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第227話
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現れたのは一機のトルーパーだった。
形状が既存フレームと一致しない点からもカスタム機ではなく、ジェネシスフレーム。
つまりはAランク以上だ。 形状は人型でカラーリングは黒を基調としており随所に錆色がちりばめられている。 装甲は動きを阻害しない程度には厚く、やや重たい印象だ。
頭部には特徴的な一本角。 そして何よりも特徴的なのは携行武器を持っていない事だ。
同時にその機体を象徴するかのような腕があった。
巨大な腕で手首から肘の間には何かの装置が内蔵されているのか規則的なパターンが刻まれている。
そして握った拳はもはや腕ではなく鉄槌を思わせる威圧感を放っていた。
普段のベリアルであるなら新手が来たと判断するが、彼の感覚が別の事実を捉えていたのだ。
それにより僅かに足が竦むが、これは好機だと前傾姿勢を取る。
さっきの二人も凄まじい使い手だったがこいつは格が違う。
間違いなくアメリカ側のSランクだ。
「感じる! 感じるぞ! 貴様から迸る圧倒的な力を! その姿、威容、まさに力の化身と言える」
「ジャパンのハイランカー。 見事な戦いだった。 お前は素晴らしいファイターだ」
男の声。 低くどっしりとしたバリトンがベリアルの耳に触れる。
「ふ、遠くから我が力を観測していたか。 ならば次は貴様が我が闇に挑むというのだな!」
Sランカーは小さく空を見上げる。
「それも構わないがお前は消耗している。 戦うというのなら回復させてから来い。 それよりもジャパンのタイトルホルダーはまだ空か? 俺は彼と戦う為に来た。 可能であるなら呼び出してくれないか?」
「……それは情けか?」
暗に見逃してやると言われベリアルは僅かに屈辱に表情を歪ませる。
Sランカーは小さく首を振る。
「消耗した相手を倒しても意味がない。 彼を呼び出せないのなら失せろ、そして戦うつもりがあるなら万全の状態で俺の前に立て」
「ふ、ふはは、力の化身よ! 慢心は身を滅ぼすぞ! 俺は闇の王にして影の支配者! 常に覇道を進む者! 後ろに下がる足などない!」
そう言ってベリアルは戦闘態勢に移行する。
Sランカーはなるほどと小さく呟いた。
「どうやら俺はお前を侮っていたようだ。 非礼を詫びよう。 お前は真のウォリアーだ」
「行くぞ! 我が名はベリアル! そしてこの機体こそが我が力の象徴たるプセウドテイ! 覚えておくがいい、貴様を屠る者の名を!」
「俺はライランド。 この戦いが終わって戦意が折れていないのならまたかかって来い」
ベリアルは正面から突っ込む。 同時にケヴィン達を屠った機能を使用する。
纏ったエネルギーはそのままに本体である中身が背後へと瞬間移動。
これが彼等を屠った攻撃の正体だ。 短距離転移システム「ファントム・シフト」
その名の通り短い距離を転移する為の装置だ。
便利な代物ではあるが、エネルギー消費が非常に激しいので何度も扱えない。
ベリアルにとっては切り札ともいえる攻撃手段だ。 転移は移動させる物体の質量で消費するエネルギー量が変動する事もあって手足がないプセウドテイとは非常に相性が良い。
だが、そんな好条件であっても連続使用は非常に危険を伴う。
攻撃、機動の全てをパンドラに依存している関係でエネルギーの枯渇は死に直結するからだ。
だが、得られる効果も凄まじい。 転移の際、纏ったエネルギーの外装はそのまま残せるので傍から見ると分身したかのように見せる事が可能で、攻撃の直前まで相手の意識を誘導できる点からもその強力さが窺える。
相手の意表を突く為にギリギリまで接近し、敵が反応したと同時に転移。
そのまま相手を刈り取る。 使いこなすまで血の滲むような訓練が必要だったが、モノにした今は必殺と言っても過言ではない一撃だ。 闇の王が振るう死角からの攻撃は――
「が、は――馬鹿……な……」
――拳の一撃で粉砕された。
死角に移動したプセウドテイの胴体を完璧に捉えた一撃。
タイミングが合っている点からも完全に見切られている。
転移が完了したと同時だったので回避のしようがなかった。 ライランドは拳にベリアルを捉えたまま地面に叩きつける。 内部機構が圧壊する音が響く。
「見事なフェイントだが、お前自身の攻撃リズムが酷く単調だ。 俺を乗せたいのならメトロノームではなくロックな楽器を持って来い」
ライランドの機体の肘の辺りからシリンダーが突き出る。
「く、は、なるほど。 今回は俺の負けだが覚えておくがいい、闇は何処までも深く、何処にでも存在する。 やがて貴様の影に――」
シリンダーが叩きつけられ、インパクトが拳に伝導。
地面が縦に揺れ、放射状の亀裂が走る。 当然ながら至近距離でそんな威力に晒されたベリアルは耐え切れずに即死。 そのまま退場となった。
――随分と想定と違う展開になったな。
そう考えながらヨシナリはホロスコープを操る。
戦闘機形態の愛機は空中で大きく弧を描きながら旋回しつつ、敵機を正面に捉えて機銃を連射。
そのまま撃墜する。
元々、相手を格上と判断して下手に分散せずに固まって布陣し、じりじりと戦線を押し上げるつもりだったのだ。
残念ながら初手で撃ち込んできたサテライトレーザーのお陰で総て破綻したが。
そのまま一気に崩されるかと思ったが、ラーガストの活躍によって衛星が破壊されたので次はなさそうなのが不幸中の幸いか。
未だに降りてこない所を見ると衛星を全て破壊するつもりだろう。
――結果、互いの主力が正面から殴り合うといった形になっている。
ラーガストが落とした衛星により敵にも大きな被害が出ているが、戦況はあまり良くない。
こうして戦うと地力――層の厚さが違うのが明らかだった。 この調子だと負ける可能性が高い。
勝ちたいのであれば何か一工夫が必要だろう。
「――いきなりかよ!?」
ヨシナリは咄嗟にホロスコープ急降下。
僅かに遅れてエネルギー式の機銃による斉射が通り過ぎる。
シックスセンスのお陰で戦況は他のプレイヤーよりも見えているが、情報量が多すぎて処理しきれない。
『ヘイ、いい動きだな。 俺と遊んでくれよ』
通信。 翻訳機を噛ませている所為で微妙にイントネーションがおかしいが、はっきりと伝わる。
相手の姿を確認すると白黒ツートンのキマイラタイプがホロスコープを追いかけてきていた。
ついさっきの機銃掃射もあの機体の仕業だろう。
――面倒なのに絡まれたな。
お望み通り遊んでやるとヨシナリは小さく笑って後ろを取られないように急上昇した。
形状が既存フレームと一致しない点からもカスタム機ではなく、ジェネシスフレーム。
つまりはAランク以上だ。 形状は人型でカラーリングは黒を基調としており随所に錆色がちりばめられている。 装甲は動きを阻害しない程度には厚く、やや重たい印象だ。
頭部には特徴的な一本角。 そして何よりも特徴的なのは携行武器を持っていない事だ。
同時にその機体を象徴するかのような腕があった。
巨大な腕で手首から肘の間には何かの装置が内蔵されているのか規則的なパターンが刻まれている。
そして握った拳はもはや腕ではなく鉄槌を思わせる威圧感を放っていた。
普段のベリアルであるなら新手が来たと判断するが、彼の感覚が別の事実を捉えていたのだ。
それにより僅かに足が竦むが、これは好機だと前傾姿勢を取る。
さっきの二人も凄まじい使い手だったがこいつは格が違う。
間違いなくアメリカ側のSランクだ。
「感じる! 感じるぞ! 貴様から迸る圧倒的な力を! その姿、威容、まさに力の化身と言える」
「ジャパンのハイランカー。 見事な戦いだった。 お前は素晴らしいファイターだ」
男の声。 低くどっしりとしたバリトンがベリアルの耳に触れる。
「ふ、遠くから我が力を観測していたか。 ならば次は貴様が我が闇に挑むというのだな!」
Sランカーは小さく空を見上げる。
「それも構わないがお前は消耗している。 戦うというのなら回復させてから来い。 それよりもジャパンのタイトルホルダーはまだ空か? 俺は彼と戦う為に来た。 可能であるなら呼び出してくれないか?」
「……それは情けか?」
暗に見逃してやると言われベリアルは僅かに屈辱に表情を歪ませる。
Sランカーは小さく首を振る。
「消耗した相手を倒しても意味がない。 彼を呼び出せないのなら失せろ、そして戦うつもりがあるなら万全の状態で俺の前に立て」
「ふ、ふはは、力の化身よ! 慢心は身を滅ぼすぞ! 俺は闇の王にして影の支配者! 常に覇道を進む者! 後ろに下がる足などない!」
そう言ってベリアルは戦闘態勢に移行する。
Sランカーはなるほどと小さく呟いた。
「どうやら俺はお前を侮っていたようだ。 非礼を詫びよう。 お前は真のウォリアーだ」
「行くぞ! 我が名はベリアル! そしてこの機体こそが我が力の象徴たるプセウドテイ! 覚えておくがいい、貴様を屠る者の名を!」
「俺はライランド。 この戦いが終わって戦意が折れていないのならまたかかって来い」
ベリアルは正面から突っ込む。 同時にケヴィン達を屠った機能を使用する。
纏ったエネルギーはそのままに本体である中身が背後へと瞬間移動。
これが彼等を屠った攻撃の正体だ。 短距離転移システム「ファントム・シフト」
その名の通り短い距離を転移する為の装置だ。
便利な代物ではあるが、エネルギー消費が非常に激しいので何度も扱えない。
ベリアルにとっては切り札ともいえる攻撃手段だ。 転移は移動させる物体の質量で消費するエネルギー量が変動する事もあって手足がないプセウドテイとは非常に相性が良い。
だが、そんな好条件であっても連続使用は非常に危険を伴う。
攻撃、機動の全てをパンドラに依存している関係でエネルギーの枯渇は死に直結するからだ。
だが、得られる効果も凄まじい。 転移の際、纏ったエネルギーの外装はそのまま残せるので傍から見ると分身したかのように見せる事が可能で、攻撃の直前まで相手の意識を誘導できる点からもその強力さが窺える。
相手の意表を突く為にギリギリまで接近し、敵が反応したと同時に転移。
そのまま相手を刈り取る。 使いこなすまで血の滲むような訓練が必要だったが、モノにした今は必殺と言っても過言ではない一撃だ。 闇の王が振るう死角からの攻撃は――
「が、は――馬鹿……な……」
――拳の一撃で粉砕された。
死角に移動したプセウドテイの胴体を完璧に捉えた一撃。
タイミングが合っている点からも完全に見切られている。
転移が完了したと同時だったので回避のしようがなかった。 ライランドは拳にベリアルを捉えたまま地面に叩きつける。 内部機構が圧壊する音が響く。
「見事なフェイントだが、お前自身の攻撃リズムが酷く単調だ。 俺を乗せたいのならメトロノームではなくロックな楽器を持って来い」
ライランドの機体の肘の辺りからシリンダーが突き出る。
「く、は、なるほど。 今回は俺の負けだが覚えておくがいい、闇は何処までも深く、何処にでも存在する。 やがて貴様の影に――」
シリンダーが叩きつけられ、インパクトが拳に伝導。
地面が縦に揺れ、放射状の亀裂が走る。 当然ながら至近距離でそんな威力に晒されたベリアルは耐え切れずに即死。 そのまま退場となった。
――随分と想定と違う展開になったな。
そう考えながらヨシナリはホロスコープを操る。
戦闘機形態の愛機は空中で大きく弧を描きながら旋回しつつ、敵機を正面に捉えて機銃を連射。
そのまま撃墜する。
元々、相手を格上と判断して下手に分散せずに固まって布陣し、じりじりと戦線を押し上げるつもりだったのだ。
残念ながら初手で撃ち込んできたサテライトレーザーのお陰で総て破綻したが。
そのまま一気に崩されるかと思ったが、ラーガストの活躍によって衛星が破壊されたので次はなさそうなのが不幸中の幸いか。
未だに降りてこない所を見ると衛星を全て破壊するつもりだろう。
――結果、互いの主力が正面から殴り合うといった形になっている。
ラーガストが落とした衛星により敵にも大きな被害が出ているが、戦況はあまり良くない。
こうして戦うと地力――層の厚さが違うのが明らかだった。 この調子だと負ける可能性が高い。
勝ちたいのであれば何か一工夫が必要だろう。
「――いきなりかよ!?」
ヨシナリは咄嗟にホロスコープ急降下。
僅かに遅れてエネルギー式の機銃による斉射が通り過ぎる。
シックスセンスのお陰で戦況は他のプレイヤーよりも見えているが、情報量が多すぎて処理しきれない。
『ヘイ、いい動きだな。 俺と遊んでくれよ』
通信。 翻訳機を噛ませている所為で微妙にイントネーションがおかしいが、はっきりと伝わる。
相手の姿を確認すると白黒ツートンのキマイラタイプがホロスコープを追いかけてきていた。
ついさっきの機銃掃射もあの機体の仕業だろう。
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