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第323話
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「まず、現状を説明します」
状況的に説明に適任という事でヨシナリが話す事となった。
動揺はあるが、どうにか頭の中で整理しつつこれまでに集めた情報を纏める。
「あの巨大エネミーは本体の全長は約数十キロ、あちこちから生えている触手も似たような物ですね。 デカすぎて俺のセンサーシステムでは計測できませんでした」
言ってて笑いそうになるサイズだ。 あの触手は地下の水路を通って地上に出ているので出現範囲に至ってはこの惑星全域。 これで笑うなという方が無理だろう。
次にヨシナリがウインドウを可視化して見せる。 シックスセンスで観測したエネルギー分布だ。
「これを見て貰えば分かると思うんですが、ボディの構成素材は地下にあった水を力場のような物で覆う事で形を維持しています。 普通なら賄える訳がないんですが、反応炉の馬鹿げたエネルギー供給によって成立してるようですね」
「つまりは体の大半が水で下手に攻撃しても意味がないって事だナ」
「はい、アレを仕留めたいなら反応炉を破壊するしかありません。 幸か不幸か、あの触手の出現で制圧条件の施設は全て破壊されたようなものなので仕留めればこのイベントは終わります」
口で言うだけなら簡単な話だが、そうも行かない。
まず反応炉の位置。 これはシックスセンスで観測できているので問題ない。
あの巨体に埋もれる形にはなっているが、攻撃する手段にも心当たりがある。
「弱点があるのは分かったわ。 でも、その反応炉ってその巨体の中なんでしょう? どうやって破壊するの?」
ツェツィーリエの意見はもっともだ。
ヨシナリはウインドウの表示をエネミーの本体部分の映像――撮影した物へと切り替える。
そこにはさっきヨシナリ達が命からがら脱出した施設が映し出されていた。
「これは?」
「反応炉のあった施設です。 下部にシャフトが伸びているのが分かりますか?」
「えぇ、そのまま先端に大きな球体があるけど、反応炉はあの中って事?」
「はい、エネミー出現時は注水されて追い出される形になりましたがどういう訳か今は水が抜けているようですね」
ヨシナリは画像を拡大しなるべく広い範囲が見えるようにする。
「正面からのごり押しは効果がありません。 それは他のユニオンが使用した大規模破壊兵器を見れば明らかです」
基地を派手に消し飛ばした攻撃はボスの表面を蒸発させはしたがそれだけだった。
つまり運営の意図としては正面からの突破は許さないという事だ。 核やそれに匹敵する破壊力をもってしてもあの程度のダメージである以上、ごり押しは現実的ではない。
「ならどうするの?」
カナタはさっさと結論を言えと言わんばかりだが、意識の一部はユウヤに向いているのかチラチラと見ている。
「大手ユニオンの攻撃で結構な数の施設が消し飛びましたが、この惑星の表面に存在した構造体はそのままなんですよ。 よく見れば触手の中に浮いているんですけど見えます?」
「……確かに見えるわ」
目を凝らせばだが触手の中に建物が見える。
ヨシナリは再度、映像を反応炉のある施設にフォーカス。
「この施設、周囲に何かが伸びてるのが見えますか?」
「んー? エレベーターシャフトか何かに見えるナ」
「その通りです。 全部乗せの施設はここへの直通ルートなんですよ。 つまり――」
「ははーん。 分かったゾ。 つまりこの施設の中を通って反応炉に向かうって訳だナ?」
「そう言う事です」
熱分布を見れば明らかに水が抜けており、反応炉へ行きたければここを通れと言わんばかりだ。
締め出しておいて、もう一回入れとは意地の悪い流れだったが、水を抜いたのは誘っている事に他ならない。
ポンポンはうんうんと頷き、カナタは考えるように沈黙。
「話は分かったわ。 ここを通って反応炉へ向かう。 それはいいんだけど、絶対に何か居るでしょ?」
ツェツィーリエの指摘はもっともだ。 そしてヨシナリには何が居るのかは簡単に想像できた。
「恐らくですが敵のトルーパーが居ます。 しかもこれまでとは比べ物にならないほどの高性能機で」
ヨシナリは映像を切り替える。 例の敵性トルーパーの姿が映し出された。
「技量自体はこれまでに出てきた敵に毛が生えた程度ですが、機体のスペックと武装が段違いです。 恐らくはジェネシスフレームと同等でしょう」
「……倒してきたの?」
「出てきたのが一機だけだったので何とかといった感じですが、複数で来られるとかなり厳しいです」
「なるほど、分かった。 全員のメンテが終わるまでもう少し時間がかかるからそれまでに判断するって事でいいかしら?」
「はい、お願いします」
一先ずではあるが情報の共有と方針についての話し合いはこれでお開きとなった。
「――という訳でもう一回、あそこへ突っ込む事になりそうだ」
場所は変わって『星座盤』の待機場所。
話し合いの結果を伝えると、特に驚きはなかったが反応は薄かった。
「まぁ、そうなるだろうなって気がしてたよ」
「水が抜けてるんやったら泳がんでいいって事やしウチは特に何も」
「……同じく、です」
ユウヤは無言でアルフレッドの頭を撫でていた。
「それはそうと、例のエレベーターシャフトからまた降りるのは分かったんだけど絶対に何かしらの邪魔が入るだろ?」
「それは間違いないと思う。 あの施設の構造はトルーパーが動き回るにはかなり適している」
「広かったもんなー」
「はい、つまりはメインで出てくるのは――」
「……あの敵トルーパー」
「その通り。 恐らくですがあの強化機が混ざってる可能性はかなり高いですね」
一機でも手を焼いた機体なのだ。 そんな物が大挙して現れればどうなるのかは想像に難くない。
「ヤバくね?」
「ヤバいのはヤバいけど、何の為に他と情報共有したと思ってるんだよ。 今頃はカナタやツェツィーリエ達が他に情報を流して同期して仕掛けようって流れになってると思うぞ」
「そうなのか?」
「あぁ、どうせ俺が言ったって大した人数が聞いてくれる訳じゃない。 なら発言力のある奴に任せればいいよ」
そう言ってヨシナリは肩を竦める。
「ヨシナリ君はそれでええの?」
「――と言いますと?」
「自分で仕留めたいって顔してたから」
それを聞いてヨシナリはアバターの下で苦笑。
この人は本当にこういうのに敏感だよなと思いながら小さく笑って見せた。
状況的に説明に適任という事でヨシナリが話す事となった。
動揺はあるが、どうにか頭の中で整理しつつこれまでに集めた情報を纏める。
「あの巨大エネミーは本体の全長は約数十キロ、あちこちから生えている触手も似たような物ですね。 デカすぎて俺のセンサーシステムでは計測できませんでした」
言ってて笑いそうになるサイズだ。 あの触手は地下の水路を通って地上に出ているので出現範囲に至ってはこの惑星全域。 これで笑うなという方が無理だろう。
次にヨシナリがウインドウを可視化して見せる。 シックスセンスで観測したエネルギー分布だ。
「これを見て貰えば分かると思うんですが、ボディの構成素材は地下にあった水を力場のような物で覆う事で形を維持しています。 普通なら賄える訳がないんですが、反応炉の馬鹿げたエネルギー供給によって成立してるようですね」
「つまりは体の大半が水で下手に攻撃しても意味がないって事だナ」
「はい、アレを仕留めたいなら反応炉を破壊するしかありません。 幸か不幸か、あの触手の出現で制圧条件の施設は全て破壊されたようなものなので仕留めればこのイベントは終わります」
口で言うだけなら簡単な話だが、そうも行かない。
まず反応炉の位置。 これはシックスセンスで観測できているので問題ない。
あの巨体に埋もれる形にはなっているが、攻撃する手段にも心当たりがある。
「弱点があるのは分かったわ。 でも、その反応炉ってその巨体の中なんでしょう? どうやって破壊するの?」
ツェツィーリエの意見はもっともだ。
ヨシナリはウインドウの表示をエネミーの本体部分の映像――撮影した物へと切り替える。
そこにはさっきヨシナリ達が命からがら脱出した施設が映し出されていた。
「これは?」
「反応炉のあった施設です。 下部にシャフトが伸びているのが分かりますか?」
「えぇ、そのまま先端に大きな球体があるけど、反応炉はあの中って事?」
「はい、エネミー出現時は注水されて追い出される形になりましたがどういう訳か今は水が抜けているようですね」
ヨシナリは画像を拡大しなるべく広い範囲が見えるようにする。
「正面からのごり押しは効果がありません。 それは他のユニオンが使用した大規模破壊兵器を見れば明らかです」
基地を派手に消し飛ばした攻撃はボスの表面を蒸発させはしたがそれだけだった。
つまり運営の意図としては正面からの突破は許さないという事だ。 核やそれに匹敵する破壊力をもってしてもあの程度のダメージである以上、ごり押しは現実的ではない。
「ならどうするの?」
カナタはさっさと結論を言えと言わんばかりだが、意識の一部はユウヤに向いているのかチラチラと見ている。
「大手ユニオンの攻撃で結構な数の施設が消し飛びましたが、この惑星の表面に存在した構造体はそのままなんですよ。 よく見れば触手の中に浮いているんですけど見えます?」
「……確かに見えるわ」
目を凝らせばだが触手の中に建物が見える。
ヨシナリは再度、映像を反応炉のある施設にフォーカス。
「この施設、周囲に何かが伸びてるのが見えますか?」
「んー? エレベーターシャフトか何かに見えるナ」
「その通りです。 全部乗せの施設はここへの直通ルートなんですよ。 つまり――」
「ははーん。 分かったゾ。 つまりこの施設の中を通って反応炉に向かうって訳だナ?」
「そう言う事です」
熱分布を見れば明らかに水が抜けており、反応炉へ行きたければここを通れと言わんばかりだ。
締め出しておいて、もう一回入れとは意地の悪い流れだったが、水を抜いたのは誘っている事に他ならない。
ポンポンはうんうんと頷き、カナタは考えるように沈黙。
「話は分かったわ。 ここを通って反応炉へ向かう。 それはいいんだけど、絶対に何か居るでしょ?」
ツェツィーリエの指摘はもっともだ。 そしてヨシナリには何が居るのかは簡単に想像できた。
「恐らくですが敵のトルーパーが居ます。 しかもこれまでとは比べ物にならないほどの高性能機で」
ヨシナリは映像を切り替える。 例の敵性トルーパーの姿が映し出された。
「技量自体はこれまでに出てきた敵に毛が生えた程度ですが、機体のスペックと武装が段違いです。 恐らくはジェネシスフレームと同等でしょう」
「……倒してきたの?」
「出てきたのが一機だけだったので何とかといった感じですが、複数で来られるとかなり厳しいです」
「なるほど、分かった。 全員のメンテが終わるまでもう少し時間がかかるからそれまでに判断するって事でいいかしら?」
「はい、お願いします」
一先ずではあるが情報の共有と方針についての話し合いはこれでお開きとなった。
「――という訳でもう一回、あそこへ突っ込む事になりそうだ」
場所は変わって『星座盤』の待機場所。
話し合いの結果を伝えると、特に驚きはなかったが反応は薄かった。
「まぁ、そうなるだろうなって気がしてたよ」
「水が抜けてるんやったら泳がんでいいって事やしウチは特に何も」
「……同じく、です」
ユウヤは無言でアルフレッドの頭を撫でていた。
「それはそうと、例のエレベーターシャフトからまた降りるのは分かったんだけど絶対に何かしらの邪魔が入るだろ?」
「それは間違いないと思う。 あの施設の構造はトルーパーが動き回るにはかなり適している」
「広かったもんなー」
「はい、つまりはメインで出てくるのは――」
「……あの敵トルーパー」
「その通り。 恐らくですがあの強化機が混ざってる可能性はかなり高いですね」
一機でも手を焼いた機体なのだ。 そんな物が大挙して現れればどうなるのかは想像に難くない。
「ヤバくね?」
「ヤバいのはヤバいけど、何の為に他と情報共有したと思ってるんだよ。 今頃はカナタやツェツィーリエ達が他に情報を流して同期して仕掛けようって流れになってると思うぞ」
「そうなのか?」
「あぁ、どうせ俺が言ったって大した人数が聞いてくれる訳じゃない。 なら発言力のある奴に任せればいいよ」
そう言ってヨシナリは肩を竦める。
「ヨシナリ君はそれでええの?」
「――と言いますと?」
「自分で仕留めたいって顔してたから」
それを聞いてヨシナリはアバターの下で苦笑。
この人は本当にこういうのに敏感だよなと思いながら小さく笑って見せた。
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