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第220話
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恐らくはふわわなりに自身に足りない物を埋めようとした結果なのだろう。
彼女は近距離では非常に強力なプレイヤーではあるが、中距離以上の距離での脅威度は大きく落ちる。
それを補う為の野太刀とグルーキャノン。 前者は得意武器である刀剣を用いての距離の不利を覆す為。
調べたがあの鞘はレールガンと同じ原理で抜く際の刀身を加速させる代物なのだが、あのスピードを制御できる者はそういないので評価はかなり低い装備だった。
それに加えて液体金属刃の野太刀を用いる事で見た目からは想像もできない間合い――もう、あのレベルになると射程と括った方がいい攻撃範囲を実現したのだ。
カタログスペック上では強度を犠牲にすれば刀身は十倍近くまで伸ばせるらしいので上手に使えば突撃銃と同等以上の間合いで斬撃を繰り出せる――のだが、嘉成が真似した所で折れて終わりなので、アレはふわわだからこそ繰り出せる斬撃だろう。
アレ相手に安全な距離が欲しいならそれこそ狙撃を狙えるレベルまで離れなければならない。
そしてあの斬撃を掻い潜ったとしてもそこは彼女の最も得意とする間合いだ。
野太刀を一度でも見せてしまえば相手は警戒して大きく距離を取るか、使わせない為に距離を詰めるしかなくなる。 狙撃銃等を持っていないのなら行くしかない。
そうなれば後は彼女の独壇場と言える。 こと、近接戦で彼女に勝てる相手はそういない。
嘉成が思いつく限りでもAランク以上のプレイヤーの名前しか出てこなかった。
そして接近して無理だと逃げようとする相手にはグルーキャノンで動きを止めて逃げられなくする。
ふわわが自身の強みを活かす為に相当な工夫をしている事が伝わった。
しばらく休んでいたからその間に差を付けられたと少し思っていたが、とんでもない間違いだったと認識させられる。 やはりふわわは強い。 本当に知り合えてよかった。
――今回は性能で勝ったが、今度は実力で勝つ。
近くに越えたい壁があるのはモチベーションに繋がるからだ。
次はもっと良い勝ち方をして見せる。 そう考えて嘉成は拳を握った。
あぁ、全くICpwは最高のゲームだ。 想像以上に熱くさせてくれる。
本来ならそのまま眠ってしまうつもりだったが、思考が止まらない。
自身の戦い方に関する反省点は見えた。 次は改善点だ。
まず武器に関してだ。 方向性は間違ってない。
多目的銃であるアノマリーと二挺の自動拳銃、後は予備のエネルギー式のダガー。
後は内蔵型の機銃。 これは変形時の攻撃手段でもある。
アタッチメントを使用する事でアノマリーを取り落とす事によるロストを防ぎつつ、変形時に使用する事が可能だ。
拳銃も実はかなりいい奴だったりする。
自動拳銃『アトルム・クルックス』二挺でワンセット、黒い方がアトルムで白い方がクルックスらしい。 ヨシナリは基本的に左でアトルム、右でクルックスを扱っている。
ポンポンが使わなくなったからと安く譲ってくれたのだが、使い勝手がかなりいい。
実弾仕様ではあるが複列式弾倉を採用しているので装弾数は十五発と多い。
それだけでも採用理由としては充分だが、このアトルム・クルックス最大の長所は拡張性にある。
要は別売りのパーツを装着する事で様々な機能を追加できるのだ。
用途に応じてカスタムできるのは非常にありがたい。 今回は銃身にエネルギーダガーを銃剣として装着し、マガジンにレーザー誘導システムを搭載する事で弾倉部分が空になった場合に予備を射出して自動で交換する事が可能となっている。 片手でスムーズにマガジン交換ができた理由だ。
他には銃身を伸ばして射程を伸ばしたり、三点バーストを使えるようにしたりと大抵の機能には対応している。 武装に関してはしばらくはこれで問題ないはずだ。
――というかもう金がないんだよ……。
シックスセンスとキマイラフレーム、その他諸々を購入してGもPもほぼ空っぽ。
稼がないと不味い状況だ。 また共同ミッションを回して金を稼ぐかと思ったが、それ以上に自分の戦い方をもっと最適化したい。 そんな欲望がむくむくと膨らんでいく。
特にふわわ戦での反省点を改善しておきたかったのだ。
「……取り敢えず明日にやる事は決まったな」
そう呟いて嘉成は目を閉じた。 眠りに落ちるまで明日はどうしようとか考えていたのだが――
「…………明日はやるぞー」
ゴロゴロと寝返りを打つ。
「………………やるぞー…………」
再度寝返り。
「………………うん。 無理」
嘉成はむくりと身を起こすと再度ゲームを起動。
気になって全然眠れない。 ちょっとだけ、ちょっとだけだから。
そんな事を自分に言い聞かせてログイン。 嘉成からヨシナリへ。
ユニオンホームへと戻るとふわわとマルメルは既にログアウトしたのかいなかった。
練習相手どうしようかなと悩んだが、そう言えばランク戦最近やってなかったなと思い出し、ちょっと遊ぶかと軽い気持ちでエントリー。
即座にマッチングが完了して対戦が開始される。
相手は当然Ⅱ型で、初見の相手なので情報はほとんど出てこない。
フィールドは荒野だが、空中戦になりそうだったのであまりステージの地形は意識しなくてもいいかもしれない。
戦闘開始。 シックスセンスにより、敵機よりも早くその姿を捉える。
装備はエネルギーライフルと腰には突撃銃がマウントされている。
それ以外は目立った武装はなし。 素直に真っすぐ突っ込んで来る。
取り敢えず牽制入れるかとヨシナリはアノマリーを構えて発射。
ブースターの挙動から回避先は下。
――ここかな?
回避先を予測して出力を上げたエネルギー弾を発射。 同時に変形して間合いを――
「あれ?」
――詰めようとしたが、エネルギー弾が機体を綺麗に射抜きそのまま撃破。
試合終了となった。
ホームに戻されたヨシナリは不完全燃焼気味だったのでもう一回とマッチングを開始。
即座に次の試合が組まれる。
次の相手はパンツァータイプだ。 装備は多弾頭ミサイル、短距離ミサイル、ガトリング砲、後は胴体部分にエネルギーフィールドの発生装置。
ガードを固めてミサイルの飽和攻撃で仕留めるスタイルだ。
試合開始と同時に敵機がミサイルを発射。
垂直にミサイルが飛翔し、放物線を描こうとするがばらける前にアノマリーで撃ち落とす。
多弾頭ミサイルは攻撃範囲、威力と申し分なく、雑にばら撒くだけで一定の成果を上げる便利な代物ではあるが、個人戦にはあまり向かない武器だ。
彼女は近距離では非常に強力なプレイヤーではあるが、中距離以上の距離での脅威度は大きく落ちる。
それを補う為の野太刀とグルーキャノン。 前者は得意武器である刀剣を用いての距離の不利を覆す為。
調べたがあの鞘はレールガンと同じ原理で抜く際の刀身を加速させる代物なのだが、あのスピードを制御できる者はそういないので評価はかなり低い装備だった。
それに加えて液体金属刃の野太刀を用いる事で見た目からは想像もできない間合い――もう、あのレベルになると射程と括った方がいい攻撃範囲を実現したのだ。
カタログスペック上では強度を犠牲にすれば刀身は十倍近くまで伸ばせるらしいので上手に使えば突撃銃と同等以上の間合いで斬撃を繰り出せる――のだが、嘉成が真似した所で折れて終わりなので、アレはふわわだからこそ繰り出せる斬撃だろう。
アレ相手に安全な距離が欲しいならそれこそ狙撃を狙えるレベルまで離れなければならない。
そしてあの斬撃を掻い潜ったとしてもそこは彼女の最も得意とする間合いだ。
野太刀を一度でも見せてしまえば相手は警戒して大きく距離を取るか、使わせない為に距離を詰めるしかなくなる。 狙撃銃等を持っていないのなら行くしかない。
そうなれば後は彼女の独壇場と言える。 こと、近接戦で彼女に勝てる相手はそういない。
嘉成が思いつく限りでもAランク以上のプレイヤーの名前しか出てこなかった。
そして接近して無理だと逃げようとする相手にはグルーキャノンで動きを止めて逃げられなくする。
ふわわが自身の強みを活かす為に相当な工夫をしている事が伝わった。
しばらく休んでいたからその間に差を付けられたと少し思っていたが、とんでもない間違いだったと認識させられる。 やはりふわわは強い。 本当に知り合えてよかった。
――今回は性能で勝ったが、今度は実力で勝つ。
近くに越えたい壁があるのはモチベーションに繋がるからだ。
次はもっと良い勝ち方をして見せる。 そう考えて嘉成は拳を握った。
あぁ、全くICpwは最高のゲームだ。 想像以上に熱くさせてくれる。
本来ならそのまま眠ってしまうつもりだったが、思考が止まらない。
自身の戦い方に関する反省点は見えた。 次は改善点だ。
まず武器に関してだ。 方向性は間違ってない。
多目的銃であるアノマリーと二挺の自動拳銃、後は予備のエネルギー式のダガー。
後は内蔵型の機銃。 これは変形時の攻撃手段でもある。
アタッチメントを使用する事でアノマリーを取り落とす事によるロストを防ぎつつ、変形時に使用する事が可能だ。
拳銃も実はかなりいい奴だったりする。
自動拳銃『アトルム・クルックス』二挺でワンセット、黒い方がアトルムで白い方がクルックスらしい。 ヨシナリは基本的に左でアトルム、右でクルックスを扱っている。
ポンポンが使わなくなったからと安く譲ってくれたのだが、使い勝手がかなりいい。
実弾仕様ではあるが複列式弾倉を採用しているので装弾数は十五発と多い。
それだけでも採用理由としては充分だが、このアトルム・クルックス最大の長所は拡張性にある。
要は別売りのパーツを装着する事で様々な機能を追加できるのだ。
用途に応じてカスタムできるのは非常にありがたい。 今回は銃身にエネルギーダガーを銃剣として装着し、マガジンにレーザー誘導システムを搭載する事で弾倉部分が空になった場合に予備を射出して自動で交換する事が可能となっている。 片手でスムーズにマガジン交換ができた理由だ。
他には銃身を伸ばして射程を伸ばしたり、三点バーストを使えるようにしたりと大抵の機能には対応している。 武装に関してはしばらくはこれで問題ないはずだ。
――というかもう金がないんだよ……。
シックスセンスとキマイラフレーム、その他諸々を購入してGもPもほぼ空っぽ。
稼がないと不味い状況だ。 また共同ミッションを回して金を稼ぐかと思ったが、それ以上に自分の戦い方をもっと最適化したい。 そんな欲望がむくむくと膨らんでいく。
特にふわわ戦での反省点を改善しておきたかったのだ。
「……取り敢えず明日にやる事は決まったな」
そう呟いて嘉成は目を閉じた。 眠りに落ちるまで明日はどうしようとか考えていたのだが――
「…………明日はやるぞー」
ゴロゴロと寝返りを打つ。
「………………やるぞー…………」
再度寝返り。
「………………うん。 無理」
嘉成はむくりと身を起こすと再度ゲームを起動。
気になって全然眠れない。 ちょっとだけ、ちょっとだけだから。
そんな事を自分に言い聞かせてログイン。 嘉成からヨシナリへ。
ユニオンホームへと戻るとふわわとマルメルは既にログアウトしたのかいなかった。
練習相手どうしようかなと悩んだが、そう言えばランク戦最近やってなかったなと思い出し、ちょっと遊ぶかと軽い気持ちでエントリー。
即座にマッチングが完了して対戦が開始される。
相手は当然Ⅱ型で、初見の相手なので情報はほとんど出てこない。
フィールドは荒野だが、空中戦になりそうだったのであまりステージの地形は意識しなくてもいいかもしれない。
戦闘開始。 シックスセンスにより、敵機よりも早くその姿を捉える。
装備はエネルギーライフルと腰には突撃銃がマウントされている。
それ以外は目立った武装はなし。 素直に真っすぐ突っ込んで来る。
取り敢えず牽制入れるかとヨシナリはアノマリーを構えて発射。
ブースターの挙動から回避先は下。
――ここかな?
回避先を予測して出力を上げたエネルギー弾を発射。 同時に変形して間合いを――
「あれ?」
――詰めようとしたが、エネルギー弾が機体を綺麗に射抜きそのまま撃破。
試合終了となった。
ホームに戻されたヨシナリは不完全燃焼気味だったのでもう一回とマッチングを開始。
即座に次の試合が組まれる。
次の相手はパンツァータイプだ。 装備は多弾頭ミサイル、短距離ミサイル、ガトリング砲、後は胴体部分にエネルギーフィールドの発生装置。
ガードを固めてミサイルの飽和攻撃で仕留めるスタイルだ。
試合開始と同時に敵機がミサイルを発射。
垂直にミサイルが飛翔し、放物線を描こうとするがばらける前にアノマリーで撃ち落とす。
多弾頭ミサイルは攻撃範囲、威力と申し分なく、雑にばら撒くだけで一定の成果を上げる便利な代物ではあるが、個人戦にはあまり向かない武器だ。
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