Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
上 下
310 / 476

第310話

しおりを挟む
 「これから生産拠点を落としに行きます!」

 場所は変わって陥落させた通信施設。 カナタが全員の前でこの後の方針を話していた。
 元々はここを制圧した後、残してきた面子とシャトルを持ってきて補給と整備を行う予定だったのだが、メガロドン型に残らず焼き払われてしまったのでこのまま次の戦場へと向かわざるを得なくなった。

 機体のダメージはともかく武器類の消耗が割と深刻だ。

 「皆の装備はどうだ? 俺は基本的にアノマリーのエネルギー弾をメインに使ってたからそこまで消耗はない」

 カナタの話を聞きながらヨシナリは『星座盤』のメンバーに装備の確認。
 基本的にホロスコープの武装はアノマリー、アトルム・クルックス、内蔵機銃の三種類。 
 話したように拠点が壊滅したと聞いて意識して温存していたので、まだまだ戦える。

 「俺はそろそろヤバいな。 腰の短機関銃は残弾四割、突撃銃はマガジン五つ。 ハンドレールキャノンは後二発」

 マルメルは派手に使ったようで少し心許ない状況だ。
 
 「ウチはまだ大丈夫。 野太刀も後、三回ずつぐらいは使える」

 ふわわはそう言って液体金属の充填用カートリッジを柄に差し込んで補充していた。
 
 「わ、私もまだ、大丈夫。 大口径が二十発、小口径四十発。 拠点一つ分ぐらいは保つはず」
 「俺は問題ない」

 ユウヤは聞かれる前に発言。 
 明らかにハンマーと散弾砲しか使っていなかったので消耗している様には見えなかった。 
 
 「アルフレッドは?」
 「連れてきてる」

 ちらりと振り返ると光学迷彩を解除したアルフレッドが現れた。
 
 「おー! この子が噂のアルフレッド君かー。 よしよしよーし」

 ふわわがアルフレッドの背を撫でたりし始めた。
 マルメルは即座に触りに行ったふわわに若干、引きながらも様子を眺め、グロウモスは興味深いといった感じでじっと見つめている。 

 正直、連れてきていないと思っていたので嬉しい誤算だった。
 アルフレッドが居るならシックスセンス装備が二機になる。 センサーシステムのリンク先も二機になるのでヨシナリの負担が大きく減のでかなりありがたい。

 ヨシナリは小さく屈み、アルフレッドに視線を合わせる。

 「今回もよろしく。 頼りにしてる」

 ユウヤはアルフレッドを親友と言った。 なら軽視せずにメンバーとして扱おう。
 そう考えての事だ。 アルフレッドは小さく吠える事で応じる。 
 
 「――で? 全体の方針はあのクソ女の言う通り、生産拠点を落として補給を確保するのは分かった。 俺達はどう動くんだ?」

 ユウヤは話をさっさと進めろと促してきたのでヨシナリは頷きで応える。

 「はい、では俺達の動きを簡単に説明します。 さっきの拠点でもう敵のトルーパーが湧いてきているので次の拠点には絶対いるとみていいでしょう。 その為、消耗戦を強いられたらまず負けます」
 「って事はさっさと突入しての制圧か?」
 「あぁ、あの様子だとカナタとツェツィーリエの二人は上から落とすつもりらしいし、こっちは前と同じで下に行こう。 前回と同じ配置ならボスクラスは上にしかいないので、高機動で空中戦をこなせる二人に任せてしまえばいい。 俺達はさっさと下を落としてハンガーと武器の生産工場を押さえてしまおう」

 明らかに敵も学習しているので油断は禁物だが、今回はユウヤが居るのでかなり楽に降りられるはずだ。 特に今回は前回と違い、情報がある以上は退路の確保が必要ない。
 つまりは全員で突入して施設の制圧に全てを傾けられるのだ。 楽勝とまでは行かないだろうが問題はないはず。

 「今回こそはクリア目指して頑張ろうぜ!」

 最後に締めくくり、カナタの話も終わったので移動開始となった。


 作戦に関しては非常にシンプルだ。 いや、これを作戦と呼べるのだろうか?
 通信施設に仕掛ける際、先制された事を考えると敵はかなり高精度な索敵装備を揃えているとみていい。 そんな相手に奇襲はあまり効果がないので、開き直って高機動の機体が突っ込んで相手が反応する前に強襲をかける。 その後に足が遅い機体が突っ込む。
  
 そのまま敵の防衛線を突破して施設内部に突入。 上下に分かれて施設の主要部分を抑えて完了だ。
 設備の機能を掌握してしまえば敵のリポップが止まる事は前回で実証済みなので速攻をかける作戦は充分に勝算があった。

 高機動のジェネシスフレーム、エンジェル、キマイラが何の小細工もなく上空から敵基地の頭上から襲い掛かる。 先陣を切ったのはカナタとツェツィーリエだ。
 防備を固めていた敵トルーパーを次々と切り刻み、意識が彼女達に向かったと同時に僅かに遅れてきた他の機体が一斉射撃。 

 「はっはぁ! 残念だったナ! どうせ待ち構えてるんだったら正面から行ってやるよ!」

 ポンポンがそう言って次々と空から敵機を撃ち抜いていく。 
 ヨシナリもツガル達と一緒に上空から仕掛けたのだが、充分に効果が出ている事に少しだけ安心する。 ただのエネミーではなく有人操作の機体が敵である以上、何らかの要因で破綻する可能性を孕んでいたからだ。 Aランクとそれに続いたヨシナリ達の攻撃によって敵の意識は僅かに散漫になる。

 そして畳みかけるようにミサイル、レーザーなどの高火力の攻撃が施設の上部に次々と命中し破壊。 
 上は管制施設か何かなので破壊しても問題はない。 重要なのは破壊できる事にある。
 内部が露出した事を確認したカナタとツェツィーリエはそのまま内部へと突入。

 それを確認したヨシナリは高度を一気に下げて施設の入口付近に着地。 
 手近な敵機をアノマリーで撃ち抜きながら敵を引き付ける。 
 僅かに遅れてヨシナリに仕掛けようとしていた数機が狙撃によって撃ち抜かれた。

 ――来た。

 重たい銃声。 敵性トルーパーの胴体に風穴が開く。
 スパルトイを装備してもこの威力だ。 とんでもないなと思っているとそれを放ったユウヤのプルガトリオがヨシナリの脇を抜ける形で敵機をハンマーで叩き潰し、銃撃しようとした機体を電磁鞭で打ち据え、動きが止まったと同時に散弾砲――恐らくは威力に特化した一粒弾を喰らわせる。

 ベリアルもそうだったが、豊富な攻撃手段とそれを適切に使用する判断力。
 自分の機体特性を完璧に理解し、まるで手足のように操る技量はAランクの凄まじさを物語っている。
 敵機がエネルギーブレードを展開して刺突。 ユウヤは攻撃が届く直前に跳躍し、空中で一回転。

 勢いのままにハンマーを頭頂部から叩きつける。 
 敵機は頭部から胴体にかけて大きく陥没して大破した。 

 ――うわ、えぐい……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~

海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。 再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた― これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。 史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。 不定期更新です。 SFとなっていますが、歴史物です。 小説家になろうでも掲載しています。

戦争と平和

澤村 通雄
SF
世界が戦争に。 私はたちの日本もズルズルと巻き込まれていく。 あってはならない未来。 平和とは何か。 戦争は。

第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門
ファンタジー
宇宙の崩壊と共に、別宇宙の神々によって魂の選別(ドラフト)が行われた。 野球ゲームの育成モードで遊ぶことしか趣味がなかった底辺労働者の男は、野球によって世界の覇権が決定される宇宙へと記憶を保ったまま転生させられる。 その宇宙の神は、自分の趣味を優先して伝説的大リーガーの魂をかき集めた後で、国家間のバランスが完全崩壊する未来しかないことに気づいて焦っていた。野球狂いのその神は、世界の均衡を保つため、ステータスのマニュアル操作などの特典を主人公に与えて送り出したのだが……。 果たして運動不足の野球ゲーマーは、マニュアル育成の力で世界最強のベースボールチームに打ち勝つことができるのか!? ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

シーフードミックス

黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。 以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。 ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。 内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

処理中です...