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第314話
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イカを射程内に捉えたと同時にユウヤは散弾砲を発射。
一粒弾はイカの表面を貫通して内部へ。 そして――爆ぜた。
だが撒き散らしたのは熱と弾丸ではなく冷気だ。 冷凍弾、火薬の代わりに液体窒素を撒き散らして対象を凍結させる代物で、トルーパー相手は自前の発熱で溶かす事が可能なので対人戦ではあまり使えない装備だった。
だが、大半が液体のイカならどうなるのか? 効果は覿面だった。
イカはギクシャクと動きを鈍らせ、完全に停止。
ヨシナリは油断せずに索敵を続けつつ、動きを止めたイカ型エネミーをスキャニング。
完全に動きが止まっている。
自力で破る可能性もなくはないが、ここの気温は氷点下を軽く下回っているので、自然解凍は望めない。
「一応、熱量自体はあるから潰しといた方が無難か」
ヨシナリはすっと拳銃を構えて発砲。 イカの核を撃ち抜き、機能を完全停止させる。
「前の時はあんなに苦戦したのに一発かよ」
「まぁ、手品みたいなもので種が割れれば案外簡単なものって事だ」
このイカ型エネミーは強酸性の液体のボディを内部に浮かんでいる本体が操るといった構造をしているので内部に冷凍弾を撃ち込んで本体を凍らせ液体との接触を断てば操る事が出来なくなると考えたのだが、結果は大当たりだ。
内部の本体である球体を凍らせてしまえば完全に行動不能となる。
構造さえ把握してしまえば対策はそう難しくはなかった。
ヨシナリはマルメルとそんな会話をしながら屈んで地下をスキャニング。
「どうだ?」
「当たりだ。 地下にはかなり広い空間が広がっている。 降りられそうだ」
ヨシナリは装備をチェック。 ステータスに異常がない事を確認。
「取り敢えず、俺とユウヤで先行する。 安全を確認したら連絡するから追いかけて来てくれ」
「二人で大丈夫か?」
「大丈夫かは微妙だが、こうしておけばしくじっても全滅は免れるからな」
ユウヤは特に返事をせずに何の躊躇もなく穴へとダイブ。
「あぁもう、さっさと行きやがって。 マルメル、ここを頼む。 五分以内に連絡する。 行けそうならそのまま追いかけて来てくれ。 無理そうなら施設に戻ってカナタかツェツィーリエの指揮下に入ってくれればいい」
「分かった」
「じゃあ、ちょっと行って来る」
ヨシナリはホロスコープを水中に沈め、地下へと潜る。
縦穴を下へ下へと潜る。 ライトは変に目立ちそうなので切ってはいるが、シックスセンスが周囲の状況を正確に伝えてくれる。 音はあまりしない。 するとすれば水中でよく耳にするごぼごぼと言った水の音だけだ。 下降しながらホロスコープのステータスを確認。
行動自体は問題ない上、背負った推進装置も機能している。
だが、スピードは地上の六割弱といったところだろう。 加えて纏わりつくような感覚が機体を重く感じさせる。
――思った以上に厄介だな。
ユウヤの反応は随分と先に行っていたので置いて行かれないように加速。
しばらく進むと広い空間に出た。 真っ暗で視界は完全にゼロだが、形は分かる。
広い。 とにかく広大な空間だった。 よくよく考えるとこの惑星の中心に近いのだ。
広くて当たり前かと考えながら周囲の形状を確認し、ユウヤの機体にデータを送信。
確かに広大な空間ではあるが、何もない訳ではない。 まずは無数に蠢く動体反応。
イカ共だ。 大半はこちらに気付いていないが一部が侵入者を検知して接近してくる。
「俺が相手をする。 お前は目当ての物を探せ」
ユウヤはそう言って向かって来るイカ型に突っ込んでいく。
探せと言ってもそう難しいものではなかった。 何故なら最初から当たりは付けていたからだ。
壁面には無数の縦穴。 そして伸びる巨大な筒――恐らくはエレベーターシャフトか何かだろう。
例の全部乗せの拠点から反応炉への直通通路だ。
それさえ見つければ後は楽で、それを辿れば目当ての代物が――
「――あった」
巨大な球体状の何かをシックスセンスが捉える。
エネルギーの反応がどころか内部の様子が全く分からない所を見ると厳重に守られているとみていい。 アレを破壊すればクリアできるのかは微妙だが、大きく前進するのは間違いないだろう。
そして他にプレイヤーが居ない点からも完全に出し抜いた形になった。
ユウヤにデータを共有しながら、反応炉の周辺を視る。
イカだらけ以外の感想が出てこない。 一応、備えはしてきたのだが、突破できるのかは非常に怪しかった。
「まぁ、やるだけやるさ」
そう呟いてマルメル達に連絡。
「当たりだ。 反応炉っぽい物を見つけた」
「マジかよ! 今すぐ行く!」
「大丈夫だとは思うが気を付けろよ」
後は待つだけか。 気が付けばユウヤが向かってきた敵を全て潰し終えてこちらに来ていた。
「お疲れです」
「――アレが反応炉って奴か。 地上ならどうにでもなるがこっちだと突破は骨だぞ」
「ですね。 その為に水中戦装備と対イカ用の冷凍弾なんですけど、中々に厳しい事になりそうです」
それなり以上の距離があるにも関わらず埋め尽くさんばかりに蠢いているのが分かる。
突破させる気のない非正規ルートなのだ。 これぐらいは当然だろう。
あのイカの群れを掻い潜って反応炉に接触。 内部への侵入方法を探ると。
侵入方法はシックスセンスで調べればいいがそれまでの時間、イカに包囲された状態で耐えるのか。
想像しただけで帰りたくなる。 振り返るとマルメル達が追い付いてきた。
近くまで来たのでセンサーシステムのリンクを開始。 ややあって、全員が声を漏らす。
「広っ! ってかイカ多いな! あれ突破すんのか!?」
「ここやとウチは役立たずやから大人しくしてるわー」
マルメルとふわわは相変わらずといった反応でグロウモスは無言で武器のチェック。
「しつこいようですけど確認します。 俺達の当面の目的はあの反応炉らしき建造物に取り付いて中に入ります。 施設の体を成している以上は必ず入る方法があるはずなので、それを探している間の護衛を頼みます」
このゲームはそういった点にこだわっているので、高い確率でメンテナンス用のハッチがあるはずだ。 そもそも何もないならこのイカ共を配置する意味がない。
ギャンブルではあるが勝てる見込みは充分に存在する。
「どれぐらいかかりそうなんだ?」
「俺とアルフレッドでやるのでそこまでかからないはずだ。 出来れば一分以内に片を付けたいが、最悪二、三分は覚悟してくれ」
「うへ、あの中で三分生き残るのか。 無理ゲーじゃね?」
マルメルはこの広い空間を回遊しているイカの群れを見てやや引き攣った声を漏らす。
「俺もちょっとそう思っているが、適切な攻撃手段を用いればイカは簡単に処理できるから行けなくはないと思ってる」
一粒弾はイカの表面を貫通して内部へ。 そして――爆ぜた。
だが撒き散らしたのは熱と弾丸ではなく冷気だ。 冷凍弾、火薬の代わりに液体窒素を撒き散らして対象を凍結させる代物で、トルーパー相手は自前の発熱で溶かす事が可能なので対人戦ではあまり使えない装備だった。
だが、大半が液体のイカならどうなるのか? 効果は覿面だった。
イカはギクシャクと動きを鈍らせ、完全に停止。
ヨシナリは油断せずに索敵を続けつつ、動きを止めたイカ型エネミーをスキャニング。
完全に動きが止まっている。
自力で破る可能性もなくはないが、ここの気温は氷点下を軽く下回っているので、自然解凍は望めない。
「一応、熱量自体はあるから潰しといた方が無難か」
ヨシナリはすっと拳銃を構えて発砲。 イカの核を撃ち抜き、機能を完全停止させる。
「前の時はあんなに苦戦したのに一発かよ」
「まぁ、手品みたいなもので種が割れれば案外簡単なものって事だ」
このイカ型エネミーは強酸性の液体のボディを内部に浮かんでいる本体が操るといった構造をしているので内部に冷凍弾を撃ち込んで本体を凍らせ液体との接触を断てば操る事が出来なくなると考えたのだが、結果は大当たりだ。
内部の本体である球体を凍らせてしまえば完全に行動不能となる。
構造さえ把握してしまえば対策はそう難しくはなかった。
ヨシナリはマルメルとそんな会話をしながら屈んで地下をスキャニング。
「どうだ?」
「当たりだ。 地下にはかなり広い空間が広がっている。 降りられそうだ」
ヨシナリは装備をチェック。 ステータスに異常がない事を確認。
「取り敢えず、俺とユウヤで先行する。 安全を確認したら連絡するから追いかけて来てくれ」
「二人で大丈夫か?」
「大丈夫かは微妙だが、こうしておけばしくじっても全滅は免れるからな」
ユウヤは特に返事をせずに何の躊躇もなく穴へとダイブ。
「あぁもう、さっさと行きやがって。 マルメル、ここを頼む。 五分以内に連絡する。 行けそうならそのまま追いかけて来てくれ。 無理そうなら施設に戻ってカナタかツェツィーリエの指揮下に入ってくれればいい」
「分かった」
「じゃあ、ちょっと行って来る」
ヨシナリはホロスコープを水中に沈め、地下へと潜る。
縦穴を下へ下へと潜る。 ライトは変に目立ちそうなので切ってはいるが、シックスセンスが周囲の状況を正確に伝えてくれる。 音はあまりしない。 するとすれば水中でよく耳にするごぼごぼと言った水の音だけだ。 下降しながらホロスコープのステータスを確認。
行動自体は問題ない上、背負った推進装置も機能している。
だが、スピードは地上の六割弱といったところだろう。 加えて纏わりつくような感覚が機体を重く感じさせる。
――思った以上に厄介だな。
ユウヤの反応は随分と先に行っていたので置いて行かれないように加速。
しばらく進むと広い空間に出た。 真っ暗で視界は完全にゼロだが、形は分かる。
広い。 とにかく広大な空間だった。 よくよく考えるとこの惑星の中心に近いのだ。
広くて当たり前かと考えながら周囲の形状を確認し、ユウヤの機体にデータを送信。
確かに広大な空間ではあるが、何もない訳ではない。 まずは無数に蠢く動体反応。
イカ共だ。 大半はこちらに気付いていないが一部が侵入者を検知して接近してくる。
「俺が相手をする。 お前は目当ての物を探せ」
ユウヤはそう言って向かって来るイカ型に突っ込んでいく。
探せと言ってもそう難しいものではなかった。 何故なら最初から当たりは付けていたからだ。
壁面には無数の縦穴。 そして伸びる巨大な筒――恐らくはエレベーターシャフトか何かだろう。
例の全部乗せの拠点から反応炉への直通通路だ。
それさえ見つければ後は楽で、それを辿れば目当ての代物が――
「――あった」
巨大な球体状の何かをシックスセンスが捉える。
エネルギーの反応がどころか内部の様子が全く分からない所を見ると厳重に守られているとみていい。 アレを破壊すればクリアできるのかは微妙だが、大きく前進するのは間違いないだろう。
そして他にプレイヤーが居ない点からも完全に出し抜いた形になった。
ユウヤにデータを共有しながら、反応炉の周辺を視る。
イカだらけ以外の感想が出てこない。 一応、備えはしてきたのだが、突破できるのかは非常に怪しかった。
「まぁ、やるだけやるさ」
そう呟いてマルメル達に連絡。
「当たりだ。 反応炉っぽい物を見つけた」
「マジかよ! 今すぐ行く!」
「大丈夫だとは思うが気を付けろよ」
後は待つだけか。 気が付けばユウヤが向かってきた敵を全て潰し終えてこちらに来ていた。
「お疲れです」
「――アレが反応炉って奴か。 地上ならどうにでもなるがこっちだと突破は骨だぞ」
「ですね。 その為に水中戦装備と対イカ用の冷凍弾なんですけど、中々に厳しい事になりそうです」
それなり以上の距離があるにも関わらず埋め尽くさんばかりに蠢いているのが分かる。
突破させる気のない非正規ルートなのだ。 これぐらいは当然だろう。
あのイカの群れを掻い潜って反応炉に接触。 内部への侵入方法を探ると。
侵入方法はシックスセンスで調べればいいがそれまでの時間、イカに包囲された状態で耐えるのか。
想像しただけで帰りたくなる。 振り返るとマルメル達が追い付いてきた。
近くまで来たのでセンサーシステムのリンクを開始。 ややあって、全員が声を漏らす。
「広っ! ってかイカ多いな! あれ突破すんのか!?」
「ここやとウチは役立たずやから大人しくしてるわー」
マルメルとふわわは相変わらずといった反応でグロウモスは無言で武器のチェック。
「しつこいようですけど確認します。 俺達の当面の目的はあの反応炉らしき建造物に取り付いて中に入ります。 施設の体を成している以上は必ず入る方法があるはずなので、それを探している間の護衛を頼みます」
このゲームはそういった点にこだわっているので、高い確率でメンテナンス用のハッチがあるはずだ。 そもそも何もないならこのイカ共を配置する意味がない。
ギャンブルではあるが勝てる見込みは充分に存在する。
「どれぐらいかかりそうなんだ?」
「俺とアルフレッドでやるのでそこまでかからないはずだ。 出来れば一分以内に片を付けたいが、最悪二、三分は覚悟してくれ」
「うへ、あの中で三分生き残るのか。 無理ゲーじゃね?」
マルメルはこの広い空間を回遊しているイカの群れを見てやや引き攣った声を漏らす。
「俺もちょっとそう思っているが、適切な攻撃手段を用いればイカは簡単に処理できるから行けなくはないと思ってる」
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