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第290話
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ログアウト。 ヨシナリから嘉成へ。
ふうと小さく息を吐いてベッドで横になる。
あれから交代でランク戦をこなし、戦い方について意見を交換してお開きとなった。
――今の所は順調か。
ウインドウを操作してICpwの公式サイトにアクセス。
侵攻イベントの復刻がアナウンスされていた。 内容は前回とまったく同じ。
前回のようには行かないとは思うが、まだまだ見えていない部分が多いので、勝てるのかは怪しい。
開催は約半月後。 それまでに可能な限りの準備を行う必要がある。
思考をシフト。 イベントから自分自身とユニオン『星座盤』について。
まずは自身の強化について。 これに関しては順調と言っていい。
キマイラへの機種転換も済ませ、戦い方の確立も済んだ。
扱いに慣れてきた自覚もある。 格上相手に対等以上にやれているのだ。
多少は自信を持ってもいいだろう。 基礎が固まったのなら後は応用だ。
今のスタイルに何を足せばいいのか。 それを模索していく作業を続ければいい。
嘉成は今のホロスコープを気に入っているので現状、乗り換える気はない。
変えるにしてもAランクに上がってから――要はジェネシスフレームだ。
Eランクで気の早い話ではあるが、輪郭ぐらいは見えてきたので妄想するぐらいは問題ないだろう。
次に考えるのは『星座盤』について。 こちらも連携などに関しては順調といえる。
新しく入ったグロウモスも何だかんだと馴染んでいるので、内心でほっと胸を撫で下ろす。
彼女自身も優れたプレイヤーなので戦力的には歓迎なのだが、時折嘉成に粘ついた視線を向けてくるのは一体何なんだろうか? 正直、ちょっと気持ち悪いから止めて欲しいと思っていたが、我慢できるレベルなのでまぁいいかと努めて気にしないようにした。
欲を言えばベリアルも欲しかったが、強要する訳にも行かないので定期的に誘うとしよう。
嘉成の感覚では脈はあったと思っているので、将来的には来てくれるかもしれないと期待している。
メンバーに関しても一人増えた事で少しだけ楽にはなったが、可能であるならもう少し欲しい所ではあった。
具体的にはマルメルと連携が取れる中衛と突出しがちなふわわのサポートができる前衛が一枚ずつ。
現状、前衛のふわわ、中衛のマルメル、後衛のグロウモスと綺麗に全てのポジションが埋まっており、嘉成が遊撃しつつ不足を埋める立ち回りで『星座盤』は成立しているが、ホロスコープの機動性を活かしたいのなら嘉成の最適なポジションは戦場を引っかき回す遊撃手だ。
ユニオン戦は人数は少ない方に合わせる形にはなるので問題はないが、イベント戦だと人数差が露骨に出るのでせめて枠は埋められる程度の人数が欲しいと思ってしまう。
特に前のイベントは人数差で負けたような物だからだ。 負けるにしても言い訳の余地がないほどの内容であって欲しかったという嘉成のエゴなのかもしれないが、悔しいものは悔しい。
次に個人技についてだ。 正直、不満はなかった。
ふわわはまだ突出しがちだが、最近は味方を意識するようになっているので全体が見えてきている印象を受ける。 特に顕著だったのはサーバー対抗戦だ。
敵なら探すまでもなく大量にいるにもかかわらず後退して助けに入ってくれたのは彼女なりに味方を意識しての行動だと嘉成は思っていた。 戦い方に関しては独自の哲学を持っているので、気が付いたらどんどん強くなっていくので負けて居られないといった気持ちにもさせてくれるいいライバルだ。
次にマルメル。 正直、嘉成はマルメルの事を一番信頼していた。
文句も言わずに笑ってどこにでも付き合ってくれる彼に救われている面も大きかったからだ。
突出した物は確かにないが、それを補う勤勉さが彼にはあった。 加えて他人の意見に耳を傾ける柔軟さもあるので、嘉成としては一緒にいて気持ちのいい相手でもある。
実力に関しては爆発的に伸びるタイプではないが堅実に積み重ねていくタイプなので、今は少し遅れてはいるが最終的には追い付いてくるだろうと思っていたのであまり心配はしていなかった。
最後にグロウモス。
付き合って日が浅いのではっきりと言える事は少ないが、役割に徹しようとしている所に誠実さを感じた。 元々、ソロでの戦いを念頭に置いた動きだったが、集団戦に最適化――要は合わせてくれたことには感謝しかない。 所属には乗り気ではなかったように見えたが、最終的には残ってくれたので彼女なりに居心地がいいと感じてくれたのだろうか?
――だとしたらありがたい。
嘉成はふうと小さく息を吐くとウインドウを操作。
ICpwの公式サイトではなく、いつも見ているニュースサイトだ。
ここ最近の話題は宇宙開発とアフリカ地区で起こっている武装集団によるテロについて。
各地区の偉い人が「宇宙開発は危険が伴うけど人類にとって利になる大きな事業だから、必要な事なんだ。 だから、税金上げるけど我慢してね」という事を小難しい言い回しで国民に発表してあちこちから「ふざけんな! だったら具体的にどう使ってるのか公表しろ!」と大バッシングを浴びている。
実際、ここ最近で宇宙開発に投資された額は文字通りの桁外れで、あちこちから本当に必要なのか? 誰かの私腹を肥やす為に使われているのではないかといった声が上がっていた。
まだ学生の嘉成にはやや他人事と捉えている面はあったが、話自体は理解できなくもない。
人類はこの惑星の恵み――埋蔵資源をほぼほぼ掘りつくし新たな恵みを求めて宇宙へと進出する。
一時に比べて出生率は下がったが、人類の数は増え続けているのだ。 だが、この惑星には増え続ける人口を養う手段が失われつつある。 そう遠くない将来、人類は自重を支えきれずに崩れ落ちるだろう。 以前に見た何かの動画でそんな話を聞いたような気がする。
その為、宇宙開発は必要な事ではないかとは思っているが、使途不明金が多いとの事でこんな有様だ。 それに関しては判断ができないが、隠している以上はバレると不都合な事があるんだろうなとぼんやりと思ってしまう。 正直、嘉成はそういった人間の汚い部分の話にはあまり興味がなかった。
目を閉じる。
嘉成の脳裏に浮かぶのは緊急ミッションで見た惑星ユーピテルの巨大な姿と星々の瞬き。
そして吸い込まれそうなぐらい広い宇宙だった。
ふうと小さく息を吐いてベッドで横になる。
あれから交代でランク戦をこなし、戦い方について意見を交換してお開きとなった。
――今の所は順調か。
ウインドウを操作してICpwの公式サイトにアクセス。
侵攻イベントの復刻がアナウンスされていた。 内容は前回とまったく同じ。
前回のようには行かないとは思うが、まだまだ見えていない部分が多いので、勝てるのかは怪しい。
開催は約半月後。 それまでに可能な限りの準備を行う必要がある。
思考をシフト。 イベントから自分自身とユニオン『星座盤』について。
まずは自身の強化について。 これに関しては順調と言っていい。
キマイラへの機種転換も済ませ、戦い方の確立も済んだ。
扱いに慣れてきた自覚もある。 格上相手に対等以上にやれているのだ。
多少は自信を持ってもいいだろう。 基礎が固まったのなら後は応用だ。
今のスタイルに何を足せばいいのか。 それを模索していく作業を続ければいい。
嘉成は今のホロスコープを気に入っているので現状、乗り換える気はない。
変えるにしてもAランクに上がってから――要はジェネシスフレームだ。
Eランクで気の早い話ではあるが、輪郭ぐらいは見えてきたので妄想するぐらいは問題ないだろう。
次に考えるのは『星座盤』について。 こちらも連携などに関しては順調といえる。
新しく入ったグロウモスも何だかんだと馴染んでいるので、内心でほっと胸を撫で下ろす。
彼女自身も優れたプレイヤーなので戦力的には歓迎なのだが、時折嘉成に粘ついた視線を向けてくるのは一体何なんだろうか? 正直、ちょっと気持ち悪いから止めて欲しいと思っていたが、我慢できるレベルなのでまぁいいかと努めて気にしないようにした。
欲を言えばベリアルも欲しかったが、強要する訳にも行かないので定期的に誘うとしよう。
嘉成の感覚では脈はあったと思っているので、将来的には来てくれるかもしれないと期待している。
メンバーに関しても一人増えた事で少しだけ楽にはなったが、可能であるならもう少し欲しい所ではあった。
具体的にはマルメルと連携が取れる中衛と突出しがちなふわわのサポートができる前衛が一枚ずつ。
現状、前衛のふわわ、中衛のマルメル、後衛のグロウモスと綺麗に全てのポジションが埋まっており、嘉成が遊撃しつつ不足を埋める立ち回りで『星座盤』は成立しているが、ホロスコープの機動性を活かしたいのなら嘉成の最適なポジションは戦場を引っかき回す遊撃手だ。
ユニオン戦は人数は少ない方に合わせる形にはなるので問題はないが、イベント戦だと人数差が露骨に出るのでせめて枠は埋められる程度の人数が欲しいと思ってしまう。
特に前のイベントは人数差で負けたような物だからだ。 負けるにしても言い訳の余地がないほどの内容であって欲しかったという嘉成のエゴなのかもしれないが、悔しいものは悔しい。
次に個人技についてだ。 正直、不満はなかった。
ふわわはまだ突出しがちだが、最近は味方を意識するようになっているので全体が見えてきている印象を受ける。 特に顕著だったのはサーバー対抗戦だ。
敵なら探すまでもなく大量にいるにもかかわらず後退して助けに入ってくれたのは彼女なりに味方を意識しての行動だと嘉成は思っていた。 戦い方に関しては独自の哲学を持っているので、気が付いたらどんどん強くなっていくので負けて居られないといった気持ちにもさせてくれるいいライバルだ。
次にマルメル。 正直、嘉成はマルメルの事を一番信頼していた。
文句も言わずに笑ってどこにでも付き合ってくれる彼に救われている面も大きかったからだ。
突出した物は確かにないが、それを補う勤勉さが彼にはあった。 加えて他人の意見に耳を傾ける柔軟さもあるので、嘉成としては一緒にいて気持ちのいい相手でもある。
実力に関しては爆発的に伸びるタイプではないが堅実に積み重ねていくタイプなので、今は少し遅れてはいるが最終的には追い付いてくるだろうと思っていたのであまり心配はしていなかった。
最後にグロウモス。
付き合って日が浅いのではっきりと言える事は少ないが、役割に徹しようとしている所に誠実さを感じた。 元々、ソロでの戦いを念頭に置いた動きだったが、集団戦に最適化――要は合わせてくれたことには感謝しかない。 所属には乗り気ではなかったように見えたが、最終的には残ってくれたので彼女なりに居心地がいいと感じてくれたのだろうか?
――だとしたらありがたい。
嘉成はふうと小さく息を吐くとウインドウを操作。
ICpwの公式サイトではなく、いつも見ているニュースサイトだ。
ここ最近の話題は宇宙開発とアフリカ地区で起こっている武装集団によるテロについて。
各地区の偉い人が「宇宙開発は危険が伴うけど人類にとって利になる大きな事業だから、必要な事なんだ。 だから、税金上げるけど我慢してね」という事を小難しい言い回しで国民に発表してあちこちから「ふざけんな! だったら具体的にどう使ってるのか公表しろ!」と大バッシングを浴びている。
実際、ここ最近で宇宙開発に投資された額は文字通りの桁外れで、あちこちから本当に必要なのか? 誰かの私腹を肥やす為に使われているのではないかといった声が上がっていた。
まだ学生の嘉成にはやや他人事と捉えている面はあったが、話自体は理解できなくもない。
人類はこの惑星の恵み――埋蔵資源をほぼほぼ掘りつくし新たな恵みを求めて宇宙へと進出する。
一時に比べて出生率は下がったが、人類の数は増え続けているのだ。 だが、この惑星には増え続ける人口を養う手段が失われつつある。 そう遠くない将来、人類は自重を支えきれずに崩れ落ちるだろう。 以前に見た何かの動画でそんな話を聞いたような気がする。
その為、宇宙開発は必要な事ではないかとは思っているが、使途不明金が多いとの事でこんな有様だ。 それに関しては判断ができないが、隠している以上はバレると不都合な事があるんだろうなとぼんやりと思ってしまう。 正直、嘉成はそういった人間の汚い部分の話にはあまり興味がなかった。
目を閉じる。
嘉成の脳裏に浮かぶのは緊急ミッションで見た惑星ユーピテルの巨大な姿と星々の瞬き。
そして吸い込まれそうなぐらい広い宇宙だった。
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