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第304話

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 機体のメンテナンス、武器弾薬の補充。 
 プレイヤーの休息を済ませ、モチベーションもしっかりと回復させた所で行動開始となる。
 現在の戦力状況は『栄光』が約千百機。 『豹変』が約六百五十機。

 そして大小様々なユニオンの機体が約五百。 合計で約二千二百五十機。
 これが『栄光』『豹変』を中心に集まったプレイヤーの総戦力だ。
 Aランクプレイヤーはカナタ、ツェツィーリエを含めて五名。

 拠点の防衛に二百五十を残し、残り二千で近くにある通信拠点に仕掛ける事になる。
 前回の戦いで拠点の構造は知れ渡っているので恐らくは問題ないだろう。
 改めてカナタがこれからの流れを説明しているのを聞きながらヨシナリは脳裏で得た情報を整理していた。

 通信拠点。 広範囲に通信妨害を行っている事でプレイヤー間の連携を阻む非常に邪魔なギミックだ。
 初見時であるなら機体の補給などを考えると生産拠点を奪うのが合理的だが、それをやるとメガロドン型が飛んでくるので酷い仕組みだなと思ってしまう。

 安易な甘えを許さない運営の鋼の意志を感じる。 
 それをどうにかする為に通信拠点を落とすのだが、分かり易くクリアする為の足場固めといった所だろう。 次に通信拠点の構造だが、地表部分は中央に巨大なアンテナがあるだけで施設自体は地下に広がっている。 

 地下は三層に分かれており、一層はエネミーの巣窟。
 出現するエネミーのラインナップはトカゲハダカ型、デメニギス型のみだが、攻略拠点によっては例の敵性トルーパーが出たらしいので思金神の見解としては攻略状況で変わって来るとの事。

 恐らくだが、攻略進捗――恐らくは拠点の陥落か敵の撃破が一定を突破したら湧いてくると思われる。 ヨシナリの見解とも一致していた。
 前回に現れたタイミングが半端だったのでフラグが立つまでは現れないとみていい。

 他の攻略状況が不明な以上、敵性トルーパーと遭遇したくないのなら早めに仕掛ける事を推奨される。 

 ――とはいってもこの規模の戦い、状況で戦況を完璧に把握する事は不可能に近いので下手に狙うよりは出てきた相手を叩き潰すつもりで臨んだ方がいい。

 二層は広大な空間と壁一面にサーバー機器っぽい物やら用途不明の機械がビッシリと埋まっているようだ。
 最奥にある端末を操作する事によって機能を停止させる事が可能となる。 
 そして三層は地下から水を汲み上げる施設のようで設備の冷却に必要なものと考えられていた。

 水を汲み上げているパイプを伝って下へ向かうと例の地下通路へと辿り着く。
 要は一層を突破して二層の最奥に辿り着けばいいだけなので、地下の工場と指令室の両方を制圧する必要のあった生産拠点に比べると比較的ではあるが落とすハードルは低い。

 ヨシナリの読みでは恐らく時間的に敵性トルーパーが居る可能性が高く、陥落させる事は可能だがかなり手こずりそうだった。 
 根拠としては前回と違い、全てではないが敵拠点の場所が割れているのでいい条件で降下に成功したチームは早々に仕掛けているだろうからだ。 首尾よく行っているのなら陥落させている所もあるだろう。

 「なぁ、ヨシナリ」
 
 マルメルが肘で突きながら声をかけてきた。

 「何だ?」
 「お前的にはどう思う?」
 「通信拠点の制圧自体はスムーズに行くと思うけど、その後に生産拠点が控えてるからそっちはかなりきついかもな」

 ちょうど考えていた事だったのでほぼ即答する。

 「そうなのか?」
 「シャトルで整備は出来るけど、補給は持ち込んだ弾薬でやってるだろ? 」
 「機体はどうにでもなるけど武器はそうでもなかったな」
 「通信施設を落とした後、どれだけ余力を残せるかで変わってくると思う」

 その辺りは今喋ってるハイランカーが判断する事だろう。
 話しているとカナタの作戦説明が終わり、これから出発となった。
 
 「取り敢えず、さっさと片付けて一息つこう」
 
 少なくとも通信妨害が解消されれば広範囲での通信が可能となるので他のプレイヤーの進捗なども分かるのでこれからの動きを決める指針にはなるはずだ。
 

 襲撃の手順は簡単で四方から囲んで一斉に襲い掛かるだけ。
 明確なルールはAランクが最初に切り込む事ぐらいか。
 ヨシナリ達はAランク達が派手に暴れて弱った連中をハイエナのように仕留める事だけ。
 
 そう聞けば楽なのだが、どうせ後から追加が湧いてくるのは目に見えているので余り気楽には構えていない。 恐らくはかなりの抵抗が予想されるぐらいか。
 そんな事よりもヨシナリとしてはこの拠点を陥落させた後、メガロドン型が急行しないかが心配だった。 状況からかなり確度の高い情報ではあるが、ヨシナリはこのゲームを信用していない。

 正確にはこのゲームの運営をだ。 高確率で碌でもない仕込みをしていると強く疑っている。
 そんな事を考えている間に配置が完了。 さぁ、攻めるぞといった所で基地から一条の光が視界を切り裂くように伸びていった。 エネルギーライフルだ。 それが呼び水だったのか施設から凄まじい数のミサイルや銃弾が飛んでくる。 

 「おいおい、何で観測できなかった?」

 向こうから仕掛けられるのは想定していたので警戒はしていたのだが、シックスセンスに引っかからなかったのは想定外だった。 
 どういう事だよと回避行動を取りながら、シックスセンスのステータスを呼び出す。 
 表示は異常なし。

 ――そんな訳ないだろうが!

 ヨシナリは内心でそう吐き捨てながらセルフチェックを実行。 
 チェック作業中を示すバーが表示され、完了と同時にエラーを検出とメッセージが出た。
 何だよと確認するとウイルスによるセンサーシステムの欺瞞工作が確認されましたとの事。

 「ふざけんな!」

 思わず声を漏らしウイルスの詳細を確認。 トルーパーの制御を奪う程の効力はないが、センサーシステムの認識を狂わせる事ができるらしい。 これでシックスセンスからの感知を掻い潜ったようだ。
 
 「聞いてねぇぞ、こんなの。 唐突に新しい要素を突っ込んで来るのマジで止めろ!」

 ウイルスを除去する為の許可を求めるポップアップが出現したので実行。 
 除去が完了し、シックスセンスが正常に機能するようになり――

 「うげ、なんだこれ」

 ――基地内部どころか周囲がエネミーと敵性トルーパーだらけだった。

 地下からの出入り口やその辺から次々と湧き出している。 
 目視に引っかからなかったのは光学迷彩を使っていたからだろう。
 敵側としては初撃を叩きこむまでバレなければいいといった考えだったようだ。
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