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第345話
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――愛する君の為に機体を用意したんだ。 是非とも使ってくれ! これは婚約指輪代わり、サ!
グロウモスのフィルターを通してヨシナリの申し出はそう聞こえた。
それを聞いて彼女は戦慄する。 ヨシナリがヤバい奴だという事は前々から理解はしていたが、ここまでとは思わなかったからだ。 まだ正式に付き合ってもいないのにこんなに高額なプレゼントを贈って来るとは、貢いで好感度アップなんて次元を通り越している。 これはもはやプロポーズでは??
アバターの向こうの肉体は心臓がバッコンバッコンと激しく脈打ち、息が苦しくなる。
や、ヤバい。 いくら私の事が好きだからってここまでするとか何なのこいつ?
一先ずは平静を装って機体の仕様書を受け取って確認する。
まずフレームはキマイラパンテラの+仕様。 現状手に入る中では最高級のフレームだ。
センサーは動体、熱源に強く、相手を素早く発見できるように探知範囲がかなり広い。
――というか、前から欲しかった奴だった。
推進装置は低出力のエネルギーウイング。
これはわざと出力を落とす事で発光やエネルギー放出を抑え、ステルス性を高めた装備だ。
装置自体にエネルギーの漏出を抑える処理が施されているので、光学迷彩と合わせるとかなり探知され難くなる。
装甲に関しては被弾を想定していないので可能な限り薄くしてあり、かなり重量が抑えられていた。
恐ろしい事に性能は上がっているのに総重量は今使っている機体より軽くなっている。
ジェネレーターやコンデンサーも搭載できる物で最高級だ。 加えて、静音フィールド、光学迷彩システム、そして最も特徴的なのは機体を覆っている外套。 ステルスマントの上位互換であるステルスコート。 衣服のように身に纏う事で風などで飛ばされる心配もなく、様々なセンサーによる探知を弾き、ついでに変形時にも干渉しない優れ物だ。 流石にシックスセンスの探知を無効化するのは無理だが大抵の相手には見つからない。
武装に関してはメインアームとしてタクティカルライフル『スコーピオン・アンタレス』。
アノマリーと同様にエネルギー、実体弾の撃ち分けが可能な大口径狙撃銃だ。
実弾は射程内であるなら大抵の装甲は貫通する事が可能で、エネルギー弾はフィールドで防がれない限りは大抵の障害物を無視し、標的を射抜くだろう。
それだけではなく、目玉は実弾をエネルギーで飛ばす事でレールガンのような運用も可能。
「一応、接近された時の備えとして腕に散弾を発射できるアームガンを付けときました。 邪魔にならならない奴を選んだつもりですが、干渉するようなら外して貰っても大丈夫です」
片腕二発、両腕で合計四発撃てる散弾銃が腕と一体となっている。
グロウモスは一通り仕様を確認して思った事はゾクゾクとした何かだった。
自分の事を知り尽くしたとしか思えないパーツ構成と武装。
ここまで来るとヤバさを通り越して恐怖すら覚える。
――き、キモッ♡ 何でこんなに知ってるの♡ ヤバ♡ ヨシナリ、私の事好きすぎ♡
「ひ、ウヒヒ、あ、ありがとう。 だ、大事に使う?」
「は、はは。 よ、喜んでくれて嬉しいです。 うん、はい」
グロウモスは精一杯の笑顔を浮かべて感謝を伝えたが、ヨシナリは乾いた笑みで返す。
――ひぇ!?
ヨシナリは目の前で不気味な笑みを浮かべるグロウモスから目を逸らしたい衝動を抑えて、努めてにこやかに答えた。 気味は悪いが嬉しそうにしているので問題はないだろう。
これでメインのメンバー全員に機体が行き渡った。 後はどう使うかは当人次第なので弄るなりそのまま使うなり好きにすればいい。 ヨシナリとしては青天井で様々なコンセプトの機体を組み立てるのが楽しかったので出費としてはかなり大きいが、どうせ偶々手に入ったようなあぶく銭だ。
頑張ってくれた仲間の為ならばそこまで惜しくはない。
それにあんな大金、隠し持っているのは精神衛生上あまりよろしくないのでここは気持ちよく吐きだす所だろう。
「あのー? お義兄さん? 私の分はないんですか??」
シニフィエがすり寄って来るがやんわりと身をかわす。
「悪いけどない」
「ならちょーっと欲しいパーツが――」
「今後の活躍次第で考えるよ」
「何か私に冷たくないですか?」
「その辺は距離感を掴んでからになるかな」
正直、ヨシナリはシニフィエへに対するスタンスを決めかねていたので、やや消極的ではあるが少し距離を置いた方が健全な関係を築けると判断した。
一先ずは過剰に優しくもせず、過度に突き離さないようにしようと考えた結果がこれだ。
「なぁなぁ! ヨシナリ! ランク戦やらないか!? もっとこの機体を試したいぜ!」
「なら、ウチがもーっと構ったろか?」
「ぐ、散々、痛めつけといてまだ足りないんすか?」
「可愛がりやん」
マルメルはふいと顔を背ける。 その姿にヨシナリは苦笑。
「なら、いつも通りにランク戦やって皆で立ち回りに関する指摘をし合う感じで行きましょうか」
「はい!はい! 最初は俺な! 俺! 俺!」
「分かった、分かった。 なら最初はマルメルで、皆もそれでいいですね?」
異論はなかったのでマルメルが最初となった。
ランク戦への参加し、マッチング相手を待つ。 その間にグロウモスはウインドウを操作。
「わ、悪いけど私は機体の慣らしをしてくる」
「おう! ヨシナリプロデュースの機体はいいぞぉ!」
グロウモスはちらりとヨシナリを一瞥し「ひ、ヒヒ」と不気味な笑みを残してトレーニングルームへと消えた。
そうしている間にマルメルの相手が決まり、移動。
ウインドウを可視化するとマルメルのアウグストがフィールドに現れた。
「強化装甲に重武装。 前よりもかなり着膨れしてるけど、動き自体は速くなってたね」
「一応、想定相手はランカーなので。 使いこなせばジェネシスフレーム相手でもそこそこ以上にやれると思ってますよ」
「ヨシナリ君は向上心あってえぇなぁ」
「中々に頼りになるリーダーでしょ?」
ふわわは小さく笑う。 ウインドウの向こうでは相手のトルーパーもフィールドに出現する。
Ⅱ型、大型ブースターにエネルギー式の突撃銃。 機動力に振っている構成だ。
試合開始。 開始と同時に両者が動き出した。
正直、マルメルの装備は同ランク帯では突出しているレベルなのでまず負ける事はないだろう。
だからヨシナリが見たいのはどう勝つかだった。
グロウモスのフィルターを通してヨシナリの申し出はそう聞こえた。
それを聞いて彼女は戦慄する。 ヨシナリがヤバい奴だという事は前々から理解はしていたが、ここまでとは思わなかったからだ。 まだ正式に付き合ってもいないのにこんなに高額なプレゼントを贈って来るとは、貢いで好感度アップなんて次元を通り越している。 これはもはやプロポーズでは??
アバターの向こうの肉体は心臓がバッコンバッコンと激しく脈打ち、息が苦しくなる。
や、ヤバい。 いくら私の事が好きだからってここまでするとか何なのこいつ?
一先ずは平静を装って機体の仕様書を受け取って確認する。
まずフレームはキマイラパンテラの+仕様。 現状手に入る中では最高級のフレームだ。
センサーは動体、熱源に強く、相手を素早く発見できるように探知範囲がかなり広い。
――というか、前から欲しかった奴だった。
推進装置は低出力のエネルギーウイング。
これはわざと出力を落とす事で発光やエネルギー放出を抑え、ステルス性を高めた装備だ。
装置自体にエネルギーの漏出を抑える処理が施されているので、光学迷彩と合わせるとかなり探知され難くなる。
装甲に関しては被弾を想定していないので可能な限り薄くしてあり、かなり重量が抑えられていた。
恐ろしい事に性能は上がっているのに総重量は今使っている機体より軽くなっている。
ジェネレーターやコンデンサーも搭載できる物で最高級だ。 加えて、静音フィールド、光学迷彩システム、そして最も特徴的なのは機体を覆っている外套。 ステルスマントの上位互換であるステルスコート。 衣服のように身に纏う事で風などで飛ばされる心配もなく、様々なセンサーによる探知を弾き、ついでに変形時にも干渉しない優れ物だ。 流石にシックスセンスの探知を無効化するのは無理だが大抵の相手には見つからない。
武装に関してはメインアームとしてタクティカルライフル『スコーピオン・アンタレス』。
アノマリーと同様にエネルギー、実体弾の撃ち分けが可能な大口径狙撃銃だ。
実弾は射程内であるなら大抵の装甲は貫通する事が可能で、エネルギー弾はフィールドで防がれない限りは大抵の障害物を無視し、標的を射抜くだろう。
それだけではなく、目玉は実弾をエネルギーで飛ばす事でレールガンのような運用も可能。
「一応、接近された時の備えとして腕に散弾を発射できるアームガンを付けときました。 邪魔にならならない奴を選んだつもりですが、干渉するようなら外して貰っても大丈夫です」
片腕二発、両腕で合計四発撃てる散弾銃が腕と一体となっている。
グロウモスは一通り仕様を確認して思った事はゾクゾクとした何かだった。
自分の事を知り尽くしたとしか思えないパーツ構成と武装。
ここまで来るとヤバさを通り越して恐怖すら覚える。
――き、キモッ♡ 何でこんなに知ってるの♡ ヤバ♡ ヨシナリ、私の事好きすぎ♡
「ひ、ウヒヒ、あ、ありがとう。 だ、大事に使う?」
「は、はは。 よ、喜んでくれて嬉しいです。 うん、はい」
グロウモスは精一杯の笑顔を浮かべて感謝を伝えたが、ヨシナリは乾いた笑みで返す。
――ひぇ!?
ヨシナリは目の前で不気味な笑みを浮かべるグロウモスから目を逸らしたい衝動を抑えて、努めてにこやかに答えた。 気味は悪いが嬉しそうにしているので問題はないだろう。
これでメインのメンバー全員に機体が行き渡った。 後はどう使うかは当人次第なので弄るなりそのまま使うなり好きにすればいい。 ヨシナリとしては青天井で様々なコンセプトの機体を組み立てるのが楽しかったので出費としてはかなり大きいが、どうせ偶々手に入ったようなあぶく銭だ。
頑張ってくれた仲間の為ならばそこまで惜しくはない。
それにあんな大金、隠し持っているのは精神衛生上あまりよろしくないのでここは気持ちよく吐きだす所だろう。
「あのー? お義兄さん? 私の分はないんですか??」
シニフィエがすり寄って来るがやんわりと身をかわす。
「悪いけどない」
「ならちょーっと欲しいパーツが――」
「今後の活躍次第で考えるよ」
「何か私に冷たくないですか?」
「その辺は距離感を掴んでからになるかな」
正直、ヨシナリはシニフィエへに対するスタンスを決めかねていたので、やや消極的ではあるが少し距離を置いた方が健全な関係を築けると判断した。
一先ずは過剰に優しくもせず、過度に突き離さないようにしようと考えた結果がこれだ。
「なぁなぁ! ヨシナリ! ランク戦やらないか!? もっとこの機体を試したいぜ!」
「なら、ウチがもーっと構ったろか?」
「ぐ、散々、痛めつけといてまだ足りないんすか?」
「可愛がりやん」
マルメルはふいと顔を背ける。 その姿にヨシナリは苦笑。
「なら、いつも通りにランク戦やって皆で立ち回りに関する指摘をし合う感じで行きましょうか」
「はい!はい! 最初は俺な! 俺! 俺!」
「分かった、分かった。 なら最初はマルメルで、皆もそれでいいですね?」
異論はなかったのでマルメルが最初となった。
ランク戦への参加し、マッチング相手を待つ。 その間にグロウモスはウインドウを操作。
「わ、悪いけど私は機体の慣らしをしてくる」
「おう! ヨシナリプロデュースの機体はいいぞぉ!」
グロウモスはちらりとヨシナリを一瞥し「ひ、ヒヒ」と不気味な笑みを残してトレーニングルームへと消えた。
そうしている間にマルメルの相手が決まり、移動。
ウインドウを可視化するとマルメルのアウグストがフィールドに現れた。
「強化装甲に重武装。 前よりもかなり着膨れしてるけど、動き自体は速くなってたね」
「一応、想定相手はランカーなので。 使いこなせばジェネシスフレーム相手でもそこそこ以上にやれると思ってますよ」
「ヨシナリ君は向上心あってえぇなぁ」
「中々に頼りになるリーダーでしょ?」
ふわわは小さく笑う。 ウインドウの向こうでは相手のトルーパーもフィールドに出現する。
Ⅱ型、大型ブースターにエネルギー式の突撃銃。 機動力に振っている構成だ。
試合開始。 開始と同時に両者が動き出した。
正直、マルメルの装備は同ランク帯では突出しているレベルなのでまず負ける事はないだろう。
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