちらを向いており、にやりと笑うと手招きをしていた。 継征は無視して背を向ける。
しばらくするとまたカチャカチャと操作音が微かに響く。
――き、気になる。
もう寝られないから自分の部屋でやれというべきだろうか?
もう一度寝返りを打つ振りをして様子を窺おうと目を開くと逸子は継征の方を向いており、手招きをしている。
…………。
「はぁ、分かったよ。 切りのいいところまでだからな」
「やったー! お兄ちゃん好きー」
「はいはい」
まぁ、明日バイト休みだしいいかと継征は自分を納得させてむくりと身を起こした。
「――で、深夜まで逸子ちゃんとゲーム三昧と」
「いうな。 後悔している」
寝不足で力なく机に突っ伏している継征は藤副の言葉にそう返す事しかできなかった。
もうちょっともうちょっととずるずる引き延ばされ気が付けば、寝ないと本当に不味い時間になってしまったのだ。 目覚ましをセットして強引に起床し、遅刻は免れたが睡眠が足りていないのでこうして机に突っ伏していた。
「徹夜で頑張ってたみたいだけど効果はあった?」
「あぁ、あったとも。 予定では金曜に片づけるつもりだったが、木曜には終わりそうだ」
「ふーん。 木曜は私いないから買いに来るなら金曜にしてよ。 何を当てるか見たいし」
「はいはい、逸子にもそう言っとくよ」
継征の予測通り、最後の一本――ロボ無双は木曜の深夜に片付いた。
トロフィーコンプの表示を見て逸子は感動に振るえている。
「ふぉぉ。 累計撃破数、全キャラの特殊イベント、隠し装備コンプリート。 その他諸々――。 いやぁ、達成感が半端ないね」
「……そうだな。 満足しただろ? もう寝ていいか?」
「あ、うん。 お休みー。 明日は追加を買いに行くから忘れないでねー」
「はいはい」
こうして最初に購入して四本のゲームを攻略し、兄妹は次の戦いへと進む。
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