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第273話
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しつこく大口径を勧めた甲斐があった。 重装甲のプリンシパリティが一撃だ。
ちらりと銃弾が飛んできた方向を一瞥するとグロウモスが伏せた状態で狙撃銃を構えている姿が見える。
これで鬱陶しい後衛は消えた。 残りはと地上を見るともう終わりそうになっている。
ふわわとベリアル相手に後衛の援護なしでは保つはずがなく、残った前衛はふわわに切り刻まれるか、ベリアルの闇に呑まれた。 見ているとちょうど最後の一機が逃げ出そうとしたところをマルメルにハチの巣にされて大破。 試合終了となった。
「うぇーい! 大勝利だな!」
場所は変わってユニオンホーム。
マルメルが今までにないぐらいに大喜びだった。
事前に練っておいた作戦が上手く嵌まったのでヨシナリとしても気持ちのいい勝利だ。
内訳としてはふわわが二機、ベリアル、ヨシナリが三機、マルメル、グロウモスが一機ずつとなる。
現在、感想戦の最中だが、こうして俯瞰で見ても満足のいく試合内容だった。
突出して来た敵のAランクをベリアルを囮としてふわわの奇襲により速攻で沈める。
ドンナーというプレイヤーは機体の特性上、長く生かしておくと面倒な相手なのは明らかだったので真っ先に落とす判断は正しかった。 加えてベリアルが連携を取るという発想自体がなかった事も勝因の一つと言える。
「ふ、無明の闇の中であろうとも肩を並べる者達は確かに居る、か。 一つ学ばせて貰ったぞ」
「闇の王よ、それは貴公にとっての未知。 その未知を既知に置き換える事が求道の一歩。 そうする事で貴公の闇は更なる深淵に近づくだろう」
「これが新たな力、そして新たな闇、か。 素晴らしい」
ヨシナリがそう返すとベリアルは満足したのか大きく頷いた。
マルメルとふわわがじっとヨシナリを見つめていたが、彼は努めて気にせずに続きを見る。
ふわわとベリアルがドンナーの相手をしている間、マルメルはかなりの奮戦を見せていた。
実際、この試合で一番活躍したのではないのかと思うぐらいだ。
彼はフィールドの中央で半数以上を一人で抑えていた。 初手でハンドレールキャノンを使って敵を牽制。 敵はあの武器に関しての知識を持っていなかったようで迂闊に前に出ず、やや半包囲しながら遠巻きに銃撃を開始。 消極的ではあるが、散開して包囲は決して悪い手ではない。
それに本命はプリンシパリティにより遠距離攻撃だ。
だから散開する事で狙いを散らしつつその場に釘付けにしてから仕留める。
目論見通りに行かなかったのはグロウモスがプリンシパリティに対して攻撃を仕掛けたからだ。
流石に狙撃手を放置しておけないと判断したのか一機はグロウモスを狙い、残りは先にマルメルを仕留めようと攻撃を開始したが、これがなければマルメルはやられていた可能性が高い。
遮蔽物がほぼない荒野に敵は六機。 普通にやればまず負ける戦力差だが、僅かな時間を稼げれば充分だったのだ。 早々にドンナーを撃破したふわわとベリアルが前線に現れる。
近いタイミングで空中のキマイラも全滅し、ヨシナリが後衛を叩きに行く事が出来たのも追い風だ。
ヨシナリがプリンシパリティを撃破し、残りの一機がヨシナリへの対処で隙を晒したタイミングでグロウモスが一撃。 最初は小口径での牽制のみだったのだが、確実に当てられるタイミングで大口径に持ち替えて使用したのだ。 文句なしのいい仕事だった。
正直、ヨシナリはこのチームでの勝利に大きな手応えを感じていたのだ。
強力な前衛であるベリアルと狙撃手のグロウモス。 前衛、後衛が一枚ずつ増える事でここまで違うのかと驚いてしまうほどだ。 無論、二人の技量が高い事もあるが、安定感が違う。
「いやぁ、マルメル君、今回は頑張ってくれたなぁ! 一人で半分引き付けて無事やってんから大したものやん!」
「見事だ。 中庸の戦士よ。 貴様の献身は我らを勝利へと導いた」
「え? あー、いやぁ、はは、照れるなぁ」
前衛二人に褒められてマルメルはとても嬉しそうにしていた。
グロウモスも小さく拍手しているので猶更だろう。
「いや、一人で実質六機の足止め。 お陰で俺達全員が目の前の敵に集中できたんだ。 今回の功労者は間違いなくお前だよ! 次も頼むぜ!」
「おう! 任せとけって!」
そうこうしている内に他の試合も片付いたようでそろそろ二回戦を開始すると言ったアナウンスが流れた。
「――よし、二回戦行くぞ。 前と同じならステージは渓谷地帯。 高低差が結構ある場所だからグロウモスさんは狙撃ポイントの見極めをしっかりとお願いします。 ふわわさんとベリアルは特に言う事はありません。 自分のプレイを貫いてください。 マルメルはさっきの調子を忘れずに! 頑張っていきましょう!」
ヨシナリがおー!と拳を振り上げると全員が応じるように拳を突き上げる。
ベリアルとグロウモスまでやってくれたのでヨシナリとしてはちょっと嬉しくなった。
「――で? 次の相手ってどこ?」
「あぁ、ユニオン『カヴァリエーレ』前の対抗戦で当たった相手だな。 戦力構成を見る感じ前とほとんど変わらないっぽいな。 リーダーのコンシャスってプレイヤーはAランクだから要注意だ」
「前の時は勝ったんだろ? どんな感じだったんだ?」
「……ラーガストが瞬殺したから……」
マルメルの質問にヨシナリはそっと目を逸らす。
「あー、なんかすまん」
「いや、いいんだけど、一応は後で調べてるから多少は喋れる。 元々、高機動の機体に偏っているチームだからウチとの相性は悪くない。 なにせ当てれば結構な確率で落とせるからな」
そう言った意味でも敵の足を止める為の楔としてマルメルと射抜く為のグロウモスの活躍に期待していた。 後は自分がどこまで引っかき回せるかだ。
「ふ、ならば俺は白の戦士を仕留めればよいのだな?」
「その通りだ。 貴公の闇で白き戦士を奈落の底へと引き摺り下ろすといい。 日は暮れるもの、そして白は黒く染まるもの――だろ?」
「真理だな。 いいだろう、我が闇の力に刮目するといい!」
ベリアルもやる気満々だ。
口振りから充分に勝算のある相手のようなので心配しなくても良さそうだった。
そして――
「グロウモスさん。 今回はあなたの存在が特に重要です。 プレッシャーかけるつもりはありませんが、頼りにしています」
「ふぁ!? ……はい……がんばります」
最後にグロウモスに声をかけて完了だ。
人数が少ないからできる事ではあるが、こうして一人、一人に声をかけて士気を高める。
ポンポンがよくやっていたので自分なりに真似てみたのがだが、仲間のモチベーションを上げる手法としては割と有効だった。
入場が可能となったのでヨシナリ達『星座盤』は二回戦のフィールドへと移動した。
ちらりと銃弾が飛んできた方向を一瞥するとグロウモスが伏せた状態で狙撃銃を構えている姿が見える。
これで鬱陶しい後衛は消えた。 残りはと地上を見るともう終わりそうになっている。
ふわわとベリアル相手に後衛の援護なしでは保つはずがなく、残った前衛はふわわに切り刻まれるか、ベリアルの闇に呑まれた。 見ているとちょうど最後の一機が逃げ出そうとしたところをマルメルにハチの巣にされて大破。 試合終了となった。
「うぇーい! 大勝利だな!」
場所は変わってユニオンホーム。
マルメルが今までにないぐらいに大喜びだった。
事前に練っておいた作戦が上手く嵌まったのでヨシナリとしても気持ちのいい勝利だ。
内訳としてはふわわが二機、ベリアル、ヨシナリが三機、マルメル、グロウモスが一機ずつとなる。
現在、感想戦の最中だが、こうして俯瞰で見ても満足のいく試合内容だった。
突出して来た敵のAランクをベリアルを囮としてふわわの奇襲により速攻で沈める。
ドンナーというプレイヤーは機体の特性上、長く生かしておくと面倒な相手なのは明らかだったので真っ先に落とす判断は正しかった。 加えてベリアルが連携を取るという発想自体がなかった事も勝因の一つと言える。
「ふ、無明の闇の中であろうとも肩を並べる者達は確かに居る、か。 一つ学ばせて貰ったぞ」
「闇の王よ、それは貴公にとっての未知。 その未知を既知に置き換える事が求道の一歩。 そうする事で貴公の闇は更なる深淵に近づくだろう」
「これが新たな力、そして新たな闇、か。 素晴らしい」
ヨシナリがそう返すとベリアルは満足したのか大きく頷いた。
マルメルとふわわがじっとヨシナリを見つめていたが、彼は努めて気にせずに続きを見る。
ふわわとベリアルがドンナーの相手をしている間、マルメルはかなりの奮戦を見せていた。
実際、この試合で一番活躍したのではないのかと思うぐらいだ。
彼はフィールドの中央で半数以上を一人で抑えていた。 初手でハンドレールキャノンを使って敵を牽制。 敵はあの武器に関しての知識を持っていなかったようで迂闊に前に出ず、やや半包囲しながら遠巻きに銃撃を開始。 消極的ではあるが、散開して包囲は決して悪い手ではない。
それに本命はプリンシパリティにより遠距離攻撃だ。
だから散開する事で狙いを散らしつつその場に釘付けにしてから仕留める。
目論見通りに行かなかったのはグロウモスがプリンシパリティに対して攻撃を仕掛けたからだ。
流石に狙撃手を放置しておけないと判断したのか一機はグロウモスを狙い、残りは先にマルメルを仕留めようと攻撃を開始したが、これがなければマルメルはやられていた可能性が高い。
遮蔽物がほぼない荒野に敵は六機。 普通にやればまず負ける戦力差だが、僅かな時間を稼げれば充分だったのだ。 早々にドンナーを撃破したふわわとベリアルが前線に現れる。
近いタイミングで空中のキマイラも全滅し、ヨシナリが後衛を叩きに行く事が出来たのも追い風だ。
ヨシナリがプリンシパリティを撃破し、残りの一機がヨシナリへの対処で隙を晒したタイミングでグロウモスが一撃。 最初は小口径での牽制のみだったのだが、確実に当てられるタイミングで大口径に持ち替えて使用したのだ。 文句なしのいい仕事だった。
正直、ヨシナリはこのチームでの勝利に大きな手応えを感じていたのだ。
強力な前衛であるベリアルと狙撃手のグロウモス。 前衛、後衛が一枚ずつ増える事でここまで違うのかと驚いてしまうほどだ。 無論、二人の技量が高い事もあるが、安定感が違う。
「いやぁ、マルメル君、今回は頑張ってくれたなぁ! 一人で半分引き付けて無事やってんから大したものやん!」
「見事だ。 中庸の戦士よ。 貴様の献身は我らを勝利へと導いた」
「え? あー、いやぁ、はは、照れるなぁ」
前衛二人に褒められてマルメルはとても嬉しそうにしていた。
グロウモスも小さく拍手しているので猶更だろう。
「いや、一人で実質六機の足止め。 お陰で俺達全員が目の前の敵に集中できたんだ。 今回の功労者は間違いなくお前だよ! 次も頼むぜ!」
「おう! 任せとけって!」
そうこうしている内に他の試合も片付いたようでそろそろ二回戦を開始すると言ったアナウンスが流れた。
「――よし、二回戦行くぞ。 前と同じならステージは渓谷地帯。 高低差が結構ある場所だからグロウモスさんは狙撃ポイントの見極めをしっかりとお願いします。 ふわわさんとベリアルは特に言う事はありません。 自分のプレイを貫いてください。 マルメルはさっきの調子を忘れずに! 頑張っていきましょう!」
ヨシナリがおー!と拳を振り上げると全員が応じるように拳を突き上げる。
ベリアルとグロウモスまでやってくれたのでヨシナリとしてはちょっと嬉しくなった。
「――で? 次の相手ってどこ?」
「あぁ、ユニオン『カヴァリエーレ』前の対抗戦で当たった相手だな。 戦力構成を見る感じ前とほとんど変わらないっぽいな。 リーダーのコンシャスってプレイヤーはAランクだから要注意だ」
「前の時は勝ったんだろ? どんな感じだったんだ?」
「……ラーガストが瞬殺したから……」
マルメルの質問にヨシナリはそっと目を逸らす。
「あー、なんかすまん」
「いや、いいんだけど、一応は後で調べてるから多少は喋れる。 元々、高機動の機体に偏っているチームだからウチとの相性は悪くない。 なにせ当てれば結構な確率で落とせるからな」
そう言った意味でも敵の足を止める為の楔としてマルメルと射抜く為のグロウモスの活躍に期待していた。 後は自分がどこまで引っかき回せるかだ。
「ふ、ならば俺は白の戦士を仕留めればよいのだな?」
「その通りだ。 貴公の闇で白き戦士を奈落の底へと引き摺り下ろすといい。 日は暮れるもの、そして白は黒く染まるもの――だろ?」
「真理だな。 いいだろう、我が闇の力に刮目するといい!」
ベリアルもやる気満々だ。
口振りから充分に勝算のある相手のようなので心配しなくても良さそうだった。
そして――
「グロウモスさん。 今回はあなたの存在が特に重要です。 プレッシャーかけるつもりはありませんが、頼りにしています」
「ふぁ!? ……はい……がんばります」
最後にグロウモスに声をかけて完了だ。
人数が少ないからできる事ではあるが、こうして一人、一人に声をかけて士気を高める。
ポンポンがよくやっていたので自分なりに真似てみたのがだが、仲間のモチベーションを上げる手法としては割と有効だった。
入場が可能となったのでヨシナリ達『星座盤』は二回戦のフィールドへと移動した。
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