Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第239話

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 ふわわが戻ってきたのは計算外だが好都合だ。
 ヨシナリは戦場を俯瞰。 敵のAランクが一機減った事でこの場の戦況は大きく傾いた。
 逆関節はふわわが抑えているので対処が必要なのはバイク乗りと蜘蛛型。
 
 カナタと相性が悪いのは――バイク乗り。 カナタの得意レンジは中、近距離。
 機動性は決して低くはないが、直線加速で飛び回るバイク乗りとはあまり相性が良くない。
 逆に蜘蛛は足を使わずに特殊武装で敵を翻弄するタイプなので比較的ではあるがまだマシだろう。

 「バイク乗りを抑えます」
 「おう、やるゾ!」

 まずは敵の分析からだとヨシナリはアノマリーを撃ち込む。
 カナタを仕留めようとしていた敵機は背後からの一撃を体を傾ける事で苦も無く躱す。
 躱される事は想定内だ。 そして仕留める事がほぼ不可能なのもまた同様に。

 「ポンポンさん。 そろそろ……」
 「分かってる! さっきの大砲持ちを殺ったからナ! 他がなだれ込んで来るゾ!」

 ヨシナリが言い切るまでもなく、状況を察したポンポンが味方に警戒を促す。
 同時にこれまで空白地帯のようになっていたこの戦場に無数の敵機が流れ込んで来る。
 これまで遠巻きに『栄光』の機体と戦っていたのは例の熱波に巻き込まれたくないからだ。

 その危険がなくなった以上、遠巻きにしている理由がないのでヨシナリ達を屠る為に大量の敵機が突っ込んで来る。 

 「散開。 数は敵の方が多いので囲まれないようにだけ注意を!」

 そう言いながらヨシナリは変形して急上昇。 それを追いかけるようにキマイラタイプが――十機。

 ――多いな!

 シックスセンスを最大限に活用し、こちらを狙ってくる敵機の様子を確認。
 キマイラの適正ランクはCからBだ。 Eで使っているヨシナリが異常なだけなのだが、ランクが高いだけあってどいつもこいつも動きが良い。 ただ、それでもピンキリは存在する。

 特にキマイラタイプは飛行にテクニックを要求する機体なので、技量の差が露骨に出る機体でもあった。 動きを見ればそれが顕著だ。 
 ヨシナリはインメルマンターンで敵機を振り切ろうと加速。 他は練習中だが、失速せずに旋回できるマニューバは敵機を振り切る時に絶対に必要なのでこれだけはと死ぬほど練習したのだ。

 動きのクオリティは中々の物と自負している。 ぴったりと張り付いてきたのは五機。
 残りは諦めて回り込む挙動を取る。 判断が早いのは素晴らしいが、攻撃の優先順位ははっきりした。 まずは数を減らさないと話にならないので削れるところを削らないと不味い。

 ロックオン警告。 変形して減速し、急降下する。
 速度は落ちるが人型の方が動きの自由度は高い。 振り返ってアノマリーを実弾に切り替えて連射。
 三機から発射された無数のミサイルを迎撃。 固まっている内に撃ち落として誘爆させる。
 
 それでも三分の一は無事に発射されて突っ込んで来た。 変形させて急降下。
 上昇しても良かったが、回り込んだ機体が待ち構えているので降下せざるを得ない。
 味方の援護に期待したいところだが、ポンポン達も目の前の敵相手に手が離せないようで難しそうだった。 その為、援護が期待できる下を選んだのだ。
 
 「ヨシナリ!」

 背後に迫っていたミサイルが撃ち抜かれて爆散。
 マルメルが突撃銃でミサイルを撃ち落としたのだ。 

 「こっち引き付けろ!」
 「頼む!」

 地面スレスレを飛んでマルメルとすれ違う。 追ってきた敵機にマルメルが腰にマウントした短機関銃と突撃銃、空いた手に回転式拳銃を構えてその全てを連射。
 
 「全弾持って行け!」

 追ってきていたキマイラタイプは弾幕に散開して回避に入るが一機だけ逃げ遅れて被弾。
 煙を吹き、姿勢が崩れる。 ヨシナリはその隙を逃さずに人型に変形してアノマリーで一射。
 綺麗に胴体部分を撃ち抜いて撃破。 ただ、そこまでだった。

 残りが大きな動きで旋回し、機首を地上に向ける。 
 内蔵されている機銃、レーザー砲が展開。 その背後からも別の機体が攻撃の体勢に入っていた。
 マルメルは構わずに撃ちまくる。 

 「マルメル!」
 「ま、Aランク撃破したし、俺にしちゃ上出来だろ?」
 
 敵機による一斉射撃。 ソルジャータイプの機動性で躱すのは不可能な密度の攻撃だ。
 マルメルの武器が全て弾切れになったと同時に機銃とレーザーが全身を射抜き、耐え切れずに爆散。
 ヨシナリのウインドウにマルメルの機体をロストしたというメッセージがポップアップ。

 ――クソ!

 結果的にマルメルに敵を擦り付ける形になってしまった。
 確かに自分が助かる上では決して間違った選択ではなかったはずだが、マルメルがどうなるのかまで頭が回っていなかった。 追い込まれて余裕がなくなった証拠だ。

 内心ですまないと詫びながらアノマリーを連射。 
 エネルギー弾がマルメルを仕留めた一機を撃ち抜く。 敵機の爆散を確認せずに変形させて急上昇。
 とにかく動き回って相手に射線を取らせない必要がある。 この状況で止まったら即死だ。

 機銃とレーザーがあちこちから飛んでくる。 ミサイルはさっきので撃ち尽くしたのか来ない。
 直線的な武器であるなら軌道が読める分、まだ躱し易いからだ。
 ミサイルを織り交ぜられると詰むので、早々にミサイルを使い切ってくれたのはありがたかったが気を抜く訳にはいかない。 

 変形機能とマニューバを最大限に使用し、急上昇、急降下、旋回と持てるテクニックを駆使して逃げ回る。 
 敵は意地になっているのかヨシナリを仕留めるまで諦める気はないようで執拗に追ってきていた。 
 背後に張り付かれた瞬間、インメルマンターンで縦方向に旋回。 ギリギリまで引き付けたのでそのまま真後ろに張り付いてきた敵の真上を取って変形からの銃撃。 撃墜。
 
 よしと喜ぶ余裕すらない。 次――
 ヨシナリは次の敵機はと探そうとしていたが、その意識には一つ欠落があった。
 それは意識の外からの攻撃で、全く予期しない場所から飛んできたのだ。

 ホロスコープの腹から巨大なランスが飛び出す。 後ろから刺された。
 いつの間に? どうやって? このエネルギーランスはさっきのAラン――
 思考が纏まる前にホロスコープが爆散。 ヨシナリは退場となった。
 
 
 「よ、お疲れ!」

 ユニオンホームに戻るとマルメルが待っていた。
 ヨシナリはお疲れと小さく手を上げる。
 
 「折角、頑張ってくれたのにごめんな。 やられちまった」
 「見てたけどありゃ仕方ねぇよ」
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