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第232話
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これまでの攻防でランドルフの技量は凡そ知れた。
思い切りの良い踏み込み、迷いのない斬撃は見た目よりも伸びるので近接スキルは決して低くはない。
ただ、斬撃のバリエーションとしては振り下ろし、横薙ぎ、刺突の三種類と少ない。
戦い方の組み立てとしてはその三つの組み合わせと武器のギミックで相手に見切らせないようにしている。
次に武器だが、見えている範囲ではロングソードのみ。
機体とセット運用する事が前提の武器で連動する事で機能を発揮すると見ていい。
恐らくはエネルギー供給を受ける事で切断力を上げるといった所だろう。 ギミックで柄から刃を延長させて間合いを誤認させるのは上手い使い方ではあるが、伸ばす一辺倒なので躱す事自体はそこまで難しくない。
要は斬撃の軌道上に居なければいいので、攻撃の巧みさで言うならヨシナリの方が上だ。
だが、脅威度としてはランドルフの方が遥かに高い。
彼の機体であるレザネフォルの最大の長所――というよりはランドルフの戦いの前提は防御にある。
全身を覆った光の所為で斬撃が届かない。 エネルギー系の防御手段である事は分かるが、理屈はさっぱり分からなかった。 ついでに光量を瞬間的に上げる事でセンサー類にダメージを与えてくるのも面倒だ。
――こういうのはヨシナリ君の領分やと思うんだけどなぁ……。
防御手段に絶対の信頼があるからこそ思い切りのいい攻撃を繰り出す事ができるのだろうが、攻撃に関しては正直これまでに遭遇した強敵に比べると数段劣る。
つまり、ランドルフというプレイヤーは戦ってもあまり面白くない相手だった。
防御手段を剥がす方法さえ見つけられれば何とかなりそうな点も白ける要因で、どうしよっかなぁと考えながら斬撃を躱す。
『如何かな? 我がレザネフォルの光りの守りは?』
「うーん。 めんどいわー」
『はっはっは、尋常な勝負だ。 卑怯とは言うまいな?』
「それはそうなんやけどー。 うーん、ならウチもズルしちゃおうかなー?」
『勝つ為に必要ならば行うべきだ。 貴女と我々は互いに滅ぼし合っているのだ。 卑怯も何もないだろう』
「あ、そう? じゃあ遠慮なく」
ふわわは斬撃を躱しながらユニオン専用の通信を開く。
「ヨシナリ君元気ー?」
『……何とか生きてます。 戦闘中に連絡してくるとかどうかしましたか?』
ややあって応答したヨシナリは戦闘に意識の大半を割いているのか反応はややおざなりだ。
ふわわは気にせずに話を続ける。
「ウチ今最前線にいるんやけど、面倒なのに絡まれてなぁ。 ちょっと知恵を貸して欲しいねん」
『あー、感じからしてAランク以上の相手ですかね?』
「そうなんよー。 攻撃が全然通らへんから困ってんねん。 どうしたらええと思う?」
『当たらない? それとも防がれる感じですか?』
「防がれる感じやね。 なんか全身から光出してそれに遮られて刃が通らへんのよ」
ふわわは話が終わるまで逃げに徹する事にしたので武器を鞘に納めて躱しながら困ってんのよーの付け加えた。
『光? エネルギー系のフィールドって感じですかね?』
「似てるけどちょっと違うと思う。 全身を覆う感じで光ってんねん」
『うーん。 実際に見てみないと何とも言えませんね』
「そこを何とか! お願い~」
ヨシナリは「えぇ……」と少し嫌そうな声を出したが、ちょっと考えますねと言って小さく唸る。
少しの間、考えていたヨシナリはややあって可能性を口にした。
――素晴らしい。
ランドルフは目の前の敵に対して敬意に近い物を抱いていた。
ソルジャータイプを使用している所を見るとランク自体はそこまで高くないのだが、こと近接戦のスキルに関してはこれまでに出会ってプレイヤーの中でも五指に入る。
恐らく最近始めたばかりのルーキーだろう。
――にもかかわらず、Aランクである自分の斬撃を次々に躱す。
スペック差があるにもかかわらずこれだ。 純粋なプレイヤースキルに大きな開きがある事は間違いない。 恐らくだが、機体スペックの差がなければ自分はあっさりと負けているだろう。
そう確信できるほどの動きだった。
ふわわは無言で躱し続けているが、もしかしたらこの状況を打開する策を考えているのかもしれない。
自分を相手取りながら考え事をする余裕まである。
素晴らしい。 なんて素晴らしいのだろう。
遠目で見た時から気になっていた。 自分と同じく剣を主兵装としている機体。
戦えば自身の成長の糧になると思い、挑んだのだが結果は想像以上だ。
ランドルフの愛機である「レザネフォル」。
その真髄は防御にある。 「アウルムアーマー」防御を司る兵装だ。
原理としてはエンジェルタイプやパンツァータイプが使用する防御フィールドに近いのだが、やや毛色が異なる。 全身の噴出口から噴き出すエネルギーをフィールド内に留める事でありとあらゆる攻撃を弾き返す。
エネルギー系の攻撃はよほどの高出力なものでもない限り完全に無効化し、物理攻撃ですら噴出する奔流に遮られて機体まで届かない。 出力に物を言わせた彼らしい防御兵装と言えるが、当然ながら欠点も多く存在する。
まずは燃費。 アウルムアーマーは非常に高い防御効果を齎す代わりに機体の内蔵エネルギーを凄まじい勢いで食い潰す。 並の機体であるなら数秒で枯渇するような消費をどう賄っているのか?
答えはコンデンサーにある。 レザネフォルに内蔵されているコンデンサーにはエネルギーの吸収機能が存在し、機体が吐き出したエネルギーを吸収してリサイクルする事を可能としているのだ。
当然ながら収支のつり合いが全く取れないが、維持する時間を延ばす程度には回復できるのでアウルムアーマーを瞬間的ではなく少しの間、展開する事を可能としていた。
圧倒的な防御力で敵の攻撃を受けつつ正面から敵を叩き潰す。 これがAランクプレイヤー、ランドルフの戦闘スタイル。
上段からの振り下ろしからの刺突か横薙ぎ。
ふわわの見立て通り、攻撃のバリエーションはそう多くない。
だが、そんな彼がここまでAランクの地位を維持できているもう一つの要因は武器だ。
「アール・デコ」、「アール・ヌーヴォ」黄金のロングソード。
機体からのエネルギー供給を得て切断力を大幅に強化された剣は並の武器では受ける事すら叶わない。 ふわわはその事に気付いてはいないが、無意識に受けられないと理解していたのか全て躱している。
思い切りの良い踏み込み、迷いのない斬撃は見た目よりも伸びるので近接スキルは決して低くはない。
ただ、斬撃のバリエーションとしては振り下ろし、横薙ぎ、刺突の三種類と少ない。
戦い方の組み立てとしてはその三つの組み合わせと武器のギミックで相手に見切らせないようにしている。
次に武器だが、見えている範囲ではロングソードのみ。
機体とセット運用する事が前提の武器で連動する事で機能を発揮すると見ていい。
恐らくはエネルギー供給を受ける事で切断力を上げるといった所だろう。 ギミックで柄から刃を延長させて間合いを誤認させるのは上手い使い方ではあるが、伸ばす一辺倒なので躱す事自体はそこまで難しくない。
要は斬撃の軌道上に居なければいいので、攻撃の巧みさで言うならヨシナリの方が上だ。
だが、脅威度としてはランドルフの方が遥かに高い。
彼の機体であるレザネフォルの最大の長所――というよりはランドルフの戦いの前提は防御にある。
全身を覆った光の所為で斬撃が届かない。 エネルギー系の防御手段である事は分かるが、理屈はさっぱり分からなかった。 ついでに光量を瞬間的に上げる事でセンサー類にダメージを与えてくるのも面倒だ。
――こういうのはヨシナリ君の領分やと思うんだけどなぁ……。
防御手段に絶対の信頼があるからこそ思い切りのいい攻撃を繰り出す事ができるのだろうが、攻撃に関しては正直これまでに遭遇した強敵に比べると数段劣る。
つまり、ランドルフというプレイヤーは戦ってもあまり面白くない相手だった。
防御手段を剥がす方法さえ見つけられれば何とかなりそうな点も白ける要因で、どうしよっかなぁと考えながら斬撃を躱す。
『如何かな? 我がレザネフォルの光りの守りは?』
「うーん。 めんどいわー」
『はっはっは、尋常な勝負だ。 卑怯とは言うまいな?』
「それはそうなんやけどー。 うーん、ならウチもズルしちゃおうかなー?」
『勝つ為に必要ならば行うべきだ。 貴女と我々は互いに滅ぼし合っているのだ。 卑怯も何もないだろう』
「あ、そう? じゃあ遠慮なく」
ふわわは斬撃を躱しながらユニオン専用の通信を開く。
「ヨシナリ君元気ー?」
『……何とか生きてます。 戦闘中に連絡してくるとかどうかしましたか?』
ややあって応答したヨシナリは戦闘に意識の大半を割いているのか反応はややおざなりだ。
ふわわは気にせずに話を続ける。
「ウチ今最前線にいるんやけど、面倒なのに絡まれてなぁ。 ちょっと知恵を貸して欲しいねん」
『あー、感じからしてAランク以上の相手ですかね?』
「そうなんよー。 攻撃が全然通らへんから困ってんねん。 どうしたらええと思う?」
『当たらない? それとも防がれる感じですか?』
「防がれる感じやね。 なんか全身から光出してそれに遮られて刃が通らへんのよ」
ふわわは話が終わるまで逃げに徹する事にしたので武器を鞘に納めて躱しながら困ってんのよーの付け加えた。
『光? エネルギー系のフィールドって感じですかね?』
「似てるけどちょっと違うと思う。 全身を覆う感じで光ってんねん」
『うーん。 実際に見てみないと何とも言えませんね』
「そこを何とか! お願い~」
ヨシナリは「えぇ……」と少し嫌そうな声を出したが、ちょっと考えますねと言って小さく唸る。
少しの間、考えていたヨシナリはややあって可能性を口にした。
――素晴らしい。
ランドルフは目の前の敵に対して敬意に近い物を抱いていた。
ソルジャータイプを使用している所を見るとランク自体はそこまで高くないのだが、こと近接戦のスキルに関してはこれまでに出会ってプレイヤーの中でも五指に入る。
恐らく最近始めたばかりのルーキーだろう。
――にもかかわらず、Aランクである自分の斬撃を次々に躱す。
スペック差があるにもかかわらずこれだ。 純粋なプレイヤースキルに大きな開きがある事は間違いない。 恐らくだが、機体スペックの差がなければ自分はあっさりと負けているだろう。
そう確信できるほどの動きだった。
ふわわは無言で躱し続けているが、もしかしたらこの状況を打開する策を考えているのかもしれない。
自分を相手取りながら考え事をする余裕まである。
素晴らしい。 なんて素晴らしいのだろう。
遠目で見た時から気になっていた。 自分と同じく剣を主兵装としている機体。
戦えば自身の成長の糧になると思い、挑んだのだが結果は想像以上だ。
ランドルフの愛機である「レザネフォル」。
その真髄は防御にある。 「アウルムアーマー」防御を司る兵装だ。
原理としてはエンジェルタイプやパンツァータイプが使用する防御フィールドに近いのだが、やや毛色が異なる。 全身の噴出口から噴き出すエネルギーをフィールド内に留める事でありとあらゆる攻撃を弾き返す。
エネルギー系の攻撃はよほどの高出力なものでもない限り完全に無効化し、物理攻撃ですら噴出する奔流に遮られて機体まで届かない。 出力に物を言わせた彼らしい防御兵装と言えるが、当然ながら欠点も多く存在する。
まずは燃費。 アウルムアーマーは非常に高い防御効果を齎す代わりに機体の内蔵エネルギーを凄まじい勢いで食い潰す。 並の機体であるなら数秒で枯渇するような消費をどう賄っているのか?
答えはコンデンサーにある。 レザネフォルに内蔵されているコンデンサーにはエネルギーの吸収機能が存在し、機体が吐き出したエネルギーを吸収してリサイクルする事を可能としているのだ。
当然ながら収支のつり合いが全く取れないが、維持する時間を延ばす程度には回復できるのでアウルムアーマーを瞬間的ではなく少しの間、展開する事を可能としていた。
圧倒的な防御力で敵の攻撃を受けつつ正面から敵を叩き潰す。 これがAランクプレイヤー、ランドルフの戦闘スタイル。
上段からの振り下ろしからの刺突か横薙ぎ。
ふわわの見立て通り、攻撃のバリエーションはそう多くない。
だが、そんな彼がここまでAランクの地位を維持できているもう一つの要因は武器だ。
「アール・デコ」、「アール・ヌーヴォ」黄金のロングソード。
機体からのエネルギー供給を得て切断力を大幅に強化された剣は並の武器では受ける事すら叶わない。 ふわわはその事に気付いてはいないが、無意識に受けられないと理解していたのか全て躱している。
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5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。
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