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第295話

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 エリア移動し、以前にも行った『思金神』のユニオンホーム。
 
 「オッス! ちゃんと来たナ! 偉いゾ!」
 「うーっす。 最近どうよ?」

 移動先では既にポンポンとツガルが待っていた。  
 何故二人が揃っているのかとヨシナリが待ち合わせ場所を合わせたからだ。
 理由は単純で両方の誘いに乗ったという形にしておかないと角が立ちそうだと思ったのだが――

 「おいヨシナリ! 何でコイツまで一緒なんだ?」
 「そうだゾ! お前はあたしに誘われたんだからこっちに来い!」
 「……あー、実はお二人同時にメールが来まして……」

 そう返すと二人は顔を見合わせたが、直ぐに逸らした。 
 気があるとでも思われたくなかったのかもしれない。

 「まぁ、いいか。 おいメスガキ、そっちのボスはヨシナリが来る事に同意してんのか?」
 「当たり前だろ? おねーたまにちゃーんと許可は取ってるゾ」

 ツガルはそうかと頷くと小さく肩を竦めた。

 「だったら好都合だ。 そっちの席に座らせてやってくれ」
 「ん? どういう事だ? そっちも許可を取ってるんじゃなかったのか?」
 「あぁ、ウチのボスにも許可を取ってはいるんだが、なんか反応が微妙でなぁ。 心当たりあるか?」
 「ある訳ないじゃないですか。 そもそも最後に会ったの対抗戦の時ですよ。 正直、不意打ちした事ぐらいしか嫌な顔される心当たりないですよ」

 完全に寝耳に水だ。 
 ヨシナリはいつの間に自分はカナタの不興を買ったのだろうかと考えるが心当たりはない。
 ツガルにも言ったが不意打ちした事か? いや、それはないと内心で首を振る。
 
 カナタとは碌に話した訳ではないが、そういった事を引きずるタイプには見えない。
 そんな彼女が不快感を抱く状況。 ツガルの勘違いの可能性もあるが、ヨシナリの話題を振った状態であるならそれも考え難い。 

 ――となるとアレしかないな。

 消去法でユウヤ絡みだ。 可能性としてはそれしか思いつかない。
 そしてヨシナリに不快感を向けられる理由として最もあり得そうなのは、ユニオンの勧誘を『星座盤』を引き合いに出して断ったといった所だろう。 それなら彼女がヨシナリに良い顔をしない理由にも納得が行き、同席を拒まない理由にもなる。

 ――というかユウヤの奴、ウチを断る理由にしてたのか。

 色んな意味で高くついたなと思いつつ、これをネタに何か言う事を聞かせてやろうと心に決めた。
 ツガルはそうだよなぁと小さく呟き、首を捻る。

 「――まぁ、いいか。 取り敢えず、終わったら少し話そうぜ!」
 「はい、ありがとうございました」

 ツガルはまたなと小さく手を上げると自分のユニオンに割り当てられた席に行くと言って去っていった。
 
 「さて、お前は『豹変』の席に来るんだゾ」
 「はい、お世話になります」 
 「そのまま、正式なメンバーになってもいいんだゾ?」
 「はは、それは遠慮しておきます」

 そんなやり取りを経て一際大きな建物へ入り、エレベーターで上階へ向かう。 着いた先で会議室と思われる広い部屋に通された。 エレベーターから見える景色だけでも凄まじいと思ってしまう。
 広がるのは大都市の姿。 これがユニオンホームだというのだから数の力は偉大だ。

 こんな大都市を支配できるのならさぞかしいい気分になれるだろう。
 ただ、管理が面倒そうなので真似したいとは思えないが。 会議室には既に多くの大手ユニオンの代表や幹部が揃っており、中には対抗戦で当たった相手も散見される。

 ヨシナリは豹変のメンバーですといった体でツェツィーリエの後ろに付く。
 ちらりとツェツィーリエが振り返って来たので小さく目礼すると、頷きで返された。
 少し待っていると会議室の中央に立体映像が現れる。 映し出されているのは例の惑星だ。

 そして映像の前には一人のプレイヤー。 
 スーツを着たビジネスマンといった様子のアバターを操ってるのはユニオン『思金神』のリーダー。
 Aランクプレイヤー『タカミムスビ』だ。

 「まずは集まってくれた事に感謝を。 これから次回復刻イベントに対する対策会議を行います。 皆でアイデアを出し合ってクリアを目指しましょう」
 
 タカミムスビはまずは前回のおさらいですと前回に得た情報を公開し始める。
 内容はほぼ前回の情報交換会と変わらなかった。 明らかになった範囲での敵基地の配置と種類、エネミー、トルーパーの種類。 違う点は思金神が独自に攻略法を研究し、その対策法を纏めてきたことぐらいだろう。 ただ、問題はあった。

 敵性トルーパーだ。 アレは明らかに有人操作で同じ人員を使うのであるなら前回よりも強くなっている可能性は高い。 そう言う言った意味では難易度は上がっているとみていいだろう。
 ヨシナリは聞きながらラーガストの言葉を思い出していた。

 ――あぁ、あの他人の足を引っ張る事しかできないカスと生きている価値もないゴミ共か。

 言葉の意味は分からなかったが、情報自体は非常に有用だった。
 自分で聞いてはいたが、ラーガストの話は割と規約に抵触しそうなヤバい内容だったのでどうしたものかと迷っていた。 

 ――これは他人に話しても問題なのだろうか、と。

 ボスエネミーも当然厄介だが、敵性トルーパーも脅威度で言えば同等だ。
 有人操作である以上、AIとは別種の小賢しさを発揮する。
 向こうもこちらが嫌がる事をしてくる可能性は高いので、そういった警戒も必要だ。

 問題は相手も人間である以上、成長している点だろう。
 加えてラーガスト曰く、どうも連中はシステム側からアシストを受けて反応速度を強化しているらしい。 要はチートを使っているのだ。

 真偽は定かではないという事になっているが、実際に不自然な反応を見ているヨシナリとしてはやっているなと半ば確信していた。 
 具体的な内容としては体感時間の引き延ばし。 使用すると周囲の状況がゆっくりに見えるらしい。
 欠点としては一度使った後にはクールタイムが必要なので常にそんな状況ではないとの事。

 ちらりとタカミムスビを見ると似たような事を言っていた。

 「敵性トルーパーですが、間違いなく何らかの手段で反応速度のブーストを行っています。 攻撃に対する反応が異常に早い点からも間違いないでしょう。 単純に技量とも考えられますが、立ち回りを見ても釣り合いが取れていないので実力ではなく何かしらの外的要因による強化と思われます」

 ここまでは既知の情報と言える。 だが、ラーガストの話には続きがあった。 
 イベント進行に合わせて敵機にはある機能が解放されるらしい。 
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