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第221話
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理由は単純で多弾頭ミサイルは特性上、放物線を描いての飛翔、降下、分離のプロセスを経て内部のミサイルをばら撒き、広範囲に破壊を撒き散らす。
つまり、最高高度に達して降下を始める前に撃墜すれば何の脅威も齎さない。
ユニオン対抗戦の時のように視界がほぼゼロの場合は高確率で邪魔されないので非常に有効だが、こういった個人戦ではあまり使い勝手がいいとは言えない装備だ。
ヨシナリはアノマリーで無言でミサイルを撃墜し、そのまま敵機を狙う。
狙われていると自覚したのか後退しようとしていたが、鈍重なパンツァータイプで逃げ切れる訳がない。
二連射。 一発目でエネルギーフィールドを剥がして二発目でコックピット部分を綺麗に撃ち抜いて撃破。 機体のエネルギー分布を見ればエネルギーフィールドの強度も大雑把だが読めるのでいちいち強度を図る必要がないのは便利だ。
「…………もう一回」
三試合目。 次の相手はⅡ型だ。
今回はそこそこいい装備だった。 ブースターは大型、スラスターのグレードも高く、それを支えるジェネレーターとコンデンサーも出力に釣り合ったものだ。
ただ、動きはあまり良くなかった。 飛行で真っすぐに突っ込んで来る。
なんだこいつと思ったが、よくよく見てみると機体にユニオンの物と思われるエンブレム。
恐らくは支援を受けて強化を施されたクチだろう。 正直、自分も似たような物なので特に言う事はないが、得る物のある戦いがしたい。
――うーん、無理そう。
敵機がエネルギーライフルを構え、即座に射撃。
ヨシナリは特に動かない。 何故ならエネルギー弾はホロスコープに掠りもせずに少し離れた所を通って行ったからだ。 お返しとばかりにすっとアノマリーを構えると敵機は慌てて急降下の態勢に入るが、予備動作で丸分かりだったので銃口を下げて発射。
ヨシナリの放ったエネルギー弾は吸い込まれるようにやや前傾姿勢で降下していた敵機の頭頂部から入って、胴体を貫通。 股間から抜けて爆散した。
終わってしまった。 これまでの練習相手がポンポンやツガルだったので、自然と比較対象が彼等になってしまう事もあって同ランク帯のプレイヤーはどうにも歯応えがない。
「……まぁ、シックスセンスとキマイラ使ってりゃ同ランク帯基準の相手装備だとかなり有利なるからな」
だったらふわわは何なんだよと少し思ったが、努めて気にしないようにした。
次どうするかなと思ったが、武器の慣らし運転と割り切って次の試合へエントリー。
成立したので次の試合が始まった。
『テメ、何でFランクでキマイラなんて使ってんだよ……。 このチート野――』
「人聞きの悪い事を言うな。 お金稼ぎ頑張ったんだよ」
最後まで言わせずにそう言って拳銃――アトルムで敵のⅡ型にとどめを刺す。
アノマリーを使っての狙撃だと簡単すぎるのでアトルム・クルックスを使いこなす為の練習を兼ねて狙撃は封印したのだが、それでも連戦連勝。
――したのは良かったのだが、途中から勝ちすぎてチート呼ばわりされてしまった。
失礼な連中だ。 俺がキマイラフレームを手に入れる為にどれだけ頑張ったと思ってるんだと言いたくなるが、性能と装備差を考えると少し理不尽か。
「シックスセンスが強すぎだな」
先読みによる狙撃もそうだが、中、近距離戦で攻撃の組み立てにも使える便利な代物だ。
情報量が多いので慣れるまで時間がかかったが、それもこれまでの戦闘である程度は形になって来た。
「一応は収穫はあったか。 さーて、次はどうするかなぁ……」
小さく呟くとウインドウがポップアップ。 Eランクへの昇格を知らせるものだった。
あぁ、もう上がったのかと無感動にそう思いつつ、時計を見るとかなり遅い時間だったのでそろそろ落ちるかと考え、切り上げる事にした。
ウインドウを操作してログアウト。
訓練なら他のユニオンに頼むかと考えながらゲームを後にした。
その翌日からはふわわやマルメルとの連携訓練や交流のあるユニオンとの練習試合と共同ミッションを利用しての合同訓練。 特に間近に迫っているイベントは全てのプレイヤーが味方で、相手は他所のサーバーという事で未知の強敵である事は間違いない以上、やれる事はやっておくべきだ。
準備はいくらやっても足りる事はない。 そうこうしている内にイベント当日。
ヨシナリ達はイベント用の控室で準備ができるまで待機となっていた。
フレンドリストを確認すると今回はラーガストとユウヤも参加するようだ。
その事実にほっと胸を撫で下ろす。
ラーガストが居るのといないのとでは勝敗に大きな影響が出る。
何故なら相手側にも確実にSランカーがいるからだ。
待ち時間の間、暇なのでヨシナリはウインドウを開いて今回のイベントのルールを再確認。
サーバー対抗戦。 参加人数は多い方が少ない方に合わせる形になっているので、総プレイヤー数で大きく劣る日本サーバーは参加が自由で敵側がそれに合わせて人数を絞る形になる。
対戦相手はアメリカ第三サーバー。 名称通り、アメリカ地区の三番目のサーバーだ。
さて、アメリカという地区には三つのサーバーがある訳だが、プレイヤーをどのように振り分けているのか? 答えは非常に分かり易い。
このICpwというゲームはサーバーの人口が上限に達した時点でサーバーを新設するといった手法を取っているらしい。
その為、第三サーバーというのはアメリカで最も後発のサーバーという事になる。
単純に考えるなら第一、第二は先発なのでプレイヤーの層が厚い事になるのだ。
要はアメリカ地区の中では一番マシな相手という事になる。
ヨシナリとしても他所との力量差を図る意味でもいい相手だとは思っていた。
勝利条件は敵の全滅。 フィールドは最初の大規模イベント戦で使用した基地が西と東に配置されており、そこを拠点に戦う形になる。
それ以外は遮蔽物のない荒野なので運営の意図としてはシンプルに殴り合えという事だろう。
――ふーむ。
気になる事はあった。 まず基地の存在。
以前のイベント戦の使いまわしに見えるが変わっている部分が多い。
ドーム状の屋根がついているので四方に設置しているゲートからしか出入りができない。
恐らくは簡単に破壊されない為の措置といった所だろうか?
敵機の詳細などはさっぱりわからないのでこれ以上の情報は現地で得ていくしかないだろう。
ウインドウがポップアップ。 準備ができたのとの事。
――行くか。
つまり、最高高度に達して降下を始める前に撃墜すれば何の脅威も齎さない。
ユニオン対抗戦の時のように視界がほぼゼロの場合は高確率で邪魔されないので非常に有効だが、こういった個人戦ではあまり使い勝手がいいとは言えない装備だ。
ヨシナリはアノマリーで無言でミサイルを撃墜し、そのまま敵機を狙う。
狙われていると自覚したのか後退しようとしていたが、鈍重なパンツァータイプで逃げ切れる訳がない。
二連射。 一発目でエネルギーフィールドを剥がして二発目でコックピット部分を綺麗に撃ち抜いて撃破。 機体のエネルギー分布を見ればエネルギーフィールドの強度も大雑把だが読めるのでいちいち強度を図る必要がないのは便利だ。
「…………もう一回」
三試合目。 次の相手はⅡ型だ。
今回はそこそこいい装備だった。 ブースターは大型、スラスターのグレードも高く、それを支えるジェネレーターとコンデンサーも出力に釣り合ったものだ。
ただ、動きはあまり良くなかった。 飛行で真っすぐに突っ込んで来る。
なんだこいつと思ったが、よくよく見てみると機体にユニオンの物と思われるエンブレム。
恐らくは支援を受けて強化を施されたクチだろう。 正直、自分も似たような物なので特に言う事はないが、得る物のある戦いがしたい。
――うーん、無理そう。
敵機がエネルギーライフルを構え、即座に射撃。
ヨシナリは特に動かない。 何故ならエネルギー弾はホロスコープに掠りもせずに少し離れた所を通って行ったからだ。 お返しとばかりにすっとアノマリーを構えると敵機は慌てて急降下の態勢に入るが、予備動作で丸分かりだったので銃口を下げて発射。
ヨシナリの放ったエネルギー弾は吸い込まれるようにやや前傾姿勢で降下していた敵機の頭頂部から入って、胴体を貫通。 股間から抜けて爆散した。
終わってしまった。 これまでの練習相手がポンポンやツガルだったので、自然と比較対象が彼等になってしまう事もあって同ランク帯のプレイヤーはどうにも歯応えがない。
「……まぁ、シックスセンスとキマイラ使ってりゃ同ランク帯基準の相手装備だとかなり有利なるからな」
だったらふわわは何なんだよと少し思ったが、努めて気にしないようにした。
次どうするかなと思ったが、武器の慣らし運転と割り切って次の試合へエントリー。
成立したので次の試合が始まった。
『テメ、何でFランクでキマイラなんて使ってんだよ……。 このチート野――』
「人聞きの悪い事を言うな。 お金稼ぎ頑張ったんだよ」
最後まで言わせずにそう言って拳銃――アトルムで敵のⅡ型にとどめを刺す。
アノマリーを使っての狙撃だと簡単すぎるのでアトルム・クルックスを使いこなす為の練習を兼ねて狙撃は封印したのだが、それでも連戦連勝。
――したのは良かったのだが、途中から勝ちすぎてチート呼ばわりされてしまった。
失礼な連中だ。 俺がキマイラフレームを手に入れる為にどれだけ頑張ったと思ってるんだと言いたくなるが、性能と装備差を考えると少し理不尽か。
「シックスセンスが強すぎだな」
先読みによる狙撃もそうだが、中、近距離戦で攻撃の組み立てにも使える便利な代物だ。
情報量が多いので慣れるまで時間がかかったが、それもこれまでの戦闘である程度は形になって来た。
「一応は収穫はあったか。 さーて、次はどうするかなぁ……」
小さく呟くとウインドウがポップアップ。 Eランクへの昇格を知らせるものだった。
あぁ、もう上がったのかと無感動にそう思いつつ、時計を見るとかなり遅い時間だったのでそろそろ落ちるかと考え、切り上げる事にした。
ウインドウを操作してログアウト。
訓練なら他のユニオンに頼むかと考えながらゲームを後にした。
その翌日からはふわわやマルメルとの連携訓練や交流のあるユニオンとの練習試合と共同ミッションを利用しての合同訓練。 特に間近に迫っているイベントは全てのプレイヤーが味方で、相手は他所のサーバーという事で未知の強敵である事は間違いない以上、やれる事はやっておくべきだ。
準備はいくらやっても足りる事はない。 そうこうしている内にイベント当日。
ヨシナリ達はイベント用の控室で準備ができるまで待機となっていた。
フレンドリストを確認すると今回はラーガストとユウヤも参加するようだ。
その事実にほっと胸を撫で下ろす。
ラーガストが居るのといないのとでは勝敗に大きな影響が出る。
何故なら相手側にも確実にSランカーがいるからだ。
待ち時間の間、暇なのでヨシナリはウインドウを開いて今回のイベントのルールを再確認。
サーバー対抗戦。 参加人数は多い方が少ない方に合わせる形になっているので、総プレイヤー数で大きく劣る日本サーバーは参加が自由で敵側がそれに合わせて人数を絞る形になる。
対戦相手はアメリカ第三サーバー。 名称通り、アメリカ地区の三番目のサーバーだ。
さて、アメリカという地区には三つのサーバーがある訳だが、プレイヤーをどのように振り分けているのか? 答えは非常に分かり易い。
このICpwというゲームはサーバーの人口が上限に達した時点でサーバーを新設するといった手法を取っているらしい。
その為、第三サーバーというのはアメリカで最も後発のサーバーという事になる。
単純に考えるなら第一、第二は先発なのでプレイヤーの層が厚い事になるのだ。
要はアメリカ地区の中では一番マシな相手という事になる。
ヨシナリとしても他所との力量差を図る意味でもいい相手だとは思っていた。
勝利条件は敵の全滅。 フィールドは最初の大規模イベント戦で使用した基地が西と東に配置されており、そこを拠点に戦う形になる。
それ以外は遮蔽物のない荒野なので運営の意図としてはシンプルに殴り合えという事だろう。
――ふーむ。
気になる事はあった。 まず基地の存在。
以前のイベント戦の使いまわしに見えるが変わっている部分が多い。
ドーム状の屋根がついているので四方に設置しているゲートからしか出入りができない。
恐らくは簡単に破壊されない為の措置といった所だろうか?
敵機の詳細などはさっぱりわからないのでこれ以上の情報は現地で得ていくしかないだろう。
ウインドウがポップアップ。 準備ができたのとの事。
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