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第47話
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見ている間にも闇の向こうの殺し合いはヒートアップし、戦闘のものと思われる音も強く大きく響く。
恐らく最初は第二位階ぐらいで戦り合っていたが、誰かが第三位階を使って他がそれに引っ張られて使用した形になったのだろう。
「うわ、やば……、アイツらこの調子だと第五まで行きそうだ」
「なぁ、トッシー。 どうすんの? 行く?」
「行く訳ねぇべ。 あんなところに混ざったら俺達まで高位階使わされて下手すりゃ死ぬわ」
反射的に出た返事こそ最適解だと気付いた卯敷はこれは無理だと判断し、この場を離れる事を選択した。
「でも、いいのかよ? 魔導書、集めないと不味いんじゃねーの?」
「集めるのは生きてここから出る為だべ? 下手に突っ込んで死んだらマジで意味ねーべ」
「なるほど確かに! 流石トッシー!」
「そうと決まればさっさと行くべ」
二人はそっとその場を離れ、音が聞こえ辛くなる程度に離れたと同時に全力疾走。
しばらく走り、戦闘の音が完全に聞えなくなった所で足を止める。
「ふぅ、危ない所だったぜ。 殺し合いはやりたい奴らにやらせときゃいいんだよ」
「だな! 最後に残った奴を俺達でボコせば楽勝だな! 流石トッシー!」
「まぁな! 俺達は賢く生き残るべ!」
目の前の危機を脱した事で油断していたのかもしれない。
特に考えずに角を曲がるとすぐ目の前に誰かが居た。
「おわっ!?」
「おぉ!?」
二人は思わず声を上げて後ろに小さく跳んで距離を取る。
目の前に現れたのは彼等と同年代ぐらいの少女。 彼女もまがった先で誰かと出くわすとは思っていなかったらしく微かに目を見開いていた。 少女は自然な動作で魔導書を背に隠しながら卯敷達へ露骨に警戒したような視線を向ける。
本当に自然な動きだったので大抵の人間は違和感を抱かなかったが、女に対して歪んだ印象を抱いている卯敷は見逃さなかった。 目の前の自分達に対する警戒よりも先に魔導書を隠す。
アクションはほぼ同時だったが、非常に怪しい挙動だ。
これに関しては言い切れると彼は目の前の少女に対して最大限の警戒を行う。
具体的には少女と同じように魔導書を背に隠した。
――こいつ滅茶苦茶怪しいべ。
「あ、あの、私は戦う気はないので!」
卯敷の内心を察しているのかは不明だが、少女は緊張の為かややつっかえながら戦意がない事をアピール。 伊奈波は判断に困っているのか卯敷に視線を向ける。
こういった場面で余計な事をせずに判断を委ねてくれる相棒に内心で感謝しながら卯敷は少女に警戒していないとわざとらしい笑みを浮かべて見せる。 なるべくアホそうに見えるように意識してだ。
可能な限り相手の警戒心を削ぐのだと意気込んでいたが、普段通りにへらへらしていればあまり知性の輝きは感じられないので必要なかった。 とにかく警戒している事を悟られないようにするべく卯敷は軽い態度で対応する。
「あ、そうなんだ? いやぁ、助かったべ。 俺らも殺し合いとかねーなとか思ってたからやる気ねー奴は大歓迎。 マジで」
そう言いながら卯敷は女の視線が何処に向いているのかを確認し――ぞっとした。
戦う気なら距離を取るべく引き気味になり、視線は自分達の動きを捉えるように広く眺めるような形になる。 もしくは懐に入る為に接近を試みる事を意識し、自分達がどの程度警戒しているかを確認する為にチラチラと顔色を窺うだろう。 逃げるつもりなら走る切っ掛けを探す為に視線を彷徨わせるはずだ。
以上が、卯敷の想定していた少女の反応だ。
真っ先に魔導書を隠した点から見ても逃げる可能性は低かった。
ついでに怯える仕草が何となく胡散臭いのも怪しい。
――では、少女が取った行動は何だったのか?
卯敷達二人の全身にさっと視線を走らせたのだ。
しかも魔導書、足、胸、そして首を見た後、最後に顔へ視線を向ける。
ぞっとしたのはその順番だ。 魔導書を見て戦闘能力を計り、殺せると判断したのか逃げられないようにしようと考えたのか、足を見て、急所である心臓、首を見てどちらを狙うべきかを考えた。
即座に行動に移さなかったのは卯敷が咄嗟に魔導書を隠したお陰で、最初の戦闘能力を計る目論見が崩れたからだ。
「まぁ、立ち話もなんだし――あ、俺は卯敷、こっちは伊奈波。 そっちは?」
「藤副と言いますよろ――」
――<第二小鍵 48/72>
完全に虚を突いた形での発動。 少女が驚きに表情が固まった。
大きな羽の生えた牛の悪魔が現れ、攻撃はせず伊奈波の腕を掴んでそのまま飛び乗る。
牛の悪魔はモーと気の抜けた鳴き声を上げて走り出す。 見た目の鈍重さからは想像もつかない速さで疾走。 少女の脇を抜けて一気に距離を取った。
「トッシー!?」
「しっかり掴まってろ! 振り落とされると死ぬぞ!」
戸惑った声を上げた伊奈波に構わず卯敷は真っ直ぐ進むなと悪魔っを操る事に集中する。
悪魔は召喚者の指示に従い、羽を震わせて飛行。 地面から離れたと同時に牛の後ろ脚が何かに射貫かれて千切れ飛ぶ。
「滅茶苦茶に飛べ! 的を絞らせんな!」
卯敷は悪魔にそう指示を出し、ランダムな軌道を描かせて飛ぶ。
その間に数度、何かが高速で近くを通過する音が響く。 一部は壁や地面に着弾したのか、鈍い音を立てて抉り取る。
「くそ、ヤベぇ、ヤベぇ、ヤベぇ」
「オラぁ! ざけんなこらぁ!」
語彙力が消失しヤバいしか言えなくなった卯敷と悪魔を呼び出して火球を適当に撃ち返している伊奈波だったが、少しの間飛んでいると攻撃も止み、追ってくる気配もなくなった。
何度も振り返り、追って来ていない事を確認した卯敷は呼び出し悪魔を戻して着地。
緊張で心臓がドクドクと嫌なリズムで鼓動を刻み、呼吸が安定しない。
「と、トッシー、大丈夫か?」
「――クソ、何なんだよあの女はぁ!?」
卯敷は普段の様子からは想像もつかない恐怖とも怒りともつかない叫びをあげる。
明らかに余裕のない相棒の様子に伊奈波は不安な表情を浮かべる。
「落ち着けトッシー。 もう逃げ切ったから追って来ない」
「……あぁ、そうだな。 悪い、もう落ち着いた」
「さっきの女そんなにヤバかったのか?」
「あぁ、あの女はマジでヤバい。 目が完全にイってた。 俺達を認識した瞬間に殺そうとしていやがった。 ヤバすぎる」
何度か深呼吸をして気持ちを落ち着けた卯敷はその場に座り込む。
恐らく最初は第二位階ぐらいで戦り合っていたが、誰かが第三位階を使って他がそれに引っ張られて使用した形になったのだろう。
「うわ、やば……、アイツらこの調子だと第五まで行きそうだ」
「なぁ、トッシー。 どうすんの? 行く?」
「行く訳ねぇべ。 あんなところに混ざったら俺達まで高位階使わされて下手すりゃ死ぬわ」
反射的に出た返事こそ最適解だと気付いた卯敷はこれは無理だと判断し、この場を離れる事を選択した。
「でも、いいのかよ? 魔導書、集めないと不味いんじゃねーの?」
「集めるのは生きてここから出る為だべ? 下手に突っ込んで死んだらマジで意味ねーべ」
「なるほど確かに! 流石トッシー!」
「そうと決まればさっさと行くべ」
二人はそっとその場を離れ、音が聞こえ辛くなる程度に離れたと同時に全力疾走。
しばらく走り、戦闘の音が完全に聞えなくなった所で足を止める。
「ふぅ、危ない所だったぜ。 殺し合いはやりたい奴らにやらせときゃいいんだよ」
「だな! 最後に残った奴を俺達でボコせば楽勝だな! 流石トッシー!」
「まぁな! 俺達は賢く生き残るべ!」
目の前の危機を脱した事で油断していたのかもしれない。
特に考えずに角を曲がるとすぐ目の前に誰かが居た。
「おわっ!?」
「おぉ!?」
二人は思わず声を上げて後ろに小さく跳んで距離を取る。
目の前に現れたのは彼等と同年代ぐらいの少女。 彼女もまがった先で誰かと出くわすとは思っていなかったらしく微かに目を見開いていた。 少女は自然な動作で魔導書を背に隠しながら卯敷達へ露骨に警戒したような視線を向ける。
本当に自然な動きだったので大抵の人間は違和感を抱かなかったが、女に対して歪んだ印象を抱いている卯敷は見逃さなかった。 目の前の自分達に対する警戒よりも先に魔導書を隠す。
アクションはほぼ同時だったが、非常に怪しい挙動だ。
これに関しては言い切れると彼は目の前の少女に対して最大限の警戒を行う。
具体的には少女と同じように魔導書を背に隠した。
――こいつ滅茶苦茶怪しいべ。
「あ、あの、私は戦う気はないので!」
卯敷の内心を察しているのかは不明だが、少女は緊張の為かややつっかえながら戦意がない事をアピール。 伊奈波は判断に困っているのか卯敷に視線を向ける。
こういった場面で余計な事をせずに判断を委ねてくれる相棒に内心で感謝しながら卯敷は少女に警戒していないとわざとらしい笑みを浮かべて見せる。 なるべくアホそうに見えるように意識してだ。
可能な限り相手の警戒心を削ぐのだと意気込んでいたが、普段通りにへらへらしていればあまり知性の輝きは感じられないので必要なかった。 とにかく警戒している事を悟られないようにするべく卯敷は軽い態度で対応する。
「あ、そうなんだ? いやぁ、助かったべ。 俺らも殺し合いとかねーなとか思ってたからやる気ねー奴は大歓迎。 マジで」
そう言いながら卯敷は女の視線が何処に向いているのかを確認し――ぞっとした。
戦う気なら距離を取るべく引き気味になり、視線は自分達の動きを捉えるように広く眺めるような形になる。 もしくは懐に入る為に接近を試みる事を意識し、自分達がどの程度警戒しているかを確認する為にチラチラと顔色を窺うだろう。 逃げるつもりなら走る切っ掛けを探す為に視線を彷徨わせるはずだ。
以上が、卯敷の想定していた少女の反応だ。
真っ先に魔導書を隠した点から見ても逃げる可能性は低かった。
ついでに怯える仕草が何となく胡散臭いのも怪しい。
――では、少女が取った行動は何だったのか?
卯敷達二人の全身にさっと視線を走らせたのだ。
しかも魔導書、足、胸、そして首を見た後、最後に顔へ視線を向ける。
ぞっとしたのはその順番だ。 魔導書を見て戦闘能力を計り、殺せると判断したのか逃げられないようにしようと考えたのか、足を見て、急所である心臓、首を見てどちらを狙うべきかを考えた。
即座に行動に移さなかったのは卯敷が咄嗟に魔導書を隠したお陰で、最初の戦闘能力を計る目論見が崩れたからだ。
「まぁ、立ち話もなんだし――あ、俺は卯敷、こっちは伊奈波。 そっちは?」
「藤副と言いますよろ――」
――<第二小鍵 48/72>
完全に虚を突いた形での発動。 少女が驚きに表情が固まった。
大きな羽の生えた牛の悪魔が現れ、攻撃はせず伊奈波の腕を掴んでそのまま飛び乗る。
牛の悪魔はモーと気の抜けた鳴き声を上げて走り出す。 見た目の鈍重さからは想像もつかない速さで疾走。 少女の脇を抜けて一気に距離を取った。
「トッシー!?」
「しっかり掴まってろ! 振り落とされると死ぬぞ!」
戸惑った声を上げた伊奈波に構わず卯敷は真っ直ぐ進むなと悪魔っを操る事に集中する。
悪魔は召喚者の指示に従い、羽を震わせて飛行。 地面から離れたと同時に牛の後ろ脚が何かに射貫かれて千切れ飛ぶ。
「滅茶苦茶に飛べ! 的を絞らせんな!」
卯敷は悪魔にそう指示を出し、ランダムな軌道を描かせて飛ぶ。
その間に数度、何かが高速で近くを通過する音が響く。 一部は壁や地面に着弾したのか、鈍い音を立てて抉り取る。
「くそ、ヤベぇ、ヤベぇ、ヤベぇ」
「オラぁ! ざけんなこらぁ!」
語彙力が消失しヤバいしか言えなくなった卯敷と悪魔を呼び出して火球を適当に撃ち返している伊奈波だったが、少しの間飛んでいると攻撃も止み、追ってくる気配もなくなった。
何度も振り返り、追って来ていない事を確認した卯敷は呼び出し悪魔を戻して着地。
緊張で心臓がドクドクと嫌なリズムで鼓動を刻み、呼吸が安定しない。
「と、トッシー、大丈夫か?」
「――クソ、何なんだよあの女はぁ!?」
卯敷は普段の様子からは想像もつかない恐怖とも怒りともつかない叫びをあげる。
明らかに余裕のない相棒の様子に伊奈波は不安な表情を浮かべる。
「落ち着けトッシー。 もう逃げ切ったから追って来ない」
「……あぁ、そうだな。 悪い、もう落ち着いた」
「さっきの女そんなにヤバかったのか?」
「あぁ、あの女はマジでヤバい。 目が完全にイってた。 俺達を認識した瞬間に殺そうとしていやがった。 ヤバすぎる」
何度か深呼吸をして気持ちを落ち着けた卯敷はその場に座り込む。
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