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第342話

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 「うーん。 一応、確認しときましょうか」

 ヨシナリはふわわのメールをコピーして運営に問い合わせのメールを送る。
 内容は単純で『これは本物ですか?』と言ったものだ。
 返答は即座だ。 『本物です』との事だった。 なら問題ないだろう。

 「受け取ってないんですよね」
 「うん、なんか怪しかったから……」
 「大丈夫そうなんで受け取っても問題ないかと。 ――取り敢えず、モノを見て判断しましょう」

 ふわわは小さく頷いてメールに添付されているアイテムを受け取る。
 それにより受け取った装備の詳細が費用辞された。 ふわわはウインドウをヨシナリの見える位置に移動させる。 内容は二つ。 名称は『アメノハバキリ』ふわわの使っている『オロチノアラマサ』の上位互換――というよりは発展型と言った感じだ。 形成の際にある程度形状を弄れるとの事だ。 ふわわのスタイルを考えると微妙だったが、硬質化の効率等のスペックも向上しているので悪い代物ではない。

 これに関しては同系統の武器をまともに扱えないヨシナリには判断が付き辛いが、仕様を見る限り使いこなせれば攻撃の幅が大きく広がるだろう。 ちなみに二個届いていた。 
 それはいいとして、問題はもう一つの方だ。 

 「野太刀用じゃなくて太刀用の鞘か。 名称は『ナインヘッドドラゴン』えらく強そうだな」
 「専用の太刀とセットみたいやねー」
 「仕様見てるんですけど、これまともに当てられるんですか? 正直、使いこなす以前に扱える自信がないんですけど」

 ふわわはうーんと首を捻っている。 ヨシナリはそれを見てマジかよと震えた。 
 何故ならふわわは明らかにどう使うかを思案しているからだ。 
 ヨシナリは改めて仕様書に視線を落とし、書いてある事を見て色々と納得した。

 こんなイロモノばかり作ってるから不人気なんだろうなという事が分かったからだ。
 ただ、使いこなせるのであれば凄まじい威力を発揮するだろう。
 
 「そう言えば武器も買ってくれるって話やったよね?」
 「はい」
 「だったら太刀と小太刀を適当にお願い。 後、機体ありがとね?」
 「同じ長さの物でグレードの高い物でいいですか?」
 「うん。 野太刀用の鞘はそのまま使うわ」

 ヨシナリは了解ですと組んだ機体をそのままふわわに送り、ショップで太刀と小太刀を選んで完了だ。 ふわわは受け取った機体と装備を確認し、ふむふむと頷く。

 「取り敢えず、トレーニングルームで慣らしましょう。 動かせるようになったら模擬戦で調整をかける感じで大丈夫ですか?」
 「うん。 それでいこっか。 ――えーっと、ところで別の話やねんけど前にウチが言った事覚えてる?」

 前に言った事? ヨシナリは何だったかと記憶を探るとイベント戦の前に言われた事を思い出した。
 
 「妹さんがこのゲームを始めたいとか何とかでしたか?」
 「そうそう。 顔合わせして貰いたいねんけど今からで大丈夫?」
 「今からですか? 随分と急ですね。 まぁ、構いませんが……」

 ――いきなりぶっこんで来るなぁ。 ふわわの妹か。

 ヨシナリは考える。 どんなのか全く想像できない。
 似たような感じなのかな? それとも真逆とか? 話し易い相手だといいんだけど……。
 
 「マルメルも呼びますか?」
 「や、一先ずヨシナリ君だけで会ってくれへんかな? で、駄目そうやったら諦めろと言って欲しいんよ!」

 それを聞いてヨシナリは僅かに眉を顰める。
 
 「何です? 遠回しに向いてないから止めろって言えって事ですか?」 
 「え、えー? そんな事はないよぉ??」

 アバター越しでも目が泳いでいるのが丸分かりだった。 
 態度からふわわは妹がこのゲームを始める事を歓迎していないようだ。 
 どちらにしても見てみない事には何とも言えない。 それに妹とやらがふわわの半分ぐらいでも強いのなら戦力として充分に使える。 人数的に厳しい『星座盤』としては頭数が欲しいのでヨシナリ個人としては余程、合わない限りは歓迎したいのだが――


 「どうも、姉がお世話になっております。 シニフィエといいます」

 そう言って深々と頭を下げたのはやや小柄な初期アバターだ。 声の感じからヨシナリ達と同年代かやや下といった印象を受けた。
 ユニオン加入申請が行われたので取り敢えず受諾し、ステータスを確認する。
 ランクはI、戦績は0戦0勝。 チュートリアルを終えたばかりのルーキーだ。

 「これはご丁寧にどうも。 ヨシナリです。 こちらこそお姉さんにはいつも助けてもらってます」
 
 シニフィエはじっとヨシナリを見つめる。 
 何だか値踏みされているような感じがして少しだけ居心地が悪かった。
 ふわわは彼女にしては珍しくそわそわしており、落ち着かない様子だ。

 ――身内が来たのだからそんな感じになるのも無理はないのかもしれない。

 「あ、あの、俺が何か――」
 「あぁ、失礼しました。 我が家の不良債権を引き取ってくれるのはどのような方かと思いまして」
 「はい? 不良?」

 ヨシナリが聞き返しそうとしたが、それよりも早くふわわがシニフィエの口を塞ぐように頭部を抱きしめる。

 「わー! ちょっ、ちょっと、何を言いだすのかなぁ! す――じゃなかったシニフィエちゃん?」
 
 頑張って塞いでいるが、アバターは口の部分で発声している訳ではないので余り意味のない行動だった。

 「いえ、ここ最近、ゲームで知り合った男の事を楽しそうに話す物ですのでてっきり彼氏でもできたのかと思いまして」

 ――彼氏? 俺が?

 ヨシナリは思わず首を傾げてしまった。 ちらりとふわわを見る。
 ふわわの人となりはある程度ではあるが掴めていた。 さて、シニフィエの発言意図は不明だが、言われてしまえば少し考えてしまう。 自分とふわわがそう言った交際関係になったと仮定した状況を思い浮かべる。 

 ――駄目だ。 潰し合っている絵面しか浮かばない。
 
 ふわわと二人で何かすると考えると真っ先に対戦が思い浮かび、新調したホロスコープで完膚なきまでに打ち負かす事しか考えられなかった。

 「あー、何か勘違いをされているみたいですが俺とふわわさんはそんな関係ではありませんよ? 仲良くはさせて貰ってますが……」
 「そうなんですか?」
 
 シニフィエは心底不思議といった様子でヨシナリを見つめる。
 何なんだこいつは? 何をどう勘違いしたら自分とふわわがデキてるなんて話になるんだろうか?
 そもそも彼女はヨシナリよりも年上で、社会人だ。 そんな彼女が自分のようなガキを相手にするわけがないだろうが。 

 「そうなんです。 えっと、もしかして俺を見に来ただけって感じですか?」

 冷やかしならさっさと帰ってくれないかなと少し思ったが、シニフィエは小さく首を振る。

 「いえ、飽きっぽい姉が随分と熱心にプレイしているので、私も遊んでみようと思いました。 真面目にやる必要があるというのは聞いていますので、お役に立てるかは何とも言えませんが真剣にやらせていただきます」
 
 ヨシナリの思考を見透かしたかのような返しに少し驚いたが、やる気があるなら問題はない。
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