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第344話
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「えぇ、思ってますよ?」
シニフィエは即答。 それを聞いてヨシナリはどう反応するべきか迷う。
正直、彼女がどこまで本気かさっぱりわからないからだ。 だからこそ、腹を割って話そうと切り出したのだが、もしかしたら失敗したのかもしれない。
「姉さんって可愛いでしょう?」
「……このアバターで美醜の判断をするのはナンセンスじゃないか?」
疑問を疑問で返すのはあまりよろしくないが、嘘ではないので問題はないだろう。
「姉さんは可愛い人なんですよ。 見た目もそうですけど、何より乳が大きい」
「俺はその情報にどんな反応をすればいいんだ?」
「興味が出たでしょう?」
「かもな。 いいから続きを話してくれ」
シニフィエはせっかちですねと小さく呟いて肩を竦める。
「だから、言い寄る男は本当に多いんですよ。 でも、姉には彼氏ができない。 道場を継がせる人材を確保する為にも私か姉が手頃な男を引っ張り込むのがいいのですが、ポジション的に姉が継ぐのがいいと思っています。 ただ、これが中々に難しい」
「何で? 付き合いはそこまで長い訳じゃないけど、ふわわさんって結構付き合い易い人だと思うけど?」
「あぁ、簡単な話で姉さんはちょっとした病気に近い物をもってまして、定期的にスリルのような物を味わいたいそうで死合いに近い勝負形式での立ち会いを求めるんですよ。 最近はこのゲームで発散できている様でリアルでは落ち着いていますが。 ――で、その辺を軽視する男には言い寄って来た時にこういうんですよ『ウチに勝てたら好きにしてええよ』って」
どこの戦闘民族だよ。 思った以上にヤバいふわわのリアルにそんな感想を漏らしたが、それ以上にこの話、俺が聞いても大丈夫な話かと少し嫌な予感がしつつ相槌を打つ。
「まぁ、ガチで勝負まで行ったのは一人だけなんですけど、ちょっと酷い事になりまして」
「――病院送りにしたって事か」
「えぇ、木刀で頭を叩き割られたので事前に救急を呼んでいなければ死んでいたかもしれませんね」
シニフィエはあらかじめ何が起こっても文句を言わないって誓約書巻かせて良かったと付け加える。
「……マジかよ」
「そんな訳で、このまま行くと姉は行き遅れてしまいます。 妹としては非常に心配なんですよ。 そんなある日の事です。 ゲームを始めて発散する事を覚えて落ち着いたので、私も両親も胸を撫で下ろしていたのですが、どうも様子がおかしい。 姉はある日、非常に満足する死合いが出来たと大喜びしていたんですよ」
――これ間違いなく、俺が聞いちゃ不味い話だな。
取り敢えず、ふわわには知らん顔をしよう。
そんなヨシナリの心境を知ってか知らないのか話を続ける。
「『凄い子と勝負してん、最初は全然大した事なかったのに二回目に戦ったらびっくりするぐらいに化けてなぁ』『その子ヨシナリ君っていうんやけど、遊びやなくて本気でウチを殺そうと殺気を向けてきた』『凄い、あんな子は初めてや』 ――とまぁ、以降も事ある毎にヨシナリ君、ヨシナリ君とうるさくってですね。 流石に驚きましたよ。 姉があんなに興奮気味に他人、それも異性の事に触れるのは初めてでしたからね。 ぶっちゃけるとこのゲームには一ミリも興味なかったんですけど、姉を変えた『ヨシナリ君』には興味があります」
そう言ってシニフィエはじっとヨシナリに視線を向ける。
アバター越しでも分かる探るような視線は興味と観察、その他様々な感情が混ざっていて見ていて非常に不安になる――というかグロウモスとは別の意味で気持ちが悪かった。
「ご安心ください。 目的が別とはいえ、やるからには真剣にやらせていただきます。 変にふざけると姉が怖いですからね。 お義兄さんとも可能な限り仲良くやりたいと思っていますよ?」
「はは、そりゃどうも。 いきなり本性を晒したのは君なりの誠意って事か?」
「それもありますが見た所、お義兄さんって中々に察しが良さそうなので隠しても気付くでしょう? だったら最初に晒しておいた方が隠す手間が省けて楽でいいと思いません?」
ヨシナリは内心で頭を抱えた。 戦力面では使えそうだが、居るだけで心労が溜まりそうな相手だ。
「無理に姉とくっ付けとは言いませんが、少しでも意識して頂ければ幸いです。 それに私も今の会話であなたの事を気に入ってしまいました。 これからよろしくお願いしますね? お義兄さん?」
「あぁ、君が姉に対して拗らせてるのは理解したよ。 こっちこそよろしく、だけど『星座盤』に入った以上、コキ使うから覚悟しておいてくれ」
「えぇ、存分に使ってくださいな。 姉とお義兄さんの為に全力で頑張りますよ」
ヨシナリはあぁと頷き、内心で小さく溜息を吐いた。
「いやぁ、ヨシナリ君の組んでくれた機体えぇなぁ! 気持ちいいぐらいに良く動く!」
「クソ、あんなのアリかよ……」
模擬戦が終わったらしくふわわとマルメルが戻って来た。
どうやらマルメル手酷くやられたようだ。 だが、手応えはあったようで雰囲気的に何かを掴んだようだった。
「おかえり、良い感じだったな! グロウモスさんが来たらユニオン戦をちょっとやってみるか!」
「おぅ、いいねぇ。 ヨシナリも機体を新調したんだろ? 見せてくれよ!」
「あぁ、俺がどれだけ頼もしくなったのか見せてやるぜ」
ヨシナリがマルメルと話している間にふわわはシニフィエの方へと忍び寄り囁く。
「余計な事言ってへんやろうな?」
「いいえ? お義兄さんとは仲良くやれそうですねって話だけですよ」
話題に上げたお陰なのかグロウモスがログイン。
彼女のアバターが姿を現す。 ヨシナリ達を見た後、シニフィエを見て首を傾げる。
次いで再度ヨシナリに視線を向けて首を傾げた。 暗に『誰?』と尋ねているのだろう。
「こちらはシニフィエさん。 ふわわさんの妹で今日から始めるそうなんです」
シニフィエは臆することなく前に出てグロウモスに手を差し出す。
「グロウモスさんですね。 姉がいつもお世話になっております。 妹のシニフィエと申します。 まだまだ、始めたばかりで実力不足ですがこのユニオンに相応しい働きができるように頑張りたいと思います」
「ぐ、グロウモス、です。 よろしく」
二人は握手を交わした。
挨拶が済んだ所でヨシナリはグロウモス用に用意した機体プランを呼び出し、彼女へ見せる。
「イベントで撃破報酬が凄かったんで、皆に還元しようと思いまして勝手ながら機体を用意したんですけど良かったら使ってもらえませんか?」
シニフィエは即答。 それを聞いてヨシナリはどう反応するべきか迷う。
正直、彼女がどこまで本気かさっぱりわからないからだ。 だからこそ、腹を割って話そうと切り出したのだが、もしかしたら失敗したのかもしれない。
「姉さんって可愛いでしょう?」
「……このアバターで美醜の判断をするのはナンセンスじゃないか?」
疑問を疑問で返すのはあまりよろしくないが、嘘ではないので問題はないだろう。
「姉さんは可愛い人なんですよ。 見た目もそうですけど、何より乳が大きい」
「俺はその情報にどんな反応をすればいいんだ?」
「興味が出たでしょう?」
「かもな。 いいから続きを話してくれ」
シニフィエはせっかちですねと小さく呟いて肩を竦める。
「だから、言い寄る男は本当に多いんですよ。 でも、姉には彼氏ができない。 道場を継がせる人材を確保する為にも私か姉が手頃な男を引っ張り込むのがいいのですが、ポジション的に姉が継ぐのがいいと思っています。 ただ、これが中々に難しい」
「何で? 付き合いはそこまで長い訳じゃないけど、ふわわさんって結構付き合い易い人だと思うけど?」
「あぁ、簡単な話で姉さんはちょっとした病気に近い物をもってまして、定期的にスリルのような物を味わいたいそうで死合いに近い勝負形式での立ち会いを求めるんですよ。 最近はこのゲームで発散できている様でリアルでは落ち着いていますが。 ――で、その辺を軽視する男には言い寄って来た時にこういうんですよ『ウチに勝てたら好きにしてええよ』って」
どこの戦闘民族だよ。 思った以上にヤバいふわわのリアルにそんな感想を漏らしたが、それ以上にこの話、俺が聞いても大丈夫な話かと少し嫌な予感がしつつ相槌を打つ。
「まぁ、ガチで勝負まで行ったのは一人だけなんですけど、ちょっと酷い事になりまして」
「――病院送りにしたって事か」
「えぇ、木刀で頭を叩き割られたので事前に救急を呼んでいなければ死んでいたかもしれませんね」
シニフィエはあらかじめ何が起こっても文句を言わないって誓約書巻かせて良かったと付け加える。
「……マジかよ」
「そんな訳で、このまま行くと姉は行き遅れてしまいます。 妹としては非常に心配なんですよ。 そんなある日の事です。 ゲームを始めて発散する事を覚えて落ち着いたので、私も両親も胸を撫で下ろしていたのですが、どうも様子がおかしい。 姉はある日、非常に満足する死合いが出来たと大喜びしていたんですよ」
――これ間違いなく、俺が聞いちゃ不味い話だな。
取り敢えず、ふわわには知らん顔をしよう。
そんなヨシナリの心境を知ってか知らないのか話を続ける。
「『凄い子と勝負してん、最初は全然大した事なかったのに二回目に戦ったらびっくりするぐらいに化けてなぁ』『その子ヨシナリ君っていうんやけど、遊びやなくて本気でウチを殺そうと殺気を向けてきた』『凄い、あんな子は初めてや』 ――とまぁ、以降も事ある毎にヨシナリ君、ヨシナリ君とうるさくってですね。 流石に驚きましたよ。 姉があんなに興奮気味に他人、それも異性の事に触れるのは初めてでしたからね。 ぶっちゃけるとこのゲームには一ミリも興味なかったんですけど、姉を変えた『ヨシナリ君』には興味があります」
そう言ってシニフィエはじっとヨシナリに視線を向ける。
アバター越しでも分かる探るような視線は興味と観察、その他様々な感情が混ざっていて見ていて非常に不安になる――というかグロウモスとは別の意味で気持ちが悪かった。
「ご安心ください。 目的が別とはいえ、やるからには真剣にやらせていただきます。 変にふざけると姉が怖いですからね。 お義兄さんとも可能な限り仲良くやりたいと思っていますよ?」
「はは、そりゃどうも。 いきなり本性を晒したのは君なりの誠意って事か?」
「それもありますが見た所、お義兄さんって中々に察しが良さそうなので隠しても気付くでしょう? だったら最初に晒しておいた方が隠す手間が省けて楽でいいと思いません?」
ヨシナリは内心で頭を抱えた。 戦力面では使えそうだが、居るだけで心労が溜まりそうな相手だ。
「無理に姉とくっ付けとは言いませんが、少しでも意識して頂ければ幸いです。 それに私も今の会話であなたの事を気に入ってしまいました。 これからよろしくお願いしますね? お義兄さん?」
「あぁ、君が姉に対して拗らせてるのは理解したよ。 こっちこそよろしく、だけど『星座盤』に入った以上、コキ使うから覚悟しておいてくれ」
「えぇ、存分に使ってくださいな。 姉とお義兄さんの為に全力で頑張りますよ」
ヨシナリはあぁと頷き、内心で小さく溜息を吐いた。
「いやぁ、ヨシナリ君の組んでくれた機体えぇなぁ! 気持ちいいぐらいに良く動く!」
「クソ、あんなのアリかよ……」
模擬戦が終わったらしくふわわとマルメルが戻って来た。
どうやらマルメル手酷くやられたようだ。 だが、手応えはあったようで雰囲気的に何かを掴んだようだった。
「おかえり、良い感じだったな! グロウモスさんが来たらユニオン戦をちょっとやってみるか!」
「おぅ、いいねぇ。 ヨシナリも機体を新調したんだろ? 見せてくれよ!」
「あぁ、俺がどれだけ頼もしくなったのか見せてやるぜ」
ヨシナリがマルメルと話している間にふわわはシニフィエの方へと忍び寄り囁く。
「余計な事言ってへんやろうな?」
「いいえ? お義兄さんとは仲良くやれそうですねって話だけですよ」
話題に上げたお陰なのかグロウモスがログイン。
彼女のアバターが姿を現す。 ヨシナリ達を見た後、シニフィエを見て首を傾げる。
次いで再度ヨシナリに視線を向けて首を傾げた。 暗に『誰?』と尋ねているのだろう。
「こちらはシニフィエさん。 ふわわさんの妹で今日から始めるそうなんです」
シニフィエは臆することなく前に出てグロウモスに手を差し出す。
「グロウモスさんですね。 姉がいつもお世話になっております。 妹のシニフィエと申します。 まだまだ、始めたばかりで実力不足ですがこのユニオンに相応しい働きができるように頑張りたいと思います」
「ぐ、グロウモス、です。 よろしく」
二人は握手を交わした。
挨拶が済んだ所でヨシナリはグロウモス用に用意した機体プランを呼び出し、彼女へ見せる。
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